鬼に連れられ異世界へ〜基本俺はついでです〜

流れ華

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二章・・・かごの外

罪の自覚

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「ティタに向かうか。」

「それが無難だよね。」

新月がなにか言う前に二匹は動き出し、それにつられて新月も歩き出す。

「僕らは人型に化けるのが苦手だから、新月の従魔っていう設定でいいんじゃない?」
「ふむ、ならば喋らぬほうが良いだろう。」
「確かに。上位魔獣の従魔は珍しいから悪目立ちしても面倒だしね。
従魔の証はどうする?」
「我らは毛足が長い方だしな、誤魔化せるだろう。」
「まぁそもそも僕らは主様の眷属だから契約できないしね。」

新月が何も言えずにいても、勝手に話が進んでいく。

ガクッと体が浮いたかと思うと十六夜の背に乗せられていた。

「日が落ちる前に進むとするか。」

どうやら、反論させる気は無いらしい。

「証は一応偽装しとこっか。」
「他人の従魔に触れるのは禁忌なのだから、探られる心配をする必要あるのか?」
「地上にいた頃の僕らの常識が通じるか分からないでしょ?あれから何十年経ったと思ってるの?
それに新月に見せろって請求してくるかもよ?」
「それもそうか。」
「そういえば、どこの国かは忘れたけど目印なるものをつけることを規則にしてる国があった気がするな。」
「それもやっておくか?」
「うーん、でも何が目印だったか思い出せないや。」

新月が口を挟む余裕などありはしない。

(もしかして、俺が紅月さんのことを考えないように?
紅月さんに勝手に会いに行こうとすると思われてるのか?
・・・まぁ、会ってすぐなのに信用しろという方が変だもんな、当然か。


・・・紅月さんに会えないの、何時までなんだろう。
半年?一年?もっとかな。)

紅月と過ごした、長いようで短い日々が思い出される。

(最初の魔法になれるうちは良かった。意外と早く上達したし、怪我をすることもほとんどなかった。
でも、武器の鍛錬になってからは、ついて行くのがやっとだった。)

死んでしまうのではないかと思うほど過酷で、何度も血反吐を吐く羽目になった。
紅月自身が元々持ち合わせている身体能力と、新月が持ち合わせている身体能力はかなりかけ離れており、紅月は自分を基準にしていたために新月はかなり酷い目にあっている。
紅月の指導方針は習うより慣れろであったため、きちんと扱えなければ怪我をしたし、加減も自ら怪我をして覚えるというものだった。

(時には四肢が吹っ飛ぶこともあったっけ。
すぐに再生するからといって、容赦なかったもんな・・・
痛かったなぁ・・・本気で死ぬかと思った。全然死ななかったけど。)

腹を貫かれたり、身体が半分潰れたり。
ごく稀に、人の形をしていたということが分からないほどにめちゃくちゃにされることもあった。

(身体をミンチにされても痛覚はそのままだし、苦しいし、原型留めないほどの時は治るのめちゃくちゃ時間かかったし、特訓は本当に生き地獄だったな。
流石に人間はやめてるんだとは思い知ったけど、紅月さんが鬼であることも思い知ったな。)

ある程度武器に慣れてきて始まった『鬼ごっこ』も、可愛らしいのは名前だけで、実際にやっていることは生きるか死ぬか、命懸けのゲームであった。
捕まればミンチ。それが嫌なら死ぬ気で逃げなければならない。手に持った得物は罠や、迫り来る攻撃をいなすことに使った。
抵抗しようとこちらから攻撃したりしようものなら、紅月の加虐心を煽り、攻めの手がいっそう強くなるだけだということを、新月は『鬼ごっこ』が始まってから二日で思い知った。

(・・・改めて追いかけられるのを思い出すと寒気がする。)

紅月にはそういった、残虐とも言える行為に対して一切の抵抗がなかった。
それよりもむしろ、楽しい・・・という感情が日に日に抑えきれずに出てきていたようにさえ思う。

(元が人間ではなく鬼だから・・・?
でもツクヨミさんの眷属になったんだから・・・
ん?でも俺はあんまり変わってないような・・・。

うーん、よくわかんないな。)

特訓の時以外では、紅月は至って穏やかだった。
森の動物達にもやさしく、警戒心の強い小動物も紅月の周りに集まるような・・・。

(紅月さんが鬼としての本能をまだ根強く持っているとして、その加虐心が向いたことがあるのは俺が知っている限りでは『俺』だけ・・・だと思う。
それが『俺』だからなのか、元とはいえ『人間』だからなのか、それとも『人の形』をしているからなのか・・・

いや、考えたところでどうにかなる訳でもないか。)

思考を振り払おうとした時、ふと思い当たる。

(そういえば、十六夜たちは“役目”がどうこうって言っていたような・・・
もしかして、その役目って、鬼としての本能のことが関わっているんじゃないかな・・・?
神様を攻撃することはいけないこと・・・・・・ではなかったみたいだし・・・。

ってことは、どれが要因かは分からないけど、『俺』と過ごしたせいで鬼としての本能が刺激されて・・・?)

自らが考えて思い至った結論に、段々と血の気が引いていく。

(紅月さんは俺のせい・・・・で、ツクヨミさんに与えられた“役目”を逸脱することになってしまった・・・?
俺の保護者になったばっかりに・・・!?)

自らが仕える神との約束を違えるということの意味を、眷属になった新月もはっきりと理解していた。


  とてつもない忌避感

  途方もない恐怖

  その身を滅ぼしても足りぬ罪悪


(おれは、紅月さんを苦しめてたんだ。
じゃあ、こうして離れろと言われるのも当たり前だ。
俺はその苦痛に気が付かなかった。
あまつさえ幸せを感じてた!
ずっとこのままでいいとさえも・・・!)

じわじわと、心が蝕まれていく。
自らの罪の意識が、心を蝕んでいく。

(おれの・・・おれのせいだ・・・)

新月は、まだ御使としての罪の意識を受け止めるだけの精神をもちあわせてはいない。
そもそも、新月が御使になるということが異例なのだ。
本来御使になるのは、精神が成熟し、神に仕えるに相応しい者の中から選ばれるのだから。

(せめて謝りたい・・・
いや、会ったらダメだ・・・
じゃあどうする?いつまで待てばいい?

まさか、ずっと?
そんな、そんなの、だって、やっぱり嫌だよ・・・!ずっと謝れずに会えないなんて!)

心拍は跳ね上がり、変な汗が背中を伝う。
息は荒くなり、涙があふれる。


「と、言うわけだけど、わかった?そのように進めて・・・って、どうしたの!?大丈夫!?」

幻月の声ではっと我に返る。

「どうした!?」

新月の明らかに異常な状態に二匹は慌てる。
新月を背中からおろし、木にもたれかからせる。


(ああ、心配をかけてしまった・・・
早く、なんともないって伝えなきゃ)


口を開こうにも呼吸が詰まり、言葉にならない。



(俺は・・・ダメだな・・・御使なんて大層なものに耐える度量も、覚悟も、何も出来てなかったんだ。)




声が遠くに聞こえる。



(ごめん、なさい・・・俺なんかが・・・こんな・・・)



半ば諦めるように意識を手放した。
意識が着れる寸前、何かを感じた気がしたが、それが何なのかを判断するにはあまりにも短かった。












目標ターゲットの精神に錯乱状態を確認。精神異常の耐性は低めであることが推測されます。
目標ターゲットを確保するには二頭の魔獣が障害であると判断、監視を継続します。」




To Be Continue・・・・・・
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