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第4章 狂王の末路
6.仙女、始皇帝を知る
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『飽桀という男は、鳩を使い定期的に姜文様達の状況を報告していたのです』
『御二人が凛凛の件を、私に相談に来た時、私が話した内容をあ奴は聞いておったのです』
『それで、凛凛が私の角を食べた事を知り、その王に報告したのです』
『もともとあ奴は、王から不老不死の霊薬が見つかったら、持って来いと命ぜられていた者』
『霊薬が何であれ、持っていけば、恩賞は思いのまま』
『奴は、凛凛を赤子と考えず、霊薬と考えたのです』
『そして、凛凛をさらうために躊躇なく凛凛の父を殺し、そして私に見つかり、死んだ』
『あ奴が、船で向かっていた処は、芝罘【現在の中国山東省煙台市】という港町じゃ』
『あの日から30日後、つまり今日から2週間後、その王へ凛凛を献上するつもりだったのです』
フォンミンの口から次々と出る、自分が知らなかった情報に姜文は驚いた。
『・・・・・』
『グゥッ、あの狂王であれば、有り得ない話ではない』、フォンミンの話を呻きながら聞いていた姜文は、自分が知っている始皇帝の人柄、彼の不老不死の霊薬に対する凄まじい執着を思い出し、最後にフォンミンのいう事に真実であると結論づけた。
『狂王とはどういう意味ですか?私に、貴方様の国の王について詳しく教えてはくれませぬか?』
『王とは、徐福様の様に人間を導く立場の者を指す言葉』
『徐福様は、慈悲の心を持った立派な御方でした。始皇帝という人物は違うのですか?』
姜文は、自分が持っている始皇帝の情報と、彼がみた始皇帝の狂った様な態度、印象をフォンミンに話したのである。
気がつけばはちみつ湯を持って来た蘭華も、途中から二人の席の近くに座り、話しを聞くのに参加していた。
姜文が二人に語ったのは、始皇帝が反発する者や罪を犯した者を直ぐに処刑しようとする事、それは趣味の様に行うという事から始まった。
幼き日、始皇帝に殺されそうになった経験を、徐福が間一髪雨を降らせ、助けられた事を例に出す。
優秀な人物であった事は認めるが、目的達成のためには手段を選ばない。目的の為であればどんな者に対しても一時的に下手に出るが、その目的を得れば、本性をみせその者を殺す。
それが分かり、心底嫌になって、止む無く徐福と共に逃亡したとフォンミンに説明した。
自分が唯一の存在で、歴史や伝統も、人の命さえも彼が思い通りにできると考えており、始皇帝が治める国の民は、例外なく彼の奴隷であると妄信している、王とは名ばかりの狂人と結論づけた。
姜文が語り終えた後、蘭華は聞きながら、嫌悪感を覚えた様に、『そんな王様なんか必要ない、死ねばいいのに』と呟いた。
フォンミンは、少し沈黙し、その後姜文へ自分の感想を伝える。
『つまり、王といっても、徐福様とは全く逆の考えを持っているという事ですね』
『そのような者が、王が永遠の命を持てば、その国の者は幸せなのでしょうか?』
『幸せなわけはない、凛凛の様な子供、親を処刑され、そんな子供が次々と生まれる国に、生まれても幸せなワケは無い』
姜文は。声を荒げフォンミンに答える。
『そうですね、今の話を聞くところ、その王がいる限り、又凛凛の事を狙ってくる気がします』
そう言いながら、フォンミンは自分のはちみつ湯をユックリと飲んだ。
落ち着いた口調と、ユックリとした動作とは裏腹に、フォンミンの目は冷たい。
『先ずは危険の元凶を無くさなければ・・』と凛凛は頭を整理した後、二人が聞き取れない様な小さな声で呟いた。
仙女の姿をした妖は、次の自分の使命を人知れず認識したのである。
『始皇帝と言えど、こんな遠くまでは来れまい。この話は、此処で今日はおしまいじゃ』
『話題を変えよう』と姜文は、自分の両手の掌を重ね、一回鳴らし、蘭華が持って来た食事に気がつき3人で食べようと提案した。
穏やかな日の朝、その日の会話が3人の運命を変える事になるとは未だ誰も知らなかった。
『御二人が凛凛の件を、私に相談に来た時、私が話した内容をあ奴は聞いておったのです』
『それで、凛凛が私の角を食べた事を知り、その王に報告したのです』
『もともとあ奴は、王から不老不死の霊薬が見つかったら、持って来いと命ぜられていた者』
『霊薬が何であれ、持っていけば、恩賞は思いのまま』
『奴は、凛凛を赤子と考えず、霊薬と考えたのです』
『そして、凛凛をさらうために躊躇なく凛凛の父を殺し、そして私に見つかり、死んだ』
『あ奴が、船で向かっていた処は、芝罘【現在の中国山東省煙台市】という港町じゃ』
『あの日から30日後、つまり今日から2週間後、その王へ凛凛を献上するつもりだったのです』
フォンミンの口から次々と出る、自分が知らなかった情報に姜文は驚いた。
『・・・・・』
『グゥッ、あの狂王であれば、有り得ない話ではない』、フォンミンの話を呻きながら聞いていた姜文は、自分が知っている始皇帝の人柄、彼の不老不死の霊薬に対する凄まじい執着を思い出し、最後にフォンミンのいう事に真実であると結論づけた。
『狂王とはどういう意味ですか?私に、貴方様の国の王について詳しく教えてはくれませぬか?』
『王とは、徐福様の様に人間を導く立場の者を指す言葉』
『徐福様は、慈悲の心を持った立派な御方でした。始皇帝という人物は違うのですか?』
姜文は、自分が持っている始皇帝の情報と、彼がみた始皇帝の狂った様な態度、印象をフォンミンに話したのである。
気がつけばはちみつ湯を持って来た蘭華も、途中から二人の席の近くに座り、話しを聞くのに参加していた。
姜文が二人に語ったのは、始皇帝が反発する者や罪を犯した者を直ぐに処刑しようとする事、それは趣味の様に行うという事から始まった。
幼き日、始皇帝に殺されそうになった経験を、徐福が間一髪雨を降らせ、助けられた事を例に出す。
優秀な人物であった事は認めるが、目的達成のためには手段を選ばない。目的の為であればどんな者に対しても一時的に下手に出るが、その目的を得れば、本性をみせその者を殺す。
それが分かり、心底嫌になって、止む無く徐福と共に逃亡したとフォンミンに説明した。
自分が唯一の存在で、歴史や伝統も、人の命さえも彼が思い通りにできると考えており、始皇帝が治める国の民は、例外なく彼の奴隷であると妄信している、王とは名ばかりの狂人と結論づけた。
姜文が語り終えた後、蘭華は聞きながら、嫌悪感を覚えた様に、『そんな王様なんか必要ない、死ねばいいのに』と呟いた。
フォンミンは、少し沈黙し、その後姜文へ自分の感想を伝える。
『つまり、王といっても、徐福様とは全く逆の考えを持っているという事ですね』
『そのような者が、王が永遠の命を持てば、その国の者は幸せなのでしょうか?』
『幸せなわけはない、凛凛の様な子供、親を処刑され、そんな子供が次々と生まれる国に、生まれても幸せなワケは無い』
姜文は。声を荒げフォンミンに答える。
『そうですね、今の話を聞くところ、その王がいる限り、又凛凛の事を狙ってくる気がします』
そう言いながら、フォンミンは自分のはちみつ湯をユックリと飲んだ。
落ち着いた口調と、ユックリとした動作とは裏腹に、フォンミンの目は冷たい。
『先ずは危険の元凶を無くさなければ・・』と凛凛は頭を整理した後、二人が聞き取れない様な小さな声で呟いた。
仙女の姿をした妖は、次の自分の使命を人知れず認識したのである。
『始皇帝と言えど、こんな遠くまでは来れまい。この話は、此処で今日はおしまいじゃ』
『話題を変えよう』と姜文は、自分の両手の掌を重ね、一回鳴らし、蘭華が持って来た食事に気がつき3人で食べようと提案した。
穏やかな日の朝、その日の会話が3人の運命を変える事になるとは未だ誰も知らなかった。
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