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第3章 十文字槍対策
7.修業最終日(妻へのお礼)
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修業日最終日、虎之助は胤栄と最後の立ち合いをしていた。
虎之助は、最近やっと胤栄が語る事の意味が分かり始めてきていた。
胤栄の槍術の考えの基本は、円錐のイメージと言う。
正直、初めは何をいっているのか虎之助はさっぱり理解する事ができなかった。
しかし、才蔵の水下に一撃を喰らわせてしまった日から、相手の懐に入るコツみたいなものを感じる事ができ始めた。
そのコツというのが、胤栄の言う円錐のイメージにピッタリ一致したような気がしていた。
槍の先端を頂点として、自分の身体を底面とし円錐を作る。
敵がどのように打ってきたとしても、頂点の槍で、敵の攻撃を往なし、ドリルのように直進し相手を打つ。
直進すれば、するほど、相手の槍の軌道がそれていき、同時に相手の懐に入っていく。
これが攻防一体の原理でありコツであると虎之助は考えたのである。
そんな事を考えながら、立ち合いをしていると、胤栄が終了を告げた。
『虎之助殿、終いじゃ、立ち合い及び、短かったが我々との修業を終了とする!!』
『良く頑張った、ワシらが教えたい基本を良く学んでくれた、これからも、その基本を元に精進して下され。』
『免許皆伝という、大層なモノは無いが、お主との修業楽しかったぞ。』
胤栄の突然の修業終了宣言に、虎之助は驚いた。
時刻は未だ昼前である。御前試合が1週間後に迫り、明日には美濃へ出発する事になっていた。
虎之助は最終日の今日も何時も通り夕方まで修業をするつもりだったので、とても驚いた。
『胤栄様、お言葉有難く、しかし、未だお昼前ですが・・夕方までお付き合い願えませんか?』
と虎之助は、胤栄の終了宣言に異を唱える訳では無かったが、補講をせがむ学生の様に訓練の延長を願い出たのである。
『明日、美濃へ旅立つのじゃ、半日でもゆっくりしなされ、休む事も修業同様大事じゃよ!』と優しい声で諭す様に、伝える胤栄。
『虎之助、せっかくの言葉だぞ、明日から暫く、シノさんとも会えなくなるのだから、家に帰ってゆっくり話でもしろよ!!。』と、胤栄の心遣いを説明するように、才蔵が続ける。
『そうじゃ、そうじゃ、虎之助殿、たまには早く家に帰りなされ、この半年間よく頑張った。』とヒゲ殿が拍車をかける。
『胤栄殿、才蔵殿、ヒゲ殿は、まだまだ我らの修業に付き合って下さるので、今日はお前だけ先に帰れ!』と久次郎。
『俺らの修業の邪魔じゃ、早く帰れ!。』と力士が虎之助の迷いに止めを刺すように虎次郎へ命令した。
『・・・・。』
『判りました。皆さまがそこまで申されるのであれば・・・先に帰ります。半年間、大変お世話になりました。有難うございました。』
虎之助は、皆の物言いに引き下がるように、先に家に帰る事にしたのである。
突然、家に早く帰る事になり、シノが驚くだろうなと考えながら、虎之助は帰路についた。
家に帰ると、シノが掃除をいていた。案の定、虎之助を見ると、驚いた顔をして出迎えた。
『トラ殿、如何されました、おケガでもされたのですか?。』
この半年間で、ゆっくりと二人の距離は縮んでおり、それを表す様に、シノの虎之助への呼び方も変化していた。
虎之助殿から、トラ殿へ、シノが虎之助の呼び方を変えるのに祝言の日から3ヶ月、4ヶ月掛かっていた。
しかしこの合宿生活が無ければ、多分半年たった今でも、シノの呼び方は、虎之助殿のままだった事だろう。
この試練が、夫婦の距離を縮めていたのである。
『いえ、いえ、ケガはしておりません。』
『明日には、美濃へ立つ事になりますので、皆が今日は早く帰れと・・・。』虎之助は、シノへ状況を説明した。
状況を説明していると、虎之助の中に、半年間文句一つ献身してくれたシノへの感謝の思いがこみ上げてきた。
『シノ殿、半年間、私達を、いや私を支えてくれて本当に有難うございました。貴女の御蔭で、修業を終える事ができました。』
シノへ深々と頭を下げる虎之助を見て、シノが慌てふためいた。
『いえ、私は何もしてませんよ、ただ毎日ご飯作っていただけですよ、頭を上げて下さい。』とシノが言う。
頭を上げた虎之助が、半年間の御礼としてシノへ何かをあげたいのですが、欲しいものがあるかと質問した。
『お礼なんて・・・。』とシノが困った様にいい、困った顔をして暫し沈黙をする。
『そこまでおっしゃるのであれば、これから皆様の夜食と明日の朝食の材料を私と共に買いにいって下さい。重いモノも有りますので、持って下されば助かります。』とシノは照れた顔で虎之助へ伝えた。
『そんな事で良いのですか・・?』『良いのです!!』と虎之助の再確認に元気よくシノが答える。
『それでは、私お財布を持ってきますね』と、スッと虎之助の持って帰って来たモノを取り上げ、長屋に入っていった。
シノを待つほんの少しの間、虎之助は、買い物についていくだけで御礼になるのかと自問自答していたが、一つ閃いたのである。
『お待たせしました。さあ、行きましょうか。』と身支度をしてきたシノが長屋の戸締りをして出てきた。
シノが虎之助の傍まで来ると、『シノ殿、此方へ・・。』と、虎之助はシャガミこみシノを負んぶし(背負った)のである。
突然、負んぶされたシノはビックリしながら、『トラ殿、なんか恥ずかしいです。止めて下さい。』と言ったが、虎之助は聞かない。
『行きますよ!』と買い物する道をゆっくり小走りに歩き出したのである。
最初、恥ずかしがったシノであったが、虎之助が歩き出すと、幼い時に父片家に負んぶしてもらった頃の気持ちを思い出し、夫の突然のプレゼントにワクワクしながら喜んだのであった。
負んぶされて、春の風と共に飛び込んでくる景色を見ながら、シノは自分が船に乗って海をグングン進んでいる様な気持ちになった。
(トラ殿が船みたいに感じる、こんなに楽しい思いをするのは、何時以来だろう・・)、目的地に着くのが遅ければ遅いほど良いのにとシノは思ったのである。
二人はその日初めてデートしたのであった。
虎之助は、最近やっと胤栄が語る事の意味が分かり始めてきていた。
胤栄の槍術の考えの基本は、円錐のイメージと言う。
正直、初めは何をいっているのか虎之助はさっぱり理解する事ができなかった。
しかし、才蔵の水下に一撃を喰らわせてしまった日から、相手の懐に入るコツみたいなものを感じる事ができ始めた。
そのコツというのが、胤栄の言う円錐のイメージにピッタリ一致したような気がしていた。
槍の先端を頂点として、自分の身体を底面とし円錐を作る。
敵がどのように打ってきたとしても、頂点の槍で、敵の攻撃を往なし、ドリルのように直進し相手を打つ。
直進すれば、するほど、相手の槍の軌道がそれていき、同時に相手の懐に入っていく。
これが攻防一体の原理でありコツであると虎之助は考えたのである。
そんな事を考えながら、立ち合いをしていると、胤栄が終了を告げた。
『虎之助殿、終いじゃ、立ち合い及び、短かったが我々との修業を終了とする!!』
『良く頑張った、ワシらが教えたい基本を良く学んでくれた、これからも、その基本を元に精進して下され。』
『免許皆伝という、大層なモノは無いが、お主との修業楽しかったぞ。』
胤栄の突然の修業終了宣言に、虎之助は驚いた。
時刻は未だ昼前である。御前試合が1週間後に迫り、明日には美濃へ出発する事になっていた。
虎之助は最終日の今日も何時も通り夕方まで修業をするつもりだったので、とても驚いた。
『胤栄様、お言葉有難く、しかし、未だお昼前ですが・・夕方までお付き合い願えませんか?』
と虎之助は、胤栄の終了宣言に異を唱える訳では無かったが、補講をせがむ学生の様に訓練の延長を願い出たのである。
『明日、美濃へ旅立つのじゃ、半日でもゆっくりしなされ、休む事も修業同様大事じゃよ!』と優しい声で諭す様に、伝える胤栄。
『虎之助、せっかくの言葉だぞ、明日から暫く、シノさんとも会えなくなるのだから、家に帰ってゆっくり話でもしろよ!!。』と、胤栄の心遣いを説明するように、才蔵が続ける。
『そうじゃ、そうじゃ、虎之助殿、たまには早く家に帰りなされ、この半年間よく頑張った。』とヒゲ殿が拍車をかける。
『胤栄殿、才蔵殿、ヒゲ殿は、まだまだ我らの修業に付き合って下さるので、今日はお前だけ先に帰れ!』と久次郎。
『俺らの修業の邪魔じゃ、早く帰れ!。』と力士が虎之助の迷いに止めを刺すように虎次郎へ命令した。
『・・・・。』
『判りました。皆さまがそこまで申されるのであれば・・・先に帰ります。半年間、大変お世話になりました。有難うございました。』
虎之助は、皆の物言いに引き下がるように、先に家に帰る事にしたのである。
突然、家に早く帰る事になり、シノが驚くだろうなと考えながら、虎之助は帰路についた。
家に帰ると、シノが掃除をいていた。案の定、虎之助を見ると、驚いた顔をして出迎えた。
『トラ殿、如何されました、おケガでもされたのですか?。』
この半年間で、ゆっくりと二人の距離は縮んでおり、それを表す様に、シノの虎之助への呼び方も変化していた。
虎之助殿から、トラ殿へ、シノが虎之助の呼び方を変えるのに祝言の日から3ヶ月、4ヶ月掛かっていた。
しかしこの合宿生活が無ければ、多分半年たった今でも、シノの呼び方は、虎之助殿のままだった事だろう。
この試練が、夫婦の距離を縮めていたのである。
『いえ、いえ、ケガはしておりません。』
『明日には、美濃へ立つ事になりますので、皆が今日は早く帰れと・・・。』虎之助は、シノへ状況を説明した。
状況を説明していると、虎之助の中に、半年間文句一つ献身してくれたシノへの感謝の思いがこみ上げてきた。
『シノ殿、半年間、私達を、いや私を支えてくれて本当に有難うございました。貴女の御蔭で、修業を終える事ができました。』
シノへ深々と頭を下げる虎之助を見て、シノが慌てふためいた。
『いえ、私は何もしてませんよ、ただ毎日ご飯作っていただけですよ、頭を上げて下さい。』とシノが言う。
頭を上げた虎之助が、半年間の御礼としてシノへ何かをあげたいのですが、欲しいものがあるかと質問した。
『お礼なんて・・・。』とシノが困った様にいい、困った顔をして暫し沈黙をする。
『そこまでおっしゃるのであれば、これから皆様の夜食と明日の朝食の材料を私と共に買いにいって下さい。重いモノも有りますので、持って下されば助かります。』とシノは照れた顔で虎之助へ伝えた。
『そんな事で良いのですか・・?』『良いのです!!』と虎之助の再確認に元気よくシノが答える。
『それでは、私お財布を持ってきますね』と、スッと虎之助の持って帰って来たモノを取り上げ、長屋に入っていった。
シノを待つほんの少しの間、虎之助は、買い物についていくだけで御礼になるのかと自問自答していたが、一つ閃いたのである。
『お待たせしました。さあ、行きましょうか。』と身支度をしてきたシノが長屋の戸締りをして出てきた。
シノが虎之助の傍まで来ると、『シノ殿、此方へ・・。』と、虎之助はシャガミこみシノを負んぶし(背負った)のである。
突然、負んぶされたシノはビックリしながら、『トラ殿、なんか恥ずかしいです。止めて下さい。』と言ったが、虎之助は聞かない。
『行きますよ!』と買い物する道をゆっくり小走りに歩き出したのである。
最初、恥ずかしがったシノであったが、虎之助が歩き出すと、幼い時に父片家に負んぶしてもらった頃の気持ちを思い出し、夫の突然のプレゼントにワクワクしながら喜んだのであった。
負んぶされて、春の風と共に飛び込んでくる景色を見ながら、シノは自分が船に乗って海をグングン進んでいる様な気持ちになった。
(トラ殿が船みたいに感じる、こんなに楽しい思いをするのは、何時以来だろう・・)、目的地に着くのが遅ければ遅いほど良いのにとシノは思ったのである。
二人はその日初めてデートしたのであった。
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