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#6 今すぐ逃げよう そうしよう
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ファーストキス…それは女の子なら誰しもが一度は妄想する一大イベント。
壁ドンからのキスだったり、花火大会で一際大きな花火が打ち上がった時に交わされるキスだったり。
そう!とにかくロマンチックなんですよ!!唇が重なる瞬間のドキドキや、キスが終わった後の気恥ずかしさから、お互い俯いたり…
そんな経験一度もないですけどね!!!
28年間枯れたまま、そんな 甘酸っぱい事なんかした事ないですがね!!!
まぁ逃げたり人間関係リセットしまくったから自業自得なんですけどね。
だからそれがどうしてこうなった…
ルナは、げんなりとした表情で鏡を見つめる。侍女が用意したドレスを身に纏い鏡で確認すると、首筋から鎖骨にかけて無数に散らばるキスマーク。
嫌でも先程レイトにされた行為を思い出してしまい頬に熱が集まる。
「天然タラシは恐ろしいわ…」
恨めしそうに口にするルナ。気を取り直すと現状を整理してこれからの行動を考える。
まず気配察知と消す事に関して。これはあと1ヶ月でどうにかなるレベルではない。護衛と思われるジェイクにすら気付かれ、更にルナはジェイクの気配を察知出来なかった。
そしてレイトに至ってはジェイクの後ろに居たにも関わらず気付かない有様。
あとはルナが城内で魔法を使っていた事に気付いている点。しかも回復魔法、風魔法を使っていたという事まで察知している。
「空を飛べるようになったって逃げられる気がしないわ…」
暫く考え込み、ルナはステータスを確認する。闇魔法の初級とかはどんな魔法なのか?中級で姿を消せるなら、上級とかは姿を変えられるとか?
そんな事を考えて、ふと閃く。
「例えば変装とか出来ないかしら。髪の毛の色を変えるとか。あ、でも魔法使ったら察知される…」
う~ん…と腕を組み考える。空間魔法…アイテムボックスに私自身が入れたら、その空間で魔法を使ってもバレない?いやいや、出れなくなったら怖いから無理だ。そもそも人間が入れるのかも疑問だ。
この部屋に結界を張る。これだ!!部屋単位だと逆にバレてしまうから、範囲は私から半径1m以内で。
その1m以内に魔法を発動させればバレない。多分。
部屋単位での結界ではないから気付かれにくいはず。
早速結界を張ってみる。自分から半径1m位までを薄い幕で覆うようなイメージで。目を瞑りイメージする。ぼんやりとイメージが湧いてくれば後は形にするだけ。
「出来た…多分。これ成功だよね?」
いかんせん自分では効果は確認出来ないのが難点である。しかし成功したと思って次の段階に入る。
「えーと、茶髪になりたい!あと瞳の色も茶色で!」
無難そうな色を選び念じる。それはもう必死な位に。これが成功しなければ…
恐ろしい考えが脳裏を過りルナはブルリと身体を震わせた。
茶色になってー!!茶色ー!!私の人生がかかっているんだー!!お願いします神様仏様!!
普段お祈りなどしないルナ。まさしく“困ったときの神頼み”状態だ。
ひとしきり念じて鏡を覗く。
「成功したぁぁぁー!!!」
ルナの喜びは誰に聞かれるでもなく結界内で消えていった。
これは…きましたわ~。私の時代がっ!!
おたずね者になったとしても髪の毛の色を変えられるなら、逃げる事は容易くなる。
あとは、この城から逃げ出す方法…。侍女に変装して抜け出す。城から出たら元々着ていたワンピースに着替えれば完璧!!
決行は今。まさかあれだけ釘を指された直後に逃げ出すとは思わないだろうから。
善は急げとばかりに侍女の待機部屋に忍び込み服を拝借。髪の毛を結ぶゴムも拝借。すみません。
自室に戻ると早速侍女の服に着替えて髪の毛を三編みにする。これで地味な侍女に大変身。
気配は消さずに堂々と歩く。万が一ジェイクさんに見つかったらかなりマズイ…というか詰む。
俯き加減で歩きつつ門へと無事に到着。問題はここからだ。
「あの、王子の婚約者様からのご命令で町に買い出しに出たいのですが」
「む、そうなのか。ご苦労。」
門番はそう言うと閂を持ち上げ門を開いた。
「気を付けて」
「ありがとうございます」
ペコリとお辞儀をして歩き出す。門が閉まるまでは走るのは我慢する。
ギギギ…と鈍い音がした後にガシャン、と閉まる音がした。チラリと後ろを振り返れば入り口に配置された門番が一人。
これはもっと離れないとダメだな、と思い冷静を装って歩いて行く。門番が見えなくなる所まで歩いたルナは、物陰に隠れると手早く着替えをした。
「っ…やったぁー!!!」
安堵の息を洩らし思わずガッツポーズをする。町はここから少し行った所にあるはずだ。侍女や兵士から城下町について、ほんの少しだけ聞いていたから不安はない。
足取り軽くルナは町へと向かうのだった。
「レイト様、よろしいのですか?」
執務室で書類にサインをしている主に声をかけるジェイク。レイトは書類から目を離さずに口角を上げる。
「何処に居ても分かるから問題はない。無理矢理閉じ込めておいても、いずれは抜け出すだろうしな。暫くは好きにさせる」
「左様で。護衛は如何しますか?」
「ルナより強い者は早々居ないだろうが、念の為クロードをつけてくれ」
「畏まりました」
「ジェイク」
執務室から出ようとしたジェイクをレイトは呼び止める。
「何でしょうか?」
「…魔王が復活した」
レイトの言葉にジェイクは目を見開く。
「それでクロードを護衛につけたのですね」
「ああ。人間相手なら問題無いだろうが、今のままでは魔物相手に手子摺るだろうからな。魔王復活を理由に国王には婚約延期を伝える。俺は暫く魔王の動向を探るからルナの事は任せたぞ」
「この身に代えてもお守りします」
ジェイクはそう言うと敬礼して執務室を後にした。
「1000年も待ちわびたんだ。他の男にも、魔王にも渡す訳にはいかない」
書類にサインをしながら、どうしたものか…と思考を巡らせるレイトだった。
城を出て少しすると町が見えてくる。ルナは念の為気配を消して町に入る。色々な店や屋台が建ち並び人々は活気に溢れている。
鼻孔を擽るようないい香りに目を向けると串にささった肉を焼いている屋台があった。
「お腹すいたな…」
そう言えば朝からゴタゴタしてて録に何も食べていない。まぁそのゴタゴタは自分のせいなのだけれども。クゥ…とお腹が鳴ってルナは思わず苦笑した。
「兎に角、お金を稼がないと!先ずはギルドへ行って依頼をこなさなきゃ!」
勇み足でギルドへと向かう。文字を読めるようになったから、看板を見つつギルドを探した。暫くすると少し古い建物が目に入る。かなり年季が入った建物だ。どうやらここがギルドらしい。
ここからは気配を消すのを止めてから入り口を開いた。
活気あるロビーには屈強な男や、ロッドを持った見目麗しい女性など様々な人で溢れている。ルナは目立たないよう受付へと行くと可愛らしい女性に声をかけた。
「あの、冒険者になりたいのですが」
「はい。初めての方ですね。では何か身分証はございますか?」
「み、身分証…いえ、持っていないです」
「そうですか…う~ん、そうなると保証金として中銀貨2枚がかかりますが」
「えっ…そうなんですか…私お金を持っていなくて…」
困ったように俯くルナを受付嬢はチラ見する。白いワンピースに気付いた瞬間、ハッとした表情になった。
「すみません、このまま少々お待ち下さいね。」
そう言うと受付嬢はバタバタと奥へ入る。10分程待たされただろうか。ルナの元へ受付嬢が戻ってきた。
「ごめんなさいね。お待たせして。こちらが貴女のギルド証明書になるわ」
チャリ…とトレーにシルバーのドッグタグを置かれる。
「え、でも私お金も身分証も…」
「大丈夫です。さぁ、このドッグタグに魔力を流して下さい」
言われるがまま魔力を流す。するとドッグタグは光輝く。光が治まってドッグタグを見るとルナの名前が刻まれていた。
「はい。これで登録は終わりです。あとは受ける依頼をあちらのボードから探して受付に渡して下さいね。何か分からない事があれば何でも聞いて下さい」
ありがとう、と受付にお礼を言いルナはボードへと向かう。
…いやいやいや、絶対レイト様の手回しだよね!?
身分証か、お金が必要って言ってたのにいきなり要らないとかあり得ないでしょ!?
逃げ出すのは想定済みなのね…
そして 取り敢えずは連れ戻さないって事なのね。まぁ有りがたく好き勝手やらせてもらうわ。
「ガンガンレベル上げて余裕で逃げられるようにしないと!!」
ルナはそう言うと薬草の採取依頼の紙を受付へと持っていく。
「初クエスト、緊張するな…」
少し不安はあるが、気持ちを新たにルナは気合いを入れるのだった。
壁ドンからのキスだったり、花火大会で一際大きな花火が打ち上がった時に交わされるキスだったり。
そう!とにかくロマンチックなんですよ!!唇が重なる瞬間のドキドキや、キスが終わった後の気恥ずかしさから、お互い俯いたり…
そんな経験一度もないですけどね!!!
28年間枯れたまま、そんな 甘酸っぱい事なんかした事ないですがね!!!
まぁ逃げたり人間関係リセットしまくったから自業自得なんですけどね。
だからそれがどうしてこうなった…
ルナは、げんなりとした表情で鏡を見つめる。侍女が用意したドレスを身に纏い鏡で確認すると、首筋から鎖骨にかけて無数に散らばるキスマーク。
嫌でも先程レイトにされた行為を思い出してしまい頬に熱が集まる。
「天然タラシは恐ろしいわ…」
恨めしそうに口にするルナ。気を取り直すと現状を整理してこれからの行動を考える。
まず気配察知と消す事に関して。これはあと1ヶ月でどうにかなるレベルではない。護衛と思われるジェイクにすら気付かれ、更にルナはジェイクの気配を察知出来なかった。
そしてレイトに至ってはジェイクの後ろに居たにも関わらず気付かない有様。
あとはルナが城内で魔法を使っていた事に気付いている点。しかも回復魔法、風魔法を使っていたという事まで察知している。
「空を飛べるようになったって逃げられる気がしないわ…」
暫く考え込み、ルナはステータスを確認する。闇魔法の初級とかはどんな魔法なのか?中級で姿を消せるなら、上級とかは姿を変えられるとか?
そんな事を考えて、ふと閃く。
「例えば変装とか出来ないかしら。髪の毛の色を変えるとか。あ、でも魔法使ったら察知される…」
う~ん…と腕を組み考える。空間魔法…アイテムボックスに私自身が入れたら、その空間で魔法を使ってもバレない?いやいや、出れなくなったら怖いから無理だ。そもそも人間が入れるのかも疑問だ。
この部屋に結界を張る。これだ!!部屋単位だと逆にバレてしまうから、範囲は私から半径1m以内で。
その1m以内に魔法を発動させればバレない。多分。
部屋単位での結界ではないから気付かれにくいはず。
早速結界を張ってみる。自分から半径1m位までを薄い幕で覆うようなイメージで。目を瞑りイメージする。ぼんやりとイメージが湧いてくれば後は形にするだけ。
「出来た…多分。これ成功だよね?」
いかんせん自分では効果は確認出来ないのが難点である。しかし成功したと思って次の段階に入る。
「えーと、茶髪になりたい!あと瞳の色も茶色で!」
無難そうな色を選び念じる。それはもう必死な位に。これが成功しなければ…
恐ろしい考えが脳裏を過りルナはブルリと身体を震わせた。
茶色になってー!!茶色ー!!私の人生がかかっているんだー!!お願いします神様仏様!!
普段お祈りなどしないルナ。まさしく“困ったときの神頼み”状態だ。
ひとしきり念じて鏡を覗く。
「成功したぁぁぁー!!!」
ルナの喜びは誰に聞かれるでもなく結界内で消えていった。
これは…きましたわ~。私の時代がっ!!
おたずね者になったとしても髪の毛の色を変えられるなら、逃げる事は容易くなる。
あとは、この城から逃げ出す方法…。侍女に変装して抜け出す。城から出たら元々着ていたワンピースに着替えれば完璧!!
決行は今。まさかあれだけ釘を指された直後に逃げ出すとは思わないだろうから。
善は急げとばかりに侍女の待機部屋に忍び込み服を拝借。髪の毛を結ぶゴムも拝借。すみません。
自室に戻ると早速侍女の服に着替えて髪の毛を三編みにする。これで地味な侍女に大変身。
気配は消さずに堂々と歩く。万が一ジェイクさんに見つかったらかなりマズイ…というか詰む。
俯き加減で歩きつつ門へと無事に到着。問題はここからだ。
「あの、王子の婚約者様からのご命令で町に買い出しに出たいのですが」
「む、そうなのか。ご苦労。」
門番はそう言うと閂を持ち上げ門を開いた。
「気を付けて」
「ありがとうございます」
ペコリとお辞儀をして歩き出す。門が閉まるまでは走るのは我慢する。
ギギギ…と鈍い音がした後にガシャン、と閉まる音がした。チラリと後ろを振り返れば入り口に配置された門番が一人。
これはもっと離れないとダメだな、と思い冷静を装って歩いて行く。門番が見えなくなる所まで歩いたルナは、物陰に隠れると手早く着替えをした。
「っ…やったぁー!!!」
安堵の息を洩らし思わずガッツポーズをする。町はここから少し行った所にあるはずだ。侍女や兵士から城下町について、ほんの少しだけ聞いていたから不安はない。
足取り軽くルナは町へと向かうのだった。
「レイト様、よろしいのですか?」
執務室で書類にサインをしている主に声をかけるジェイク。レイトは書類から目を離さずに口角を上げる。
「何処に居ても分かるから問題はない。無理矢理閉じ込めておいても、いずれは抜け出すだろうしな。暫くは好きにさせる」
「左様で。護衛は如何しますか?」
「ルナより強い者は早々居ないだろうが、念の為クロードをつけてくれ」
「畏まりました」
「ジェイク」
執務室から出ようとしたジェイクをレイトは呼び止める。
「何でしょうか?」
「…魔王が復活した」
レイトの言葉にジェイクは目を見開く。
「それでクロードを護衛につけたのですね」
「ああ。人間相手なら問題無いだろうが、今のままでは魔物相手に手子摺るだろうからな。魔王復活を理由に国王には婚約延期を伝える。俺は暫く魔王の動向を探るからルナの事は任せたぞ」
「この身に代えてもお守りします」
ジェイクはそう言うと敬礼して執務室を後にした。
「1000年も待ちわびたんだ。他の男にも、魔王にも渡す訳にはいかない」
書類にサインをしながら、どうしたものか…と思考を巡らせるレイトだった。
城を出て少しすると町が見えてくる。ルナは念の為気配を消して町に入る。色々な店や屋台が建ち並び人々は活気に溢れている。
鼻孔を擽るようないい香りに目を向けると串にささった肉を焼いている屋台があった。
「お腹すいたな…」
そう言えば朝からゴタゴタしてて録に何も食べていない。まぁそのゴタゴタは自分のせいなのだけれども。クゥ…とお腹が鳴ってルナは思わず苦笑した。
「兎に角、お金を稼がないと!先ずはギルドへ行って依頼をこなさなきゃ!」
勇み足でギルドへと向かう。文字を読めるようになったから、看板を見つつギルドを探した。暫くすると少し古い建物が目に入る。かなり年季が入った建物だ。どうやらここがギルドらしい。
ここからは気配を消すのを止めてから入り口を開いた。
活気あるロビーには屈強な男や、ロッドを持った見目麗しい女性など様々な人で溢れている。ルナは目立たないよう受付へと行くと可愛らしい女性に声をかけた。
「あの、冒険者になりたいのですが」
「はい。初めての方ですね。では何か身分証はございますか?」
「み、身分証…いえ、持っていないです」
「そうですか…う~ん、そうなると保証金として中銀貨2枚がかかりますが」
「えっ…そうなんですか…私お金を持っていなくて…」
困ったように俯くルナを受付嬢はチラ見する。白いワンピースに気付いた瞬間、ハッとした表情になった。
「すみません、このまま少々お待ち下さいね。」
そう言うと受付嬢はバタバタと奥へ入る。10分程待たされただろうか。ルナの元へ受付嬢が戻ってきた。
「ごめんなさいね。お待たせして。こちらが貴女のギルド証明書になるわ」
チャリ…とトレーにシルバーのドッグタグを置かれる。
「え、でも私お金も身分証も…」
「大丈夫です。さぁ、このドッグタグに魔力を流して下さい」
言われるがまま魔力を流す。するとドッグタグは光輝く。光が治まってドッグタグを見るとルナの名前が刻まれていた。
「はい。これで登録は終わりです。あとは受ける依頼をあちらのボードから探して受付に渡して下さいね。何か分からない事があれば何でも聞いて下さい」
ありがとう、と受付にお礼を言いルナはボードへと向かう。
…いやいやいや、絶対レイト様の手回しだよね!?
身分証か、お金が必要って言ってたのにいきなり要らないとかあり得ないでしょ!?
逃げ出すのは想定済みなのね…
そして 取り敢えずは連れ戻さないって事なのね。まぁ有りがたく好き勝手やらせてもらうわ。
「ガンガンレベル上げて余裕で逃げられるようにしないと!!」
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