転生したってリセット癖は治らない

佐倉 奏

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#9 レベルと練度を上げます。

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   今日の目的は魔物を倒す事。服はリリーさんから貰ったので後は刃物を調達しなければならない。昨日の森での散策で刃物は重要だと思い知ったからだ。

   武器屋へ足を踏み入れると、所狭しと様々な武器が並んでいる。細身の剣や大剣、ハンマーや弓。小型の短剣など、豊富な種類が陳列されている。

   剣や弓を使いこなせる気がしないから、小刀的なのを探す。携帯砥石なんかもあれば便利かもしれない。
   ウロチョロしているとかなりの筋肉マッチョな店主が声をかけてきた。

「嬢ちゃん、どんなのを探してるんだ?」

「あ、えっと私は魔法で戦うんですが、野宿とかになった時に色々使える小刀みたいなのが欲しくて」

「冒険者になったばかりか。それならこれなんかどうだ?」

   そういうと店の奥からゴソっとリュックを持ってくる。そのリュックをカウンターへ置くと中身を取り出していく。

「このリュックに入っているのは初心者セットだ。まずは万能小刀。細い枝なんかすぐ切れる。魔物の解体にも持って来いだ。小さいから嬢ちゃんにも扱いやすい」

「なるほど」

「で、携帯砥石。切れ味が悪くなったらこれで研げばいい。後は水筒。蓋の部分にはコップがついてる。それにコッヘルだな。野外料理には必需品だ」

   まさかこっちの世界にもコッヘルがあるとは。いや、こっちの世界だからこそ必需品なのかな。冒険して野宿なんてザラだろうし。
   コッヘルは野外用の持ち運べる調理器具だ。蓋の部分がお皿代わりになる。コンパクトに纏められるからアウトドアには必需品だ。

「これは便利ですね。代金はどれ位ですか?」

「中銀貨3枚だ」

「う~ん…もうひと声!」

「何ぃ!?…これでもギリギリの設定なんだぞ」

「あそこのショーケースにある包丁とかオマケでつけてくれないかなぁ~。小刀で料理はやりにくいから包丁は別で欲しいんだよなぁ~」

「くっ…嬢ちゃんやるじゃないか…仕方ない、包丁はオマケでつけてやる」

「おじさん…いや、お兄さん素敵ー!!」

「全く調子がいいな」


   そんなこんなで冒険の支度は恙無く終わり、ギルドへと向かう。初心者セットが入っているリュックはアイテムボックスへ。身軽に出来るのが便利だ。
   そう言えばスプーンとかも買わないと。途中の雑貨屋にあるかな?

   雑貨屋へ寄りつつギルドへ着くといつもの騒がしさはない。もう昼時だから皆クエストにでも行ってるのだろう。
   依頼の貼ってあるボードを見る。今日は採取ではなく討伐の依頼を受けたい。今から行くと多分夜営する事になるだろう。
   今日夜営してみて何か足りない物があれば随時買い足していけばいい。

 


   スライム討伐。最低5匹以上から。1匹につき中銀貨1枚。
   

   うん、これなんかお手軽そう。スライムってRPGでも初期に出てくるレベル上げようの魔物だし。
   そう思い依頼の紙を剥がそうとして、その手を止められた。

「…クロードさん、何のつもりですか?」

「貴女があまりにバカなので止めたまでです」

「そのバカって言う理由を聞いても?」

「スライムの討伐はレベル5が推奨です。貴女はまだレベル1でしょう?」

「は?スライムやっつけるのにそんなにレベルが必要なの?」

「依頼にも書いてありますが?」

   クロードに言われて依頼書を見ると確かに下の方に書いてある。

「う~ん…そんなに強そうに思えないんだけどなぁ」

   他の依頼書を見ていくと推奨レベル1の相手は野ウサギだった。どうやら野生の小動物がレベル1の推奨クエストみたいだ。

「…可哀想すぎて倒せないからスライムで」

   そのままスライム討伐の依頼をカウンターへと持っていき手続きを済ませる。
   後ろでクロード様の盛大なため息が聞こえたが、華麗にスルーした。私、スルースキルなら高いんですよ。


   
   昨日入った森へと歩く。今日は昨日通ったルートとは別のルートへ行こうと思う。すぐに使えるよう、小刀、水筒は肩掛けのバッグへ。水魔法が使えるから水には困らないとは思うけど、何せまだ水魔法を使った事がないから念の為だ。
   
    木に目印をつけながら森の奥へと進む。途中野ウサギやリスを見かけた。
   …あんな可愛いの殺すとか無理!!そりゃあ食料に困ったら捕獲するだろうし、料理として出されたら食べるけど、今はそんな切羽詰まった状況ではないし、野ウサギの料理を出された訳でもない。
   だから私が殺す必要もない。

   さて、私はただ闇雲に歩いている訳ではありません。城を出てからずっと隠密スキルを発動させながら歩いています。勿論、お店に入る時などは解除してるけど。
   そんな私の隠密スキルが中級へとアップしていたのに今朝気付いた。だから試したい事があった。

   それはクロードの気配を察知出来るのか。
   何の気なしに歩きながら気配を探ってみる。うん、分からないわ。そうだよね。護衛につける位だもんね。上級じゃないと察知出来ないよね。
   分かっていたけど何だか凹む。そんな時、前方に何かの気配を察知した。気配の数は1つだ。

   自分の気配を消しつつ大回りしてコッソリと裏から見てみる。するとそこには…スライムが一匹。


「なんだか…想像してたのと違う…」

   某RPGのスライムを想像していたルナは目の前のグチョグチョした物体に顔をしかめる。取り敢えず魔法で攻撃してみようと思い、手をかざす。

「えーと、火でスライムを燃やし尽くすイメージで。スライムが死んだ時に落とす魔石は残るイメージ」

   目を瞑りながらうーん、と考え込む。スライム全体を包み込むような炎。周りの物には燃え移らないように…


   瞬間、ボッとスライムが燃え上がりそして消える。スライムが居た場所には小さな赤い魔石が落ちていた。

「出来たー!でも発動までに時間がかかりすぎてるな。これじゃ無詠唱の意味がないし。何度も練習して発動時間を短縮させよう」

   気配察知を駆使してスライムを探し出す。そして火、風、水魔法を全て試していく。

「うん、何となくコツは掴めてきたかな。今日はこの辺で野宿しよう」

   魔物除けの結界的なのは空間魔法なのか?それとも聖魔法?よく分からないが、多分私が展開する魔法は詠唱もいらずイメージで発動させてるから深く考えるのはやめた。
   目を閉じると魔物が入れない空間をイメージする。これが出来なければ野宿の危険度がかなり上がるので、何としても成功させたい。

「うん…多分成功?」

   一応手応えらしきものはあった。結界をイメージした範囲の辺りが一瞬光ったからだ。

「後は…人も入れないようにしたい。」

   盗賊とかに見つかったら厄介だ。魔物避けの結界に重ねるように人避けの結界を展開する。こちらも一瞬だけ光った。多分成功?

「クロードさぁーん!!あ、来てくれないとレイト様に…」

   ザッ…ザザザ

「こんばんわ」

「いい度胸してるな」

「まあまあ。クロードさんにも重要な事です。クロードさん、この結界の中に入れますか?」
  
    ルナの言わんとしている事を理解し、クロードはルナの方へと進む。一瞬眉間に皺を寄せるクロード。グッと空間を歪ませられる感覚に襲われ、難なくルナの目の前に立った。

「ああ、やっぱりクロードさんレベルには通用しないですか」

「このレベルの結界を破れる者は早々居ないから安心しろ」

「そうですか。あ、これから夜ご飯を作るんですが良かったら食べて行きません?」

「遠慮し」

「ああ~レイト様に言」

「…ご馳走になる」

「最初から素直になればいいんですよ」

   ルナの言葉にピクリと顔を歪ませるクロード。そんなクロードに気付きながらもルナは気にせず言葉を続けた。

「どうやら近くにイノシシが居るみたいなので狩りに行ってきます。クロードさんはここで待っていて下さい」

「イノシシを解体出来るのか?」

「出来ないからクロードさんに教わろうと思って夕飯をお誘いしたんですよ?」

   ルナはニコっと笑うとイノシシの気配の方向へと消えていった。

あのお方レイトの想い人は規格外だな…」

   クロードはそう呟くとルナに何かあった時にすぐ動けるよう神経を張り巡らせるのだった。
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