見切り教育

ラッキーセヴァン

文字の大きさ
32 / 93
9月2日

原 悠介

しおりを挟む

私と一緒にいる男、原 悠介は若干19歳にして世界に通用するヤクザ「龍頭組」の第一幹部を務めるという鬼才っぷりを発揮している。

しかし、そんな彼にも昔は別の夢があったらしい。

「ゆうちゃんねー、大きくなったらおまわりさんになりたい!」

彼は幼い頃から人一倍正義感が強く、周りの人達に分け隔てなく接する様な人だった。だから強くて優しい警察官は彼にとって憧れでもあり、ヒーローでもあり、うってつけの職業だったというわけだ。そして彼はコツコツと必死に勉強に取り組んだ。

しかし、彼に転機が訪れる。

「よっしゃ!俺、徒競走一位だぜ!」

「俺二位だった!おい、悠介はどうだった?」

「・・・俺四位だった。」

「えー!?おっせえの!!」

小学校に入学してからこの様に周りと比較される様になったのだ。それでも彼は勉強に加えてスポーツも必死に努力して取り組んだ。

しかし、現実はそう甘くないと学年が上がるに連れて原は思い知らされた。

(よし!今回のテストは87点だ!結構いいぞ!)

「テストどうだったー!?俺96点!」

「やるじゃん!俺92点!」

「まあ今回のテスト結構簡単だったもんねー!」

「なあ!悠介はどうだった?」

「おっ、俺もそれぐらい!」

「お前いっつも答案見せてくれねえよな。見せろよ!!」

「あっ!!」

「・・・えー!!87点!?バカすぎるでしょ!!」

「お前全然勉強してねえだろー!!」

「ま・・・まあな。」

(何言ってんだよこん畜生。でも俺ならまだやれるはず。)



(・・・リレー選手補欠かぁ。まあ今までは入れなかったし上出来か。)

「すごーい!!田中くんまたリレーのアンカー?」

「カッコいい!!」

「ありがとー!!悪いな原、俺は休まねえぜ!」

(・・・まだまだ!)

原は自分の無力さを思い知らされていった。それでも彼は持ち前のポジティブさで諦めずに寝る間も惜しんで勉強した。

しかし、そんな彼に追い討ちをかける出来事が訪れた。

中学2年生のあくる日、将来の夢をクラスで発表する事になった。そして原の番が回ってきた時だった。

「では原くん、発表してください。」

「はい!よろしくお願いします。

僕の将来の夢は警察官になる事です!!」

・・・・・・。

(えっ?何だよ。俺なんか変な事言った?)

「「「あはははははははは!!」」」

「・・・何で?」

「無理に決まってんだろー!」

「そんなに勉強もできねえのに!?」

「スポーツだって言うほど出来ないじゃん!」

「笑わせないでよ!!」

(畜生、悔しい・・・!でも!)

「へっ!そう言っていられるのも今のうちだ!絶対にもっと頭良くなってスポーツもできるようになって、警察官になってやる!!」

「そもそもおまえんち貧乏だろ?高校行けんのかよ!」

原の家は私と変わらないくらい貧乏だった。しかし、性格が明るく、虐められずに済んだのだ。

「そこまで貧乏じゃねえよ!それぐらいの金持っとるわ!」

「「「あはははは!!」」」

こう言った感じでその場はやり過ごしたらしい。

家に帰ってからいつものように勉強をしていると、原は急に話があると父親に呼び出された。何か嫌な予感がしたという。

「親父!何だよ話って!」

原は笑顔で父の元へ駆け寄った。

「すまない。落ち着いて聞いてくれ。父さんは・・・



お前を高校へやれない。」

まさかあの男子が言った事が本当になるなんて。原はしばらく黙ってから態度を変えずに聞いた。

「どういうことだよ?」

この時、若干声が震えていたかもしれないと原は振り返る。そして、申し訳無さそうに原の父親は言った。

「父さんの会社、差し押さえられる事になった。職を失ったんだ。」

「いやいや、どうして急に?」

「会社の連中が身分が低い奴ばっかでな、上手くいかなかったんだ。

ごめんな、父さんがダメだったばっかりに。」

全てを理解した原は何故か膝を床に付いていたという。今まで積み上げてきたものがぶち壊された音がした。そして笑顔がどんどん崩れていき・・・ 


「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。

うわあああああああああ!!!」


何か訳の分からない事を叫びながら原は家を飛び出した。その後手当たり次第に電車に乗りまくり、12時を過ぎる頃にはギラギラ光る店が沢山ある都会に着いていた。そこでは汚いおっさんとケバいメイクをした女が腕を組んで歩いていたという。

やばいな。これ。

原は身の危険を感じてそこを引き返そうとした。しかし、あと一息遅かった。原は刺青をした30代ぐらいの男に腕を掴まれた。

「おい坊主、何だこんな時間に。」

「テメェには関係ねえだろ!?離せオラァ!!」

「口答えすんじゃねえよ。」

「ひっ!!」

ピストルを向けられた。

「一緒に来てもらう。」

そして原はなす術も無く、ヤクザのアジトへ連れて行かれてしまい、そのままヤクザになったという。

「ヤクザはさあ!警察よりも大きな組織で!今みたいに世界を救う事だって出来ちゃうんだぜ!?」

「・・・ふーん、そうなんだ。それは凄いね。凄いけどさあ、こんな事聞いちゃアレだけど、お父さんとお母さんには再開した事、あるの?」

「・・・一度も無い。」

「寂しく無いの?」

「・・・まあ過ぎた事だ。でもそのお陰で俺は世界に轟くヤクザになれたんだぜ!」

「努力は無駄にならなかった?」

「それはならなかったよ。ヤクザだって頭良く無いとやっていけないんだ!あと努力したお陰で体術使えるし、幹部にもなれたんだぜ!」

「・・・クラスの奴らの事、見返せたって思う?」

「うーん、見返したいとは思わないな。だって人がどうだからじゃなくて、自分がどうしたいか、だろ?」

成る程。原はこういう経験を通して大物になったんだな。

「うどんごっそさん!こんな事してる場合じゃ無いぜ!」

え!?切り替え早!

「だってこの後・・・

偏差値が出るんだぜ!!」

き・・・きたああああああ!!












しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...