見切り教育

ラッキーセヴァン

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9月3日

消化器

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ぎゃああああああ!!

色々な所から断末魔の様な叫び声が聞こえる。いや、実際本当にそうな人も山ほど居るだろう。

私と原は必死に迫り来る火から逃げ続ける。背中には熱風を感じ、辺り一面に焦げ臭い火の粉や塵が舞っている。

「ねえ!!あとどれくらい逃げれば良いの!?」

「そうだな!椚田図書館まであと500メートルだ!」

「長っ!!どっか別の建物に逃げ込むのは駄目!?」

「いや駄目だ!逃げ込んだとしてもこの火を消し止めるまでは外に出られないから大幅なタイムロスになる!!てか建物に逃げたらそこも燃えるから危険だ!」

そんな事を言われてももう体力の限界!!

「・・・そうだ!!」

「何閃いたの!?」

「火をここにいるみんなで消し止めようぜ!!」

また突拍子も無い事言い始めた!

「無理に決まってんでしょ!?水も無いのにどうやって!!」

「いや、水ならあるぜ!」

原はまだ火が回っていない建物に指を指した。

「あの中には消化器が沢山備えてあるはず!だから今からみんなで取りに行って火を消すんだ!!」

成る程。だが、気がかりな事がある。

「周りの人達が聞いてくれると思う?」

この我を失った中高生には何を話しても無駄だろう。

「やるしかねえだろ!?消化器一個や二個じゃ消し止められる火じゃねえし!」

「本当にやるの!?」

「おう!だってこのままじゃ焼け死ぬぜ!!」

そうか。原がそこまで言うなら呼び掛けてみよう。このまま走り続けていても逃げられる気がしないからな。

私と原は早速、周囲の人に呼び掛け始めた。

「皆さん!!私達と一緒に消化器で火を消してくれませんか!!」

「お前らの力が必要なんだ!!」


「何言ってんのあいつら。」

「頭沸いてんじゃね?」

「やるわけねえだろバーカ!!」

周りの反応は私の思った通りだ。

「誰も聞いてくれねえな。」

「そりゃそうだって。」

「畜生!みんな何で協力してくれねえんだよ!!撃つぞ!!」

「ダメダメダメダメぜーったいダメ!!

・・・どうする?やっぱり走って逃げる?」

「うーん・・・。」

流石の原も諦めかけたその時だった。

「あの、これどうぞ!!」

一人の小学校二年生くらいの少女が駆け寄ってきた。

「私、持って来ました!!」

少女はうんしょと手に持った物を持ち上げて私にくれた。消化器だ。

「これ・・・わざわざ持って来てくれたの!?」

「うん!だってお兄ちゃんとお姉ちゃん、頑張ってたから!」

ああ、なんて心が優しいのだろうか。

「・・・ありがとう。」

「お姉ちゃん泣かないで!・・・あっ!そうだ!これあげる!」

少女は私に何かを手渡した。星型のペンダントだ。

「えへへ、お守りだよ!私、ほかにも探してくるね!」

「えっ!?でも・・・」

「大丈夫!またすぐ戻ってくるからね!」

少女はそのまま私達の元を走って立ち去っていってしまった。

しばらくすると、ある変化が起きた。

「俺たちも、持って来ました。」

振り向くと、中学生くらいの学ランを着た男子の集団がいた。手には消化器が握られてる。

「俺たちもあの子みたいに二人に協力したいなって思って。」

よかった。あの少女のお陰で気持ちが伝わった。

「私たちも持って来ました!」

「僕も!」

「ワシもじゃ!年寄りを見縊らないでおくれ!」

「俺たちも!!」

その後も色々な人が消化器を持って来てくれた。その数はざっと50にも及ぶだろう。

「みんな・・・!!俺らの為にわざわざありがとう!」

「良いって事よ!」

「二人とも凄いねえ。」

「まるでヒーローだね!」

「えへへ・・・」

がしゃああああああん!!

火の熱のせいで窓が割れる音が聞こえた。

「・・・もう時間がねえな。みんな構えて。」

原が真剣な表情で音頭を取った。私達は火の方向に体を向けて消化器を傾ける。


「さん!にー!いち!

いけえええええええええええ!!」

ごしゅううううううううううううう!!

私達は原の合図と共に消化器をぶっ放した。辺り一面が白く曇る。

火は大きくうねったり小さく縮んだりを繰り返した。

「おらあああああああああ!!」

私は消化器に意識を集中させて必死に踏ん張った。

お願い・・・消えて!!

すると一気に肌に感じる温度が冷たくなった。周りからシュッ!と消化器の中身が切れる音が小刻みに聞こえる。

私はゆっくりと前を見た。するとさっきまで見えなかった街の向こう側が見渡せる。

火が消えたのだ。

「「「やっ・・・やったあああああああ!!」」」

私達は手を取り合って喜んだ。

「助かったああああ!!」

「いええええええい!!」

良かった。助かって本当に良かった。

でも私には気になっている事があった。さっきの少女が見当たらない。

あの少女は一体、何処へ行ってしまったのだろう。













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