42 / 93
9月3日
椚田図書館
しおりを挟む火が消し止められた後、私達は真っ直ぐと椚田図書館へ向かう事になった。
原は私の横でタブレットを眺めながらスタスタと歩く。今回の大規模火災がもうネットのニュースのトップに載っているのだ。
「負傷者1000人の死者400人。火災の原因は中高生の一人が植木に向かってライターで放火した事だってさ。
・・・あ!!柳田図書館も壊滅だってよ!!」
「嘘でしょ!?」
「スタッフや中にいた奴らの安否はまだ不明らしい。・・・心配だな。」
それは今回の大規模火災を身を持って経験した私の想像を遥かに上回る惨劇だった。この小さな町でそんなに沢山の命が失われたなんて。
更に暫く歩いて行くと、豪勢な庭が着いた巨大な施設が見えてきた。
「うし、着いたな。」
「・・・着いたね。」
私達は何とか椚田図書館に到着した。ここ、椚田図書館は東京の中で最も大きな図書館だと言われており、1日での利用者は1500人を優に上回るという。
あの場所から500メートルほど苦労して歩いて来たが、私は素直に喜べなかった。何故なら門の前に信じられないほどの人だかりができていたからだ。
私と原は人混みを押し退けて綺麗な白い門をくぐった。すると図書館とは思えないほど大きな庭には大きなブルーシートが敷かれ、そこには顔を白い紙で覆われた沢山の人達が寝かされていた。この火災の犠牲者だ。
「酷い。」
「ああ、亡くなったのは中高生だけじゃなくて関係の無い年寄りや小さい子供も含まれてるんだって。」
ニュースを読んでいた原が顔をしかめながら言い、そして手を合わせた。
本当に関係の無い人達ばかりじゃない。何でこの人達が犠牲にならなきゃいけなかったの?ほら、私のすぐ近くにいる小さな女の子だって・・・
あれ?この子どっかで見た事あるな。
「優花!!」
後ろから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。そしてその女性は私が見ていた女の子に泣きついた。この子の母親か。
「ねえ優花!!どうして死んじゃったの!?いやあああああ!!」
可哀想に・・・。
すると、母親の横にいたレスキュー隊の人がこう言った。
「この子の上に覆い被さっていた瓦礫をどけたら、手には消化器が握られていました。正義感が強い娘さんだったのでしょう。大変無念です。」
え
消化器?
え?
じゃあまさかこの子って・・・。
「最後にお顔を見てあげて下さい。」
レスキュー隊の人が顔に被せてある紙を取った。すると・・・
全てを悟った私はただ黙ってその場に立ち尽くしていた。星型のペンダントを握り締めながら。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/23:『みこし』の章を追加。2025/12/30の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/22:『かれんだー』の章を追加。2025/12/29の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/21:『おつきさまがみている』の章を追加。2025/12/28の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/20:『にんぎょう』の章を追加。2025/12/27の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/19:『ひるさがり』の章を追加。2025/12/26の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/18:『いるみねーしょん』の章を追加。2025/12/25の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる