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9月3日
煙
しおりを挟む私達は男性スタッフに連れられて何とか図書館内の模試会場に辿り着いた。
「良かった!何とか間に合いましたよ。」
ハンカチで額の汗を拭いながらスタッフが言った。
「よ・・・良かったぁ。」
原がその場に座り込んだ。
「因みに、この後すぐに模試が行われるんですか?」
私は息を切らしながらスタッフに質問した。
「いいや、模試の時間は5時からだからそれまで勉強する時間を設けるよ。なんてったってここは図書館だからね。」
なんて気前が良い人なんだ。私は心の底から感謝した。
その後、私達はスタッフに受験番号を告げて勉強できる部屋に誘導された。その部屋の入り口は片開きのドアノブが付いている扉だ。
「この部屋は模試の時間まで好きに使っても良いからね。
じゃあ、健闘を祈る。」
ドンッ!!
「うわっ!」
「きゃっ!」
私達は突然、部屋の中に突き飛ばされた。前に倒れ込んだ時には後ろからガチャリと扉のロックが閉まる音がした。
「いったたたた・・・何すんのあのジジイ!」
「くっそ!急に何だろうな・・・
山口、暫くそのまま屈んでろ。」
何かを感じ取った原が急に真剣な顔で私に告げた。
「はあ!?何言ってんの?」
私は原の指示を無視して少しだけ顔を上げた。
「う゛っ!!」
突然、この世のものとは思えない程の腐臭が私を襲った。それと同時に白い大量の煙もモクモクと湧き出ている。
何なのこれ!?
「あらやだ、お部屋があっという間に煙だらけになってしまいましたわね。」
急に煙の向こうから中高生ぐらいの少女の声が聞こえた。
「早く換気しなきゃ目がチカチカしちゃうよぉ。」
「このままだと時間が押されてしまうぞ。」
続いて、また同年代くらいの少女と少年の声が聞こえた。
「さて、窓を開けますわよ!」
両開きの窓がガチャリと開く音が聞こえた。煙はあっという間に窓の向こう側に吸い込まれていく。
煙が次第に晴れていくうちに何か沢山の赤いものが見えてきた。
「ぐああああっ・・・」
「痛い・・・痛い・・・」
「誰か・・・助けて・・・」
「ヒイッ!」
それは体に大怪我を負った中高生だった。それも数え切れない程の。
「ふふっ、これでまた勉強が心置き無くできますわね。」
「そうだねぇ。」
「これで今回の模試もトップ3いただきだな。」
この目を覆いたくなる様な景色の中で、信じられない程に和気あいあいと話している三人組がいた。
あいつらは一体、何者なの?
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