見切り教育

ラッキーセヴァン

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9月3日

長机

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私は今、大きな本棚に息を潜めている。

あの二人を撒いてからしばらくして、絶対に見つからない様な大きな本棚を沢山見つけたからそこに隠れて、今に至るというわけだ。今のところ、ここにいればあいつらに痛い目に遭わされずに済みそうだ。でもいつまでもボケっとしている場合じゃない。すぐそこまでに模試の時間が迫って来ているのだ。

よーし、じゃあ早速ここで勉強を・・・あれ?えっ、うそ。

私は自分の周りを必死にまさぐる。無い。さっきまでずっと持っていた自作の暗記用ノートが無い。・・・そうだ。あいつらに追いかけられて逃げる時に向こうの長机に置いて来たんだった。私は様子を伺う為にゆっくりと長机がある方を本棚の隅から覗く。

・・・長机見えないやん。こんなの絶対途中で捕まるやん。どうしよう。諦めようかな。でもこのままだと模試受けられないし。よし。取りに行こう。もう当たって砕けろだ。

私は自分の真横に置いておいたリュックサックから覗いている鉄パイプをするりと取り出し、肩に構えた。そして長机に向かおうと再び本棚の隅から外に顔を覗かせたその時・・・

「みぃーつーけーたぁー。」

髪の毛を肩まで伸ばしたふわふわした雰囲気を放つ少女の顔が、どアップで私の目の中に映り込む。こいつは確か・・・

「・・・澤田。ねえ、お願い。止めて?」

ガクガクと身体の震えが止まらない。

「えー?何が止めてなのぉー?もしかしてぇー、こーゆーことぉ?」

澤田は私の腕を思いっきりガシッと掴んできた。

「あっつい!!」

痛い痛い痛い痛い。湯気出てる。赤くなってる。

「ねえ離して!離せって!」

「ごめんねぇー?本当はこういう事したくないんだけどぉ、伊集院ちんの為なんだぁー。」

「何が・・・何があいつの為だよ!!めちゃくちゃじゃねえか!!」

「えー?ごめんなさぁーい・・・。」

澤田がシュンとして下を向く。でも多分心の中では全く真逆の事を考えているだろう。

やばい。このままだと腕が千切れちゃう。何とかしないと。

・・・そうだ。

「因みにさあ、そのウイルス持ってたら、まともに模試とか受けられないんじゃないの?」

「ふぇっ?なんでぇ?」

「だってさあ、試験官の手とか触れたら、怪我とかさせちゃうでしょ?」

「あらぁ。それはないよぉー。だってねぇ、ウイルスは持っている人の意思で動いてくれるからぁ、普通に人に触れただけじゃ傷つかないんだぁ。」

「ふーん、そっかぁ・・・

ありがとよっ!!」ガツンッ!!

ズダダダダダダダ!!

隙を狙って私は片手で鉄パイプを持ち、勢い良く澤田の腕に振り下ろした。そして私は勢い良く長机に目掛けて走り出した。

「あ゛ぅ!!・・・あっ!分かったぁ!かくれんぼはもう飽きちゃったからぁー、追いかけっこ?追いかけっこがしたいんだねぇ?」

「やだ!!もう来ないで!!」

「言ったでしょぉ?邪魔するなら全力だってぇ!絶対負けないぞぉー!おー!」



「・・・いたいっ!!」

突然、背中に切られた様な激痛が走る。

「あははぁ!ほらねほらねぇ!凄いでしょぉ?離れてても私の意思でウイルスちゃん達はこんなにしっかり動いてくれるんだよぉ?分かったかなぁ?」

今はそんな事どうでも良い。私は痛みに耐えてただひたすらに走った。

早く。 早く早く。 早く向かわなければ。 机机机。

・・・見えた。さっきまで座っていた長机。

私は自分の顔がぱあっとほころんでゆくのが分かった。

「まてまてぇー!」

「ぎゃあっ!!」

そんな事も束の間で、また背中を強く切られた。その後も小刻みに同じところをスパスパと切られる。

「このままトドメだぞぉ!」ズパッ!

「ぎゃあああああああ!!あああ!!」

目的地までの残りの数メートルが嘘のように長く感じられた。





痛い。身体が思う様に動かない。澤田のウイルスのせいで私の身体はボロボロになってしまった。しかし、私は妙な安心感で満たされていた。とうとう長机に着いたのだ。

「暗記ノート・・・。あはは・・・。」

良かった。これでまた勉強が出来る。私は自分が暗記ノートを置いた場所を見渡した。・・・無い。・・・また無い?

「ふっふーん!お望みの物はこいつかな?」

「えっ!?」

声がした方を見ると河野が私の暗記ノートを片手に持って左右に振っていた。横では澤田がヘラヘラと笑っている。

「これで図書館は僕達のものだな!」

「誰にも譲らないよぉ。」

どさりっ

身体の力が一気に抜け、私はその場に座り込んだ。

私がやって来た事は結局無駄だったの?そんな・・・。

「ふふん!じゃあ!トドメを刺すぞ!」

「大丈夫ぅ!殺さないからぁ!」

「「くらえええええ!!」」

駄目だ。もうおしまいだ。

「待て。」

「え?」

「「ひいいいいいっ!」」

「ごめんなさい!」

後ろから原の声が聞こえてきた。しかし、いつもテンションが高い原ではあり得ない様な低くて落ち着いた声だ。

「てめえら

覚悟しろ。」




















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