見切り教育

ラッキーセヴァン

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9月3日

9月3日

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『9月3日午後10時になりました。ニュースをお知らせします。

午前8時頃、東京都良七市で中高生の模倣犯の一人である16歳無職の少年が近くにあった植え込みにライターで火をつけ、大火災を起こしました。火は歩行者50人により消し止められましたが、この火災で負傷者が995人・死者が1005人を超えました。この後も引き続き、予定を大幅に変更して、良七火災事件のニュースをお知らせします。』

私はぼーっとしながらロビーに置いてある薄い液晶テレビを見ていた。

「おい!柳田図書館にいた奴ら全員避難して無事だってよ!」

原が明るく私に伝える。でも、私は今は原の言葉に返事を返す余裕など無かった。

私はただの人質だ。

この事実がずっと頭から離れなかった。

「おい、無視すんなよ。」

「私、どうせ人質なんでしょ?」

「ああ、でもさっきも言ったように、お前は良い仲間だぜ。」

・・・・・・。

一回利用されたと知った私は心から原の事を信頼出来なくなっていた。

でもまあそうか。よくよく考えてみればどこにでもいるその辺の高校生をこんな重要な任務に好き好んで連れて行かないよな。

「わかった。私、原の事を信じるよ。」

「お・・・おう!嬉しいぜー!」

「うわっ!」

私は原に頭をくしゃくしゃと撫でられた。

「止めてよ気持ち悪い!」

「別にいいだろー?」

「あらあら、何だかお熱いですわね!」

「ヒューヒュー!!」

「あっはは!そんなんじゃねえよ!」

「もう!みんなして何よ!」

ピロン!

突然原のタブレットから軽快な音が鳴った。

「え?何?」

「なんか来たぞ。どれどれ?おー!闇野だ!みんな!闇野からSNSが来たぞ!」

「闇野さん?お友達ですか?」

「まあな!」

「えー!見せて見せてぇ!」

「何だか面白そうだな。」

・・・闇野か。結構頻繁にSNS送り付けて来るな。これがリア充ってやつか?

「ねえ!早く読んでみましょうよ!」

「そうだな!じゃあ見てみるぞ!」

原はSNSを開いた。

『原、山口、元気にしてる?

今日は二人に見せたいものがあります!

私ね、受験が近いから髪の色を茶髪に変えたんだ。地毛に近い色にするのは久しぶりだから恥ずかしいけど・・・どうかな?』

画像を見ると、少し照れた表情でカメラににっこりと微笑みかける闇野の姿があった。

「んかわいいいいいいい!!」

原が絶叫した。

「うん、僕から見ても可愛らしい人だな。嫁に来て貰いたいレベル。」

「河野さん、少し気持ち悪いけど分かりますわ!」

「いいねいいねぇー!」

私はタブレットを少し横目に見て、すぐに目を逸らした。確かに可愛い。もう一度よく見たら濃かったメイクが前に比べて薄くなってる。元が相当いいのだろう。

『それから私は今日も薬の研究をしました。今日は風邪薬の調合に成功したよー!』

「可愛くて天才とか・・・マジ神ってる!」

原が手を合わせて崇拝した。

「原さん・・・気持ち悪いけれどよく分かりますわ!」

「天才だぁー!」

「もう結婚してくれ!」

私はみんながSNSで盛り上がっている中、私は風呂に入る準備をする。

「あれ?山口もう風呂入んの?もっと一緒に見ようぜ!」

「うん。でも私ちょっと今日疲れてるから。早めに入って寝ちゃおうかなーって。」

「そっか・・・。あっ、まだ続きがある。」

『今この辺、模倣犯とかが沢山出て大変な事になってるけど、私が全校生徒に二人の事を伝えたからみんな模倣犯にならずに楽しく学校生活を送っているよ!

まだまだ書きたい事いっぱいあるけど、二人共疲れてるだろうから、また明日連絡するね!明日も気合いで乗り切るよー!バイバイ!』

「バイバーイ!んーちゅっ!」

原がタブレットの画面に向かってキスをした。

「原さん・・・気持ち悪いですわ。でも良いお人柄ですね!」

「天使・・・天使だぞ・・・。」

「河野ちん?大丈夫ぅ?ねえもしもしぃ?」





とりあえず明日もあるから風呂に入って早く寝よう。

あと一息だ。あと一息。


































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