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第7話 和気あいあいと飲み会
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「潤夏ちゃんは、ストーカー常習犯なんですよ。わかります?ストーカー」
「ストーカー……」
俺は繰り返した。
「正確にはストーカーではないのかも知れませんが」
「どっちなんだ」
曖昧な言い方に、俺はキレ気味に彼女に聞いた。
「そこまで知らないですよ。でもね、あなたが努力して彼女の連絡先を知ろうとしていることがわかれば、きっと彼女は喜びますよ」
「いや、俺は知り合いになりたくないだけなんだけど。俺の庭に入ってきてほしくないんだ」
「なんで、縁側に花なんか置いて行くんでしょうね。面倒くさい。その花、どうしましたか?」
「気持ち悪いから捨ててる」
「正解ですね。多分」
蓮と名のる彼女は意外とシビアだった。
「今までの例で行くと、相手に気味悪がられてバッチリ断られて、落ち込むか、親切に断られてつけあがるかどっちかです」
どっちもありがたくない。
「親とかに注意してもらうわけには?」
「親は執着されるのが嫌で、出て行きました」
「うちの母は、不便なんで出てったと言ってたが」
「それもあります」
「なんで置いてったんだ。迷惑だな」
「周りに人がいないからですよ。そもそも、本人人嫌いです。人里離れた場所にいたいって言うなら、逆らわずに置き去りにする方が楽です」
「ネグレストか」
「だから、高校生じゃないって言ってるでしょう。28歳の立派な成人が残りたいって言うんですから、そりゃ置いて行きますよ」
僕は思わずニヤリとした。
「じゃあ、蓮さんも28歳ってわけだね?」
「私の年齢は関係ありません」
彼女は冷たく突っぱねた。この反応はいい。なかなか面白い。
「だけど、それじゃあどうしたらいいんだ」
「誰も住んでいない山奥で、勝手に自給自足しているなら、何の問題も起きなかったはずなんですよ。人がいませんからね。あなたがわざわざ庭作りなんか始めなければ、こんなことにはならなかったんですよ。その庭作りって、止めるわけにはいかないんですか?」
俺はムッとした。
「人の趣味にケチをつけないでもらおうか」
「ケチなんか付けてないですよ。潤夏ちゃん、喜んでると思いますよ。よかったですね」
俺は一時休戦することにした。
「ほか、なんか頼む?」
彼女は焼き鳥と唐揚げとフライドポテトと塩だれキューリとたこわさとピザと出汁巻きとチューハイお代わりを頼んだ。
「僕の分はいいから」
「頼んでないです。真壁さんはお好きなものをどうぞ。割り勘……自分の分は払いますから」
「良く太らないね」
「痩せ型なんです」
「そりゃ、羨ましい」
ビール越しに俺は彼女をにらんだ。
最近はジムへも行かず、例の庭の整備に通い詰めている。
菜園には行きたい。だが、農作業とジム、どっちがカロリー消費量が大きいのだろう。どっちが太らないだろうか。俺は悩み始めた。
結構真剣なのだ。あの異物さえ来なければ最高だってのに。
たこわさとキムチなら太らないんじゃないだろうか。でも、辛い。
「トマトの薄切りお願いしまーす」
蓮はまた注文した。
「それと焼き鳥。ねぎまとつくね、2本ずつ。それから手羽焼き」
太らないためには、カロリーの高い物は食べないのが鉄則。その自制心には自信があったが、腹は減っているので、やたらに食べまくるやつが目の前にいると腹が立つ。
「シーザーサラダ追加!」
もう遠慮はなしだ。
僕は彼女の皿に箸を突っ込んだ。
「少し分けろ」
「いやです。別払いだって言ったじゃないですか」
「自分の分くらい払うよ」
宇津木さんは眼鏡越しに睨んできた。口元がとがっている。
少し頬が赤いのはちょっと酔っているのかもしれない。
「で、とにかく、その座敷童だけど、冷たく断れば来なくなるんだね?」
「うーん……でも、言葉だけでうまく断れるかなあ……意思疎通に問題があるんですよね」
「なに、それ?」
蓮はクイっと眼鏡を上げた。メガネ女子特有のキリリ感のあるやつだ。しかし、目は閉じている。少し酔っ払っているのかな?
「話した内容をちゃんとわかってくれるかどうか……」
「紙に書いて渡せばいいじゃん。悪霊退散って」
「誰が悪霊ですか」
彼女はそう言うと、いい飲みっぷりでチューハイを空けた。飲み放題にしときゃよかった。俺はちょっと後悔した。
「ストーカー……」
俺は繰り返した。
「正確にはストーカーではないのかも知れませんが」
「どっちなんだ」
曖昧な言い方に、俺はキレ気味に彼女に聞いた。
「そこまで知らないですよ。でもね、あなたが努力して彼女の連絡先を知ろうとしていることがわかれば、きっと彼女は喜びますよ」
「いや、俺は知り合いになりたくないだけなんだけど。俺の庭に入ってきてほしくないんだ」
「なんで、縁側に花なんか置いて行くんでしょうね。面倒くさい。その花、どうしましたか?」
「気持ち悪いから捨ててる」
「正解ですね。多分」
蓮と名のる彼女は意外とシビアだった。
「今までの例で行くと、相手に気味悪がられてバッチリ断られて、落ち込むか、親切に断られてつけあがるかどっちかです」
どっちもありがたくない。
「親とかに注意してもらうわけには?」
「親は執着されるのが嫌で、出て行きました」
「うちの母は、不便なんで出てったと言ってたが」
「それもあります」
「なんで置いてったんだ。迷惑だな」
「周りに人がいないからですよ。そもそも、本人人嫌いです。人里離れた場所にいたいって言うなら、逆らわずに置き去りにする方が楽です」
「ネグレストか」
「だから、高校生じゃないって言ってるでしょう。28歳の立派な成人が残りたいって言うんですから、そりゃ置いて行きますよ」
僕は思わずニヤリとした。
「じゃあ、蓮さんも28歳ってわけだね?」
「私の年齢は関係ありません」
彼女は冷たく突っぱねた。この反応はいい。なかなか面白い。
「だけど、それじゃあどうしたらいいんだ」
「誰も住んでいない山奥で、勝手に自給自足しているなら、何の問題も起きなかったはずなんですよ。人がいませんからね。あなたがわざわざ庭作りなんか始めなければ、こんなことにはならなかったんですよ。その庭作りって、止めるわけにはいかないんですか?」
俺はムッとした。
「人の趣味にケチをつけないでもらおうか」
「ケチなんか付けてないですよ。潤夏ちゃん、喜んでると思いますよ。よかったですね」
俺は一時休戦することにした。
「ほか、なんか頼む?」
彼女は焼き鳥と唐揚げとフライドポテトと塩だれキューリとたこわさとピザと出汁巻きとチューハイお代わりを頼んだ。
「僕の分はいいから」
「頼んでないです。真壁さんはお好きなものをどうぞ。割り勘……自分の分は払いますから」
「良く太らないね」
「痩せ型なんです」
「そりゃ、羨ましい」
ビール越しに俺は彼女をにらんだ。
最近はジムへも行かず、例の庭の整備に通い詰めている。
菜園には行きたい。だが、農作業とジム、どっちがカロリー消費量が大きいのだろう。どっちが太らないだろうか。俺は悩み始めた。
結構真剣なのだ。あの異物さえ来なければ最高だってのに。
たこわさとキムチなら太らないんじゃないだろうか。でも、辛い。
「トマトの薄切りお願いしまーす」
蓮はまた注文した。
「それと焼き鳥。ねぎまとつくね、2本ずつ。それから手羽焼き」
太らないためには、カロリーの高い物は食べないのが鉄則。その自制心には自信があったが、腹は減っているので、やたらに食べまくるやつが目の前にいると腹が立つ。
「シーザーサラダ追加!」
もう遠慮はなしだ。
僕は彼女の皿に箸を突っ込んだ。
「少し分けろ」
「いやです。別払いだって言ったじゃないですか」
「自分の分くらい払うよ」
宇津木さんは眼鏡越しに睨んできた。口元がとがっている。
少し頬が赤いのはちょっと酔っているのかもしれない。
「で、とにかく、その座敷童だけど、冷たく断れば来なくなるんだね?」
「うーん……でも、言葉だけでうまく断れるかなあ……意思疎通に問題があるんですよね」
「なに、それ?」
蓮はクイっと眼鏡を上げた。メガネ女子特有のキリリ感のあるやつだ。しかし、目は閉じている。少し酔っ払っているのかな?
「話した内容をちゃんとわかってくれるかどうか……」
「紙に書いて渡せばいいじゃん。悪霊退散って」
「誰が悪霊ですか」
彼女はそう言うと、いい飲みっぷりでチューハイを空けた。飲み放題にしときゃよかった。俺はちょっと後悔した。
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