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サイラム
第170話 ヌーヴィーの歓迎
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船数隻と見張りの人員を残し、主だった者はヌーヴィーに戻った。
港では、ルストガルデ殿やザリエリ候、マシュー殿、カザンヤン子爵、ベルビュー殿、そのほか一緒に従軍してきた者たちが心配そうに待っていた。
「帰りが早すぎる。いかががされた」
一同は、船に気がついて、港まで来ていた。
ザリエリ候とルストガルデ殿が中心になって、街の居住するロンゴバルト人を監視するよう手配を済ませていたので、町はもう安全で、確実にダリアの手に戻っていた。
下船してきたレイビック伯爵たちは、陰気で不吉な荷物と一緒だった。
「これは?」
集まった面々は一斉に鼻を押さえながら、尋ねた。
「王太子は、すでに殺されていた」
レイビック伯爵が代表で答えた。バジエ辺境伯もうなずいた。
全員が腰を抜かすほど驚いた。
彼らは全員、サジシームの言葉を信じていたのだ。
サジシームは王太子を殺すことが、何を意味するかわかっているはずだった。
「亡くなってから、すでに半月くらい経っていると思う。サジシームの仕業ではない」
彼らは、絶対にそんなものを見たくなかったのだが、やむを得ず、袋の中身を外に出して顔を確認しなければならなかった。
港の岸壁に、横たえられた不吉な袋を取り囲んだ貴族たちは、それぞれ、のぞき込んではショックを受けていた。
こんなものを見たいわけではなかった。
「なぜ、攻めなかったのだ!」
突然、ザリエリ候が問いただした。当然の質問だった。
「ロンゴバルト領内へ攻め入らなかったのは、私の決断だ」
レイビック伯爵が答えた。
「ファン島での戦闘を予想していたが、戦闘場所が変わってしまったのだ。ファン島は取り返したので、戦場は、次はロンゴバルトになる。ロンゴバルトに攻め入るなら、それ相当の準備、特に船が必要になる」
「それは、つまり、ファン島は?」
ルストガルデ殿が聞いた。とても重要なことだと言うように。
フリースラントとギュレーターは顔を見合わせた。
「奪還した」
一瞬、全員が黙り込んだ。
「よいではないか。レイビック伯爵」
ルストガルデ殿が静かに言った。
「ザリエリ候、良いではないか。すぐに、ファン島に私の船を遣わそう」
「しかし、ルストガルデ殿……王太子のかたきを」
「要らぬ。不用じゃ」
ルストガルデ殿は冷たく答えた。
「そんなもののために、兵の命と船を犠牲にしとうないわ」
ザリエリ候は思いがけないルストガルデ殿の言葉に気色ばんだ。
「ダリアは腰抜けか」
「おお、そうともさ。腰抜けだろうて。わしは、自分の砦に何年も閉じ込めらえていたのだ。誰もダリアの者は助けに来なんだ。レイビック伯が助けに来るまで」
そう言い放つと彼は、自分の配下の手の者を呼んだ。
「待て、ルストガルデ殿」
レイビック伯爵が言った。
「半年交代の百人体制を組みなおさないといけない」
ルストガルデ殿は、キラキラした目をレイビック伯爵に向けた。
「補給と船がいる。海に詳しくないので、貴公の手助けが必要だ。二度と、ファン島をロンゴバルトに渡さない」
ルストガルデ殿は、力強くうなずいた。
「ありがたい」
ザリエリ候の手前、ヌーヴィーの船乗りたちは黙っていたが、彼らはニコニコしていた。
ロンゴバルトにも復讐戦にも、王家の威信にも、関心はなかったのだ。
「ファン島が戻れば、漁が安全になる」
「ロンゴバルト人を一人残らず縛り首にしてやる。俺の川舟を、奴らは持っていきやがった。力を頼んで勝手をしたんだ」
「これこれ、リンチはいかん」
あわてて、ルストガルデ殿は言った。
しかし、すでに港から数人が町に向かって、走り去った後だった。
「これ、コデロ。追いかけて、ロンゴバルト人に勝手に危害を加えてはならないと伝えなさい。これまでの横暴については、必要ならわしが判断するから」
呼ばれたコデロはひざをかがめて、嬉しそうに言った。
「殿様、ファン島はダリアに戻ったのでございますね?」
「そう。その通り。そうですな? レイビック伯爵」
「そのとおりだ。今は、私の軍が警備している。ロンゴバルト兵は一人もいない」
コデロと呼ばれた若者は、海の男らしく日焼けした顔をほころばせた。笑うと真っ白な歯が目立った。
「それだけ聞けば、たくさんです。もう、二度とロンゴバルト人は、ヌーヴィーで大きな顔はできないでしょう。皆に知らせてまいります」
若者はあっという間に消えてしまっていた。
「さて、レイビック伯爵並びにバジエ辺境伯」
ルストガルデ殿は、重々しく宣言した。
「戦勝祝いの席を設けたい。ザリエリ候を始めとした皆様方全員を、ご一緒にお招き申し上げる。ぜひ、お越しいただきたい」
「勝利ではないような気がする……」
フリースラントとギュレーター、ゼンダの領主とリグの領主は、少々苦い顔をした
夕方、彼らは、ロンゴバルトから奪還した、ルストガルデ殿の砦兼邸宅で、盛大に催された祝賀会に主賓として出ていた。
ヌーヴィーの港町は、ロンゴバルトに占拠されていたおかげで、略奪や破壊が行われなかった。すでにロンゴバルトの持ち物とみなされていたので、荒らすことは許されなかったのだ。
そのせいで、町の建物や港の設備は無事だったが、ダリア人はみんな肩身の狭い思いをしていた。ロンゴバルト人を恐れ、その影も踏まないよう小さくなって暮らしていた。
元と言えば自分たちの町だったのに、武力で押され、領主のルストガルデ殿は拉致されたまま、生死もわからなかった。
レイビック辺境伯やバジエ辺境伯、ザリエリ候のおかげで、町を取り戻すことができて、彼らは大喜びだった。
「いいのですよ」
ルストガルデ殿が、まじめな顔で、レイビック伯爵とバジエ辺境伯に向かって言った。
「これ以上、戦をする必要がどこにありましょう。ダリアの目的はファン島の奪還とヌーヴィーの解放です。ロンゴバルトまで攻め入っても、メリットはない。目的が達成できた時点で、軍を引くのが得策です」
ルストガルデ殿は、彼ら一行を、自分の屋敷で催した盛大なパーティの席上で、二人の若い軍将に語りかけていた。
ザリエリ候は、少々不満そうだったが、ルストガルデ殿に逆に説教されていた。
「よいかの、マルチェロット、名誉のために戦ったって、王太子はもう死んどるのだ。どうしようもないわい」
ザリエリ候が、マルチェロットと言う名前だったことをフリースラント達は初めて知った。
「それに、わしはあの王妃も王も嫌いじゃった。王太子なんぞ、どうしようもない人物だったではないか」
そう言うと、彼はザリエリ候の腕を取って、宴会の中に消えて行ってしまった。
ゼンダの領主、リグの領主、ロドリック、マシュー殿、カザンヤン子爵、ベルビュー殿などは、あっけに取られて、後姿を見送った。
「ギュレーター、フリースラント、まあ、ルストガルデ殿の言うとおりだよ」
ロドリックが言いだした。
「王太子は出来損ないだった、王としてはね。商家の小倅だったら……いや、破産してたろうな」
ゼンダの領主とリグの領主は、こっそり笑い出していた。
「この度のこと、まことに感謝の念に堪えませぬ」
ルストガルデの奥方や、娘たち、息子たちや、近隣の領主たち、それからヌーヴィーの町の商人たちまでが次から次にやってきて、彼らに感謝の言葉を述べ、酒やごちそうを勧め、しばらくすると、ザリエリ候と一緒にルストガルデ殿も戻ってきて、騒ぎに加わった。
ヌーヴィーの町全体が、感謝のパーティのことを知っていて、招待された貴顕以外にも、都合のつく者全員が少なくとも見物に来ていた。
ルストガルデ殿は、彼の屋敷に大勢詰め掛けたヌーヴィーの人々を、手にしたグラスでなんとなく指した。
「喜んでいる。そして、あなた方に感謝している」
レイビック辺境伯、ザリエリ候、バジエ辺境伯、ゼンダの領主、リグの領主、ロドリックらは、ルストガルデ殿の招待に応じる格好で、一段高いテラスのような場所に集まっていた。ルストガルデ殿は、集まっているヌーヴィーの人々に、彼らを紹介するように、手で指して見せた。
人々は声をあげた。
ルストガルデ殿は、感謝を表すと言ったように、今度はレイビック伯爵らに向かって、軽く頭を下げ礼をして見せた。ルストガルデ殿が感謝の言葉を述べたところで、その場に集まった人々の歓声が大きくて、聞こえるはずがなかったのだ。
またもや、大きな声が沸き上がり、バジエ辺境伯やザリエリ候、ゼンダとリグの領主は、大いに感動した様子だった。
ザリエリ候がためらいながらかすかに手を振ると、人々は大きく反応し、手をたたき、声を限りに感謝の言葉を叫んだ。
「フリースラント、ギュレーター、手を振るのじゃ。早く」
突然、機嫌を直したザリエリ候が促した。
バジエ辺境伯ギュレーターは真っ赤になって、緊張して手を振った。フリースラントは、ザリエリ候の指示のまま、一生懸命に手を振った。
彼らはかわるがわる手を振り、人々はそのたびに大声で叫んだ。
「うれしいものだ。こんなに感謝してくれるだなんて」
「そうだな……」
ギュレーターは紅潮し、フリースラントは微笑んだ。だが、話はまだ終わっていない。
これから、カプトルへ戻らなくてはいけないのだ。
不吉で臭いあの荷物と一緒に。
港では、ルストガルデ殿やザリエリ候、マシュー殿、カザンヤン子爵、ベルビュー殿、そのほか一緒に従軍してきた者たちが心配そうに待っていた。
「帰りが早すぎる。いかががされた」
一同は、船に気がついて、港まで来ていた。
ザリエリ候とルストガルデ殿が中心になって、街の居住するロンゴバルト人を監視するよう手配を済ませていたので、町はもう安全で、確実にダリアの手に戻っていた。
下船してきたレイビック伯爵たちは、陰気で不吉な荷物と一緒だった。
「これは?」
集まった面々は一斉に鼻を押さえながら、尋ねた。
「王太子は、すでに殺されていた」
レイビック伯爵が代表で答えた。バジエ辺境伯もうなずいた。
全員が腰を抜かすほど驚いた。
彼らは全員、サジシームの言葉を信じていたのだ。
サジシームは王太子を殺すことが、何を意味するかわかっているはずだった。
「亡くなってから、すでに半月くらい経っていると思う。サジシームの仕業ではない」
彼らは、絶対にそんなものを見たくなかったのだが、やむを得ず、袋の中身を外に出して顔を確認しなければならなかった。
港の岸壁に、横たえられた不吉な袋を取り囲んだ貴族たちは、それぞれ、のぞき込んではショックを受けていた。
こんなものを見たいわけではなかった。
「なぜ、攻めなかったのだ!」
突然、ザリエリ候が問いただした。当然の質問だった。
「ロンゴバルト領内へ攻め入らなかったのは、私の決断だ」
レイビック伯爵が答えた。
「ファン島での戦闘を予想していたが、戦闘場所が変わってしまったのだ。ファン島は取り返したので、戦場は、次はロンゴバルトになる。ロンゴバルトに攻め入るなら、それ相当の準備、特に船が必要になる」
「それは、つまり、ファン島は?」
ルストガルデ殿が聞いた。とても重要なことだと言うように。
フリースラントとギュレーターは顔を見合わせた。
「奪還した」
一瞬、全員が黙り込んだ。
「よいではないか。レイビック伯爵」
ルストガルデ殿が静かに言った。
「ザリエリ候、良いではないか。すぐに、ファン島に私の船を遣わそう」
「しかし、ルストガルデ殿……王太子のかたきを」
「要らぬ。不用じゃ」
ルストガルデ殿は冷たく答えた。
「そんなもののために、兵の命と船を犠牲にしとうないわ」
ザリエリ候は思いがけないルストガルデ殿の言葉に気色ばんだ。
「ダリアは腰抜けか」
「おお、そうともさ。腰抜けだろうて。わしは、自分の砦に何年も閉じ込めらえていたのだ。誰もダリアの者は助けに来なんだ。レイビック伯が助けに来るまで」
そう言い放つと彼は、自分の配下の手の者を呼んだ。
「待て、ルストガルデ殿」
レイビック伯爵が言った。
「半年交代の百人体制を組みなおさないといけない」
ルストガルデ殿は、キラキラした目をレイビック伯爵に向けた。
「補給と船がいる。海に詳しくないので、貴公の手助けが必要だ。二度と、ファン島をロンゴバルトに渡さない」
ルストガルデ殿は、力強くうなずいた。
「ありがたい」
ザリエリ候の手前、ヌーヴィーの船乗りたちは黙っていたが、彼らはニコニコしていた。
ロンゴバルトにも復讐戦にも、王家の威信にも、関心はなかったのだ。
「ファン島が戻れば、漁が安全になる」
「ロンゴバルト人を一人残らず縛り首にしてやる。俺の川舟を、奴らは持っていきやがった。力を頼んで勝手をしたんだ」
「これこれ、リンチはいかん」
あわてて、ルストガルデ殿は言った。
しかし、すでに港から数人が町に向かって、走り去った後だった。
「これ、コデロ。追いかけて、ロンゴバルト人に勝手に危害を加えてはならないと伝えなさい。これまでの横暴については、必要ならわしが判断するから」
呼ばれたコデロはひざをかがめて、嬉しそうに言った。
「殿様、ファン島はダリアに戻ったのでございますね?」
「そう。その通り。そうですな? レイビック伯爵」
「そのとおりだ。今は、私の軍が警備している。ロンゴバルト兵は一人もいない」
コデロと呼ばれた若者は、海の男らしく日焼けした顔をほころばせた。笑うと真っ白な歯が目立った。
「それだけ聞けば、たくさんです。もう、二度とロンゴバルト人は、ヌーヴィーで大きな顔はできないでしょう。皆に知らせてまいります」
若者はあっという間に消えてしまっていた。
「さて、レイビック伯爵並びにバジエ辺境伯」
ルストガルデ殿は、重々しく宣言した。
「戦勝祝いの席を設けたい。ザリエリ候を始めとした皆様方全員を、ご一緒にお招き申し上げる。ぜひ、お越しいただきたい」
「勝利ではないような気がする……」
フリースラントとギュレーター、ゼンダの領主とリグの領主は、少々苦い顔をした
夕方、彼らは、ロンゴバルトから奪還した、ルストガルデ殿の砦兼邸宅で、盛大に催された祝賀会に主賓として出ていた。
ヌーヴィーの港町は、ロンゴバルトに占拠されていたおかげで、略奪や破壊が行われなかった。すでにロンゴバルトの持ち物とみなされていたので、荒らすことは許されなかったのだ。
そのせいで、町の建物や港の設備は無事だったが、ダリア人はみんな肩身の狭い思いをしていた。ロンゴバルト人を恐れ、その影も踏まないよう小さくなって暮らしていた。
元と言えば自分たちの町だったのに、武力で押され、領主のルストガルデ殿は拉致されたまま、生死もわからなかった。
レイビック辺境伯やバジエ辺境伯、ザリエリ候のおかげで、町を取り戻すことができて、彼らは大喜びだった。
「いいのですよ」
ルストガルデ殿が、まじめな顔で、レイビック伯爵とバジエ辺境伯に向かって言った。
「これ以上、戦をする必要がどこにありましょう。ダリアの目的はファン島の奪還とヌーヴィーの解放です。ロンゴバルトまで攻め入っても、メリットはない。目的が達成できた時点で、軍を引くのが得策です」
ルストガルデ殿は、彼ら一行を、自分の屋敷で催した盛大なパーティの席上で、二人の若い軍将に語りかけていた。
ザリエリ候は、少々不満そうだったが、ルストガルデ殿に逆に説教されていた。
「よいかの、マルチェロット、名誉のために戦ったって、王太子はもう死んどるのだ。どうしようもないわい」
ザリエリ候が、マルチェロットと言う名前だったことをフリースラント達は初めて知った。
「それに、わしはあの王妃も王も嫌いじゃった。王太子なんぞ、どうしようもない人物だったではないか」
そう言うと、彼はザリエリ候の腕を取って、宴会の中に消えて行ってしまった。
ゼンダの領主、リグの領主、ロドリック、マシュー殿、カザンヤン子爵、ベルビュー殿などは、あっけに取られて、後姿を見送った。
「ギュレーター、フリースラント、まあ、ルストガルデ殿の言うとおりだよ」
ロドリックが言いだした。
「王太子は出来損ないだった、王としてはね。商家の小倅だったら……いや、破産してたろうな」
ゼンダの領主とリグの領主は、こっそり笑い出していた。
「この度のこと、まことに感謝の念に堪えませぬ」
ルストガルデの奥方や、娘たち、息子たちや、近隣の領主たち、それからヌーヴィーの町の商人たちまでが次から次にやってきて、彼らに感謝の言葉を述べ、酒やごちそうを勧め、しばらくすると、ザリエリ候と一緒にルストガルデ殿も戻ってきて、騒ぎに加わった。
ヌーヴィーの町全体が、感謝のパーティのことを知っていて、招待された貴顕以外にも、都合のつく者全員が少なくとも見物に来ていた。
ルストガルデ殿は、彼の屋敷に大勢詰め掛けたヌーヴィーの人々を、手にしたグラスでなんとなく指した。
「喜んでいる。そして、あなた方に感謝している」
レイビック辺境伯、ザリエリ候、バジエ辺境伯、ゼンダの領主、リグの領主、ロドリックらは、ルストガルデ殿の招待に応じる格好で、一段高いテラスのような場所に集まっていた。ルストガルデ殿は、集まっているヌーヴィーの人々に、彼らを紹介するように、手で指して見せた。
人々は声をあげた。
ルストガルデ殿は、感謝を表すと言ったように、今度はレイビック伯爵らに向かって、軽く頭を下げ礼をして見せた。ルストガルデ殿が感謝の言葉を述べたところで、その場に集まった人々の歓声が大きくて、聞こえるはずがなかったのだ。
またもや、大きな声が沸き上がり、バジエ辺境伯やザリエリ候、ゼンダとリグの領主は、大いに感動した様子だった。
ザリエリ候がためらいながらかすかに手を振ると、人々は大きく反応し、手をたたき、声を限りに感謝の言葉を叫んだ。
「フリースラント、ギュレーター、手を振るのじゃ。早く」
突然、機嫌を直したザリエリ候が促した。
バジエ辺境伯ギュレーターは真っ赤になって、緊張して手を振った。フリースラントは、ザリエリ候の指示のまま、一生懸命に手を振った。
彼らはかわるがわる手を振り、人々はそのたびに大声で叫んだ。
「うれしいものだ。こんなに感謝してくれるだなんて」
「そうだな……」
ギュレーターは紅潮し、フリースラントは微笑んだ。だが、話はまだ終わっていない。
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