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第7話 提灯パーティ
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パーティは夕暮れが忍び寄って来た頃から始まった。
庭の提灯に次々と火が入れられていく。
私は自分の部屋から、入ってくる馬車や、それぞれに着飾った人々が、煌々と灯りをともした侯爵邸に足を踏み入れていく様子を見ていた。
もちろん、侯爵家からの招待状がなければ、パーティには入れない。
従って、最後の人がややあわて気味に会場に入ると、門は閉ざされた。
私は、後からこっそりパーティに参加することにしていた。
夏のことで、広間と食堂と客間の窓は開け放たれ、提灯の火でほの明るくなった庭へ、自由にお客様たちが出入りできるようになっていた。
伯母の侍女の一人が、ドアをノックして迎えにきてくれて、私はドキドキしながら、パーティ会場の広間へ行く為、階段を降りていった。
下では、伯父が待ちかねたように立っていて、ニコニコしながら、エスコートの為に手を差し伸べてくれた。
パーティ会場には大勢の人がいた。
もちろん、今日の提灯パーティの主催者、グレシャム侯爵を知らない人はいない。
伯父のグレシャム侯爵が、得意そうに「姪の一人です」と紹介して歩くと、人々はざわめいた。
「まあ、なんて美しいお嬢様」
もちろん伯父夫妻は、この地方で一番裕福で貴族の格も高い。
その姪を、けなすことなんか礼儀上絶対に出来ないから、全員、口々に褒め称えてくれた。
誉め言葉も伯父の侯爵に対するお義理だと思っていた。
しかし、だんだんそうではないとわかってきた。
集まった人々は、王都の人たちに比べると垢ぬけていない人も多かったし、そもそも避暑に来ているので気楽な様子だった。単純に催しごとを楽しみに来ているのだ。王都のような裏表のある社交をしに来たわけではない。
かわいいと思ったから、そのまま口にしているに過ぎないのだ。
最初は、愛想笑いを浮かべつつも、おきれいですねなんて何を言っているのかしらと聞き流していたが、そのことがわかるとやがて本物の笑みがこぼれてきた。
「ありがとうございます。伯父の家があるこのあたりが本当に好きなんですの。皆様にお会いできて感謝しております」
すらすらと気持ちの良い言葉が、にこやかに出てきた。
あいさつした人たちには、悪気もなければ下心もなかった。本気でほめてくれているのだ。
単純に嬉しい。
どうして私は、人の言葉を素直に受け取れなかったのかしら。
少し反省した。
「君に見とれている若者は多いよ。気が付いていない?」
私は伯父の腕にすがりついた。そして笑った。伯父の冗談がおかしかった。
「まあ、伯父様、嫌ですわ。私、王都ではみっともないって有名でしたのよ。友達はいましたけど、婚約者のケネスなんか寄り付きもしなかったくらいですもの」
「そんなことはないよ。とてもきれいだよ」
伯父は心を込めて言ってくれた。伯父の友達の若いローレンス様も口を極めてほめそやしてくれた。
「こんなにかわいい若いレディはそうそういないよ! 婚約者は果報者だな! シュザンナ嬢は、そのケネスとやらをどう思っているんだ? 結婚するかどうかは、相手を知らなきゃいけないだろう?」
「こら。うちのシュザンナが嫌がるような話はしないでくれたまえ」
伯父が目をむいた。
「嫌がる? 婚約者の話題が嫌なのかい? 僕が言いたいのは、これだけ美人なら、寄り付かない男なんかいないだろってことだよ。この調子じゃ、今後お誘いが殺到するかも知れないよ。どうするつもりなの?」
伯父は本気で困った顔をして、親友のローレンス氏を眺めた。
「僕は親じゃないから、お誘いなんか断るしかない。それから、ローレンス」
伯父は付け加えた。
「うちのシュザンナは、顔が自慢なんじゃないよ! 性格が自慢なんだよ!」
親バカ?炸裂だった。
「さあ、向こうのほうにもあいさつに行こう!」
ローレンス氏は鳶色のあごひげをひねりながら、あとに残った。釈然としない、といった様子だった。
庭の提灯に次々と火が入れられていく。
私は自分の部屋から、入ってくる馬車や、それぞれに着飾った人々が、煌々と灯りをともした侯爵邸に足を踏み入れていく様子を見ていた。
もちろん、侯爵家からの招待状がなければ、パーティには入れない。
従って、最後の人がややあわて気味に会場に入ると、門は閉ざされた。
私は、後からこっそりパーティに参加することにしていた。
夏のことで、広間と食堂と客間の窓は開け放たれ、提灯の火でほの明るくなった庭へ、自由にお客様たちが出入りできるようになっていた。
伯母の侍女の一人が、ドアをノックして迎えにきてくれて、私はドキドキしながら、パーティ会場の広間へ行く為、階段を降りていった。
下では、伯父が待ちかねたように立っていて、ニコニコしながら、エスコートの為に手を差し伸べてくれた。
パーティ会場には大勢の人がいた。
もちろん、今日の提灯パーティの主催者、グレシャム侯爵を知らない人はいない。
伯父のグレシャム侯爵が、得意そうに「姪の一人です」と紹介して歩くと、人々はざわめいた。
「まあ、なんて美しいお嬢様」
もちろん伯父夫妻は、この地方で一番裕福で貴族の格も高い。
その姪を、けなすことなんか礼儀上絶対に出来ないから、全員、口々に褒め称えてくれた。
誉め言葉も伯父の侯爵に対するお義理だと思っていた。
しかし、だんだんそうではないとわかってきた。
集まった人々は、王都の人たちに比べると垢ぬけていない人も多かったし、そもそも避暑に来ているので気楽な様子だった。単純に催しごとを楽しみに来ているのだ。王都のような裏表のある社交をしに来たわけではない。
かわいいと思ったから、そのまま口にしているに過ぎないのだ。
最初は、愛想笑いを浮かべつつも、おきれいですねなんて何を言っているのかしらと聞き流していたが、そのことがわかるとやがて本物の笑みがこぼれてきた。
「ありがとうございます。伯父の家があるこのあたりが本当に好きなんですの。皆様にお会いできて感謝しております」
すらすらと気持ちの良い言葉が、にこやかに出てきた。
あいさつした人たちには、悪気もなければ下心もなかった。本気でほめてくれているのだ。
単純に嬉しい。
どうして私は、人の言葉を素直に受け取れなかったのかしら。
少し反省した。
「君に見とれている若者は多いよ。気が付いていない?」
私は伯父の腕にすがりついた。そして笑った。伯父の冗談がおかしかった。
「まあ、伯父様、嫌ですわ。私、王都ではみっともないって有名でしたのよ。友達はいましたけど、婚約者のケネスなんか寄り付きもしなかったくらいですもの」
「そんなことはないよ。とてもきれいだよ」
伯父は心を込めて言ってくれた。伯父の友達の若いローレンス様も口を極めてほめそやしてくれた。
「こんなにかわいい若いレディはそうそういないよ! 婚約者は果報者だな! シュザンナ嬢は、そのケネスとやらをどう思っているんだ? 結婚するかどうかは、相手を知らなきゃいけないだろう?」
「こら。うちのシュザンナが嫌がるような話はしないでくれたまえ」
伯父が目をむいた。
「嫌がる? 婚約者の話題が嫌なのかい? 僕が言いたいのは、これだけ美人なら、寄り付かない男なんかいないだろってことだよ。この調子じゃ、今後お誘いが殺到するかも知れないよ。どうするつもりなの?」
伯父は本気で困った顔をして、親友のローレンス氏を眺めた。
「僕は親じゃないから、お誘いなんか断るしかない。それから、ローレンス」
伯父は付け加えた。
「うちのシュザンナは、顔が自慢なんじゃないよ! 性格が自慢なんだよ!」
親バカ?炸裂だった。
「さあ、向こうのほうにもあいさつに行こう!」
ローレンス氏は鳶色のあごひげをひねりながら、あとに残った。釈然としない、といった様子だった。
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