【完結】婚約者の真実の愛探しのお手伝い。私たち、愛のキューピッドなんです?

buchi

文字の大きさ
11 / 58

第11話 婚約の危機?

しおりを挟む
アマンダ王女は去った。



私は呆然として、その後ろ姿を見送った……が、しかし血が沸騰するような怒りを覚えた。



なんだとう……令嬢らしからぬ一言を叫んでしまいそうだった。



「ちょっと、ちょっと、シュザンナ、みんなが見てるわよ?」



ルシンダが注意してくれた。





と言うのはルシンダと私のほかにも聞いていた生徒たちは多かったからだ。



間に合った者は全員駆け付けて、この脅迫ショーを見物していたのである。



いまや全員が、口々に意見を述べていた。





「どうするの? シュザンナ・モンフォール公爵令嬢」



女子寮の総取りまとめと言う恐ろしい役割を何の苦もなくやってのけている最年長クラスのアレグラ・ブラウンが、人ごみをかき分けてやって来た。



彼女もメガネをかけているが、こっちはすっきりしたメガネで、才女と言う言葉がよく似合う美人だ。



彼女は平民なのだが、誰にも一目置かれている。



貴族でないので、逆に身分のあれこれに関係なく公平に争い事をうまくさばいてくれる。成績もいいし、こういった生徒同士の騒ぎについては、先生方にも頼られている存在だ。アーノルドみたいだ。



「どうしましょう、ブラウン総監」



私は震え声で尋ねた。



ものすごく怖かった。



「あの騎士は、アマンダ王女と一緒に来た人なのよ。だから、この国に来たのは、2か月ほど前かな? ここ1か月は夏休みで、あなたは王都にいなかった。だからアマンダ王女がこの国に来てすぐの1ヶ月の間に、あなたと接触があったということになるけど、ほとんど無理じゃないかしら」



よく透るさわやかな声でブラウン嬢は理路整然と説明してくれた。



私はほっとした。アマンダ王女の言葉を信じない人がいる。



「まあ、真偽のほどは別として、そんなこと発表されるのは嫌だわね。あなたを知っている人は、絶対信じないでしょうけど、あなたのことを何も知らない人は、アマンダ王女の言葉をそのまま通り受け取るかもしれないわ」



なんて恐ろしいことを!

私は、また、指先が冷たくなる感触を味わった。



ブラウン女史はメガネをくいッと上に押し上げた。考えている時の癖である。



「これはもう、どうしようもないわね。あなたのご両親とケネスのご両親に水面下で話し合ってもらうしかないわ」



うちの母はオズボーン家と話し合うかしら? 母のことだ。元凶(アマンダ王女のことである)に向かって突進していく気がした。



「そんな……血で血を洗うような……」



「誰の血と誰の血なの?」



ブラウン女史が不思議そうに尋ねた。



「うちの母とアマンダ王女の……」



元王女と現王女の対決である。両方とも譲歩すると言うことを知らない。タダでは済まない気がした。







もちろんブラウン女史の言っている意味は分かっていた。



王女なんかを相手に真向勝負に出るのではなく、王女に従ったように見せかけて、後で婚約を戻してしまえと言うのだ。



「これは王女の暴走じゃないかしら。表向き婚約破棄しても、王女さえいなくなれば元に戻せばいいだけだわ。短期の留学だと聞いているし」



本当にその通りなのだが、うちの母にそんな理屈が通用するだろうか? それに……



「でもっ……ケネスがアマンダ王女を選んだら……」



こっそりルシンダが私の袖を引いた。



それはそれで、どうでもいいじゃないかという意味だろう。



ルシンダはブラウン女史に向かって言った。



「ケネスは真実の愛を探しているそうなので……それなら好きにしてもらえばいいのでは」



ブラウン女史はうなずいた。



「その相手がアマンダ王女なら、確かに誰も気にしないでしょう。円満な婚約解消は問題にならないわ。事情が変わればあり得ることよ」



ブラウン女史はまるで周りの生徒たちに言い聞かせるかのように、よくとおる声で言った。





生徒たちの中から、すっとそばに寄って来たのは、アルバートと、彼の親友のウィリアムだった。



アルバートはブラウン女史を見ると、うなずいた。

アルバート様は学園の生徒代表の影の世話役なので、ブラウン女史をよく知っているのだ。





「アマンダ王女はケネスを気に入った。手段を選ばず、手に入れようとしている。王女は勝手でわがままだ。人の言うことなんか絶対聞かない」



アルバート様は私に向かって小さな声で言った。



「でも事実無根のあなたへの誹謗中傷さえ避けられれば、婚約破棄なんか気にしなくていいと思うよ? ケネスなんか、どうでもいいだろう?」



ウィリアムもそう言った。



「よくないわ!」



私は顔を紅潮させて、思わず言った。



世の中の人がどう考えているかじゃなくて……ケネスが……ケネスがどう考えているかなのよ。アマンダ王女の言葉を信じているかもしれない。私があの騎士と……。



ひどい。ひどすぎる。

私のことを嫌うにしても、それは違う。



みにくいから嫌われる……かも知れない。陰気くさいと嫌わるかも知れない。

それはいい。でも、誤解が理由で嫌いにならないで。



私はそんなことを思って頭の中がぐちゃぐちゃになっていたが、アルバートとウィリアムは私が怒って混乱していると思い、それは当然だと考えたらしかった。





二人は冷静に話を続けていた。



「ケネスが真実の愛を見つけたと思っているなら、それはいいんじゃないかな」



「ああ。その通りだ。以前から、真実の愛を見つけたいと言っていたからね」



ブラウン女史も相槌を打つ。



「それが誰でも、あのアマンダ王女だったとしても、ケネスの問題だ。だけど、私たちはシュザンナ嬢が無実の罪を着せられるんじゃないかと心配なんだ」



「誰もあなたのことをそんな風には思わないよ。あなたはそんな人じゃない」



ウィリアムは私をまっすぐに見て言った。



それはそうだ。こんなおかしな、重い厳重なメガネをかけた娘が男を誘うわけがない。男の方が逃げて行ってしまうだろう。



ウィリアムは首を振った。彼はそれについては意見が違うらしかった。



「メガネの話なんかじゃない。君がそんな女の子じゃないってことを、みんな知っているよ。あんな言葉、誰も信じない。少なくとも、僕は絶対に信じないよ」



「う……ありがとう、ウィリアム」



公爵令嬢が君呼ばわりになってる。でも、ありがとう、ウィリアム。



アマンダ王女が怖すぎて、私は思わず目から涙があふれてきた。王女の前では緊張しすぎていて、それどころじゃなかったのだ。



「大丈夫だよ。泣かないで、シュザンナ」



ウィリアムが戸惑ったように一生懸命慰めてくれた。ルシンダは手を握ってくれた。



私は何もしていないのに。なんで、こんな目に会わなくちゃいけないの?
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。 彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。 ――その役割が、突然奪われるまでは。 公の場で告げられた一方的な婚約破棄。 理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。 ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。 だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。 些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。 それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。 一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。 求められたのは、身分でも立場でもない。 彼女自身の能力だった。 婚約破棄から始まる、 静かで冷静な逆転劇。 王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、 やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。 -

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

4人の女

猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。 うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。 このご婦人方には共通点がある。 かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。 『氷の貴公子』の異名を持つ男。 ジルベール・タレーラン公爵令息。 絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。 しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。 この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。 こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。

別れたいようなので、別れることにします

天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。 魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。 命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。 王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

【完結】3度婚約を破棄された皇女は護衛の騎士とともに隣国へ嫁ぐ

七瀬菜々
恋愛
 先日、3度目の婚約が破談となったモニカは父である皇帝から呼び出しをくらう。  また皇帝から理不尽なお叱りを受けると嫌々謁見に向かうと、今度はまさかの1回目の元婚約者と再婚約しろと言われて----!?  これは、宮中でも難しい立場にある嫌われ者の第四皇女モニカと、彼女に仕える素行不良の一途な騎士、そして新たにもう一度婚約者となった隣国の王弟公爵との三角関係?のお話。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

処理中です...