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第13話 婚約破棄のその後1
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自邸へ帰ると、(私は何も知らないでいて欲しいと願っていたのだが)母がすでに婚約破棄を聞いて激怒していた。
「シュザンナ、あれは何なの?」
なんなのと聞かれても、私もわからない。
「事前にお話も聞いておりませんでしたし、私も何が何だか……」
母は顔色が変わっていた。
晩、遅くなってきてから父が戻ってきた。
母は形相を変えて父に詰め寄ったが、父は今回ばかりはうるさいといった様子を示した。
「ガリア王国の姫君の仕業だ。私たちにはどうすることもできない」
母の顔色はどす黒くなってきた。
「どうしてオズボーン家は止めなかったのです?」
「婚約破棄は、あのアマンダ王女という方の差し金だ」
「婚約破棄だなんて、なぜですの?」
「ケネスが欲しかったのさ。シュザンナの存在が邪魔だったのだろう。うちの娘を恐喝してきた。別の男と関係を持ったと証言させると」
さすがに母も意味が分からなかったのだろう。公爵家の、それこそ箱入りと自他ともに認められている自分の娘に、そんな疑惑をかけられるなどと言うことが。
「どういうことですの?」
「自国の騎士を連れてきていた。その男が証言すると言うのだ。うちの娘と関係を持ったと。したがってもう婚約にふさわしくないと破棄させようとした」
「なんてことを」
母が絶句した。
「だが、証言はなかった。ケネスは婚約破棄だけすると、途中で壇から降りてしまった。続きを言う間がなかったんだ。助かったよ」
「でも、婚約破棄だけでも、大ダメージですわ」
母はわめいたが、父は首を振った。
「ダメージを食らうのはむしろケネスの方だろう。訳の分からない破棄だとね。真実の愛を探すそうだ。意味が分からない。だが、どちらにしても、誰も気にしないといいね」
「気にしますわ!」
「多分、あまり問題にされないと思うよ。なぜならアマンダ姫の婚約破棄は二度目だからだ。ほぼ同じ手口で、まだ半年もたっていない」
「なんですって?」
これには私も、母と一緒に驚いた。
「王女なのだから、小さいころから婚約は決まっていた。だが、彼女は付き添いだった若い騎士が好きになって、父王に頼んで自分の婚約を解消し、その若い騎士の婚約を破棄させた。そして自分と結婚する手筈を整えた。半年前の話だ」
「その騎士と相思相愛だったのですか?」
父は首を振った。
「騎士には別に婚約者がいた。その相手を愛していたので、婚約破棄を嫌がった。王家に仕えるくらいだから結構な大貴族の息子だった。アマンダ王女が婚約者の娘の醜聞をねつ造して別れさせた」
「もしかして、不倫とか?」
自分の言うことを聞く誰かを使って、偽の証言を仕立て上げ、令嬢の名誉を傷つけたのだろうか。
「うむ。二番煎じだな。想像力がないらしい」
母には何の話かわからなかったらしい。食堂での恐喝の話を知らないから、当然だけど。
「つまり、シュザンナと同じように、男と関係があったと証言させたらしい。娘の方は修道院に入った。騎士の方は、叙爵させられて公爵になったが、途中でアマンダ姫の方が飽きて、婚約はなかったことになった」
飽きたとは。考えてみれば、そりゃ嫌になるかもしれない。だって自分のことを好きになってくれた人ではないのですもの。
内心では憎まれていただろう。
そんな男と結婚しても、いいことがあるわけがない。
「まあ、騎士の方は公爵位を返上して、元の恋人を修道院から救い出したそうだ。そして結婚した。アマンダ姫の方はこの国へ留学を希望した」
これ、めでたしめでたしなのかしら? 元さやと言うか?
「強いて言うなら、真実の愛を探しているのはアマンダ王女の方だな」
「それは好きにしていただいても構いませんけど、他人を巻き込むのはやめて欲しいですわ」
母が言った。私が生まれて初めて聞いた、母のきわめて穏当な言葉だった。
父は嫌になった様子だった。
「オズボーン侯爵は、もし、アマンダ姫がまとわり続けるなら、そして、それなりの見返りがあるならケネスを結婚させてもいいと言っている。オズボーン侯爵の言う通りだろう。相手は王家だ。対抗手段がないのだ」
「そんなっ……シュザンナはどうなりますの?」
母は結構必死だった。
「他を探すしかないだろう。オズボーン侯爵家は出来るだけのことはした。ケネスが醜聞の広まりを体を張って阻止してくれた。婚約破棄さえすれば、醜聞の公表はない。それに今回は二回目。アマンダ姫の婚約破棄騒動は知れ渡っている。シュザンナを修道院に入れる必要はないだろう。オズボーン家と当家から、王家とも連絡を入れたうえでアマンダ王女に抗議するしかあるまい。他家の娘を根拠もないのに不倫呼ばわりとはどういうことだ」
「事実無根ですわ。ひどすぎるわ」
「だけど、まだ、公言していないのだ。不倫だと証言させているわけではない。やるかもしれないと言う恐喝どまりだ。シュザンナは何事もなかったかのように普段通り学園に通いなさい。堂々としているのだ。婚約破棄は、ケネスの意向だし、アマンダ姫が流そうとした不倫とかいう噂は完全に無視して否定するのだ」
アマンダ王女に恐喝された上に、婚約破棄にも堂々としていなさいだなんて!
私のライフはもうゼロですわ。
父は私の顔をじろりと見た。
「メガネをかけていてよかったな。男に声をかけるようにはとても見えん」
……母のほかに父も大嫌いだ。
「シュザンナ、あれは何なの?」
なんなのと聞かれても、私もわからない。
「事前にお話も聞いておりませんでしたし、私も何が何だか……」
母は顔色が変わっていた。
晩、遅くなってきてから父が戻ってきた。
母は形相を変えて父に詰め寄ったが、父は今回ばかりはうるさいといった様子を示した。
「ガリア王国の姫君の仕業だ。私たちにはどうすることもできない」
母の顔色はどす黒くなってきた。
「どうしてオズボーン家は止めなかったのです?」
「婚約破棄は、あのアマンダ王女という方の差し金だ」
「婚約破棄だなんて、なぜですの?」
「ケネスが欲しかったのさ。シュザンナの存在が邪魔だったのだろう。うちの娘を恐喝してきた。別の男と関係を持ったと証言させると」
さすがに母も意味が分からなかったのだろう。公爵家の、それこそ箱入りと自他ともに認められている自分の娘に、そんな疑惑をかけられるなどと言うことが。
「どういうことですの?」
「自国の騎士を連れてきていた。その男が証言すると言うのだ。うちの娘と関係を持ったと。したがってもう婚約にふさわしくないと破棄させようとした」
「なんてことを」
母が絶句した。
「だが、証言はなかった。ケネスは婚約破棄だけすると、途中で壇から降りてしまった。続きを言う間がなかったんだ。助かったよ」
「でも、婚約破棄だけでも、大ダメージですわ」
母はわめいたが、父は首を振った。
「ダメージを食らうのはむしろケネスの方だろう。訳の分からない破棄だとね。真実の愛を探すそうだ。意味が分からない。だが、どちらにしても、誰も気にしないといいね」
「気にしますわ!」
「多分、あまり問題にされないと思うよ。なぜならアマンダ姫の婚約破棄は二度目だからだ。ほぼ同じ手口で、まだ半年もたっていない」
「なんですって?」
これには私も、母と一緒に驚いた。
「王女なのだから、小さいころから婚約は決まっていた。だが、彼女は付き添いだった若い騎士が好きになって、父王に頼んで自分の婚約を解消し、その若い騎士の婚約を破棄させた。そして自分と結婚する手筈を整えた。半年前の話だ」
「その騎士と相思相愛だったのですか?」
父は首を振った。
「騎士には別に婚約者がいた。その相手を愛していたので、婚約破棄を嫌がった。王家に仕えるくらいだから結構な大貴族の息子だった。アマンダ王女が婚約者の娘の醜聞をねつ造して別れさせた」
「もしかして、不倫とか?」
自分の言うことを聞く誰かを使って、偽の証言を仕立て上げ、令嬢の名誉を傷つけたのだろうか。
「うむ。二番煎じだな。想像力がないらしい」
母には何の話かわからなかったらしい。食堂での恐喝の話を知らないから、当然だけど。
「つまり、シュザンナと同じように、男と関係があったと証言させたらしい。娘の方は修道院に入った。騎士の方は、叙爵させられて公爵になったが、途中でアマンダ姫の方が飽きて、婚約はなかったことになった」
飽きたとは。考えてみれば、そりゃ嫌になるかもしれない。だって自分のことを好きになってくれた人ではないのですもの。
内心では憎まれていただろう。
そんな男と結婚しても、いいことがあるわけがない。
「まあ、騎士の方は公爵位を返上して、元の恋人を修道院から救い出したそうだ。そして結婚した。アマンダ姫の方はこの国へ留学を希望した」
これ、めでたしめでたしなのかしら? 元さやと言うか?
「強いて言うなら、真実の愛を探しているのはアマンダ王女の方だな」
「それは好きにしていただいても構いませんけど、他人を巻き込むのはやめて欲しいですわ」
母が言った。私が生まれて初めて聞いた、母のきわめて穏当な言葉だった。
父は嫌になった様子だった。
「オズボーン侯爵は、もし、アマンダ姫がまとわり続けるなら、そして、それなりの見返りがあるならケネスを結婚させてもいいと言っている。オズボーン侯爵の言う通りだろう。相手は王家だ。対抗手段がないのだ」
「そんなっ……シュザンナはどうなりますの?」
母は結構必死だった。
「他を探すしかないだろう。オズボーン侯爵家は出来るだけのことはした。ケネスが醜聞の広まりを体を張って阻止してくれた。婚約破棄さえすれば、醜聞の公表はない。それに今回は二回目。アマンダ姫の婚約破棄騒動は知れ渡っている。シュザンナを修道院に入れる必要はないだろう。オズボーン家と当家から、王家とも連絡を入れたうえでアマンダ王女に抗議するしかあるまい。他家の娘を根拠もないのに不倫呼ばわりとはどういうことだ」
「事実無根ですわ。ひどすぎるわ」
「だけど、まだ、公言していないのだ。不倫だと証言させているわけではない。やるかもしれないと言う恐喝どまりだ。シュザンナは何事もなかったかのように普段通り学園に通いなさい。堂々としているのだ。婚約破棄は、ケネスの意向だし、アマンダ姫が流そうとした不倫とかいう噂は完全に無視して否定するのだ」
アマンダ王女に恐喝された上に、婚約破棄にも堂々としていなさいだなんて!
私のライフはもうゼロですわ。
父は私の顔をじろりと見た。
「メガネをかけていてよかったな。男に声をかけるようにはとても見えん」
……母のほかに父も大嫌いだ。
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