【完結】婚約者の真実の愛探しのお手伝い。私たち、愛のキューピッドなんです?

buchi

文字の大きさ
17 / 58

第17話 アマンダ王女被害者の会

しおりを挟む
ウィリアムがケネスの最新情報をもたらしてくれた。



「かわいい女の子が好きだって言ってたよ。抱きしめたくなるような子が」



「却下。好みが全然わからない。むしろ、それは結果でしょう」



「えーと、あと、足元が軽い子が好きだって。どたどた歩くような女の子は嫌いだって」



「それしかわからないの。じゃあ仕方ないわね」









私がお茶会を開催することになった。公爵家の令嬢が主催するお茶会だ。



私たちは人選をした。



ケネスの好みに合わせて、華奢でかわいらしい女の子、アリス・ガーラント伯爵令嬢とマリオン・ギース子爵令嬢をお客さまに呼んだ。二人とも、美人で有名で、まだ婚約者が決まっていない。侯爵家の嫡子なら、候補に入れてもらえるんじゃないだろうか。



問題は、あれほど呼んでも私の家に寄りつかなかったケネスの方だった。



「でも、今は婚約者じゃないし、それほど気にしないんじゃないかしら」



呼ぶ方法がなかったが、アーノルドがその役を買って出てくれた。



内心、ドキドキだったが、案外簡単にOKが出た。拍子抜けした。



「むしろ、喜んでって感じだったよ」



ちょっと意外そうにウィリアムが言った。



「断って欲しかったわけじゃないでしょうね」



ルシンダが厳しく問いただした。この頃、ルシンダがウィリアムに厳しい気がする。



「まさか。何言ってるんだ、ルシンダ」



ウィリアムが、心底意外そうにルシンダに言った。



「ぜひ来てくれなくちゃ。どうあっても説得するつもりだったんだけど、二つ返事で、こっちが驚いたくらいだ」





このお茶会はかなり変なお茶会だった。メンバー構成も妙だったし、男性が混じるのも本来おかしい。成立が危ぶまれたが、会の大義名分を聞くと誰もが許す気になってくれた。



題して「アマンダ王女被害者のためのお茶会」



名付けたのはルシンダで、ネーミングセンスのなさに私は抗議したが、うちの使用人まで含めて、この会の名前をささやかれると、皆ほろりとして、会の開催に賛同してくれるのである。



アリス・ガーラント伯爵令嬢とマリオン・ギース子爵令嬢に至っては、最初、あまり乗り気でなかったものが、会の名前を聞いた途端に、強く出席を希望してくれた。それどころか、友達まで呼んできそうな勢いだった。



まあ、あの婚約破棄劇の舞台裏が聞けると思ったら、参加者は殺到するだろう。



ケネスには会の名前を教えなかった。絶対に言ってはならないとルシンダが箝口令かんこうれいを敷いたからである。





しかし、当日、やって来たケネスが開口一番に言ったのは、

「『アマンダ王女被害者の会』だって?」



アリス・ガーラント伯爵令嬢とマリオン・ギース子爵令嬢を含めた七人は、初対面のわりに、全然、話題に困らなかった。こんなにスムーズに盛り上がれるお茶会は初めてだ。



「アマンダ王女って、結局ワガママなんだよ」



そう言うケネスを、食い入るようにブロンド頭のアリスと濃い茶色の巻き毛のマリオンが見つめる。二人とも、相当ケネスが気に入ったに違いない。着ているドレスも気合が入っているなと私は苦笑した。



「誰にでも気に入られると思っていたみたい。王女だから当然と言えばそうなんだけどね。でも、ここは自国ではないから、自分の国にいるよりハードルは上がっているはずなのにね」



ケネスは断り切れなかったと言った。

二人のケネス好みの女の子たちは、熱心に聞き入っていた。



私は気を利かせて、二人の令嬢をケネスの両隣りに配置しておいたのである。



「身分の高い王女様なんだから失礼は出来ないしね。こんなこと、言うこと自体が、もう失礼なんだけど」



「真実の愛探しって、どういうことなんだよ」



ウィリアムが聞くと、さすがにケネスは顔を赤くした。



「いやだって、そうでも言わないとまずいだろ」



「ああ、そうだったんだ。本気じゃなかったんだ」



アーノルドが納得したと言う様子で言った。



まあ、真実の愛を求めて現役の婚約者を、事前に何の相談もなく廃棄処分するだなんて、頭がどうかしている。



「本気って……たとえば誰か好きな女性が本当にいたとしても、その名前を言うとアマンダ王女が何をしでかすかわからないでしょう?」



の婚約者の私に対しても、すごい脅しをかけてきましたものね」



つい、嫌味を言ってしまったが、これくらいは許されるだろう。最初で最後だ。その代わり、彼は自由になれたんだもの。



通じたのか通じなかったのか、彼はさらに赤くなった。



「誰か、架空の人にしないといけなかったんだよ。だから、ああ言っただけで……」



これは少女たちには高得点だったらしい。



真実の愛探しは、大声で公表するテーマではない。声高に叫ぶ人は、ものすごいナルシストかも知れないわけで……。



もっとも彼も私も、みんな内心では真実の愛を探しているのかもしれないけど。





彼女たちはちょっと顔を見合わせると、ケネスに向かってニコリと微笑んだ。



イケメンは威力がある。少し垂れ目の愛らしいアリス嬢が甘えるような声でケネスに何か話かけ始めた。マリオン嬢もにっこりとほほえみながら、何事か口をはさんでいる。



私たちは作戦が成功したような満足感を味わいながら、その様子を鑑賞していた。



隣の席のウィリアムがニヤリと笑って得意そうにこちらを見てきた。







会の終わりの頃、私はさりげなく言ってみた。



「オズボーン様、ご令嬢のどちらかを送って行ってくださらないでしょうか?」



もう、ケネス呼びはしない。彼は幼馴染かも知れないが、婚約者ではない。



パッとアリス嬢とマリオン嬢の目が光った……ような気がした。



ケネスは極めて穏当に、二人の家の場所を聞き出してから、家が自分の屋敷に近い方の少女を送って行くと言いだした。



私のことは送ってくれたことが一度もないのにな。



まあ、どう見てもあの二人の方がかわいらしい。



ウィリアムがそばに寄って来て囁いた。



「お嬢様、お宅まで送らせてください」



私はウィリアムをにらんだ。何の冗談なの?



「私の家はここよ」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。 彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。 ――その役割が、突然奪われるまでは。 公の場で告げられた一方的な婚約破棄。 理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。 ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。 だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。 些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。 それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。 一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。 求められたのは、身分でも立場でもない。 彼女自身の能力だった。 婚約破棄から始まる、 静かで冷静な逆転劇。 王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、 やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。 -

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

4人の女

猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。 うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。 このご婦人方には共通点がある。 かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。 『氷の貴公子』の異名を持つ男。 ジルベール・タレーラン公爵令息。 絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。 しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。 この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。 こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。

別れたいようなので、別れることにします

天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。 魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。 命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。 王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

【完結】3度婚約を破棄された皇女は護衛の騎士とともに隣国へ嫁ぐ

七瀬菜々
恋愛
 先日、3度目の婚約が破談となったモニカは父である皇帝から呼び出しをくらう。  また皇帝から理不尽なお叱りを受けると嫌々謁見に向かうと、今度はまさかの1回目の元婚約者と再婚約しろと言われて----!?  これは、宮中でも難しい立場にある嫌われ者の第四皇女モニカと、彼女に仕える素行不良の一途な騎士、そして新たにもう一度婚約者となった隣国の王弟公爵との三角関係?のお話。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

処理中です...