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第19話 アルクマールに帰ろう
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私はエドを拾って来た経緯を話さなくてはならなかった。
「お前は、痩せ細った男が好きなんだと思ってたけど、なんなんだい? あの筋肉隆々としたやたらに逞しい男は?」
「最初はガリガリだったのよ」
私は弱々しく言い訳した。どうしてこんな言い訳をしなくてはならないのかしら?
「大体、ポーションなんか作るからいけないんだよ」
おばあさまは私を非難した。
「他に方法があるだろう?」
「何も思いつかなかったのよ」
「挙句、あんなのを飼育していたとは! 立派な肉付きになってしまって! 食べるわけでもあるまいに」
「……まずそう」
「まあ、名前を名乗らなかったのは上出来だ。先に追い出しておいたから、ここに、お前がずっと住んでいると信じているに違いない」
「私もそう言っておいたわ」
「魔法を散々使ったからね。バレると困るから、この城は封じておこう」
「封じるって? どうなるの?」
「たどり着けない」
真面目な顔をしておばあさまは言った。
「村から城の塔は見える。だが、どんなにここを目指してもあの石畳の道を見つけられない。城の扉まで行き着けない」
それは……
「村人も入れない。元々、伝説の城だった。きっとお前も伝説になるだけだ。あの若者は二度とこの城に入れない」
それは、エドは悲しむのじゃないかしら。
私は必要に迫られて、恐ろしくいろんな種類の魔法を使えるようになっていたが、おばあさまに叱られた。
「どれも粗い」
おばあさまに言われた。
「ドレスは実用一点張り、料理はお腹いっぱいになるものばかり、繊細な味付けとは程遠い。あの男が太るはずだよ」
おばあさまは文句ばかり。
「人に注意されないで、自分の好き放題にしていたら、進歩はないよ。他人の意見は聞くものだ」
私は、ラビリアの意見を取り入れて、おいしい牧草や、カエルの意見でおいしいハエや羽虫を作った。
おばあさまは、満足げなラビリアや太ってしまったカエルを見ていたが、自分も注文した。
「レモンパイが食べたい。それから骨付き肉の一品、なんでもいいよ」
熱いお茶と言われた品々を全部出すと、おばあさまは満足したらしかった。
「うーん。おいしい。……疲れたよ。私は引退したい。揉め事があると必ず引っ張り出されるんだ」
私とラビリアは、おばあさまを寝室に連れて行った。
おばあさまは、確かに以前より疲れやすくなっている。
私は不安になった。
ちゃんと勉強しなくちゃと思った。魔法以外のこともだけど、魔法は私が継がなくてはならない。
おばあさまは情報を集めてきた。私も頑張らないと。
「クリスティーナ、りっぱな大人になるんだよ。りっぱな魔女にね。明日は、アルクマールに帰ろう」
私はなかなか眠れなかった。
エドはどうするだろう。
おばあさまの魔法の仕上げは完璧だ。
城は絶対に見つからない。
でもきっと彼は探し続けるだろう。いつか諦める時が来るのだろうか。
アルクマールの王城を目指すと言っていたが、よほどの身分でないと王城には入れない。国王にお目にかかるだなんてとんでもない。
だって、彼はオンボロの擦り切れた騎士服しか持っていないのだもの。
「お金を渡しておけばよかった」
そしたら、ちょっとはマシな格好になって、国王にお目通りが叶うかも知れないのに。
王宮に出入りできたら、もしかしたら、会うことだって可能かも知れないのに。
でも、私にはわかっていた。彼はプライドが高いのだ。
絶対、私からのお金なんか受け取らない。
「お前は、痩せ細った男が好きなんだと思ってたけど、なんなんだい? あの筋肉隆々としたやたらに逞しい男は?」
「最初はガリガリだったのよ」
私は弱々しく言い訳した。どうしてこんな言い訳をしなくてはならないのかしら?
「大体、ポーションなんか作るからいけないんだよ」
おばあさまは私を非難した。
「他に方法があるだろう?」
「何も思いつかなかったのよ」
「挙句、あんなのを飼育していたとは! 立派な肉付きになってしまって! 食べるわけでもあるまいに」
「……まずそう」
「まあ、名前を名乗らなかったのは上出来だ。先に追い出しておいたから、ここに、お前がずっと住んでいると信じているに違いない」
「私もそう言っておいたわ」
「魔法を散々使ったからね。バレると困るから、この城は封じておこう」
「封じるって? どうなるの?」
「たどり着けない」
真面目な顔をしておばあさまは言った。
「村から城の塔は見える。だが、どんなにここを目指してもあの石畳の道を見つけられない。城の扉まで行き着けない」
それは……
「村人も入れない。元々、伝説の城だった。きっとお前も伝説になるだけだ。あの若者は二度とこの城に入れない」
それは、エドは悲しむのじゃないかしら。
私は必要に迫られて、恐ろしくいろんな種類の魔法を使えるようになっていたが、おばあさまに叱られた。
「どれも粗い」
おばあさまに言われた。
「ドレスは実用一点張り、料理はお腹いっぱいになるものばかり、繊細な味付けとは程遠い。あの男が太るはずだよ」
おばあさまは文句ばかり。
「人に注意されないで、自分の好き放題にしていたら、進歩はないよ。他人の意見は聞くものだ」
私は、ラビリアの意見を取り入れて、おいしい牧草や、カエルの意見でおいしいハエや羽虫を作った。
おばあさまは、満足げなラビリアや太ってしまったカエルを見ていたが、自分も注文した。
「レモンパイが食べたい。それから骨付き肉の一品、なんでもいいよ」
熱いお茶と言われた品々を全部出すと、おばあさまは満足したらしかった。
「うーん。おいしい。……疲れたよ。私は引退したい。揉め事があると必ず引っ張り出されるんだ」
私とラビリアは、おばあさまを寝室に連れて行った。
おばあさまは、確かに以前より疲れやすくなっている。
私は不安になった。
ちゃんと勉強しなくちゃと思った。魔法以外のこともだけど、魔法は私が継がなくてはならない。
おばあさまは情報を集めてきた。私も頑張らないと。
「クリスティーナ、りっぱな大人になるんだよ。りっぱな魔女にね。明日は、アルクマールに帰ろう」
私はなかなか眠れなかった。
エドはどうするだろう。
おばあさまの魔法の仕上げは完璧だ。
城は絶対に見つからない。
でもきっと彼は探し続けるだろう。いつか諦める時が来るのだろうか。
アルクマールの王城を目指すと言っていたが、よほどの身分でないと王城には入れない。国王にお目にかかるだなんてとんでもない。
だって、彼はオンボロの擦り切れた騎士服しか持っていないのだもの。
「お金を渡しておけばよかった」
そしたら、ちょっとはマシな格好になって、国王にお目通りが叶うかも知れないのに。
王宮に出入りできたら、もしかしたら、会うことだって可能かも知れないのに。
でも、私にはわかっていた。彼はプライドが高いのだ。
絶対、私からのお金なんか受け取らない。
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