5 / 27
第5話 娼館へ行く
しおりを挟む
翌日の夕方、私は無理矢理馬車に乗せられて、メアリが必死になって止める声を聴きながら、どこかに連れていかれた。
家の者ではない御者がニヤニヤしながら馬車から降ろしてくれた。
「お盛んですねえ」
そんなことを言われても、何と答えたらいいのか。
結構大きくて豪華な、どこかの金回りのいい商人か、小貴族でも住んでいそうな一軒家だった。
少し奥まったところに建っていて、馬車の出入りも目立たない。
私はもうドキドキしていた。
どうしてこんなことになったのか。
うやうやしい態度で、一人の男がすぐに迎えに出てきた。
私は呆然として、その男を見つめた。
「これは奥様、初めてのご利用で」
「そんなことはありません。これまで、もっと下品な娼館をさんざん使ってきたのよ。それで、ご主人がせめて目立たない娼館で遊ぶようにとここを紹介してきたの」
後ろから甲高い声でカザリンが言った。
「おや、奥様もご利用ですか?」
物柔らかで、揉み手でもしかねない感じの男はカザリンに向かって尋ねた。
「えっ? でも、あの、高いんでしょう?」
男はうなずいた。
「それはもういい男をそろえていますから。楽しいですよ。話の得意な気持ちのいい男、立派な筋肉の男、すばらしいイケメン……」
「イケメン……」
カザリンがこんな顔をするだなんて知らなかった。
「奥様の料金につけてしまえばいいではありませんか。バレっこありませんよ。気の利いた奥様は、侍女にも気持ちよく遊ばせてくれるものです」
何か言いたかったが、どう反論したらいいか分からなくて、黙っているしかなかった。
カザリンは身をくねらせた。
「顔を見せてもらえるの?」
「もちろんですよ」
合図をすると、もう一人の男が……こっちは老年の、痩せた、元はきっと男前だったに違いない目つきの悪い男が寄って来て、カザリンを連れて行ってしまった。
「どんな男がお好みですかね?」
私は叫び出しそうになった。
旦那様との最初の晩を思い出したのだ。なぜ、お金を払って、あんな思いをしなくちゃいけないのか。
「帰らせてください」
私は必死になって言った。
「まあまあ。気が変わりますよ。話をよく聞いてくれる男もいます。あなたはここに七日七晩居続けることになっています。それだけの料金をいただいているんで、ここにいてもらわなくちゃいけません。歓待しますよ」
家の者ではない御者がニヤニヤしながら馬車から降ろしてくれた。
「お盛んですねえ」
そんなことを言われても、何と答えたらいいのか。
結構大きくて豪華な、どこかの金回りのいい商人か、小貴族でも住んでいそうな一軒家だった。
少し奥まったところに建っていて、馬車の出入りも目立たない。
私はもうドキドキしていた。
どうしてこんなことになったのか。
うやうやしい態度で、一人の男がすぐに迎えに出てきた。
私は呆然として、その男を見つめた。
「これは奥様、初めてのご利用で」
「そんなことはありません。これまで、もっと下品な娼館をさんざん使ってきたのよ。それで、ご主人がせめて目立たない娼館で遊ぶようにとここを紹介してきたの」
後ろから甲高い声でカザリンが言った。
「おや、奥様もご利用ですか?」
物柔らかで、揉み手でもしかねない感じの男はカザリンに向かって尋ねた。
「えっ? でも、あの、高いんでしょう?」
男はうなずいた。
「それはもういい男をそろえていますから。楽しいですよ。話の得意な気持ちのいい男、立派な筋肉の男、すばらしいイケメン……」
「イケメン……」
カザリンがこんな顔をするだなんて知らなかった。
「奥様の料金につけてしまえばいいではありませんか。バレっこありませんよ。気の利いた奥様は、侍女にも気持ちよく遊ばせてくれるものです」
何か言いたかったが、どう反論したらいいか分からなくて、黙っているしかなかった。
カザリンは身をくねらせた。
「顔を見せてもらえるの?」
「もちろんですよ」
合図をすると、もう一人の男が……こっちは老年の、痩せた、元はきっと男前だったに違いない目つきの悪い男が寄って来て、カザリンを連れて行ってしまった。
「どんな男がお好みですかね?」
私は叫び出しそうになった。
旦那様との最初の晩を思い出したのだ。なぜ、お金を払って、あんな思いをしなくちゃいけないのか。
「帰らせてください」
私は必死になって言った。
「まあまあ。気が変わりますよ。話をよく聞いてくれる男もいます。あなたはここに七日七晩居続けることになっています。それだけの料金をいただいているんで、ここにいてもらわなくちゃいけません。歓待しますよ」
49
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
婚約破棄のお相手は
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、ギリアム王子が平民の婚約者に婚約破棄を宣言した。
幼い頃に「聖女では」とギリアムの婚約者として引き取られたものの、神聖力が発現しなかったロッティナ。皆は婚約破棄されるのも当然だと思っていたが……。
【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?
チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。
そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。
約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。
しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。
もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。
リディアは知らなかった。
自分の立場が自国でどうなっているのかを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる