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第23話 離婚届と婚姻届、同時サイン
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よっぽどカザリンに証言して欲しくなかったのか、シャーロット姉様の言葉が効いたのか、何日か後には、満足した様子のジョージ義兄様が、スノードン侯爵サイン済みの離婚の契約書を持って帰って来た。
飛びつくように読んだのはリオンだった。私ではなく。
「やったー!」
彼は、降るようにやって来るいろいろな会のご招待を全部断って、シャーロット姉様の家で待機していた。
「下手に出席したら、令嬢たちとお知り合いになったり、断り切れないパーティに参加しなくちゃいけなくなったりする」
リオンは説明した。
「トマシンと一緒に行きたいんだ」
「あのう、離婚後、一人ずつではなくて、合わせて二人一緒に出ると、元々浮気していたんではと疑われて……」
「大丈夫。任せて」
リオンの『任せて』はなんか怖い。
今回、カザリンは驚くべきスピードで発見された。
カザリンのお気に入りだった男が、偶然を装ってカザリンに近づき、「運命の出会いだネ」とか言って連れ出したらしい。
「一緒に来てほしいんだ。僕を助けると思って」
などと言って。
彼らが助かることは間違いない。手が省けたと言う意味で。
そして、カザリンは軍団の言うがままに、スラスラと証言を約束し、スノードン侯爵あてに手紙を書いてくれたそうだ。
手紙のタイトルは、『私は知っている』
「私は知っている? 何を?」
「文案を書いたのは僕だ。僕とジョージ」
リオンは得意そうだった。
「君が通っていたことになっていた最低最悪の娼館は、ルシンダが経営していたんだ。今、警察の手が入っている」
私はうなずいた。あり得る話だ。大体、娼館へ行かせようだなんて、普通の平民は思いつかないだろう。
「侯爵ともあろう人物が、娼館の経営者と結婚するだなんて、絶対考えられないよ。しかも、現在、不衛生と無許可だった件で捜索されている。カザリンは、侯爵が娼館の経営に手を染めていたと証言することになっていた」
「えええ?」
私は思わず叫んだ。
「あり得ない。スノードン侯爵が関わったら、今ごろ、その娼館はつぶれていますわ。彼、商才はゼロよ?」
「問題はそっちじゃないよ。まあ、商才はなさそうだけどね。不法の娼館の経営に携わっていたことがバレたら、彼は名実ともに身の破滅だ」
「もちろん、そうですわ。でも、ルシンダはスターリン侯爵には、何も知らせなかったはずよ? 経営関与はカザリンの嘘よ」
「証言は、そう聞かされたと言う内容だ。だから真実である必要はない」
「いくら真実でなくても、証言されたら、大騒ぎになると思うわ」
シャーロット姉様がつぶやいた。
「侯爵は娼館への関与を否定するだろう。すると、今度は、調査が必要になる。関与があったかなかったか。次に登場するのは、ルシンダだ」
侯爵はルシンダの証言は怖いだろう。
何を言われるかわからない。
ルシンダを繋ぎ留めたかったら、絶対に結婚しなくちゃいけない。
侯爵と娼館の女将の結婚! まだ、私と偽装結婚のまま過ごした方がマシだろう。私は嫌だけど。
だけど、結婚しなかったら、ルシンダは何を言うだろう? 大勢の聴衆の前で。
きっと侯爵に復讐するだろう。
侯爵に不利な、あることないこと、いくらでも話すだろう。
身の破滅どころではない。いわれのない罪で投獄される可能性だってあるのだ。
「裁判を取り下げれば、その危険はなくなる。証言者の出番がなくなるからね」
ジョージ義兄様が、ひらりと机の上に紙を置いた。
私のサインを待っている、離婚の証書。
離婚の条件として多額の慰謝料が書き込まれていた。
「これだけあれば、トマシン一人なら一生暮らしていける」
早い話が脅迫だ。
侯爵本人に付け入られる隙があったにせよ、ここまでキツく脅迫されるだなんて。
ほんの少しだけ侯爵が気の毒になって来た。
「一生借金と資金繰りで苦しめばいい。さあ、トマシン」
リオンが割り込んできた。悪い顔で笑っている。
なんとなく察したわ。絶対リオンが一枚噛んでいる。
「次はこっちだよ? 離婚届けにサインして自由になった後は、これにサインして僕のものになるんだ」
リオンが別な紙を出してきた。上質な紙で金の飾りがついていた。
婚姻届けだ。
「早すぎる。無理だよ。少し期間を開けないと……」
ジョージ義兄様がリオンに注意したが、リオンは聞いちゃいなかった。
リオンの手が私の手を上からかぶさるように握って、離婚届けにサインさせようとしていた。
「トマシン、書いて」
「書くわ。念願の離婚証書ですもの」
私はリオンに言った。絶対、サインする。ついに自由になるのだ。
緊張でちょっと字がゆがんでしまったが、私はサインした。今度は両親のサインなんか要らない。
「次、これ」
さっきの上質紙が出てきた。
「リオン、いや、クレマン伯爵、今はまだ出せない……」
ジョージ義兄様が、もう一度注意した。
「日付はもちろん入れないよ?」
リオンは、私の顔を見つめてにこりとした。とても、満足そうだ。
「この紙は僕が預かっておくよ。出していい時になったら、いつでも僕が出すからね」
飛びつくように読んだのはリオンだった。私ではなく。
「やったー!」
彼は、降るようにやって来るいろいろな会のご招待を全部断って、シャーロット姉様の家で待機していた。
「下手に出席したら、令嬢たちとお知り合いになったり、断り切れないパーティに参加しなくちゃいけなくなったりする」
リオンは説明した。
「トマシンと一緒に行きたいんだ」
「あのう、離婚後、一人ずつではなくて、合わせて二人一緒に出ると、元々浮気していたんではと疑われて……」
「大丈夫。任せて」
リオンの『任せて』はなんか怖い。
今回、カザリンは驚くべきスピードで発見された。
カザリンのお気に入りだった男が、偶然を装ってカザリンに近づき、「運命の出会いだネ」とか言って連れ出したらしい。
「一緒に来てほしいんだ。僕を助けると思って」
などと言って。
彼らが助かることは間違いない。手が省けたと言う意味で。
そして、カザリンは軍団の言うがままに、スラスラと証言を約束し、スノードン侯爵あてに手紙を書いてくれたそうだ。
手紙のタイトルは、『私は知っている』
「私は知っている? 何を?」
「文案を書いたのは僕だ。僕とジョージ」
リオンは得意そうだった。
「君が通っていたことになっていた最低最悪の娼館は、ルシンダが経営していたんだ。今、警察の手が入っている」
私はうなずいた。あり得る話だ。大体、娼館へ行かせようだなんて、普通の平民は思いつかないだろう。
「侯爵ともあろう人物が、娼館の経営者と結婚するだなんて、絶対考えられないよ。しかも、現在、不衛生と無許可だった件で捜索されている。カザリンは、侯爵が娼館の経営に手を染めていたと証言することになっていた」
「えええ?」
私は思わず叫んだ。
「あり得ない。スノードン侯爵が関わったら、今ごろ、その娼館はつぶれていますわ。彼、商才はゼロよ?」
「問題はそっちじゃないよ。まあ、商才はなさそうだけどね。不法の娼館の経営に携わっていたことがバレたら、彼は名実ともに身の破滅だ」
「もちろん、そうですわ。でも、ルシンダはスターリン侯爵には、何も知らせなかったはずよ? 経営関与はカザリンの嘘よ」
「証言は、そう聞かされたと言う内容だ。だから真実である必要はない」
「いくら真実でなくても、証言されたら、大騒ぎになると思うわ」
シャーロット姉様がつぶやいた。
「侯爵は娼館への関与を否定するだろう。すると、今度は、調査が必要になる。関与があったかなかったか。次に登場するのは、ルシンダだ」
侯爵はルシンダの証言は怖いだろう。
何を言われるかわからない。
ルシンダを繋ぎ留めたかったら、絶対に結婚しなくちゃいけない。
侯爵と娼館の女将の結婚! まだ、私と偽装結婚のまま過ごした方がマシだろう。私は嫌だけど。
だけど、結婚しなかったら、ルシンダは何を言うだろう? 大勢の聴衆の前で。
きっと侯爵に復讐するだろう。
侯爵に不利な、あることないこと、いくらでも話すだろう。
身の破滅どころではない。いわれのない罪で投獄される可能性だってあるのだ。
「裁判を取り下げれば、その危険はなくなる。証言者の出番がなくなるからね」
ジョージ義兄様が、ひらりと机の上に紙を置いた。
私のサインを待っている、離婚の証書。
離婚の条件として多額の慰謝料が書き込まれていた。
「これだけあれば、トマシン一人なら一生暮らしていける」
早い話が脅迫だ。
侯爵本人に付け入られる隙があったにせよ、ここまでキツく脅迫されるだなんて。
ほんの少しだけ侯爵が気の毒になって来た。
「一生借金と資金繰りで苦しめばいい。さあ、トマシン」
リオンが割り込んできた。悪い顔で笑っている。
なんとなく察したわ。絶対リオンが一枚噛んでいる。
「次はこっちだよ? 離婚届けにサインして自由になった後は、これにサインして僕のものになるんだ」
リオンが別な紙を出してきた。上質な紙で金の飾りがついていた。
婚姻届けだ。
「早すぎる。無理だよ。少し期間を開けないと……」
ジョージ義兄様がリオンに注意したが、リオンは聞いちゃいなかった。
リオンの手が私の手を上からかぶさるように握って、離婚届けにサインさせようとしていた。
「トマシン、書いて」
「書くわ。念願の離婚証書ですもの」
私はリオンに言った。絶対、サインする。ついに自由になるのだ。
緊張でちょっと字がゆがんでしまったが、私はサインした。今度は両親のサインなんか要らない。
「次、これ」
さっきの上質紙が出てきた。
「リオン、いや、クレマン伯爵、今はまだ出せない……」
ジョージ義兄様が、もう一度注意した。
「日付はもちろん入れないよ?」
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