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第18話 婚約者じゃなかったですと?!
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パーティは、多少混乱したが、みな噂の北の大帝国からの珍客を間近に見ることができて、満足して帰って行った。
後には、シャーロットと、モンゴメリ卿、シルビア・ハミルトン嬢、それにジャックが残った。残らざるを得なかったのである。
「ジャック・パーシヴァル様、ありがとうございます」
シャーロットは、何はともあれ礼を言った。
「うむ。ジャック、シャーロット嬢のためには助かったが……」
モンゴメリ卿は困った様子で切り出した。
「ジャック、シャーロット嬢はフレデリックの婚約者ではないけど、知っていた?」
「えっ?!」
ジャックは知らなかった。
彼は、シャーロットはフレデリックの婚約者だと信じていた。
あの場面は友人の危機だった。フレデリックの為に彼はとっさの嘘をついたのだ。
「フレデリック自身が婚約者に喜んでもらうにはどうしたらいいか、僕のところに相談に来たことがあって……」
フレデリック、そんな嘘を……。シャーロットは思ったが、彼の頭の中では勝手に確定事項になっていたのかもしれない。
「決まっていない。と言うか、フレデリックはまだ彼女から承諾を得ていない」
「僕はてっきり婚約したものと思ってました……親友の婚約者を他国の公爵に連れ去られるわけにはいかないと思って」
「私もそうじゃないかと思いましたのよ。でも、本当にうまいタイミングにあの場に来ましたね。あのタイミングで現れなければ、きっと公爵は納得しなかったと思いますわ」
シルビア嬢が言うと、モンゴメリ卿は少しばかり困ったような表情でシャーロットとジャックに向かって言った。
「とにかくうまくいった。だが、相手は大物の公爵だ。一応、全員で口裏を合わせておかないと……」
「全員とは?」
「フレデリックとそのご家族、マッキントッシュ嬢のご家族、ジャックと私とシルビア・ハミルトン嬢だな」
********************
玉の輿も、大帝国の公爵家ともなると話が変わる。
行き過ぎだ。
マッキントッシュ夫妻は、話を聞いた途端、文字通り真っ青になった。
この玉の輿は、乗ったら最後、彼らは娘に会うことも叶わなくなる。
「おお、シャーロット!」
夫人がシャーロットを抱きしめた。
「どうしたらいいんだ! もう、フレデリックでいいじゃないか! 結婚式を挙げてしまおう!」
「ダメよ、お父様」
シャーロットの方が冷静だった。
「ロストフ公爵は、フレデリックの顔も知らないのよ。ロストフ公爵が私の婚約者だと思っている人物はジャック・パーシヴァルなのよ。フレデリックとの結婚は意味がないわ」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
母親のマッキントッシュ夫人は娘を抱きしめたまま叫んだ。
********************
一方で、フレデリックの家ではジャックが冷静にフレデリック一家に説明していた。
フレデリックは真っ赤になって叫んだ。
「じゃあ、どうなるっていうんだ。シャーロット嬢はあんな圧政的な未開の帝国に連れ去られてしまうってことか?」
「婚約者がいる娘はさすがに連れて行かないらしい。それで便宜上、シャーロット嬢は婚約者がいて、それはフレデリックだと説明する羽目になった」
「おお。そうか!」
フレデリックは嬉しそうに叫び、父のベンも、
「この際、急いで結婚式を挙げてしまおう!」
と、叫んだが、ジャックが押しとどめた。
「それはダメなんだ。ロストフ公爵がどうしても婚約者の存在を疑うので、僕がなり代わった」
「なり代わった?……とは?」
「僕がフレデリック・ヒューズだと名乗った。パーティに婚約者と一緒に来ないなんておかしいと言われてね。だから、ロストフ公爵は、フレデリック・ヒューズとは僕のことだと思っている」
フレデリックと父のベンはジャックの顔を見つめ、大混乱に陥っていたが、じっと聞いていたヒューズ夫人が最後に大儀そうに言った。
「ごめんなさいねえ、ジャック。でも、このシーズンの間だけ、みんなが大人しくしていればどうにかなるわけよね。公爵は帰ってしまう訳だから」
「そうです」
「フレデリック、ゴチャゴチャ言ってないで、目立つところでシャーロット嬢と会ったりしちゃだめだよ。ロストフ公爵が国に帰ってしまうまで、このなりすましがバレなきゃいいだけなんだから」
「そうです。モンゴメリ卿は接待役のボードヒル子爵と従兄弟同士で親しいので、危ない時は連絡してくれることになっています」
気の毒なのはジャックである。しかし、ジャックが割り込んで、名乗りを上げてくれなかったらシャーロット嬢の北国行きは決定だった。一家は、特にフレデリックはジャックに頭を下げた。
フレデリックの一家はジャックを丁重に送り出したが、ヒューズ夫人はジャックが帰った後で、どこかの公爵ではないが「チッ」と言った。
人の婚約者候補に目を付けて、横取りしようとは!
面倒なことになったものだ。
「一応、マッキントッシュ家のエミリに手紙でも出そうかね。ほんとはジャックのおかげだけど、フレデリックとの婚約話がなかったら、シャーロットはその公爵に連れてかれちゃったかもしれないんだから、言ってみりゃ、フレデリックのおかげでもある。マッキントッシュ家も、ヒューズ家に感謝してもらいたいもんだよ。事が済んだら、そこんとこをよーくわかってもらって、婚約を進めよう」
彼女はニヤリとした。
マッキントッシュ家の商売と財産を思い起こしたのである。
フレデリックに財産を持たせてやりたくても、上の息子たちが反対するだろう。財産のない三男坊に、富豪の一人娘など願ってもない良縁だ。
世の中には、思いがけないことが起きるものだ。
これでフレデリックの結婚は決定的になり、息子の将来も保証されたようなものだ。
夫人は満足だった。むしろ、ロストフ公爵に感謝したいくらいだった。
後には、シャーロットと、モンゴメリ卿、シルビア・ハミルトン嬢、それにジャックが残った。残らざるを得なかったのである。
「ジャック・パーシヴァル様、ありがとうございます」
シャーロットは、何はともあれ礼を言った。
「うむ。ジャック、シャーロット嬢のためには助かったが……」
モンゴメリ卿は困った様子で切り出した。
「ジャック、シャーロット嬢はフレデリックの婚約者ではないけど、知っていた?」
「えっ?!」
ジャックは知らなかった。
彼は、シャーロットはフレデリックの婚約者だと信じていた。
あの場面は友人の危機だった。フレデリックの為に彼はとっさの嘘をついたのだ。
「フレデリック自身が婚約者に喜んでもらうにはどうしたらいいか、僕のところに相談に来たことがあって……」
フレデリック、そんな嘘を……。シャーロットは思ったが、彼の頭の中では勝手に確定事項になっていたのかもしれない。
「決まっていない。と言うか、フレデリックはまだ彼女から承諾を得ていない」
「僕はてっきり婚約したものと思ってました……親友の婚約者を他国の公爵に連れ去られるわけにはいかないと思って」
「私もそうじゃないかと思いましたのよ。でも、本当にうまいタイミングにあの場に来ましたね。あのタイミングで現れなければ、きっと公爵は納得しなかったと思いますわ」
シルビア嬢が言うと、モンゴメリ卿は少しばかり困ったような表情でシャーロットとジャックに向かって言った。
「とにかくうまくいった。だが、相手は大物の公爵だ。一応、全員で口裏を合わせておかないと……」
「全員とは?」
「フレデリックとそのご家族、マッキントッシュ嬢のご家族、ジャックと私とシルビア・ハミルトン嬢だな」
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玉の輿も、大帝国の公爵家ともなると話が変わる。
行き過ぎだ。
マッキントッシュ夫妻は、話を聞いた途端、文字通り真っ青になった。
この玉の輿は、乗ったら最後、彼らは娘に会うことも叶わなくなる。
「おお、シャーロット!」
夫人がシャーロットを抱きしめた。
「どうしたらいいんだ! もう、フレデリックでいいじゃないか! 結婚式を挙げてしまおう!」
「ダメよ、お父様」
シャーロットの方が冷静だった。
「ロストフ公爵は、フレデリックの顔も知らないのよ。ロストフ公爵が私の婚約者だと思っている人物はジャック・パーシヴァルなのよ。フレデリックとの結婚は意味がないわ」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
母親のマッキントッシュ夫人は娘を抱きしめたまま叫んだ。
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一方で、フレデリックの家ではジャックが冷静にフレデリック一家に説明していた。
フレデリックは真っ赤になって叫んだ。
「じゃあ、どうなるっていうんだ。シャーロット嬢はあんな圧政的な未開の帝国に連れ去られてしまうってことか?」
「婚約者がいる娘はさすがに連れて行かないらしい。それで便宜上、シャーロット嬢は婚約者がいて、それはフレデリックだと説明する羽目になった」
「おお。そうか!」
フレデリックは嬉しそうに叫び、父のベンも、
「この際、急いで結婚式を挙げてしまおう!」
と、叫んだが、ジャックが押しとどめた。
「それはダメなんだ。ロストフ公爵がどうしても婚約者の存在を疑うので、僕がなり代わった」
「なり代わった?……とは?」
「僕がフレデリック・ヒューズだと名乗った。パーティに婚約者と一緒に来ないなんておかしいと言われてね。だから、ロストフ公爵は、フレデリック・ヒューズとは僕のことだと思っている」
フレデリックと父のベンはジャックの顔を見つめ、大混乱に陥っていたが、じっと聞いていたヒューズ夫人が最後に大儀そうに言った。
「ごめんなさいねえ、ジャック。でも、このシーズンの間だけ、みんなが大人しくしていればどうにかなるわけよね。公爵は帰ってしまう訳だから」
「そうです」
「フレデリック、ゴチャゴチャ言ってないで、目立つところでシャーロット嬢と会ったりしちゃだめだよ。ロストフ公爵が国に帰ってしまうまで、このなりすましがバレなきゃいいだけなんだから」
「そうです。モンゴメリ卿は接待役のボードヒル子爵と従兄弟同士で親しいので、危ない時は連絡してくれることになっています」
気の毒なのはジャックである。しかし、ジャックが割り込んで、名乗りを上げてくれなかったらシャーロット嬢の北国行きは決定だった。一家は、特にフレデリックはジャックに頭を下げた。
フレデリックの一家はジャックを丁重に送り出したが、ヒューズ夫人はジャックが帰った後で、どこかの公爵ではないが「チッ」と言った。
人の婚約者候補に目を付けて、横取りしようとは!
面倒なことになったものだ。
「一応、マッキントッシュ家のエミリに手紙でも出そうかね。ほんとはジャックのおかげだけど、フレデリックとの婚約話がなかったら、シャーロットはその公爵に連れてかれちゃったかもしれないんだから、言ってみりゃ、フレデリックのおかげでもある。マッキントッシュ家も、ヒューズ家に感謝してもらいたいもんだよ。事が済んだら、そこんとこをよーくわかってもらって、婚約を進めよう」
彼女はニヤリとした。
マッキントッシュ家の商売と財産を思い起こしたのである。
フレデリックに財産を持たせてやりたくても、上の息子たちが反対するだろう。財産のない三男坊に、富豪の一人娘など願ってもない良縁だ。
世の中には、思いがけないことが起きるものだ。
これでフレデリックの結婚は決定的になり、息子の将来も保証されたようなものだ。
夫人は満足だった。むしろ、ロストフ公爵に感謝したいくらいだった。
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