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第17話 なりすまし
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誰もが一瞬凍り付いた。
沈黙を破ったのは、ハミルトン嬢だった。
「フレデリック、お久しぶりね! 間に合ったのね」
彼女は、はしゃいだような声を出した。
「遅くなりまして申し訳ございません」
ジャックが落ち着いた声で答えた。
「君がシャーロット嬢の婚約者?」
公爵は疑い深そうにジャックを眺めた。
「はい。フレデリック・ヒューズと申します」
ジャックは礼をしながらすらすらと答えた。
シャーロットがみるみる赤くなっていくのを見て、公爵はどうやら本物だと納得したようだった。
公爵は確かに、チッと舌打ちした。
公爵と言う身分の人としては、あるまじき品のない行為だったが、全員が胸をなでおろした。
どうやら、信じてもらえたらしい。
「まあ、目の前で見なかったら信じられなかったよ。その様子じゃ本当らしいな」
そんなわけないだろと、その場の全員が心の中で突っ込みを入れたが、なぜかうまい具合にシャーロット嬢の顔は真っ赤になっていた。その顔を見て、公爵は納得したらしい。シャーロット嬢、迫真の演技……なのだろうか。
「恐れ入ります」
ジャックは冷静そのものだった。
「ささ、公爵、そろそろ日が暮れようとしております。いったん、宿舎にお戻りになられて、そのあと、夜の街に繰り出すのはいかがでございましょうか? ちょうど、頃合いの案内人が見つかりまして」
ボードヒル子爵が近付いてきて、公爵に声をかけた。
「モンゴメリ卿が都合してくださいました。夜の街を隅々まで熟知しているそうでございます。まず、手始めにショーなどからいかがでしょう。気に入った踊り子がいれば、モンゴメリ卿の顔で楽屋まで入れるそうでございますよ?」
公爵は夜の街のご案内に気を惹かれたようだったが、シャーロットの顔を見据えた。
それから、ちょっと頬を崩して笑いかけて見せた。
「婚約者……と。まだ、結婚しているわけではない。なかなか忘れがたい可愛い娘だ。気が変わると言うこともあるだろう。いつでも、受け入れるよ。覚えておきなさい」
彼は子爵を伴って、ゆっくりと離れて行った。
モンゴメリ卿が出口まで付き従って、今晩の遊び場の説明をしているらしかった。
「それはいいな! 興味があるね!」
公爵のテノールの声が庭の奥の方まで聞こえてきた。
そして、彼の大きな姿が建物の中に入り、ものものしい大型の馬車がゆっくりとモンゴメリ卿の敷地を離れて行った途端、……緊張して様子をうかがっていたシャーロットの周りの連中は、ほっとして大声で笑い出した。
「よくやったな! ジャック! 惚れ直したぜ」
叫んだのは、ジャックもよく知っている貴族の息子だった。
「これで、あの公爵はマッキントッシュ嬢に手出してきないわ。もう、安心ね」
「実にいいタイミングに、すっと現れたな!」
同席していた連中は彼を褒めそやした。
シャーロットも、ほおを染めてジャックの顔を見上げた。
「でも、この話は公爵が出国するまで黙っておきましょう」
その場にいたうちで、最も年上のシルビア嬢がはしゃぐ若い連中に向かって言った。
「騙されたと聞いたら、きっと怒るわ」
「おっしゃる通りですね、ハミルトン嬢。私も恨みは買いたくありませんし」
ジャックが言った。
「そうだな! ジャックの為にもマッキントッシュ嬢の為にも黙っておくが、あの金髪がいなくなったら、思う存分ネタに使える」
自分も金髪の若い貴族の息子が言い、全員がニヤリとうなずいた。
「あら、いやだ」
陽気そうに騒いでいる横で、ハミルトン嬢が小さな声でつぶやいた。
真横にいたジャックだけが振り向いた。
「公爵は金髪に染めているのよ。地毛は黒。それから頭頂部はカツラなの。そっちの方がネタになると思うんだけど」
ジャックは思わず聞かないではいられなかった。
「なぜ、ご存じなのですか?!」
シルビア嬢はにっこり笑っただけだった。
沈黙を破ったのは、ハミルトン嬢だった。
「フレデリック、お久しぶりね! 間に合ったのね」
彼女は、はしゃいだような声を出した。
「遅くなりまして申し訳ございません」
ジャックが落ち着いた声で答えた。
「君がシャーロット嬢の婚約者?」
公爵は疑い深そうにジャックを眺めた。
「はい。フレデリック・ヒューズと申します」
ジャックは礼をしながらすらすらと答えた。
シャーロットがみるみる赤くなっていくのを見て、公爵はどうやら本物だと納得したようだった。
公爵は確かに、チッと舌打ちした。
公爵と言う身分の人としては、あるまじき品のない行為だったが、全員が胸をなでおろした。
どうやら、信じてもらえたらしい。
「まあ、目の前で見なかったら信じられなかったよ。その様子じゃ本当らしいな」
そんなわけないだろと、その場の全員が心の中で突っ込みを入れたが、なぜかうまい具合にシャーロット嬢の顔は真っ赤になっていた。その顔を見て、公爵は納得したらしい。シャーロット嬢、迫真の演技……なのだろうか。
「恐れ入ります」
ジャックは冷静そのものだった。
「ささ、公爵、そろそろ日が暮れようとしております。いったん、宿舎にお戻りになられて、そのあと、夜の街に繰り出すのはいかがでございましょうか? ちょうど、頃合いの案内人が見つかりまして」
ボードヒル子爵が近付いてきて、公爵に声をかけた。
「モンゴメリ卿が都合してくださいました。夜の街を隅々まで熟知しているそうでございます。まず、手始めにショーなどからいかがでしょう。気に入った踊り子がいれば、モンゴメリ卿の顔で楽屋まで入れるそうでございますよ?」
公爵は夜の街のご案内に気を惹かれたようだったが、シャーロットの顔を見据えた。
それから、ちょっと頬を崩して笑いかけて見せた。
「婚約者……と。まだ、結婚しているわけではない。なかなか忘れがたい可愛い娘だ。気が変わると言うこともあるだろう。いつでも、受け入れるよ。覚えておきなさい」
彼は子爵を伴って、ゆっくりと離れて行った。
モンゴメリ卿が出口まで付き従って、今晩の遊び場の説明をしているらしかった。
「それはいいな! 興味があるね!」
公爵のテノールの声が庭の奥の方まで聞こえてきた。
そして、彼の大きな姿が建物の中に入り、ものものしい大型の馬車がゆっくりとモンゴメリ卿の敷地を離れて行った途端、……緊張して様子をうかがっていたシャーロットの周りの連中は、ほっとして大声で笑い出した。
「よくやったな! ジャック! 惚れ直したぜ」
叫んだのは、ジャックもよく知っている貴族の息子だった。
「これで、あの公爵はマッキントッシュ嬢に手出してきないわ。もう、安心ね」
「実にいいタイミングに、すっと現れたな!」
同席していた連中は彼を褒めそやした。
シャーロットも、ほおを染めてジャックの顔を見上げた。
「でも、この話は公爵が出国するまで黙っておきましょう」
その場にいたうちで、最も年上のシルビア嬢がはしゃぐ若い連中に向かって言った。
「騙されたと聞いたら、きっと怒るわ」
「おっしゃる通りですね、ハミルトン嬢。私も恨みは買いたくありませんし」
ジャックが言った。
「そうだな! ジャックの為にもマッキントッシュ嬢の為にも黙っておくが、あの金髪がいなくなったら、思う存分ネタに使える」
自分も金髪の若い貴族の息子が言い、全員がニヤリとうなずいた。
「あら、いやだ」
陽気そうに騒いでいる横で、ハミルトン嬢が小さな声でつぶやいた。
真横にいたジャックだけが振り向いた。
「公爵は金髪に染めているのよ。地毛は黒。それから頭頂部はカツラなの。そっちの方がネタになると思うんだけど」
ジャックは思わず聞かないではいられなかった。
「なぜ、ご存じなのですか?!」
シルビア嬢はにっこり笑っただけだった。
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