【完結】君は友人の婚約者で、どういう訳か僕の妻 ~成り行きで婚約者のフリをしたら話がこじれ始めました。いろいろまずい

buchi

文字の大きさ
51 / 57

第51話 別の修羅場、開催される

しおりを挟む
「何をしている」

突然冷たい声がした。

おたがいに夢中になっていたシャーロットとジャックが目を上げると、着飾ったフレデリックが立っていた。パーティに来ていたのだ。

「ジャック……」

フレデリックは大男だ。ジャックよりだいぶ大きい。力もありそうだった。本気で怒っているようだった。それを必死で抑えている。

「君は、何をしているんだ。人の婚約者に向かって。そんな男だったか?」

それ、誤解ですから! 

……とシャーロットは叫びたかったが、声にならなかった。

フレデリックはジャックを見つめていた。

「あんたなら安心だと思っていた。友情に篤い男だ。信頼できる。それが、こんな……」

彼は一呼吸置いた。苦々しげだった。

「二人きりで話し込んでいるだなんて」

すみません。その前にファーストキスを済ませました。

「人間、間違いはある」

ジャックはしばらくフレデリックの顔を眺めていたが、落ち着き払って言いだした。

「え?」

「え?」

なんの間違い? まさか?

「実は彼女に結婚を申し込んでいた」

「なんだと? 人の婚約者にか?」

「婚約していないと思ったが」

「婚約は発表していないが、もう少しのところだ」

「もう少しのところは婚約とは言わない。ピアで一緒に暮らしている間に彼女に惹かれた」

「え……」

「ついては、譲っていただきたい」

「は?」

フレデリックは言葉の意味を理解するまでに少し時間がかかったが、真っ赤になった。

「だめだ」

「フレデリック、しかし、実はすでに……」

「えッ?」

「どういう意味?」

二人……というのはシャーロットとフレデリックのことだが、同時に激しくジャックの方を振り返った。

ジャックはいかにもつつましく二人に向かい合っていた。
そして、にっこり笑って見せた。

「あまりにもシャーロット嬢がかわいらしくて、つい」

フレデリックも驚いていたが、シャーロット嬢の方がもっと驚いていた。フレデリックは叫んだ。

「一体、マッキントッシュ夫人は何のためについて行ったんだ!」

「同じアパートメントだ。どうにかなる。そう思わないか?」

「思わない!」
「思わないわ!」

異口同音に二人が叫び、ジャックはいかにもしおらしくうつむいて言った。

「すまない、シャーロット、ばらしてしまって」

「何、言っているのよ!」

「ああ、本当なのか!」

「違うわ!」

「否定しないでくれ……」

「お前らは!……俺がバカだった!」

「そんなわけで責任を取らせてほしい」

ジャックがひっそりと目を輝かせた。

「申し訳ない。そして、このことはシャーロット嬢の名誉のために黙っておいてくれ」

「それは……それは、黙っておくが、シャーロット嬢、君は……」

フレデリックは真っ赤になって憤怒に駆られているシャーロットの顔を見た。

「なんて、行動的なんだ……」

「そんな事実はありません! ジャック、なんてことを言いだすの?」

「うん。フレデリックはいいやつなんだ」

「俺は、いい奴なんかではない! だが、ジャック、お前は……クソだな」

殴られなくてよかった。

フレデリックは去って行き、そしてジャックはシャーロットに向かって言った。


「さて、フレデリックは本当にいいやつなんだよ、シャーロット」

「どこが? そしてさっきのは何?」

「大丈夫。フレデリックは女を寝取られたのは初めてじゃないんだ。でも、一度だって、寝取られた女を悪く言ったことはない。紳士だからな。心配いらない」

「え?」

「いいじゃないか。結婚してくれるんだろう? シャーロット」

「ねえ、ジャック、あなた、本当にフレデリックと親友なの?」

ジャックはニヤっと歯を見せて笑った。

「親友かな? 友情って、なんなんだろうな。モンゴメリ卿やハミルトン嬢とかわしているのは友情かも知れないな。尊敬と仲間意識かな?」

彼は付け加えた。

「言っとくけど、僕は君が君だからどうしても結婚したい。でも、自分の家の家業を継げないからと言って、マッキントッシュ家の跡取り娘との結婚を好ましく思うのは愛情なの?」

シャーロットにはわからなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~

夏笆(なつは)
恋愛
 ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。  ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。 『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』  可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。  更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。 『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』 『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』  夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。  それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。  そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。  期間は一年。  厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。  つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。  この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。  あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。    小説家になろうでも、掲載しています。 Hotランキング1位、ありがとうございます。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...