重ねる

たこみ

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第四話 To see you

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日和ひよりは待ち望んでいる。
彼女いわく、前世の記憶に強い想いがあるようで、SNSで知り合ったという人たちと、臆することなく今度顔を合わせることになったらしい。

正直日和と同じような思いに駆られている人たちがそこそこいたことに私は驚かされた。

できる努力はするところがあの子のいいところなので、応援はしたいが互いを知らないのによく会う気になるなと思ってしまう。

「大丈夫よ」
さらっと言い切る日和に忘れちゃダメだと警告する。

「たとえ前世の話で共鳴しあっても、個人情報をさらけ出しすぎないようにね」
「もう~、沙耶さやってば頑張って前世の繋がりを探ってきてとか言えないの?」
俄然張り切っている日和には用心する気が全くないようだ。

交流会は3日後。
こうしてはいられない。





何の迷いもなく来てしまったわけではない。

俺の前世とは直接関係ない人たちのことなのかもしれないが、どうしてもあの追われていた男の人のことを想うと放っておけない気持ちになってしまう。

あの男女には強い結びつきがあるのだろうが、探っていくと驚きの事実が隠されているような気がしてしまう。

人気ひとけがないカフェに足を踏み入れると、アンティークのテーブルや椅子に調和した感じで奥の方の席に一人の女性が腰をかけて窓の外を見ている。

あの女性ひとだ。
余裕がある表情から、あの男性をT字路に追い詰めていた人に間違いないと分かった。

視線に気づいたのか、俺の方に顔を向けた彼女は、パッと目を輝かせた。
優人ゆうとさんですか?」
好奇心が掻き立てられているような顔をしてテーブルに近づいていった俺に声をかけてくる。

「あ、いえ俺は・・」
優人さんとは恐らく彼女が夢か前世の中で追いかけていた男の人だ。

「お目にかかれて光栄です」
椅子から跳ね上がるように立ち上がった彼女はネットで共通の記憶を話し合った仲間を待ち構えていたように見えた。

自分の前世や夢の詳細がわかるまで途中では諦めなさそうに感じ取れる。
「すぐにわかりました!優人さん、すごくいい人そうだから」

俺のことをずっと優人さんと勘違いしているので思わず笑いだしてしまった。
「・・・・?」

「すみません、あの、俺優人さんじゃなくてソウといいます。」
「あっ・・」

秒で不安そうになった彼女を見て、ただの能天気な人ではないのだなと感じた。
「ごめんなさい!私てっきり・・」
いえいえ、問題ないですと言った俺は、彼女に座りましょうと促した。

肝心の優人さんが来る前に本題に入るのもどうかと思ったが、間が持たないのでなんとなく話し始めた。

「ピヨリさんがネットで言ってた、T字路での状況なんですけど、俺は通りすがりに目撃したというか、ただその近所に住んでただけだと思うんで、あんまりお役に立てるかわからないです」

ピヨリさんは首を振ると、些細なことでも情報を提供してくれる人は大歓迎だと言って、苦笑しながら本名は日和ひよりですと付け加えた。

彼女を見ながら、追う者はその日がきたことを喜んでいるが、はたして追われる者も同じような心境なのだろうかと思った。

我々ははたして正しい選択をしたのか、彼が来たらわかるだろう。






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