上 下
12 / 13
第1章 1度目の人生での反省点と今後の人生プラン

昔ではなく"今"

しおりを挟む
エリーは束の間の感傷から現実に引き戻された。エリーの頬を包んでいた男が抱きしめてきたからだ。抱きしめる男の力は強く、わずかな身動きさえ取れない。

(この人は誰なんだ……⁉︎)

髪や目の色からして王族であることは確かだが、いかんせん今世では貴族社会と切り離した生活を送っているため、今の時代の王族について全くと言っていいほど知らないのだ。

「殿下!!!エリーに何をなさるのです!!!!!」

大声を上げて父の侯爵が男の後ろからやってきた。それでもこの青年はエリーから離れようしない。

「あ、あのっ!!!ちょっと苦しいんですけど……!!」

そう言う小さなエリーの抗議に男はハッとしたように腕の力を緩め、体を離した。その瞬間に侯爵がエリーを庇うように男とエリーの間に割って入ってきた。

「いくら殿下でもうちの大切な息子にいきなり抱きつくなど………。最近の王家の教育には呆れるばかりです」

エリーからはそう言う父の顔は見えなかったが、きっとものすごく怒った顔をしている気がする。声色自体は穏やかなものだが、発される気配は全く穏やかではない。

「……ああ、すまない。やっとお方だったもので」

侯爵の殺気に少しも怯えず、さらりと男は謝罪を述べた。そうしている時も、侯爵の背中に隠されたように庇われるエリーから視線を一切ずらさない。

「殿下今日はもうお帰りになってください。これ以上の話はもう結構です。アラン、殿下を馬車までお送りしなさい」

「はい、侯爵様」

どこから現れたのか音もなくすっとアランがエリーの後ろに控えていた。

(いつからいたんだよアラン⁇)

アランはそのまま侯爵と侯爵の背に隠されたエリーの横を通り、殿下の前まで音もなく歩いて行った。
殿下を連れて部屋から出ていく際、不自然にアランは歩くスピードを落とし、扉の先を殿下に歩かせた。

「………徹底しているな」
「なんのことでございましょうか」

殿下とアランが小声で何か話した気がするが、エリーは聞こえなかった。


そのまま二人は、部屋を出て外に向かって行った。








しおりを挟む

処理中です...