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真昼のストレンジャー
第七章 1
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「ここは――?」
目が覚めた庄野は、見知らぬ部屋に慌てた。これが病院やホテルなどを思わせる内装ならばこんなに慌てることはない。どう見ても、まったくの個人宅だった。
「よかった。気がつきましたか」
「えっ! あ、あなたは……?」
いきなり顔を覗き込まれた庄野はいっそう慌てる。知らない青年が心配そうに見ていた。男の自分でもどきりとしてしまうほどの美形。人のルイも整った顔立ちだが、この青年はまた違うタイプだ。
そんな青年の顔を見て、庄野は前にどこかで会っている気がした。どこでだったろう。
「気がついたって? そりゃよかった!」
青年の後ろから、少し年上の男が顔を出した。
そこで庄野はようやく思い出した。あの夜公園で、猫のルイといた先客の二人だ。
それが分かっても、覚える心細さが消えるわけではない。
「あの、ここはいったいどこでしょうか?」
「ここは俺んちだ。あんた公園の噴水のところでいきなり倒れちまったからさ、うちに運んで様子見てたんだ」
年上の男のほうが答えた。
「そ、そうだったんですか。済みません。見ず知らずの方にご迷惑をおかけして」
体を起こした庄野は、頭を下げる。世の中薄情なものだと斜に構えていた自分が恥ずかしい。まさか自宅に運んでまで介抱してくれる人がいるとは思いもしなかった。
「別に気にするこたあねえさ。ルイのたってのお願いだったからな」
男はそう言ってにかっと人好きのする笑みを浮かべた。
「ルイ…、ルイ!?」
男が口にした名前に庄野の胸はとくんと跳ねた。ルイの知り合いなのか? 公園で猫のルイがあんなに懐いていたが、よくある通りすがりの人だと思っていたのだ。
「おうさ。ちょっと待ってなよ。今呼んできてやるから」
言われて、庄野がごくりと喉を鳴らす。ここで猫の姿のルイが現れても驚きはしないつもりだ。ルイは言っていた。次に目を覚ましたときは、元の世界だからと。つまり現実なのだ。
「おい、お前何してんだ? そんな部屋の隅でよ。さっさとこっちに来たらどうだ。眠り姫のお目覚めだろうが」
男の声が聞こえてきた。どこか隅に逃げ込んだようだ。
それにしても眠り姫? それは自分のことだろうか。
「うるせっ! イチイチ言うなっ!」
えっ、と庄野は思った。この声?
「ほう? 俺にそういう態度取るのか、お前は。前会ったときはてんでガキで、中坊にしか見えなかったのよ。よくもまあ育ったものだな」
「だから何だよ。おっさんが」
おっさん? って、まさか?
「済みませんね、あの子はまだまだ子供で」
横で、黙ってやり取りを聞いていた青年が庄野に間を持たせるように話しかけた。
「あ、いや…その……。もしかして、レンさんですか?」
「え、僕の名前をどうして? ああ、ルイから聞いたのですね」
「はい」
庄野は頷く。ついでにちょっといろいろ下世話なことも。
何気なくルイから聞いたことだったが、当人を前にするとさすがに居た堪れない。
「ほらよ。ったく、何恥ずかしがってんだよ、お前は。彼、大事な人なんだろうが」
「そうだよ。大事なんだよ、ナオは! なのにオレ、加減が分かんなくてやりすぎて。ナオは気い失っちまうし」
聞こえたルイの声に庄野は真っ赤になった。
「おやおや。丸聞こえなんですけどね――。ルイ? 早くこっちに来なさい。その大事な人を不安がらせてどうするんですか」
「ううっ……、ナ、ナオ?」
レンにも促されて、そうして姿を見せたのは、ルイだった。前髪が一房、白い。
「ルイ。本当にルイ?」
まだ自分は夢を見ているのだろうか。ここは現実の世界ではないのか? もしかしてまた猫になってしまったのか、と庄野は目を落とす。けれど目に映ったのは人の手だった。
「ああ、もう!」
ルイは先ほどまで、姿を見せるのを渋っていたというのに、ひとたび庄野の前に立ったら、飛びついてきた。
ルイに抱き込まれた庄野は、人が出ていく気配を感じ、ドアが閉まる音を聞いた。
目が覚めた庄野は、見知らぬ部屋に慌てた。これが病院やホテルなどを思わせる内装ならばこんなに慌てることはない。どう見ても、まったくの個人宅だった。
「よかった。気がつきましたか」
「えっ! あ、あなたは……?」
いきなり顔を覗き込まれた庄野はいっそう慌てる。知らない青年が心配そうに見ていた。男の自分でもどきりとしてしまうほどの美形。人のルイも整った顔立ちだが、この青年はまた違うタイプだ。
そんな青年の顔を見て、庄野は前にどこかで会っている気がした。どこでだったろう。
「気がついたって? そりゃよかった!」
青年の後ろから、少し年上の男が顔を出した。
そこで庄野はようやく思い出した。あの夜公園で、猫のルイといた先客の二人だ。
それが分かっても、覚える心細さが消えるわけではない。
「あの、ここはいったいどこでしょうか?」
「ここは俺んちだ。あんた公園の噴水のところでいきなり倒れちまったからさ、うちに運んで様子見てたんだ」
年上の男のほうが答えた。
「そ、そうだったんですか。済みません。見ず知らずの方にご迷惑をおかけして」
体を起こした庄野は、頭を下げる。世の中薄情なものだと斜に構えていた自分が恥ずかしい。まさか自宅に運んでまで介抱してくれる人がいるとは思いもしなかった。
「別に気にするこたあねえさ。ルイのたってのお願いだったからな」
男はそう言ってにかっと人好きのする笑みを浮かべた。
「ルイ…、ルイ!?」
男が口にした名前に庄野の胸はとくんと跳ねた。ルイの知り合いなのか? 公園で猫のルイがあんなに懐いていたが、よくある通りすがりの人だと思っていたのだ。
「おうさ。ちょっと待ってなよ。今呼んできてやるから」
言われて、庄野がごくりと喉を鳴らす。ここで猫の姿のルイが現れても驚きはしないつもりだ。ルイは言っていた。次に目を覚ましたときは、元の世界だからと。つまり現実なのだ。
「おい、お前何してんだ? そんな部屋の隅でよ。さっさとこっちに来たらどうだ。眠り姫のお目覚めだろうが」
男の声が聞こえてきた。どこか隅に逃げ込んだようだ。
それにしても眠り姫? それは自分のことだろうか。
「うるせっ! イチイチ言うなっ!」
えっ、と庄野は思った。この声?
「ほう? 俺にそういう態度取るのか、お前は。前会ったときはてんでガキで、中坊にしか見えなかったのよ。よくもまあ育ったものだな」
「だから何だよ。おっさんが」
おっさん? って、まさか?
「済みませんね、あの子はまだまだ子供で」
横で、黙ってやり取りを聞いていた青年が庄野に間を持たせるように話しかけた。
「あ、いや…その……。もしかして、レンさんですか?」
「え、僕の名前をどうして? ああ、ルイから聞いたのですね」
「はい」
庄野は頷く。ついでにちょっといろいろ下世話なことも。
何気なくルイから聞いたことだったが、当人を前にするとさすがに居た堪れない。
「ほらよ。ったく、何恥ずかしがってんだよ、お前は。彼、大事な人なんだろうが」
「そうだよ。大事なんだよ、ナオは! なのにオレ、加減が分かんなくてやりすぎて。ナオは気い失っちまうし」
聞こえたルイの声に庄野は真っ赤になった。
「おやおや。丸聞こえなんですけどね――。ルイ? 早くこっちに来なさい。その大事な人を不安がらせてどうするんですか」
「ううっ……、ナ、ナオ?」
レンにも促されて、そうして姿を見せたのは、ルイだった。前髪が一房、白い。
「ルイ。本当にルイ?」
まだ自分は夢を見ているのだろうか。ここは現実の世界ではないのか? もしかしてまた猫になってしまったのか、と庄野は目を落とす。けれど目に映ったのは人の手だった。
「ああ、もう!」
ルイは先ほどまで、姿を見せるのを渋っていたというのに、ひとたび庄野の前に立ったら、飛びついてきた。
ルイに抱き込まれた庄野は、人が出ていく気配を感じ、ドアが閉まる音を聞いた。
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