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出会いと不穏の兆し
自分の話
しおりを挟む色々と心の整理が終わって、目の腫れも引いて来た。そろそろことの詳細を知らないといけない。
「ユフィ、モルヴィスたちつれてきてくれる?おはなししたいの」
「わかりましたニャ」
ユフィにモルヴィスたち4人を連れてきてもらうように伝え、もふもふなヴァイスのお腹に顔を埋める。そういえば、ヴァイスの姿が元の姿に戻ってる。
なんでユフィは驚かなかったんだろう?
「ケニス、ユフィはヴァイスをみてこわがらなかった?」
「驚いてはいましたが、怖がりはしてませんでした。むしろ、尻尾の動きに釘付けでしたよ」
猫人族だけあって、猫と同じ習性を持ってるんだ。可愛い。後でエノコログサみたいな草で遊んでみようかな。
彼女が私を気味悪がっていなければだけど。
「シェリル様、ユフィもまたあなたの味方です。シェリル様より先に、俺たちと事の次第を聞きました。彼女もあなたの理解者ですので大丈夫ですよ」
「そっか」
私には意外と味方が多いみたい。ちょろいかもしれないけど、私が知っている人たちが味方なのはとても嬉しい。
手紙の内容を知ってて、これからのことを真剣に考えてくれてるのなら私のことを話してみようかな。ちょっとヴァイスに相談してみよう。
(ヴァイス、私が転生者だということとスキルのこと話そうと思うんだけどどうかな?)
(スキルと転生してきたことをか?あやつらはお前を騙しておる様子はない故問題はないじゃろう。じゃが、もしも信用ならんと、心配じゃというのならば我に任せよ)
(うん、その時はよろしく)
モルヴィスたちのことだからきっと大丈夫。私が生まれてきた頃から、嫌な顔を一つせずに何かしら教えてくれてたから。特に剣術とか冒険者のこととか。
まあ、雇われの身としての義務ということもあり得るけどね。
「シェリル様、モルヴィス様方4名様をお連れしましたニャ」
「お嬢、気分はどうだ?」
「しっかり休めたっスか?」
「あんま無理せんといてや~」
「全くその通りですよ」
ゆっくりと静かにドアを開けるユフィに続いて、静かにモルヴィスたちが入ってくる。色々と心配かけちゃったみたいだね。
「ん、もうだいじょうぶだよ。ありがとう」
「お嬢が大丈夫なら良いさ」
もう大丈夫。そう伝えればモルヴィスがいつもの荒々しさを感じさせないような優しさで頭を撫でてくれた。モルヴィスがこんなに優しくなると言うことは、それほど酷い内容が書いてあったんだろう。
「で、ワイらを呼んだっちゅーことは、手紙のことを話すん?」
「うん。それからわたしのこと」
「お嬢様のことですか?」
「ん。さいしょに、わたしのことをはなしてもいい?」
少し不安になって、ヴァイスの尻尾を抱き込む。不安定な気持ちがもふもふな毛でいくらか和らぐ。もふもふは精神安定剤って前世で誰かが言っていたけど、本当にそうだった。
「お嬢、俺もお前の聡明さのことについて知りたかったんだ。話しちゃあくれないか?」
「わかった」
もふもふな尻尾を抱きしめながら、私は転生者であり元は成人を過ぎていること、この世界の神様と八百万の神様からの加護をもらっていること、【獣使い】の職のスキルのことなどを話した。
「まほうがつかえたのも、わたしがてんせいしゃですきるをもってたからなの」
「なるほどな。だから他のガキども……ん゙んっ、ロベルトの坊ちゃんたちよりも聡明且つ体の動きの吸収が良かったのと、スキルの扱いが上手かったのか」
今兄様たちのことガキどもって言ったよこの人。まあ、それはモルヴィス自身の口調なのだからあまり突っ込まないけど。セイルたちも驚きはしていたようだけど、どこか納得しているようだった。
色々見せたから、疑問に思ってることもあっただろうからこれで納得っていう感じだったんだろう。
「まあ、お嬢様が色々と規格外やったワケが転生者やったからっちゅーことがようわかったわ」
「まさかエンシェントモンスターとエピックモンスターを随えているとは思いませんでした」
「俺、【アサシン】でいろんなのを見てきたっスけど、お嬢ほど突飛したお方見たことなかったっス」
「冒険者として各国を回ってきた俺でさえもなかったな」
「……こわい?」
彼らの各々の感想に、私は思わずそう聞いてしまっていた。
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