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別れと始まり
コムロ村
しおりを挟む私の名前を今世の名前から前世の名前へ変えてから数日が経ち、私たちは目的地であるドンディール国のコムロ村にやって来た。コムロ村は自然豊かでのんびりした雰囲気のとても長閑な村だ。
とてもハンター業が盛んな国にある村だとは思えない。
私を助けてくれたあのドラゴンさんだけど、この道中は気配もなければ姿も見せることなくて結局会えなかった。きっといつか会えると思う。会えたら絶対にお礼言わないとだし、恩返ししないと。
「さて、まずは村長に挨拶に行くか」
「そうだね。これから冒険者としてお世話になるからね」
この世界でも挨拶は大事な社会常識だ。この村にしばらくお世話になるのなら、顔を通しておいた方がいいだろう。それに、この長閑な村を治めている村長さんがどんな人なのか知りたいし。
「村長さんがいる場所ってどこなんだろう?」
「冒険者ギルドに行って聞くか。ついでに冒険者登録も済ませちまおう」
「なら、妾も登録しておくかねぇ。この姿でいると何かしら必要になるだろうからねぇ」
そういえばエリは元冒険者って通してたんだっけ。別にグリフォンの姿で従魔登録しても良いと思うんだけど……。
「エリ、従魔登録じゃダメなのか?」
「ユウキを守るためだと、従魔登録じゃダメさね。よーく考えてみな。もしもセイルが妾やユウキの他に美人なメスを侍らせていたらどうだい?」
「腹立つ」
「即答なん!?姐さん、なんでワイに例えるん!?」
「それはあんたとケニスの歳が近いからさ。モルヴィスたちはケニスが最も尊敬している存在だろう?そうなると、モルヴィスたちの誰かがハーレムを作ったとしても異を唱えない。実際にあんたもそうじゃないかい?ケニスがユウキを始めとした可愛いメスや美人なメスに囲まれてたらどうだい?」
「ゔっ……。確かに嫌やしめっちゃ腹立つわ……」
「だろう?」
つまり、私が1人でケニスたちといると逆ハーレム状態になるわけで女の人たちから妬みの対象になる。それをエリは避けたいんだろう。私も避けたいことだけど。
でも、こんなちんちくりんな私は妹に見られそうな気もするんだけど……。まあ、警戒した方がいいからエリの冒険者登録には大賛成だ。
「ヴァイスは人型になれる?というより、人の姿になりたい?」
「人型になるのは容易いが、我はこの姿である方が良いじゃろう。我が人型で加われば、エリが施そうとしておるモノが台無しになる。我はお前が傷つくのは避けたいのじゃ」
ヴァイスは私の身を思って人型にならないで従魔登録のみするらしい。とても頼もしい従魔だ。
そんな会話をしながら歩いていれば、レイフォード家の屋敷の半分ほどの木造の建物が目に入って来た。
あれはもしかして冒険者ギルド?
「見えて来ましたね。ユウキさん、あれがこの村の冒険者ギルドですよ」
大正解だった。
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