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序章
少女の自室で面接をする前に軽く世間話でもしよう
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知らない男が自分の部屋に入ってきたら誰だって警戒するだろう。高校生という年齢を考慮しなくても知らないおじさんが自分の部屋に入ってくることなんて嫌がるのが普通の反応だと思うのだが、栗宮院うまなは僕の事を当たり前のように受け入れ何のためらいもなく招き入れてくれた。
霊能力が無いという話は聞いていたけれど、それ以外の大切な感情も持ち合わせていないのだろうか。そんな印象を受けてしまった。
ただ、部屋の中をざっと見まわしたところこれと言っておかしなところは見受けられなかった。女子高生の部屋というモノに触れてきたことがなかった人生なので大きなことは言えないのだけれど、どこにでもあるようなドラマのセットのように感じるくらいごくありふれた部屋のようにも思えてきたのだった。
「面接を始める前に僕の自己紹介をしておこうと思うんだけど、もしかしたらお父さんかお母さんから聞いていたりするかな?」
僕の質問に対して彼女は小さく首を横に二往復させた後に小さな声で答えてくれた。
「お父さんもお母さんも知り合いの人のところでアルバイトをしてみないか。って言ってくれただけで、知り合いの人がどんな人かは教えてもらってないです。お父さんたちの知り合いって事だからあっちの人だとは思うんですけど、そういう事ですか?」
あっちの人という言葉は正しい意味で伝わるものではないと思う。だが、彼女のお父さんたちの知り合いというキーワードから連想することが出来るのは大きく分けて二種類になるだろう。
一つは、彼女の両親である栗宮院午彪・奈緒美夫婦と同じ霊能力者だという事だろう。
もう一つは、彼女の両親に資金援助をしているスポンサー的存在だという事なんだと思う。
「僕はどちらかと言えば霊能力者寄りかな。でも、君のご両親とは違って一人では何も出来ない一般人に近い存在かもね。ただ、一般人ではないという理由として、多くの知識と普通の人は使えないような道具を多数所持していてソレを的確に扱うことが出来るって事かな。この国の法律に背くようなものは所持してないから安心してね」
定番のジョークを飛ばしてみたけれど、彼女はそれに対して苦笑いを浮かべるだけで話は広がることもなかった。ほとんどの場面で似たような反応を返されることが多いのだけれど、そういった点では彼女は他の人と変わらない普通の人だという事になるのかもしれないな。
「今は特に何も持ってきていないんで見せることはないんだけど、何か気になるものとかあれば披露させてもらうよ。例えば、幽霊の姿が見える眼鏡とか」
「そんなのあるんですか?」
話の途中で食い気味に割り込まれて少し驚いてしまったけれど、幽霊の姿が見える眼鏡に反応するという事は彼女も幽霊の姿を見たいと思っているという事なんだろう。霊能力が育たないように育ててきたご両親の気持ちもわかるけれど、自分だけ幽霊が見えないという彼女の気持ちも理解は出来る。彼女の場合は周りからのプレッシャーも強かっただろうし、小さいころからソレでたくさん悩んできたんだろう。両方の気持ちがわかるだけに安易に道具を使わせることは避けた方が良いようにも思える。
「幽霊が見えるようになるとは言ってもね、一つだけ条件があるんだよ。大丈夫、その条件は僕たち側に課せられてるものではないから安心してね。とっても簡単な条件で大抵はこっちが望まなくても条件が満たされちゃってるものだから」
「それっていったい何なんですか。それを使えば私もお父さんたちが見てる幽霊が見えるようになるって事ですよね?」
相変わらず積極的にグイグイと質問をしてくる彼女の圧に少し負けそうになってはいたけれど、話の主導権はなるべくこちらに維持しておきたい。
「見えるようになるための条件てのはね、向こうから姿を見せてもいいって思ってることなんだよ。なんだ、そんな事かって思ったかもしれないけど、それってかなり危険なことなんだ。どうして危険かわかるかな?」
ここで一度考えさせることで向こうに行きかけた流れを完全に止めることが出来た。考えたところで幽霊と触れ合ったことが無い彼女が危険な理由に気が付くことなんて無いだろう。
「それって、姿を見せてもいいって思ってるんじゃなくて、自分の姿を見せたいって思ってるって事ですよね。つまり、向こうは私が自分の姿を認識しているってわかってるって事になるから危ないって事ですかね。でも、自分の姿を認識していることがわかると危ないんだろう。幽霊の姿を見ることが出来ているだけって事ですよね?」
もともとの頭がいいからなのか両親が特別な霊能力者だからなのか、正解まであと少しのところまで一瞬でたどり着いてしまった。だが、今まで幽霊と触れ合ったことが無いためその危険性を認知していないようだ。
「素晴らしいね。ほとんど正解だよ。幽霊の姿が見えているという事を認識されるとどうして危険なんだろうってのがわかってないみたいだね。うまなちゃんはそんな経験がないとは思うんだけど、不良と呼ばれる人たちが何かやってるのをジッと見ていたとする。最初は気付かれていない状態なんだけど、ずっと見続けていることで相手が自分の事を見ているのに気づいたらどうなるかな。おそらくなんだけど、ずっと見ていた不良に因縁をつけられちゃうと思うんだ。生きている人間が相手だと被害なんてたかが知れているかもしれないけど、自分を見つけてほしいって思ってる幽霊相手に見えているのがバレてしまうと、救いを求めている幽霊たちが集まってきちゃう可能性もあるんだよ。いや、近くにいる救いを求めている幽霊がみんな寄ってきちゃうことになるかも」
「その幽霊たちを救うってのは、成仏させるって事ですか?」
「それも一つの救いなんだけど、そんなことが出来るのは君のご両親のように力のある霊能力者かちゃんと修業を積んでるお坊さんくらいじゃないかな。成仏できない幽霊たちの救いってのは、自分と同じ仲間を作ることでもあるんだよ。自分と同じ状況の仲間がいれば何となく救われた気になれるらしいんだ。ただ、その連鎖はいつまでも終わることなんて無いんだけどね」
「成仏させてもらえないならとり憑いて呪い殺そうって事なのかな。それはちょっと嫌かも」
ちょっと嫌という事はそんなに深刻に考えていないという事なんだろうな。彼女は僕の言葉をちゃんと理解してくれているだろうか。そこだけが少し心配になってしまった。
霊能力が無いという話は聞いていたけれど、それ以外の大切な感情も持ち合わせていないのだろうか。そんな印象を受けてしまった。
ただ、部屋の中をざっと見まわしたところこれと言っておかしなところは見受けられなかった。女子高生の部屋というモノに触れてきたことがなかった人生なので大きなことは言えないのだけれど、どこにでもあるようなドラマのセットのように感じるくらいごくありふれた部屋のようにも思えてきたのだった。
「面接を始める前に僕の自己紹介をしておこうと思うんだけど、もしかしたらお父さんかお母さんから聞いていたりするかな?」
僕の質問に対して彼女は小さく首を横に二往復させた後に小さな声で答えてくれた。
「お父さんもお母さんも知り合いの人のところでアルバイトをしてみないか。って言ってくれただけで、知り合いの人がどんな人かは教えてもらってないです。お父さんたちの知り合いって事だからあっちの人だとは思うんですけど、そういう事ですか?」
あっちの人という言葉は正しい意味で伝わるものではないと思う。だが、彼女のお父さんたちの知り合いというキーワードから連想することが出来るのは大きく分けて二種類になるだろう。
一つは、彼女の両親である栗宮院午彪・奈緒美夫婦と同じ霊能力者だという事だろう。
もう一つは、彼女の両親に資金援助をしているスポンサー的存在だという事なんだと思う。
「僕はどちらかと言えば霊能力者寄りかな。でも、君のご両親とは違って一人では何も出来ない一般人に近い存在かもね。ただ、一般人ではないという理由として、多くの知識と普通の人は使えないような道具を多数所持していてソレを的確に扱うことが出来るって事かな。この国の法律に背くようなものは所持してないから安心してね」
定番のジョークを飛ばしてみたけれど、彼女はそれに対して苦笑いを浮かべるだけで話は広がることもなかった。ほとんどの場面で似たような反応を返されることが多いのだけれど、そういった点では彼女は他の人と変わらない普通の人だという事になるのかもしれないな。
「今は特に何も持ってきていないんで見せることはないんだけど、何か気になるものとかあれば披露させてもらうよ。例えば、幽霊の姿が見える眼鏡とか」
「そんなのあるんですか?」
話の途中で食い気味に割り込まれて少し驚いてしまったけれど、幽霊の姿が見える眼鏡に反応するという事は彼女も幽霊の姿を見たいと思っているという事なんだろう。霊能力が育たないように育ててきたご両親の気持ちもわかるけれど、自分だけ幽霊が見えないという彼女の気持ちも理解は出来る。彼女の場合は周りからのプレッシャーも強かっただろうし、小さいころからソレでたくさん悩んできたんだろう。両方の気持ちがわかるだけに安易に道具を使わせることは避けた方が良いようにも思える。
「幽霊が見えるようになるとは言ってもね、一つだけ条件があるんだよ。大丈夫、その条件は僕たち側に課せられてるものではないから安心してね。とっても簡単な条件で大抵はこっちが望まなくても条件が満たされちゃってるものだから」
「それっていったい何なんですか。それを使えば私もお父さんたちが見てる幽霊が見えるようになるって事ですよね?」
相変わらず積極的にグイグイと質問をしてくる彼女の圧に少し負けそうになってはいたけれど、話の主導権はなるべくこちらに維持しておきたい。
「見えるようになるための条件てのはね、向こうから姿を見せてもいいって思ってることなんだよ。なんだ、そんな事かって思ったかもしれないけど、それってかなり危険なことなんだ。どうして危険かわかるかな?」
ここで一度考えさせることで向こうに行きかけた流れを完全に止めることが出来た。考えたところで幽霊と触れ合ったことが無い彼女が危険な理由に気が付くことなんて無いだろう。
「それって、姿を見せてもいいって思ってるんじゃなくて、自分の姿を見せたいって思ってるって事ですよね。つまり、向こうは私が自分の姿を認識しているってわかってるって事になるから危ないって事ですかね。でも、自分の姿を認識していることがわかると危ないんだろう。幽霊の姿を見ることが出来ているだけって事ですよね?」
もともとの頭がいいからなのか両親が特別な霊能力者だからなのか、正解まであと少しのところまで一瞬でたどり着いてしまった。だが、今まで幽霊と触れ合ったことが無いためその危険性を認知していないようだ。
「素晴らしいね。ほとんど正解だよ。幽霊の姿が見えているという事を認識されるとどうして危険なんだろうってのがわかってないみたいだね。うまなちゃんはそんな経験がないとは思うんだけど、不良と呼ばれる人たちが何かやってるのをジッと見ていたとする。最初は気付かれていない状態なんだけど、ずっと見続けていることで相手が自分の事を見ているのに気づいたらどうなるかな。おそらくなんだけど、ずっと見ていた不良に因縁をつけられちゃうと思うんだ。生きている人間が相手だと被害なんてたかが知れているかもしれないけど、自分を見つけてほしいって思ってる幽霊相手に見えているのがバレてしまうと、救いを求めている幽霊たちが集まってきちゃう可能性もあるんだよ。いや、近くにいる救いを求めている幽霊がみんな寄ってきちゃうことになるかも」
「その幽霊たちを救うってのは、成仏させるって事ですか?」
「それも一つの救いなんだけど、そんなことが出来るのは君のご両親のように力のある霊能力者かちゃんと修業を積んでるお坊さんくらいじゃないかな。成仏できない幽霊たちの救いってのは、自分と同じ仲間を作ることでもあるんだよ。自分と同じ状況の仲間がいれば何となく救われた気になれるらしいんだ。ただ、その連鎖はいつまでも終わることなんて無いんだけどね」
「成仏させてもらえないならとり憑いて呪い殺そうって事なのかな。それはちょっと嫌かも」
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