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序章
心霊カメラマン登場
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栗宮院家の令嬢が霊能力を持たないというのも不思議な話なのだが、正直に言って霊感なんてあっても嬉しいモノじゃないと思うし、霊感なんてあった方が不便なことも多いって気がしているから無い方が良いのかもしれないとは思うけど、この仕事をするんだったら最低限の力はあった方が自分の身を守ることも出来ると思うんだよな。
私の仕事を手伝わせるのが主な仕事って言ってたけど、私は自分の事で手一杯なので助けてあげることなんて出来ないんだよな。それでも、真名先輩は自分の事だけしっかりやってくれればいいって言ってたけど、それを本当に信じていいものなのか疑わしいんだよね。
どんな子がやってくるのかと思って窓から外の様子をうかがっていたところ、この写真館には似つかわしくないと思ってしまうような黒塗りの高級車がゆっくりと入ってきた。
真名先輩が車にゆっくりと近寄ると助手席から降りてきたビシッとしたスーツの人と何やら話しているようだ。この距離からじゃ何を言っているのかさっぱりわからないけれど二人とも楽しそうにしているところを見るとトラブルという事ではなさそうだ。黒塗りの高級車なんてあまりいいイメージが無いのでそう思ってしまったのだけれど、高そうな車だからって怖そうな人が乗っているとは限らないんだよね。
しばらく話をした後にスーツの人が後部座席のドアを開けると制服姿の女の子が降りてきた。小柄な感じで華奢な女の子に見えるのだけど、隣にいる男二人ががっしりした体型なので相対的に小さく見えているだけなのかもしれない。
女の子は真名先輩に挨拶をした後にスーツの人達にも頭を下げていた。あの子が栗宮院家の令嬢だとは思うんだけど、私が想像していたよりもずっと普通の女の子でお嬢様という印象は受けなかった。私の持っているお嬢様の印象が偏っているものだとは重々承知してはいるけれど、お嬢様なのにやたらと腰が低いなと感じてしまった。
「というわけで、今日から一緒に働いてもらう事になった栗宮院うまなさんです。鈴木君のアシスタントとして働いてもらうんで、詳しいことは鈴木君から教えてもらってね。何か困ったことがあったら僕になんでも言ってくれていいからね。じゃあ、あとはよろしく頼むよ」
いつものように真名先輩は自分の仕事に戻っていってしまった。真名先輩がどんな仕事をしているのか正直分かっていないけれど、何やら難しそうな案件をいくつも抱えているように思える。心霊系というよりは経営系の仕事のようだけど、それがいったいどんな仕事なのか教えてもらうこともないし知りたいとも思えない。でも、心霊系の仕事をしていて私が困ったときはいつでもちゃんと助けてくれているので少しくらいは無茶をしてもいいだろうと安心している部分もあるのだ。
「真名先輩はうまなちゃんの事をちゃんと教えてくれてなかったんで色々質問してもいいかな。もちろん、私の事で気になったことがあったら何でも聞いてくれていいからね」
「はい、聞きたいことがあるので後で質問させてもらいます」
うまなちゃんは栗宮院午彪・奈緒美夫妻という一般人でも知っているレベルの有名霊能力者の間に生まれた一人娘だ。生まれる前から世間の関心を引いていたそうだが、両親とは違って霊能力は備わらずに生まれてきたらしい。私としてはそれも良いことだと思ってしまうのだけど、そうは思わない人たちがたくさんいたと聞いている。
周りの声は幼いうまなちゃんにとって恐怖の対象だったんだろうという事も想像がつくのだが、そんな声に屈することもなくご両親はうまなちゃんに愛情をたっぷりと注いでここまで元気に育て上げた。という事を真名先輩から何度も何度も聞かされてきた。
うまなちゃんは私が心霊系の仕事をバリバリこなしているという事を知って入るんだろうけど、それに関して何か質問をしてもいいのだろうか。彼女が霊感を持っていないことを恥じているんだとしたら私の質問の仕方一つで彼女にいらない傷をつけてしまうことになるのかもしれない。そう思うと、学校の事や好きなものの話をするという逃げに走ってしまうのだ。
「あの、私からも質問をしていいですか?」
「もちろん。気になることがあったら何でも聞いてね。勉強のこと以外だったら大丈夫だからさ」
私の霊感は生まれ持ったものではない。一般人の両親のもとに生まれた三人兄弟の末っ子なのだ。両親だけではなく兄も姉も霊感なんて持っていない。家族はみんな私が普通のカメラマンをやっていると思っているのだ。もちろん、心霊系の仕事しかやってないわけでもないので間違ってはいないのだけれど、本当の事を説明したところで信じてなんてもらえないだろう。
たぶん、うまなちゃんは私がどうやって霊能力を手に入れたのか知りたいんだろうな。私も自分でどのタイミングで霊能力を手に入れたのかハッキリと覚えていないし、それを誰かで再現するなんて出来ない。自分の意志とは関係なく手に入れたものなのでうまなちゃんに霊能力の手に入れ方を聞かれても答えることは出来ないんだよな。もしかしたら、真名先輩ならうまなちゃんに相応しい方法を知っているのかもしれないけど、真名先輩はそういった力を後天的に持つことを好ましいと思っていないんだよね。私の時は仕方なかったって思ってるみたいだけど、真名先輩が手伝ってくれることなんてありえないことなのかもしれない。
「清澄さんには聞けなかったんで鈴木さんに直接聞くんですけど、好きなのって本当ですか?」
「え、好きってどういう事?」
私はうまなちゃんの質問の意図がさっぱりわからなかった。好きってのは何に対して好きだと聞いているのだろう。仕事に関してだとしたら、そこまで好きだとは言えない。普通の写真を撮るのは好きだし、綺麗に取れた時なんて言葉には言い表せないくらい嬉しかったりする。でも、心霊系の写真を撮るときは出来るだけキレイに写らないようにと願うくらいに嫌だったりする。なので、仕事が好きかと言われると、ちょっと困ってしまう。
もしかして、真名先輩に対しての好きだったりするのだろうか。それこそあり得ないと思う。私を何度も助けてくれているし、他の人だってたくさん助けて立派だなとは思うけれど、だからと言って恋愛の対象ではない。彼氏がいないし良い人がいればいいなとは思うけれど、真名先輩は良い先輩であり良い友人ではあるだけで恋人としては良い恋人と呼ぶことは出来ないと思う。
「あの、鈴木さんは柩秀吉君のファンだって聞いてるんですけど、それって本当ですか?」
「うん、そうだよ。でも、秀吉君だけじゃなくて雪之丞君も好きだけど。うまなちゃんはRLCの事を知っているの?」
「もちろん知ってますよ。私は雪之丞君のファンなんですけど、秀吉君の事ももちろん好きです。二人が出てる作品はほとんど見てると思います。生で見に行ったことはないんですけど、家で何度も何度も舞台とか見てます」
うまなちゃんがRLCの事を好きだなんて教えてくれてもよかったのに。真名先輩がRLCに興味がないから仕方ないとは思うけど、一番大事なことだと思う。
私とうまなちゃんは時が経つのを忘れてしまう程熱く熱くお互いの思いをぶつけあった。
年齢差はかなりあるけれど、RLCを好きなもの同士にそんなものは何の問題でもないのだ。
RADIANT LAUDATORY COUNTRYを好きな者同士に違いなんて無い。うまなちゃんは私よりもずっと若いのに情熱も知識量もすごくすごいと感じてしまった。私だって負けるとは思ってないけど、お互いに尊重しあうことが出来そうないい関係を築けそうな予感がしていた。
真名先輩が呼びに来るまでずっとRLCの話をしてしまい、仕事の話は一切していなかったことを家に帰ってから思い出してしまったのだった。
私の仕事を手伝わせるのが主な仕事って言ってたけど、私は自分の事で手一杯なので助けてあげることなんて出来ないんだよな。それでも、真名先輩は自分の事だけしっかりやってくれればいいって言ってたけど、それを本当に信じていいものなのか疑わしいんだよね。
どんな子がやってくるのかと思って窓から外の様子をうかがっていたところ、この写真館には似つかわしくないと思ってしまうような黒塗りの高級車がゆっくりと入ってきた。
真名先輩が車にゆっくりと近寄ると助手席から降りてきたビシッとしたスーツの人と何やら話しているようだ。この距離からじゃ何を言っているのかさっぱりわからないけれど二人とも楽しそうにしているところを見るとトラブルという事ではなさそうだ。黒塗りの高級車なんてあまりいいイメージが無いのでそう思ってしまったのだけれど、高そうな車だからって怖そうな人が乗っているとは限らないんだよね。
しばらく話をした後にスーツの人が後部座席のドアを開けると制服姿の女の子が降りてきた。小柄な感じで華奢な女の子に見えるのだけど、隣にいる男二人ががっしりした体型なので相対的に小さく見えているだけなのかもしれない。
女の子は真名先輩に挨拶をした後にスーツの人達にも頭を下げていた。あの子が栗宮院家の令嬢だとは思うんだけど、私が想像していたよりもずっと普通の女の子でお嬢様という印象は受けなかった。私の持っているお嬢様の印象が偏っているものだとは重々承知してはいるけれど、お嬢様なのにやたらと腰が低いなと感じてしまった。
「というわけで、今日から一緒に働いてもらう事になった栗宮院うまなさんです。鈴木君のアシスタントとして働いてもらうんで、詳しいことは鈴木君から教えてもらってね。何か困ったことがあったら僕になんでも言ってくれていいからね。じゃあ、あとはよろしく頼むよ」
いつものように真名先輩は自分の仕事に戻っていってしまった。真名先輩がどんな仕事をしているのか正直分かっていないけれど、何やら難しそうな案件をいくつも抱えているように思える。心霊系というよりは経営系の仕事のようだけど、それがいったいどんな仕事なのか教えてもらうこともないし知りたいとも思えない。でも、心霊系の仕事をしていて私が困ったときはいつでもちゃんと助けてくれているので少しくらいは無茶をしてもいいだろうと安心している部分もあるのだ。
「真名先輩はうまなちゃんの事をちゃんと教えてくれてなかったんで色々質問してもいいかな。もちろん、私の事で気になったことがあったら何でも聞いてくれていいからね」
「はい、聞きたいことがあるので後で質問させてもらいます」
うまなちゃんは栗宮院午彪・奈緒美夫妻という一般人でも知っているレベルの有名霊能力者の間に生まれた一人娘だ。生まれる前から世間の関心を引いていたそうだが、両親とは違って霊能力は備わらずに生まれてきたらしい。私としてはそれも良いことだと思ってしまうのだけど、そうは思わない人たちがたくさんいたと聞いている。
周りの声は幼いうまなちゃんにとって恐怖の対象だったんだろうという事も想像がつくのだが、そんな声に屈することもなくご両親はうまなちゃんに愛情をたっぷりと注いでここまで元気に育て上げた。という事を真名先輩から何度も何度も聞かされてきた。
うまなちゃんは私が心霊系の仕事をバリバリこなしているという事を知って入るんだろうけど、それに関して何か質問をしてもいいのだろうか。彼女が霊感を持っていないことを恥じているんだとしたら私の質問の仕方一つで彼女にいらない傷をつけてしまうことになるのかもしれない。そう思うと、学校の事や好きなものの話をするという逃げに走ってしまうのだ。
「あの、私からも質問をしていいですか?」
「もちろん。気になることがあったら何でも聞いてね。勉強のこと以外だったら大丈夫だからさ」
私の霊感は生まれ持ったものではない。一般人の両親のもとに生まれた三人兄弟の末っ子なのだ。両親だけではなく兄も姉も霊感なんて持っていない。家族はみんな私が普通のカメラマンをやっていると思っているのだ。もちろん、心霊系の仕事しかやってないわけでもないので間違ってはいないのだけれど、本当の事を説明したところで信じてなんてもらえないだろう。
たぶん、うまなちゃんは私がどうやって霊能力を手に入れたのか知りたいんだろうな。私も自分でどのタイミングで霊能力を手に入れたのかハッキリと覚えていないし、それを誰かで再現するなんて出来ない。自分の意志とは関係なく手に入れたものなのでうまなちゃんに霊能力の手に入れ方を聞かれても答えることは出来ないんだよな。もしかしたら、真名先輩ならうまなちゃんに相応しい方法を知っているのかもしれないけど、真名先輩はそういった力を後天的に持つことを好ましいと思っていないんだよね。私の時は仕方なかったって思ってるみたいだけど、真名先輩が手伝ってくれることなんてありえないことなのかもしれない。
「清澄さんには聞けなかったんで鈴木さんに直接聞くんですけど、好きなのって本当ですか?」
「え、好きってどういう事?」
私はうまなちゃんの質問の意図がさっぱりわからなかった。好きってのは何に対して好きだと聞いているのだろう。仕事に関してだとしたら、そこまで好きだとは言えない。普通の写真を撮るのは好きだし、綺麗に取れた時なんて言葉には言い表せないくらい嬉しかったりする。でも、心霊系の写真を撮るときは出来るだけキレイに写らないようにと願うくらいに嫌だったりする。なので、仕事が好きかと言われると、ちょっと困ってしまう。
もしかして、真名先輩に対しての好きだったりするのだろうか。それこそあり得ないと思う。私を何度も助けてくれているし、他の人だってたくさん助けて立派だなとは思うけれど、だからと言って恋愛の対象ではない。彼氏がいないし良い人がいればいいなとは思うけれど、真名先輩は良い先輩であり良い友人ではあるだけで恋人としては良い恋人と呼ぶことは出来ないと思う。
「あの、鈴木さんは柩秀吉君のファンだって聞いてるんですけど、それって本当ですか?」
「うん、そうだよ。でも、秀吉君だけじゃなくて雪之丞君も好きだけど。うまなちゃんはRLCの事を知っているの?」
「もちろん知ってますよ。私は雪之丞君のファンなんですけど、秀吉君の事ももちろん好きです。二人が出てる作品はほとんど見てると思います。生で見に行ったことはないんですけど、家で何度も何度も舞台とか見てます」
うまなちゃんがRLCの事を好きだなんて教えてくれてもよかったのに。真名先輩がRLCに興味がないから仕方ないとは思うけど、一番大事なことだと思う。
私とうまなちゃんは時が経つのを忘れてしまう程熱く熱くお互いの思いをぶつけあった。
年齢差はかなりあるけれど、RLCを好きなもの同士にそんなものは何の問題でもないのだ。
RADIANT LAUDATORY COUNTRYを好きな者同士に違いなんて無い。うまなちゃんは私よりもずっと若いのに情熱も知識量もすごくすごいと感じてしまった。私だって負けるとは思ってないけど、お互いに尊重しあうことが出来そうないい関係を築けそうな予感がしていた。
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