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序章

写真撮影をしてみる

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 これからうまなちゃんにアシスタントをしてもらうことになるんだけど、両親が超有名人であるうまなちゃんの場合は本名を隠して偽名で社員証を作った方が良いんだろうな。真名先輩もその方が良いって言ってくれたし、うまなちゃんに余計な負担をかけるのは良くないもんね。

 真面目な正面から撮ることが出来たので少しだけ遊び要素も入れて写真を撮ってみようかな。せっかくだしRLCの二人の写真と撮ってるんじゃないかって思えるくらいに綺麗に合成してあげようかな。
「写真館の中だけじゃなくお外に写真を撮りに行くことも多いんだけど、その時にうまなちゃんが私のアシスタントだって証明するのに社員証が必要なんだ。でも、うまなちゃんってご両親がとっても有名で苗字を見ただけで気付かれちゃうと思うんだ。それって結構面倒な事になるかもしれないんで何か他の名前にしようかなって思うんだけど、何かつけたい名前とかあるかな?」
「それだったら、愛華さんの親戚って事にしてもらって鈴木何とかってどうでしょう?」
「私の親戚か。それなら高校生の子にアシスタントをしてもらってる事にもそんなに突っ込まれないかもしれないね。だけど、私の親戚ってことにするにも遠縁になっちゃうんだよね。そうなるとさ、親戚って設定にしなくてもいいような気がするんだよね。もしかしたら、真名先輩の知り合いの娘って事にしてもいいかも。でも、それって今のうまなちゃんと何も変わらないかもね」

 名前の件はいったん保留とさせてもらって社員証用の写真を撮ることにした。うまなちゃんはどの角度から見ても変わらず綺麗なんだけど、それは年齢が若くて肌が綺麗だとかそういう話ではなくて、どの角度から見てもすべて決め顔になっているように感じていた。特別なアプリケーションも入っていないごく普通のカメラを使っているんだけど、普段使っているスマホに入っている修正アプリが起動しているんじゃないかって思えるくらいキレイに写っていた。
 なんでこんなに綺麗に感じるんだろうって思っていたんだけど、思わぬことがきっかけでその理由がわかってしまった。光の加減一つで印象も変わってしまうのだけど、光だけではなく影の入り方一つでも大きく印象が変わってしまうのだ。うまなちゃんに当たっている光がこれ以上ないくらいに完璧に入ってきているのはうまなちゃん自身が無意識のうちに位置を調整しているのかと思っていた。でも、実際のところはうまなちゃんがどうこうしていたのではなく、うまなちゃんについている守護霊ちゃんが完璧なライティングを行っていたのだ。うまなちゃんを守るだけではなくこんなことまでするのなんて恐ろしい守護霊だなと感じていた。
「ちょっと見せてもらってもいいですか。プロのカメラマンに撮ってもらうのって初めてだから緊張しちゃったんで変な顔になってないですかね?」
 どこを切り取っても変な顔になってる瞬間なんて無いんだよな。何枚か顔に不自然な光が入り込んでいる写真もあるんだけど、それ以外はすべて綺麗に撮れていると思う。私の腕も多少は影響しているのかもしれないけど、うまなちゃんについている守護霊ちゃんが果たしてくれた役割が非常に大きいと思う。
「ええ、私の事こんなに綺麗に撮ってくれたんですね。やっぱりプロのカメラマンは違いますね。自分で何枚か写真を撮ったことはあるんですけど、こんな風に綺麗に撮れたことなんて無いですよ。今度写真を撮る秘訣を教えてくださいよ」
「秘訣とかは特にないかも。私の腕ってよりは、素材が良かったからってのが一番の理由じゃないかな。自撮りだと難しいかもね」
「私なんかをこんなに綺麗に撮ってくれるなんてやっぱり腕がいいからですよ。この写真を親に見せてもいいですか?」
「もちろん。データを送るんでスマホを貸してもらってもいいかな?」
「分かりました。事務所のロッカーに置いてきたんで取ってきますね」
 撮影室を元気に出ていったうまなちゃんではあったが、部屋を出る際に軽く一礼していったことが育ちの良さを物語っていた。なぜかうまなちゃんを守る存在である守護霊ちゃんはうまなちゃんについていかずにこの場にとどまっていた。
「あの、うまなちゃんについていかなくてもいいの?」
「うん、今はついていかなくても平気な時だから」
「平気って、何があるかわからないんじゃないかな。変なこと言うかもしれないけど、事務所のすぐ横って駐車場だから暴走した車が突っ込んでくる可能性もあると思うんだけど」
「その可能性はないでしょ。そんなのが突っ込んできてもうまなちゃんは大丈夫よ。絶対に怪我することなんて無いからね」
「そんなに運がいいようには見えないけど。どこからそんな自信が出てくるの?」
「どこからって、この建物はあなたと清澄真名がいるんだから死人が出るような事故は起こらないわよ。そんな事故が起こったとしても奇跡的なことが起こって怪我一つないはずなのよ」
 私は自分の守護霊を見たことが無い。どんな手段をもってしてもその姿を確認することが出来なかった。真名先輩の守護霊も見たことはないんだけど、言われてみればこの写真館自体を守ってくれている存在がいることは認識していた。それが真名先輩の守護霊なのかはわからないけど、とにかくすごい力で守ってくれていることは理解している。
「そんな事よりも、なんであんなに上手にライティングすることが出来るの?」
「なんでって言われてもね。うまなちゃんが生まれたときから午彪と奈緒美に何度も何度も教え込まれたからじゃないかな。一回だけ奈緒美に頼まれてやったこともあるんだけど、うまなちゃんの時みたいに綺麗な感じに出来なかったんだ。結構いい歳だから仕方ないとは思うけど、ちょっと嫌な顔されちゃったのはショックだったかも。あ、うまなちゃんが戻ってきそうだ。私の事は言っちゃダメだからね」
 言っちゃダメだというわりには私の視界から外れようとしないのはどうにかしてほしい。その位置に立たれるとついつい視線を向けてしまいそうじゃないか。黙っていてほしいなら私の死角に潜んでほしい。
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