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淫欲八姫
第13話 ベッドの種類はいっぱいあるから選び放題だよ。
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なぜか不機嫌になっているアスモちゃんの機嫌を取るために何か買いに行こうかと思ったのだけれど、俺はこの世界で使えるお金も持っていないし持っていたとしても何をかえばいいのかもわからない。アスモちゃんがどんなものを好きなのか聞いておけばよかった。
機嫌を損ねた理由もわからないのでどう対処すればいいのかもわからないのだが、横を歩きながら顔を見ているとアスモちゃんと時々目が合っていた。
「“まーくん”はオレの事を見て何を思ってるの?」
「何をって、怪我とかしてないかなって思ってたよ。あんな大きな筋肉男と戦ってたって話だし、アスモちゃんみたいな華奢な女の子が一方的に戦ってたなんて信じられないからね」
「オレはそんなに華奢じゃないと思うんだけどな。ほら、結構筋肉もあるし」
どう見てもどこにも筋肉なんて見えないのだけれど、あえてそこに触れることはしなかった。何が地雷になるのかわからないし、これ以上アスモちゃんの機嫌を悪くさせるなんてことはしたくないのだ。
どこか褒めた方が良いような気もするのだけれど、この俺がそんな気の利いたことを言えるはずも無いので黙っている時間が長くなってしまう。
沈黙は金という言葉もあるのだけれど、この場合はそれが正解だとは思えなかった。
ただ、時と場合によっては、俺は喋らない方が相手にとって良い印象を与える事もあるのかもしれない。
「そ、そんなにオレの事を見つめてどうしたってんだよ。もしかして、オレが可愛いから見惚れてたとか?」
暗い夜道だが、時々街灯に照らされるアスモちゃんの白く綺麗な髪と、メイド服にちりばめられた装飾が輝いて見えるのは美しいと思っていた。やたらと上質で高級感のあるメイド服はアスモちゃんの可愛らしさをより引き立てるモノだと思うのだ。
「ちょっと、そんなに真剣に見つめないでよ。黙って見つめられると、さすがに照れ臭いよ」
「そうだな。アスモちゃんは可愛いと思うよ。服装もそうだけど、たぶんその辺にいる人と同じような格好だったとしても、今までこの街で見てきたどの人よりも可愛いんじゃないかな」
「おいおい、そんなに褒めないでよ。そこまで褒められると反応に困るって。“まーくん”ってもしかして、ナンパ野郎なのか?」
「そんな事無いって。俺は可愛いって思った時は素直にいう事にしてるんだよ。そうした方が良いってイザーちゃんにも言われたし」
「はあ、そこで他の女の名前を出すのはどうなのかな。それも、よりによって八姫の一人であるイザーちゃんの名前を出すなんて最低だよ。ちょっとだけ気分も良くなってたんだけど、なんかテンション下がったわ」
アスモちゃんにとってイザーちゃんがどんな存在なのかわからないのだが、この反応を見る限りではあまりいい印象を持っていないという事なのかもしれない。
イザーちゃんを見た人は性別を問わずみんな綺麗だと言ってくれたのだけれど、アスモちゃんは綺麗な女性はあまり好きではないという事なのだろうか。
どちらかと言えば、アスモちゃんはイザーちゃんよりもうまなちゃんにタイプが似ているような気がする。うまなちゃんに会ったのはあの時が初めてで、どんな人なのかもわかっていないけれど、見た目の系統は似ているように思えていた。
ただ、性格的にはそこまで似ていないのかもしれない。
「もう、今日はさっさと風呂に入って寝ちゃおうかな。明日の予報でも砂嵐は治まらないみたいだし、イザーちゃんのいる艮じゃないところに向かった方が良いかもね。多分、相当先まで嵐は続いていると思うよ。もしかしたら、イザーちゃんが“まーくん”に来てもらいたくないって事で砂嵐を起こしてるのかもしれないね。って、それは冗談だから気にするなよ。この時期は毎年砂嵐が凄い続いているだけだって。な、そんなに悲しそうな顔しないでさ、明るく楽しくしようぜ」
イザーちゃんが俺を避けているなんて思いたくないけど、今はそんな言葉も冗談には聞こえない。
俺がこの世界に来たのは何かしらの理由があるのだと思うけど、その割にはイザーちゃんが俺と一緒にいないというのは気になっていた。
何かを俺にして欲しいのであれば、俺のすぐ近くにいてそれが何なのか教えてくれても良いのではないだろうか。
むしろ、俺が何をすべきか教えて貰いたい。
だが、離れ離れになっている現状を俺なりに考察すると、俺にしか出来ない何かをするためにはいったん離れて何かをしてから合流する必要があるという事なのだろう。
成長した俺がイザーちゃんの求める人材になるために離れたという可能性だってあるんだ。
きっとそうに違いない。
「ほら、もう少しで今晩泊まる宿だから元気出せって。疲れをとるための飲み物も食べ物も買ってあるし、作戦会議をしたらすぐに寝ような。“まーくん”が知りたいことがあれば俺の答えられる範囲で教えるし、今日は早く寝たいって言うんだったら質問は明日でもいいからな」
「ありがとう。色々と知りたいことがあるけど、ちょっと頭の中を整理してから質問するよ」
聞きたいことは山ほどあるのだけれど、何から聞けばいいのかわからない。
先ほどよりも街灯が増えてきて人通りもそれなりに増えているのだが、何となく怪しい看板が目立つように思える。
実際に行ったことが無いので比べることは出来ないのだけれど、夜の歓楽街というのは今いる場所のようなところなのではないだろうか。
やたらと肌を見せている女性を多く見かけるのだけれど、アスモちゃんはそんな女性を睨みつつ俺と腕を組んで歩いている。薄着の女性たちが手を振ってきてくれているのだけれど、それが俺に対してなのかアスモちゃんに対してなのかわからないので俺は何のリアクションもしなかった。
それからしばらく歩いて再び人通りも少なくなってきたのだが、街灯の数はそこまで減ってはいなかった。
ただ、紫色やピンクの看板の明かりが強くて街灯が無くても明るいような気はしていた。
「今晩の宿に着いたよ。予約はしてあるからそのまま入っても平気だからね。オレが予約したのは四階だから」
「四階だからって、四階のどの部屋なの?」
「四階は部屋が一つしかないよ。広い部屋にした方が“まーくん”も嬉しいんじゃないかなって思っだんだけど、狭い方が良かった?」
「狭くても広くてもちゃんと寝られるならそれでいいよ。固い床じゃなければね」
「それなら大丈夫。ベッドの種類はいっぱいあるから選び放題だよ」
選び放題だと言われても、そこまでたくさんあると逆に選びきれないような気もする。
試しに横になるくらいだったら大丈夫だったりするのかな?
俺はちょっとだけ寝るのが楽しみになっていたのだった。
機嫌を損ねた理由もわからないのでどう対処すればいいのかもわからないのだが、横を歩きながら顔を見ているとアスモちゃんと時々目が合っていた。
「“まーくん”はオレの事を見て何を思ってるの?」
「何をって、怪我とかしてないかなって思ってたよ。あんな大きな筋肉男と戦ってたって話だし、アスモちゃんみたいな華奢な女の子が一方的に戦ってたなんて信じられないからね」
「オレはそんなに華奢じゃないと思うんだけどな。ほら、結構筋肉もあるし」
どう見てもどこにも筋肉なんて見えないのだけれど、あえてそこに触れることはしなかった。何が地雷になるのかわからないし、これ以上アスモちゃんの機嫌を悪くさせるなんてことはしたくないのだ。
どこか褒めた方が良いような気もするのだけれど、この俺がそんな気の利いたことを言えるはずも無いので黙っている時間が長くなってしまう。
沈黙は金という言葉もあるのだけれど、この場合はそれが正解だとは思えなかった。
ただ、時と場合によっては、俺は喋らない方が相手にとって良い印象を与える事もあるのかもしれない。
「そ、そんなにオレの事を見つめてどうしたってんだよ。もしかして、オレが可愛いから見惚れてたとか?」
暗い夜道だが、時々街灯に照らされるアスモちゃんの白く綺麗な髪と、メイド服にちりばめられた装飾が輝いて見えるのは美しいと思っていた。やたらと上質で高級感のあるメイド服はアスモちゃんの可愛らしさをより引き立てるモノだと思うのだ。
「ちょっと、そんなに真剣に見つめないでよ。黙って見つめられると、さすがに照れ臭いよ」
「そうだな。アスモちゃんは可愛いと思うよ。服装もそうだけど、たぶんその辺にいる人と同じような格好だったとしても、今までこの街で見てきたどの人よりも可愛いんじゃないかな」
「おいおい、そんなに褒めないでよ。そこまで褒められると反応に困るって。“まーくん”ってもしかして、ナンパ野郎なのか?」
「そんな事無いって。俺は可愛いって思った時は素直にいう事にしてるんだよ。そうした方が良いってイザーちゃんにも言われたし」
「はあ、そこで他の女の名前を出すのはどうなのかな。それも、よりによって八姫の一人であるイザーちゃんの名前を出すなんて最低だよ。ちょっとだけ気分も良くなってたんだけど、なんかテンション下がったわ」
アスモちゃんにとってイザーちゃんがどんな存在なのかわからないのだが、この反応を見る限りではあまりいい印象を持っていないという事なのかもしれない。
イザーちゃんを見た人は性別を問わずみんな綺麗だと言ってくれたのだけれど、アスモちゃんは綺麗な女性はあまり好きではないという事なのだろうか。
どちらかと言えば、アスモちゃんはイザーちゃんよりもうまなちゃんにタイプが似ているような気がする。うまなちゃんに会ったのはあの時が初めてで、どんな人なのかもわかっていないけれど、見た目の系統は似ているように思えていた。
ただ、性格的にはそこまで似ていないのかもしれない。
「もう、今日はさっさと風呂に入って寝ちゃおうかな。明日の予報でも砂嵐は治まらないみたいだし、イザーちゃんのいる艮じゃないところに向かった方が良いかもね。多分、相当先まで嵐は続いていると思うよ。もしかしたら、イザーちゃんが“まーくん”に来てもらいたくないって事で砂嵐を起こしてるのかもしれないね。って、それは冗談だから気にするなよ。この時期は毎年砂嵐が凄い続いているだけだって。な、そんなに悲しそうな顔しないでさ、明るく楽しくしようぜ」
イザーちゃんが俺を避けているなんて思いたくないけど、今はそんな言葉も冗談には聞こえない。
俺がこの世界に来たのは何かしらの理由があるのだと思うけど、その割にはイザーちゃんが俺と一緒にいないというのは気になっていた。
何かを俺にして欲しいのであれば、俺のすぐ近くにいてそれが何なのか教えてくれても良いのではないだろうか。
むしろ、俺が何をすべきか教えて貰いたい。
だが、離れ離れになっている現状を俺なりに考察すると、俺にしか出来ない何かをするためにはいったん離れて何かをしてから合流する必要があるという事なのだろう。
成長した俺がイザーちゃんの求める人材になるために離れたという可能性だってあるんだ。
きっとそうに違いない。
「ほら、もう少しで今晩泊まる宿だから元気出せって。疲れをとるための飲み物も食べ物も買ってあるし、作戦会議をしたらすぐに寝ような。“まーくん”が知りたいことがあれば俺の答えられる範囲で教えるし、今日は早く寝たいって言うんだったら質問は明日でもいいからな」
「ありがとう。色々と知りたいことがあるけど、ちょっと頭の中を整理してから質問するよ」
聞きたいことは山ほどあるのだけれど、何から聞けばいいのかわからない。
先ほどよりも街灯が増えてきて人通りもそれなりに増えているのだが、何となく怪しい看板が目立つように思える。
実際に行ったことが無いので比べることは出来ないのだけれど、夜の歓楽街というのは今いる場所のようなところなのではないだろうか。
やたらと肌を見せている女性を多く見かけるのだけれど、アスモちゃんはそんな女性を睨みつつ俺と腕を組んで歩いている。薄着の女性たちが手を振ってきてくれているのだけれど、それが俺に対してなのかアスモちゃんに対してなのかわからないので俺は何のリアクションもしなかった。
それからしばらく歩いて再び人通りも少なくなってきたのだが、街灯の数はそこまで減ってはいなかった。
ただ、紫色やピンクの看板の明かりが強くて街灯が無くても明るいような気はしていた。
「今晩の宿に着いたよ。予約はしてあるからそのまま入っても平気だからね。オレが予約したのは四階だから」
「四階だからって、四階のどの部屋なの?」
「四階は部屋が一つしかないよ。広い部屋にした方が“まーくん”も嬉しいんじゃないかなって思っだんだけど、狭い方が良かった?」
「狭くても広くてもちゃんと寝られるならそれでいいよ。固い床じゃなければね」
「それなら大丈夫。ベッドの種類はいっぱいあるから選び放題だよ」
選び放題だと言われても、そこまでたくさんあると逆に選びきれないような気もする。
試しに横になるくらいだったら大丈夫だったりするのかな?
俺はちょっとだけ寝るのが楽しみになっていたのだった。
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