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淫欲八姫
第22話 他にも何か隠してたりするんじゃないの?
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背中を洗ってもらう事は喜ばしいことだとは思うのだが、今の俺はただただ震え上がっているかわいそうな存在であった。
アスモちゃんのような可愛らしい女の子に背中を流してもらうなんて夢のようなシチュエーションなのにもかかわらず、頭を押さえつけられた時の記憶がこれから一生離れないのではないかと思うくらいの恐怖を感じさせていた。アスモちゃんが俺に対して悪意を持っていたのではないとわかっているのだが、悪意がまったくない状態でも俺のような何の力も持たない人間は簡単に殺されてしまうのではないかと理解した時、俺は今までのような意地悪なんて出来ないとわからされた。
「“まーくん”の背中って、凄く綺麗だね。オレは自分の背中を見たことが無いから比べられないけど、こんなに綺麗だったらいいな」
今なら声が出るのではないかと思って喋ろうとしたのだが、俺の声帯も緊張してしまっていたのか、声にならない言葉が微かに漏れるだけで会話は出来なかった。
ちょろちょろと流れるシャワーに視線を奪われていた時、アスモちゃんの腕が俺の喉をギュッと掴んでいた。
このまま殺されてしまうのかと思っていたところ、じわじわと体が温かくなっていき、俺の緊張が少しずつ解けていっているのを実感した。
「そんなに固くならなくても大丈夫だよ。オレだって力加減くらいは出来るからさ。そんなに怖がらなくても良いって。だって、“まーくん”はオレの敵じゃないんだよ」
俺の敵じゃないという言葉。
意味を裏返せば、敵になったら容赦はしないという事なのかもしれない。
悪意も殺意もない状態のアスモちゃんに殺されると感じてしまった俺は、絶対にアスモちゃんを敵に回すことだけはしないと固く心に誓ったのだ。
「アスモちゃんの背中も凄く綺麗だったよ。鏡なのかなって思うくらいにピカピカしてたから」
「それは褒められているって事なのかな? 鏡って、そんなに綺麗だとは思わないんだよな。オレが見てる鏡って、なんか小さい女の子みたいなのしか映ってないし」
それは当たり前じゃないか。そう言いかけた俺は言葉を選ぶことが出来る自分を誉めた。脊髄反射で言葉を出してしまっていたらどんな反応が返ってきたのかわからない。アスモちゃんの気分を害する結果になっていた可能性が高いし、そうなってしまうと俺の人生は終わっていただろう。
「可愛い女の子もいいんじゃないかな」
「いいとは思うけど、オレじゃないような気がするんだよな。魔剣王で超魔導士なのに、オレってあんなに弱々しいわけないよね」
肯定とも否定ともとれるような曖昧な返事をしたらアスモちゃんと鏡越しに目が合った。俺はすぐに目を逸らしたのだが、アスモちゃんはそんな俺を挑発するように笑っていた。
アスモちゃんは見た目だけならその辺にいる可憐な少女と言っても過言ではないのだが、少し掴まれただけでも抗うことが出来ないと感じさせるだけの迫力があった。
実際に触れられるまではそう感じることも無かったのだ。俺がアスモちゃんに触れた時には全く何も感じなかったのに、アスモちゃんから触れられた時にはこの世の絶望を全て体験してしまったかのような気持ちになってしまっていた。
それなのに、鏡越しに見えるアスモちゃんの顔はいつも以上に嬉しそうに見えているという事に、俺の精神はどのように安定すればいいのかわからずに混乱し続けていた。
「ねえ、何かさっきと全然違うんだけど、もしかしてオレって何かしちゃったのかな?」
変わらない笑顔を向けてくれているアスモちゃんの言っていることが理解出来ず、俺は今までにないくらい緊張してしまった。
アスモちゃんが何を気にしているのかわからない。俺は恐怖は感じつつも何も変わっているつもりはないのだ。
もしかしたら、本能的にアスモちゃんのことを恐れているのかもしれないが、それは生きているモノであれば皆共通して持ってしまうだろう。
あんなに恐ろしい思いをした後なのだから、仕方のない事であろう。
「お、俺は何も変わってないと思うよ。アスモちゃんが背中を流してくれるのが嬉しいなって思ってるくらいだし」
「それならいいんだけどさ、なんか“まーくん”のソレがさっきと違うんだよね。今は防御姿勢でもとっているって事なのかな?」
「防御姿勢なんてとってないと思うけど。何に対して防御するのかわからないし、敵なんていないと思うよ」
「それはそうなんだけどさ、やっぱり“まーくん”は変だよ。もしかして、他にも何か隠してたりするんじゃないの?」
「何も隠すもんなんてないさ。今はお風呂に入っているから何も着ていないし、隠す場所なんて無いでしょ。ほら、何も持ってないし」
俺は両手を広げて何も隠し持っていないことをアピールしていた。
アスモちゃんは俺の手を確かめはせず、鏡越しに見える視線の先はやたらと低い位置を向いている気がした。いや、確実に下を向いている。
「そんな風にしてオレの注意を上に向けようとしたって駄目だよ。そんなんじゃオレは騙されないからね。“まーくん”のお股がさっきと全然違う形になってるのはどうしてなの?」
視線の向きから何を気にしているのかはわかっていた。
何に対して言っているのかも、本当は気付いていた。
でも、恐怖に震えて縮み上がっているから。なんて言えるはずもない。
そんな事を言ってしまったら、俺がアスモちゃんに対して恐怖を抱いて殺されると感じてしまったと告げることになるのだ。
アスモちゃんがそんな事を知ってしまうと、俺がどんな目に遭ってしまうのか想像もつかない。
何も無いとは思うけれど、俺は何も言えないのだ。
言ったところで、何もいい事は無いと思うのだ。
何とかごまかす方法はないかと考えた結果、俺は適当なことを言ってこの場を切り抜けようと思ったのだ。
「変形するにも時間制限があるんだよ。今回はタイムリミットが来たから戻っちゃっただけなのさ。だから、そんなに気にしなくてもいいんだよ」
「そういうもんなのか。じゃあ、次にお股が変形した時には教えてね。さっきみたいに大きいのをみたいからさ」
俺は苦笑いを浮かべつつもアスモちゃんの望む答えを返すことしか出来なかった。
アスモちゃんのような可愛らしい女の子に背中を流してもらうなんて夢のようなシチュエーションなのにもかかわらず、頭を押さえつけられた時の記憶がこれから一生離れないのではないかと思うくらいの恐怖を感じさせていた。アスモちゃんが俺に対して悪意を持っていたのではないとわかっているのだが、悪意がまったくない状態でも俺のような何の力も持たない人間は簡単に殺されてしまうのではないかと理解した時、俺は今までのような意地悪なんて出来ないとわからされた。
「“まーくん”の背中って、凄く綺麗だね。オレは自分の背中を見たことが無いから比べられないけど、こんなに綺麗だったらいいな」
今なら声が出るのではないかと思って喋ろうとしたのだが、俺の声帯も緊張してしまっていたのか、声にならない言葉が微かに漏れるだけで会話は出来なかった。
ちょろちょろと流れるシャワーに視線を奪われていた時、アスモちゃんの腕が俺の喉をギュッと掴んでいた。
このまま殺されてしまうのかと思っていたところ、じわじわと体が温かくなっていき、俺の緊張が少しずつ解けていっているのを実感した。
「そんなに固くならなくても大丈夫だよ。オレだって力加減くらいは出来るからさ。そんなに怖がらなくても良いって。だって、“まーくん”はオレの敵じゃないんだよ」
俺の敵じゃないという言葉。
意味を裏返せば、敵になったら容赦はしないという事なのかもしれない。
悪意も殺意もない状態のアスモちゃんに殺されると感じてしまった俺は、絶対にアスモちゃんを敵に回すことだけはしないと固く心に誓ったのだ。
「アスモちゃんの背中も凄く綺麗だったよ。鏡なのかなって思うくらいにピカピカしてたから」
「それは褒められているって事なのかな? 鏡って、そんなに綺麗だとは思わないんだよな。オレが見てる鏡って、なんか小さい女の子みたいなのしか映ってないし」
それは当たり前じゃないか。そう言いかけた俺は言葉を選ぶことが出来る自分を誉めた。脊髄反射で言葉を出してしまっていたらどんな反応が返ってきたのかわからない。アスモちゃんの気分を害する結果になっていた可能性が高いし、そうなってしまうと俺の人生は終わっていただろう。
「可愛い女の子もいいんじゃないかな」
「いいとは思うけど、オレじゃないような気がするんだよな。魔剣王で超魔導士なのに、オレってあんなに弱々しいわけないよね」
肯定とも否定ともとれるような曖昧な返事をしたらアスモちゃんと鏡越しに目が合った。俺はすぐに目を逸らしたのだが、アスモちゃんはそんな俺を挑発するように笑っていた。
アスモちゃんは見た目だけならその辺にいる可憐な少女と言っても過言ではないのだが、少し掴まれただけでも抗うことが出来ないと感じさせるだけの迫力があった。
実際に触れられるまではそう感じることも無かったのだ。俺がアスモちゃんに触れた時には全く何も感じなかったのに、アスモちゃんから触れられた時にはこの世の絶望を全て体験してしまったかのような気持ちになってしまっていた。
それなのに、鏡越しに見えるアスモちゃんの顔はいつも以上に嬉しそうに見えているという事に、俺の精神はどのように安定すればいいのかわからずに混乱し続けていた。
「ねえ、何かさっきと全然違うんだけど、もしかしてオレって何かしちゃったのかな?」
変わらない笑顔を向けてくれているアスモちゃんの言っていることが理解出来ず、俺は今までにないくらい緊張してしまった。
アスモちゃんが何を気にしているのかわからない。俺は恐怖は感じつつも何も変わっているつもりはないのだ。
もしかしたら、本能的にアスモちゃんのことを恐れているのかもしれないが、それは生きているモノであれば皆共通して持ってしまうだろう。
あんなに恐ろしい思いをした後なのだから、仕方のない事であろう。
「お、俺は何も変わってないと思うよ。アスモちゃんが背中を流してくれるのが嬉しいなって思ってるくらいだし」
「それならいいんだけどさ、なんか“まーくん”のソレがさっきと違うんだよね。今は防御姿勢でもとっているって事なのかな?」
「防御姿勢なんてとってないと思うけど。何に対して防御するのかわからないし、敵なんていないと思うよ」
「それはそうなんだけどさ、やっぱり“まーくん”は変だよ。もしかして、他にも何か隠してたりするんじゃないの?」
「何も隠すもんなんてないさ。今はお風呂に入っているから何も着ていないし、隠す場所なんて無いでしょ。ほら、何も持ってないし」
俺は両手を広げて何も隠し持っていないことをアピールしていた。
アスモちゃんは俺の手を確かめはせず、鏡越しに見える視線の先はやたらと低い位置を向いている気がした。いや、確実に下を向いている。
「そんな風にしてオレの注意を上に向けようとしたって駄目だよ。そんなんじゃオレは騙されないからね。“まーくん”のお股がさっきと全然違う形になってるのはどうしてなの?」
視線の向きから何を気にしているのかはわかっていた。
何に対して言っているのかも、本当は気付いていた。
でも、恐怖に震えて縮み上がっているから。なんて言えるはずもない。
そんな事を言ってしまったら、俺がアスモちゃんに対して恐怖を抱いて殺されると感じてしまったと告げることになるのだ。
アスモちゃんがそんな事を知ってしまうと、俺がどんな目に遭ってしまうのか想像もつかない。
何も無いとは思うけれど、俺は何も言えないのだ。
言ったところで、何もいい事は無いと思うのだ。
何とかごまかす方法はないかと考えた結果、俺は適当なことを言ってこの場を切り抜けようと思ったのだ。
「変形するにも時間制限があるんだよ。今回はタイムリミットが来たから戻っちゃっただけなのさ。だから、そんなに気にしなくてもいいんだよ」
「そういうもんなのか。じゃあ、次にお股が変形した時には教えてね。さっきみたいに大きいのをみたいからさ」
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