3 / 28
第三話
しおりを挟む
相談をする目的で愛莉に会いに行くときはいつも緊張してしまう。愛莉と奥谷君の前では緊張しないと思っていたのだけれど、改まった気持ちで会いに行くとなるとどうしても緊張してしまうのだ。普通に遊ぶ時は足を崩して座っているはずなのに、相談事がある時はどうしても正座になってしまう。今までも何度かそんなことがあったので、愛莉はもう私が相談に来たという事には気付いているみたいだった。
「それで、今日は何の相談があった来たのかな。もしかして、今年の舞台は言ってみたいセリフがあるとかかな?」
「いや、そうじゃなくてさ。出来ることならあの舞台は他の人に変わってもらいたいくらいだよ。それこそ、今度の舞台で奥谷君と一緒に主役をやる朋花ちゃんとかさ」
「ああ、あの子ね。あの子の芝居は何度か見たことあるけど、不思議と見てるだけで引き込まれる独特の空気感があるよね。私は舞台とかあんまり見てるわけじゃないけど、あんな風に気持ちを掴まれる経験ってしたことなかったな。でもさ、泉は立ってるだけでそれが出来るんだからもっと凄いよね。せっかくだし、何かセリフでも付け加えてみようか」
「だから、そうじゃないって。私は今年の舞台に出るとは言ってないし、それこそ、私の代わりに朋花ちゃんを主役にしたらいいじゃない。私とは違った舞台になると思うよ。って、そうじゃなくてさ、来週の日曜の事で相談があるんだよ」
「来週の日曜か。来週の日曜は予定があるから助けることは出来ないかも。私はデートの約束しちゃってるからさ。最近ちょっとお互いに忙しくて会えなかったんだけど、それもあって日付をずらすことが出来ないんだよね。ごめんね」
「あ、いや。直接助けてって事じゃなくてさ、アドバイスが欲しいって事なんだけどね。私よりも愛莉の方が恋愛経験あるから参考に話を聞かせてもらいたいなって思ってさ」
「私はさ、恋愛経験豊富って程でもないし泉の参考にはならないと思うけどな。もしかして、来週の日曜にデートの予定でも入ったの?」
「いや、デートって言うか、映画を一緒に見に行くって感じなんだけど」
「へえ、もしかして、私の意見を参考にするって事は、相手は朋花だね」
「うん、朋花ちゃんもいるんだけど、奥谷君と高橋君も一緒なんだよね」
「え、奥谷もいるの?」
「そうなんだよ。今週は無理だけど来週なら空いてるよって言ってくれたみたいでさ。本当に珍しいよね」
「奥谷がいるんなら私も行ってみたい気持ちになるけどさ、さすがに久しぶりのデートをずらすほどのイベントでもないよな。梓に教えたら驚きそうだけどさ、学校外で奥谷と一緒にいるって相当レアなイベントのような気がしてきた。ちょっと梓にメールしてみようかな」
「奥谷君って受験勉強していた時以外は学校でしか見かけなかったもんね。噂では部活の打ち上げには参加してたみたいだけど、クリスマス会とか新年会は参加してなかったって言うもんね。クラスの男子たちは奥谷君を餌に女子を誘おうとしてたみたいだけど、奥谷君がそういうのに参加しないってのはみんな知ってたからね。理由までは知らなかったみたいだけどさ、奥谷君らしいと言えば奥谷君らしいよね」
「それなんだけどさ、奥谷が家に引きこもっているのって何か理由あるの?」
「え、愛莉は長年奥谷君と一緒のクラスなのに覚えてないの?」
「うん、覚えてないって言うか、私は男子にあまり興味無いからね。奥谷に勉強を教えるのは面白かったけど、話してて特別面白いと感じたことは一度もないかも。で、奥谷が出歩かない理由って何なの?」
「本当に覚えてないんだね。奥谷君に妹さんがいるのは覚えてる?」
「いや、初耳のような気がする」
「そんなわけないでしょ。勉強会は時々奥谷君の家でやってたけど、その時に奥谷君の妹さんと会ってるよ。覚えてない?」
「あ、あのかわいい子か。誰かの家で勉強を教えている時に可愛い女の子がいた記憶があるんだけど、それって奥谷の家だったんだね。今初めて知ったかも」
「ちょっとちょっと、奥谷君に興味が無さ過ぎでしょ。まあ、愛莉がそんなんだから私も相談しやすいんだけどさ」
「で、奥谷が出歩かない理由って何なの?」
「愛莉は誰にも言わないと思うから言うけど、奥谷君の妹さんって紫外線に弱いんだよね。日中に出歩くと酷いときは肌に水膨れが出来ちゃうみたいなんだよ。それでさ、妹さんが自由に外で遊んだりできないのに自分だけ遊びに行くのは申し訳ないって理由で極力家にいることにしてるんだってさ。やっぱり、自分の兄が好き勝手に外で遊び歩いていたら妹さんも辛いんじゃないかなって考えてるって言ってたよ。妹さんは気にしてないみたいだけどね」
「へえ、奥谷って意外と家族思いなんだな。見た目からは想像もつかなかったよ」
「いや、見た目通りのいいやつでしょ。愛莉の目にはどう映ってるんだよ」
「どうって言われてもな。私は本当に奥谷に対して興味が無いから壁とか天井にしか見えてないかも」
「いやいや、さすがにそれは酷すぎると思うよ。奥谷君はカッコいいんだから他の男子とは区別しとこうよ」
「さすがにさ、私も奥谷の声を聞けばすぐに区別は出来るよ。他の男子の事はあんまりよくわかってないけど、奥谷は長い付き合いだから声を聞けばすぐに分かるさ。あ、梓からメール返ってきた。なになに、奥谷が出かけてる姿を見ると幸せになれるって噂があるからデートは映画館でもいいよ。だってさ。そんなわけで私と梓も映画を見に行くことになりました。でも、さすがに六人で固まるのってどうかと思うんで、私達は別の映画を見るかもしれないけどよろしくね。ちょうど気になってたアニメの劇場版もやってるし、それを見に行くか梓に聞いてみようかな」
「奥谷君って幸運を招くレアキャラみたいな扱いなんだね。学校でも奥谷君を見かけた後輩は男女問わずにソワソワしてるのってそういう事もあったのかな。その割には、奥谷君とよく話してる私にあんまり幸運がやってきてないんだけど、信ぴょう性ってどうなんだろうね」
「何言ってんだよ。泉は他の誰にも負けないくらい幸運を与えられていると思うよ」
「え、どこが?」
「だってさ、奥谷と私と幼稚園からずっと同じクラスなんだぜ。それってかなり幸運な事だと思うけどな。ま、私は泉よりも先に幸せをつかんだけど、それも泉と奥谷のお陰だって思ってるからさ。で、肝心の相談って何だっけ?」
「そのさ、映画を見に行くときにどんな格好をしていったらいいと思うかな?」
「どんなって、制服じゃなければ何でもいいんじゃない。私はファッションに興味は無いけど、自分がいいなって思う服なら何でもいいと思うよ」
「え、愛莉って服に興味ないって嘘でしょ。あんなにオシャレな服をたくさん持ってて、着こなしとかも凄い決まってるのに、興味無いわけないでしょ」
「ああ、それね。私のお兄ちゃんが勝手に全部決めてくれてるんだよ。今は服飾系の専門学校に行ってるんだけど、私のために作った服を送ってきては着てる写真を送れって言ってくるんだよね。で、お兄ちゃんに褒められた服を着てるだけだからね」
「いいな。私は何回かしか会った事ないけど、愛莉のお兄さんってオシャレだもんね。雑誌で見るような私には想像もつかないような服を着てるのに決まってたもんね。時々コスプレしてるのは面白かったけど」
「そうなんだよね。私はお兄ちゃんの影響でオタクになったってところもあるんだけど、イベントに来ていくコス衣装とかも作ってくれるんだ。それが無ければお兄ちゃんの指定してくる服とか来てないんだけど、私のお小遣いじゃ衣装を買うことも作ることも出来ないから仕方なく従っているんだよね。でさ、最近はお兄ちゃんだけじゃなくてお兄ちゃんの同級生も私の服を作ってくれるって言いだしたから、私はどうしたらいいかわからないんだよ。そうだ、お兄ちゃんの友達が作るのは私のじゃなくて泉のにしたらいいんじゃないかな。それって、凄いいいアイデアかも。泉って顔も綺麗だしスタイルもいいから作る方も作り甲斐がありそうだし、泉も他の人の作る服を見たらアイデアが広がるかもしれないよ」
「確かに、それはいい考えかも知れないけど、問題は相手の人が愛莉のためじゃなくて私のために作りたいって思うかどうかの話じゃない?」
「そうだね。とりあえず、お兄ちゃんに電話してみるよ。私も一日に何回も服を着替えるのって辛いと思ってたからさ。そうそう、私の服を作ってくれる人は皆女の人だから安心してね」
「服飾系って男性もいるイメージだったけど女性も多いんだね」
「いや、男性もいるみたいなんだけどさ、お兄ちゃんが男の作った服に袖を通してほしくないって気持ち悪いこと言ってるんだって。私は誰が作ったかなんて興味無いんだけど、お兄ちゃんは嫌みたいだよ。あ、お兄ちゃんに繋がった」
私は映画を見に行くのにどんな服装で出かければいいのかオシャレな愛莉に聞きに来たはずだった。愛莉のお兄さんがオシャレな人だから愛莉もセンスがあるのだろうと思って相談してみたところ、愛莉はお兄さんたちが用意した服を着ているだけだったという事実が判明した。
そして、なんだかわからないのだが、愛莉に色々な角度から写真を撮られていた。
「よし、指定された写真は全部撮ったから後はお兄ちゃんに送るだけだね。あとは泉の大まかでいいんでスリーサイズを教えてもらってもいいかな?」
「え、さすがにそれはちょっと教えられないかも」
「そうか。じゃあ、あんまりタイトな感じじゃなくてゆったりした感じのシルエットにしてもらうね。でもさ、身長は泉の方が高いけど、私の方がバストはあるかもしれないね」
確かにそうかもしれないのだけれど、体重は私の方が軽いんだから仕方ないと思う。身長が高い私の方が軽いんだから胸に脂肪がついてなくたって仕方ないじゃない。
「あ、お兄ちゃんに写真を送ったらお兄ちゃんの友達がやる気になったって。もしかしたら、来週の土曜日にはいくつか服を作ってきてくれるかもって言ってるよ。これで、デートの時に着る服に悩まなくて済むかもね」
「ありがと。期待して待ってるよ」
そうなのだ。愛莉は私の相談に真剣に乗ってくれているとは思えない態度をいつもとるのだけれど、ちゃんと私の相談に答えを出してくれるのだ。それも、毎回私が期待している以上の答えを用意してくれるのだ。
それにしても、来週の土曜日って一週間くらしかないのにそんなに簡単に服を作ることが出来るのだろうか?
私が作ってきた衣装は舞台用という事を考えても一週間でどこまで出来るのか想像もつかない。そもそも、私は自分でデザインを起こしたことが無いのでその苦労も理解していないのだ。
でも、私のために作ってくれた物がどのような仕上がりになっているのかは気になってしまう。
「あ、来週の土曜はお兄ちゃんが友達を連れてくるって言ってるからさ、泉のファッションショーを開催出来るって。以前作ったやつで泉に似合いそうなのが沢山あるって言ってるよ」
「それで、今日は何の相談があった来たのかな。もしかして、今年の舞台は言ってみたいセリフがあるとかかな?」
「いや、そうじゃなくてさ。出来ることならあの舞台は他の人に変わってもらいたいくらいだよ。それこそ、今度の舞台で奥谷君と一緒に主役をやる朋花ちゃんとかさ」
「ああ、あの子ね。あの子の芝居は何度か見たことあるけど、不思議と見てるだけで引き込まれる独特の空気感があるよね。私は舞台とかあんまり見てるわけじゃないけど、あんな風に気持ちを掴まれる経験ってしたことなかったな。でもさ、泉は立ってるだけでそれが出来るんだからもっと凄いよね。せっかくだし、何かセリフでも付け加えてみようか」
「だから、そうじゃないって。私は今年の舞台に出るとは言ってないし、それこそ、私の代わりに朋花ちゃんを主役にしたらいいじゃない。私とは違った舞台になると思うよ。って、そうじゃなくてさ、来週の日曜の事で相談があるんだよ」
「来週の日曜か。来週の日曜は予定があるから助けることは出来ないかも。私はデートの約束しちゃってるからさ。最近ちょっとお互いに忙しくて会えなかったんだけど、それもあって日付をずらすことが出来ないんだよね。ごめんね」
「あ、いや。直接助けてって事じゃなくてさ、アドバイスが欲しいって事なんだけどね。私よりも愛莉の方が恋愛経験あるから参考に話を聞かせてもらいたいなって思ってさ」
「私はさ、恋愛経験豊富って程でもないし泉の参考にはならないと思うけどな。もしかして、来週の日曜にデートの予定でも入ったの?」
「いや、デートって言うか、映画を一緒に見に行くって感じなんだけど」
「へえ、もしかして、私の意見を参考にするって事は、相手は朋花だね」
「うん、朋花ちゃんもいるんだけど、奥谷君と高橋君も一緒なんだよね」
「え、奥谷もいるの?」
「そうなんだよ。今週は無理だけど来週なら空いてるよって言ってくれたみたいでさ。本当に珍しいよね」
「奥谷がいるんなら私も行ってみたい気持ちになるけどさ、さすがに久しぶりのデートをずらすほどのイベントでもないよな。梓に教えたら驚きそうだけどさ、学校外で奥谷と一緒にいるって相当レアなイベントのような気がしてきた。ちょっと梓にメールしてみようかな」
「奥谷君って受験勉強していた時以外は学校でしか見かけなかったもんね。噂では部活の打ち上げには参加してたみたいだけど、クリスマス会とか新年会は参加してなかったって言うもんね。クラスの男子たちは奥谷君を餌に女子を誘おうとしてたみたいだけど、奥谷君がそういうのに参加しないってのはみんな知ってたからね。理由までは知らなかったみたいだけどさ、奥谷君らしいと言えば奥谷君らしいよね」
「それなんだけどさ、奥谷が家に引きこもっているのって何か理由あるの?」
「え、愛莉は長年奥谷君と一緒のクラスなのに覚えてないの?」
「うん、覚えてないって言うか、私は男子にあまり興味無いからね。奥谷に勉強を教えるのは面白かったけど、話してて特別面白いと感じたことは一度もないかも。で、奥谷が出歩かない理由って何なの?」
「本当に覚えてないんだね。奥谷君に妹さんがいるのは覚えてる?」
「いや、初耳のような気がする」
「そんなわけないでしょ。勉強会は時々奥谷君の家でやってたけど、その時に奥谷君の妹さんと会ってるよ。覚えてない?」
「あ、あのかわいい子か。誰かの家で勉強を教えている時に可愛い女の子がいた記憶があるんだけど、それって奥谷の家だったんだね。今初めて知ったかも」
「ちょっとちょっと、奥谷君に興味が無さ過ぎでしょ。まあ、愛莉がそんなんだから私も相談しやすいんだけどさ」
「で、奥谷が出歩かない理由って何なの?」
「愛莉は誰にも言わないと思うから言うけど、奥谷君の妹さんって紫外線に弱いんだよね。日中に出歩くと酷いときは肌に水膨れが出来ちゃうみたいなんだよ。それでさ、妹さんが自由に外で遊んだりできないのに自分だけ遊びに行くのは申し訳ないって理由で極力家にいることにしてるんだってさ。やっぱり、自分の兄が好き勝手に外で遊び歩いていたら妹さんも辛いんじゃないかなって考えてるって言ってたよ。妹さんは気にしてないみたいだけどね」
「へえ、奥谷って意外と家族思いなんだな。見た目からは想像もつかなかったよ」
「いや、見た目通りのいいやつでしょ。愛莉の目にはどう映ってるんだよ」
「どうって言われてもな。私は本当に奥谷に対して興味が無いから壁とか天井にしか見えてないかも」
「いやいや、さすがにそれは酷すぎると思うよ。奥谷君はカッコいいんだから他の男子とは区別しとこうよ」
「さすがにさ、私も奥谷の声を聞けばすぐに区別は出来るよ。他の男子の事はあんまりよくわかってないけど、奥谷は長い付き合いだから声を聞けばすぐに分かるさ。あ、梓からメール返ってきた。なになに、奥谷が出かけてる姿を見ると幸せになれるって噂があるからデートは映画館でもいいよ。だってさ。そんなわけで私と梓も映画を見に行くことになりました。でも、さすがに六人で固まるのってどうかと思うんで、私達は別の映画を見るかもしれないけどよろしくね。ちょうど気になってたアニメの劇場版もやってるし、それを見に行くか梓に聞いてみようかな」
「奥谷君って幸運を招くレアキャラみたいな扱いなんだね。学校でも奥谷君を見かけた後輩は男女問わずにソワソワしてるのってそういう事もあったのかな。その割には、奥谷君とよく話してる私にあんまり幸運がやってきてないんだけど、信ぴょう性ってどうなんだろうね」
「何言ってんだよ。泉は他の誰にも負けないくらい幸運を与えられていると思うよ」
「え、どこが?」
「だってさ、奥谷と私と幼稚園からずっと同じクラスなんだぜ。それってかなり幸運な事だと思うけどな。ま、私は泉よりも先に幸せをつかんだけど、それも泉と奥谷のお陰だって思ってるからさ。で、肝心の相談って何だっけ?」
「そのさ、映画を見に行くときにどんな格好をしていったらいいと思うかな?」
「どんなって、制服じゃなければ何でもいいんじゃない。私はファッションに興味は無いけど、自分がいいなって思う服なら何でもいいと思うよ」
「え、愛莉って服に興味ないって嘘でしょ。あんなにオシャレな服をたくさん持ってて、着こなしとかも凄い決まってるのに、興味無いわけないでしょ」
「ああ、それね。私のお兄ちゃんが勝手に全部決めてくれてるんだよ。今は服飾系の専門学校に行ってるんだけど、私のために作った服を送ってきては着てる写真を送れって言ってくるんだよね。で、お兄ちゃんに褒められた服を着てるだけだからね」
「いいな。私は何回かしか会った事ないけど、愛莉のお兄さんってオシャレだもんね。雑誌で見るような私には想像もつかないような服を着てるのに決まってたもんね。時々コスプレしてるのは面白かったけど」
「そうなんだよね。私はお兄ちゃんの影響でオタクになったってところもあるんだけど、イベントに来ていくコス衣装とかも作ってくれるんだ。それが無ければお兄ちゃんの指定してくる服とか来てないんだけど、私のお小遣いじゃ衣装を買うことも作ることも出来ないから仕方なく従っているんだよね。でさ、最近はお兄ちゃんだけじゃなくてお兄ちゃんの同級生も私の服を作ってくれるって言いだしたから、私はどうしたらいいかわからないんだよ。そうだ、お兄ちゃんの友達が作るのは私のじゃなくて泉のにしたらいいんじゃないかな。それって、凄いいいアイデアかも。泉って顔も綺麗だしスタイルもいいから作る方も作り甲斐がありそうだし、泉も他の人の作る服を見たらアイデアが広がるかもしれないよ」
「確かに、それはいい考えかも知れないけど、問題は相手の人が愛莉のためじゃなくて私のために作りたいって思うかどうかの話じゃない?」
「そうだね。とりあえず、お兄ちゃんに電話してみるよ。私も一日に何回も服を着替えるのって辛いと思ってたからさ。そうそう、私の服を作ってくれる人は皆女の人だから安心してね」
「服飾系って男性もいるイメージだったけど女性も多いんだね」
「いや、男性もいるみたいなんだけどさ、お兄ちゃんが男の作った服に袖を通してほしくないって気持ち悪いこと言ってるんだって。私は誰が作ったかなんて興味無いんだけど、お兄ちゃんは嫌みたいだよ。あ、お兄ちゃんに繋がった」
私は映画を見に行くのにどんな服装で出かければいいのかオシャレな愛莉に聞きに来たはずだった。愛莉のお兄さんがオシャレな人だから愛莉もセンスがあるのだろうと思って相談してみたところ、愛莉はお兄さんたちが用意した服を着ているだけだったという事実が判明した。
そして、なんだかわからないのだが、愛莉に色々な角度から写真を撮られていた。
「よし、指定された写真は全部撮ったから後はお兄ちゃんに送るだけだね。あとは泉の大まかでいいんでスリーサイズを教えてもらってもいいかな?」
「え、さすがにそれはちょっと教えられないかも」
「そうか。じゃあ、あんまりタイトな感じじゃなくてゆったりした感じのシルエットにしてもらうね。でもさ、身長は泉の方が高いけど、私の方がバストはあるかもしれないね」
確かにそうかもしれないのだけれど、体重は私の方が軽いんだから仕方ないと思う。身長が高い私の方が軽いんだから胸に脂肪がついてなくたって仕方ないじゃない。
「あ、お兄ちゃんに写真を送ったらお兄ちゃんの友達がやる気になったって。もしかしたら、来週の土曜日にはいくつか服を作ってきてくれるかもって言ってるよ。これで、デートの時に着る服に悩まなくて済むかもね」
「ありがと。期待して待ってるよ」
そうなのだ。愛莉は私の相談に真剣に乗ってくれているとは思えない態度をいつもとるのだけれど、ちゃんと私の相談に答えを出してくれるのだ。それも、毎回私が期待している以上の答えを用意してくれるのだ。
それにしても、来週の土曜日って一週間くらしかないのにそんなに簡単に服を作ることが出来るのだろうか?
私が作ってきた衣装は舞台用という事を考えても一週間でどこまで出来るのか想像もつかない。そもそも、私は自分でデザインを起こしたことが無いのでその苦労も理解していないのだ。
でも、私のために作ってくれた物がどのような仕上がりになっているのかは気になってしまう。
「あ、来週の土曜はお兄ちゃんが友達を連れてくるって言ってるからさ、泉のファッションショーを開催出来るって。以前作ったやつで泉に似合いそうなのが沢山あるって言ってるよ」
0
あなたにおすすめの小説
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる