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女子バスケ部エースの後輩とベンチ外の俺
第七話
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女子側のコートに入るのには先生の許可が必要なのだが、先生たちは俺に対してあっさいりと許可を出してきた。
男子側と女子側は簡単なネットで仕切られているだけなので何も変わることは無いと思うのだけれど、女子側のコートはいい匂いがしているような気がしていた。気のせいかなと思っていたのだが、みんなが使っているタオルから柔軟剤のいい匂いがしている事に気付いたのだ。
「ちょっと美月、なんで萩原先輩の汗をタオルで拭いてるのよ。あんたそれさっき自分の汗を拭てたやつじゃない」
「あ、そうだったかも。先輩すいません。結構汗かいてるみたいだったんで思わず拭いてしまいました。私の弟が汗をかいた時に拭いてあげてたんで、つい先輩の汗を見て拭いてしまいました。ごめんなさい」
「俺の方こそ汗がひく前に来ちゃってごめんね」
「美月ったら変な事するのやめてよね。私が準備してる間にも変な事したらダメだからね」
若葉ちゃんは美月ちゃんに少し怒りながらも体育館から出て行ってしまった。練習が終わった後に何の準備をするのだろうと思っていたのだが、そんな疑問を吹っ飛ばすかのように美月ちゃんと瞳ちゃんが俺の腕を引っ張ってゴール前まで移動することになった。
女の子に手を握られたのはいつ以来だろうと思っていたのだけれど、他の女子部員たちも俺の背中を押したり肩を触ってきたりしていて変な気持ちになりそうだった。
「私たちみんな兎梅中との練習試合を見て先輩のファンになったんです。あの時に瞳が動画撮ってなかったら思い出だけで終わるところでしたよ」
女子部員たちが持ってきたスマホには俺が兎梅中とフリースロー対決をしているところが延々と流れ続けていた。少し編集している人もいればそのままの映像を見ている人もいる。何故か対戦相手の兎梅中のシーンはないのだが、どうしてこんな映像を見ているのだろう。
「今日はこっちに来てくれてありがとうございます。向こうは一年生の男子がずっと使ってるみたいだし、先輩はこっちでシュート練習してくれていいですからね。でも、若葉との勝負に勝てたらって条件でもいいですか?」
「若葉ちゃんとの勝負ね。フリースロー勝負に限定してくれるならしても良いけどさ、普通にゲームとかになると俺は勝てないから」
「それで大丈夫ですよ。それと、私達も先輩のシュートシーンを撮影させてもらってもいいですよね?」
「それは構わないけどさ、俺のシュートなんて撮ってどうするの?」
「どうするのって、何回も見てお手本にするんですよ。今頃兎梅中の人達も先輩のシューをと参考にして練習してるんじゃないですかね。あ、若葉の準備が出来たみたいですよ」
体育館に戻ってきた若葉ちゃんはユニフォームを着て試合用のバッシュも履いていたのだ。その表情はいつもとは違って鬼気迫るものがあり、たかが遊びだというのにこのフリースロー勝負にかける意気込みが並々ならぬものだという事を物語っていた。
「さあ、お待たせしました。ちょっと練習してから勝負を始めますか」
「そこまで待ったとは思わないけどさ、随分気合入ってるね」
「そうですね。これくらいしないと萩原先輩とはいい勝負にならないと思いますので」
「気合入れ過ぎて失敗しないように気を付けてね」
「はい、ありがとうございます」
俺達は順番に練習をしていた。俺はいつも通り変わらずにゴールにボールを入れているのだけれど、若葉ちゃんは調子が悪いのか十本打って二本しか入っていなかった。
その後も若葉ちゃんは距離感を訂正するためなのか何本も打っていたのだけれど、その成功率は決して高いものとは言えない状況にあったのだ。
「俺はいつでもいいけど、若葉ちゃんはどうかな?」
「私も大丈夫ですよ。これ以上やっても修正できなさそうだし、みんなのためにも頑張ります」
今回のフリースロー対決のルールはお互いに十本シュートを打って決めた数が多い方の勝ちとなる。同点だった場合は一本ずつの延長を行っていく。ただし、三十分後には片付けを終えて帰らないといけないので最大でも勝負の時間は二十分間ときまっている。
「じゃあ、萩原先輩からどうぞ。私は後攻で良いので」
「そうなんだ。それじゃ、俺から行かせてもらうね」
俺はいつものようにフリースローラインに立っていつものテンポでシュートを決めていった。美月ちゃんがテンポよく正確にボールを渡してくれるという事もあって俺はあっという間に十本のフリースローを決めることが出来た。
兎梅中の時と同じように周りにいる部員たちがスマホを俺に向けてきていたのだけれど、なぜか女子部員だけではなく男子部員や先生たちもその輪に加わっていたのだ。
「さすが萩原先輩ですね。私はこれで一本も外せない状況になりましたよ。こんなに緊張するのは初めてかもしれないですけど、最後まで見ててくださいね」
若葉ちゃんは俺と同じようなリズムでボールをついてからシュート体勢に入って行った。先程までの若葉ちゃんとは違うシュートフォームではあったけれど、今まで見てきた若葉ちゃんのシュートよりもフォームが美しいと思ってしまった。
若葉ちゃんの放ったボールは綺麗な弧を描いてリングに真っすぐに向かっていき、そのまま綺麗な軌道を保ったままリングの手前に当たってはじき返されてしまった。
「あちゃ、一回目で失敗しちゃいました。私の負けですね」
「なんで今までと違うフォームに変えたの?」
「この方が入る気がしてたんですよ。それに、先輩の驚いた顔が見れたから良かったです」
「確かに驚いたよ。若葉ちゃんのシュートが凄く綺麗だったからね」
「綺麗なのはシュートだけじゃないかもしれないですよ。じゃあ、約束通り、私に勝てたからデートしてあげますよ。良かったですね、萩原先輩」
みんなが注目している中で突然そんな事を言い出して何を考えているのかと思っていたのだけれど、最後の部分は俺の耳元で囁くように言っていたので誰にも聞こえてはいないはずだ。
男子側と女子側は簡単なネットで仕切られているだけなので何も変わることは無いと思うのだけれど、女子側のコートはいい匂いがしているような気がしていた。気のせいかなと思っていたのだが、みんなが使っているタオルから柔軟剤のいい匂いがしている事に気付いたのだ。
「ちょっと美月、なんで萩原先輩の汗をタオルで拭いてるのよ。あんたそれさっき自分の汗を拭てたやつじゃない」
「あ、そうだったかも。先輩すいません。結構汗かいてるみたいだったんで思わず拭いてしまいました。私の弟が汗をかいた時に拭いてあげてたんで、つい先輩の汗を見て拭いてしまいました。ごめんなさい」
「俺の方こそ汗がひく前に来ちゃってごめんね」
「美月ったら変な事するのやめてよね。私が準備してる間にも変な事したらダメだからね」
若葉ちゃんは美月ちゃんに少し怒りながらも体育館から出て行ってしまった。練習が終わった後に何の準備をするのだろうと思っていたのだが、そんな疑問を吹っ飛ばすかのように美月ちゃんと瞳ちゃんが俺の腕を引っ張ってゴール前まで移動することになった。
女の子に手を握られたのはいつ以来だろうと思っていたのだけれど、他の女子部員たちも俺の背中を押したり肩を触ってきたりしていて変な気持ちになりそうだった。
「私たちみんな兎梅中との練習試合を見て先輩のファンになったんです。あの時に瞳が動画撮ってなかったら思い出だけで終わるところでしたよ」
女子部員たちが持ってきたスマホには俺が兎梅中とフリースロー対決をしているところが延々と流れ続けていた。少し編集している人もいればそのままの映像を見ている人もいる。何故か対戦相手の兎梅中のシーンはないのだが、どうしてこんな映像を見ているのだろう。
「今日はこっちに来てくれてありがとうございます。向こうは一年生の男子がずっと使ってるみたいだし、先輩はこっちでシュート練習してくれていいですからね。でも、若葉との勝負に勝てたらって条件でもいいですか?」
「若葉ちゃんとの勝負ね。フリースロー勝負に限定してくれるならしても良いけどさ、普通にゲームとかになると俺は勝てないから」
「それで大丈夫ですよ。それと、私達も先輩のシュートシーンを撮影させてもらってもいいですよね?」
「それは構わないけどさ、俺のシュートなんて撮ってどうするの?」
「どうするのって、何回も見てお手本にするんですよ。今頃兎梅中の人達も先輩のシューをと参考にして練習してるんじゃないですかね。あ、若葉の準備が出来たみたいですよ」
体育館に戻ってきた若葉ちゃんはユニフォームを着て試合用のバッシュも履いていたのだ。その表情はいつもとは違って鬼気迫るものがあり、たかが遊びだというのにこのフリースロー勝負にかける意気込みが並々ならぬものだという事を物語っていた。
「さあ、お待たせしました。ちょっと練習してから勝負を始めますか」
「そこまで待ったとは思わないけどさ、随分気合入ってるね」
「そうですね。これくらいしないと萩原先輩とはいい勝負にならないと思いますので」
「気合入れ過ぎて失敗しないように気を付けてね」
「はい、ありがとうございます」
俺達は順番に練習をしていた。俺はいつも通り変わらずにゴールにボールを入れているのだけれど、若葉ちゃんは調子が悪いのか十本打って二本しか入っていなかった。
その後も若葉ちゃんは距離感を訂正するためなのか何本も打っていたのだけれど、その成功率は決して高いものとは言えない状況にあったのだ。
「俺はいつでもいいけど、若葉ちゃんはどうかな?」
「私も大丈夫ですよ。これ以上やっても修正できなさそうだし、みんなのためにも頑張ります」
今回のフリースロー対決のルールはお互いに十本シュートを打って決めた数が多い方の勝ちとなる。同点だった場合は一本ずつの延長を行っていく。ただし、三十分後には片付けを終えて帰らないといけないので最大でも勝負の時間は二十分間ときまっている。
「じゃあ、萩原先輩からどうぞ。私は後攻で良いので」
「そうなんだ。それじゃ、俺から行かせてもらうね」
俺はいつものようにフリースローラインに立っていつものテンポでシュートを決めていった。美月ちゃんがテンポよく正確にボールを渡してくれるという事もあって俺はあっという間に十本のフリースローを決めることが出来た。
兎梅中の時と同じように周りにいる部員たちがスマホを俺に向けてきていたのだけれど、なぜか女子部員だけではなく男子部員や先生たちもその輪に加わっていたのだ。
「さすが萩原先輩ですね。私はこれで一本も外せない状況になりましたよ。こんなに緊張するのは初めてかもしれないですけど、最後まで見ててくださいね」
若葉ちゃんは俺と同じようなリズムでボールをついてからシュート体勢に入って行った。先程までの若葉ちゃんとは違うシュートフォームではあったけれど、今まで見てきた若葉ちゃんのシュートよりもフォームが美しいと思ってしまった。
若葉ちゃんの放ったボールは綺麗な弧を描いてリングに真っすぐに向かっていき、そのまま綺麗な軌道を保ったままリングの手前に当たってはじき返されてしまった。
「あちゃ、一回目で失敗しちゃいました。私の負けですね」
「なんで今までと違うフォームに変えたの?」
「この方が入る気がしてたんですよ。それに、先輩の驚いた顔が見れたから良かったです」
「確かに驚いたよ。若葉ちゃんのシュートが凄く綺麗だったからね」
「綺麗なのはシュートだけじゃないかもしれないですよ。じゃあ、約束通り、私に勝てたからデートしてあげますよ。良かったですね、萩原先輩」
みんなが注目している中で突然そんな事を言い出して何を考えているのかと思っていたのだけれど、最後の部分は俺の耳元で囁くように言っていたので誰にも聞こえてはいないはずだ。
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