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イザー二等兵の力
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いつまでも攻撃をやめないやっさんに対して非難のコメントが多く寄せられていたのだが、やっさんは喜んでイザー二等兵を殴り続けていたのではないという事がのちに判明するのであった。
やっさんの一方的な攻撃が五分以上続いているのにもかかわらず試験が終了しないことに少しずつ視聴者も気付いてきているのだが、あまりにも異様な光景にテレビに映し出されている映像が本物なのかという事に疑問を抱き始めていた。これだけ対格差のある男が一方的に小さな女の子の顔面を掴んで殴り続けるという事にも恐怖を感じ始めていた。
「これ以上続けるのはさすがにまずいと思うんだけど。イザーちゃんも殴られ続けておかしくなっちゃってるんだと思うよ。あんなに殴られて笑っているなんて普通じゃないよ」
マーちゃん中尉はこのまま続けるとイザー二等兵の体が完全に壊れてしまうと思っているようだ。いや、あれだけ殴られているのに笑みを浮かべているというのはもう壊れているという事なのかもしれない。そう思ったからこそ試験を中止しようとしたようだ。
「でも、ここで止めちゃったらあの男の人は不合格になっちゃって次の試験に進めなくなっちゃうよ。イザーちゃんもああやって相手の攻撃を受けてあげてるんだからさ、あの男の人ももっと本気で向かっていけばいいのにね」
少しずつ攻撃の間隔が開いていくのは自分でもわかっているのだろう。やっさんは一撃一撃に限界まで魔力を込めて打ち込んではいるのだが、攻撃が当たっているのにもかかわらずその攻撃に手ごたえが一切感じられないのだ。どんな魔物を攻撃した時に感じたことがない、確かに相手をしっかりと殴っているのにもかかわらず当たった瞬間には何も起きていなかったとしか思えない状態。そんな不思議な感覚に戸惑っているやっさんは自分の攻撃が効いているのか、これ以上攻撃を続けても意味があるのだろうか、こんな攻撃を繰り返しているのに合格できるのだろうか、何が正しいのだろうか。そう考え始めていた。
「ヨクナイナ。戦っている相手に対して意識を集中しなくちゃダメだよ。そんな風に意識を逸らしてしまっちゃ、ボクには絶対に勝てないからね。集中したところで君の力じゃ結果は同じだとは思うんだけどさ、そんなことは気にしないで精いっぱい努力してもらわないと困るんだよね。だって、ボクは君の試験官なんだから君が真面目に戦っているか判断しないといけないんだからね。ほら、もっとイッパイ打ち込んできていいんだからさ。君の本気の攻撃ってのを見せてごらんよ」
イザー二等兵はやっさんに殴られ続けているのにもかかわらず言葉に一切のよどみも感じられなかった。あれだけ殴られているというのにスラスラと言葉が出てくるという事は、本当にやっさんの攻撃が効いていないという事の証明になってしまうだろう。テレビで見守っている人たちも少しずつその事に気付き始めており、イザー二等兵の事を心配するものが少しずつ減っていっていた。
「君の攻撃って、ボクの顔を掴んだままじゃ本気を出せないでしょ。ここに黙って立っててあげるからさ、君の最高の一撃をボクに味合わせて頂戴。ね、君の一番凄い奴をボクに一杯ぶつけてほしいな」
やっさんはイザー二等兵の顔から手を離すと、ゆっくりと距離をとって何度も何度も自分の両拳に魔法を重ね掛けしていた。実戦では隙だらけですぐに殺されてしまうだろうと思うくらいに無防備な姿で何度も魔法を重ねていた。
魔法を使うことが出来ない人でもわかるくらいに異常に圧縮された魔力と鍛え抜かれた筋肉と技術の融合は当たればどんな相手でも消し飛んでしまう。そんな印象を与えるほどに禍々しいオーラに包まれていたのだった。
「あの攻撃はさすがに良くないよ。最高の一撃を食らわせるって言ってもさ、人間相手に使用を禁じられている呪詛も組み込まれちゃってるよ。さすがにアレは止めた方が良いと思うんだけど」
マーちゃん中尉は今度こそ本気で止めようと思っていたようだ。それでも、全く動じない栗宮院うまな中将の姿を見てこの人はバカなんじゃないかという考えすら頭に浮かんでいたのだ。
もしかしたら、うまなちゃんはやっさんが使っている魔法の正体に気が付いていないのではないかという疑問が浮かんできたのだ。
「あんなに禍々しい魔法は使うべき時じゃないと思うんだけど、うまなちゃんはあんなに禍々しい魔法をイザーちゃんがくらっても平気なのかな?」
「禍々しいって言うけど、あんなのなんて日常生活でもよく見るレベルだと思うんだけどな。マーちゃんはあんまり見ない系かな?」
「見ない系って言うか、あそこまで露骨なのは戦場でも見たことがないよ。俺は戦場に行ったことはないけど、今まで見てきたたくさんの資料にもあんなに禍々しいって思うような魔法は見たことなかったよ」
「実践じゃあれだけ重ね掛けするのは無理だもんね。せいぜいやったとしても五枚くらいが妥当だと思うんだよね。それ以上になると攻撃する前にされちゃいそうだよね。でも、あの人が『うまな式魔法術』に頼ってるようじゃ最終的に合格者になることは難しいんじゃないかな。あくまで私の意見だけどね」
「結構いい魔法を使えるんだね。その系統って本気で相手を殴り殺すつもりだってのがビンビンと伝わってくるよ。殴った相手を呪って弱体化させるっていい発想だとは思うよ。とてもいい発想だとは思うけどさ、君って本当に得意な魔法がわかってないのかな?」
イザー二等兵の言葉を聞いたやっさんは全ての魔力を両手に込めて、ゆっくりとイザー二等兵に近付いていった。攻撃がギリギリ届く位置で立ち止まったやっさんは右手を大きく引いて左手をイザー二等兵に向けて距離を測り、人類史上最悪の魔法攻撃と思われてしまいそうな一撃を顔面に叩きこんだ。
「だから言ったでしょ。君はもう少し努力した方が良いよ。今みたいに間違った方向じゃなくて、得意な方向にシフトした方が良いと思うな」
常人であれば自分に触れる直前に壊れてしまうのではないかと思うような呪われた一撃を顔面で受け止めたイザー二等兵は心配そうにやっさんの事を見つめていたのだった
やっさんの一方的な攻撃が五分以上続いているのにもかかわらず試験が終了しないことに少しずつ視聴者も気付いてきているのだが、あまりにも異様な光景にテレビに映し出されている映像が本物なのかという事に疑問を抱き始めていた。これだけ対格差のある男が一方的に小さな女の子の顔面を掴んで殴り続けるという事にも恐怖を感じ始めていた。
「これ以上続けるのはさすがにまずいと思うんだけど。イザーちゃんも殴られ続けておかしくなっちゃってるんだと思うよ。あんなに殴られて笑っているなんて普通じゃないよ」
マーちゃん中尉はこのまま続けるとイザー二等兵の体が完全に壊れてしまうと思っているようだ。いや、あれだけ殴られているのに笑みを浮かべているというのはもう壊れているという事なのかもしれない。そう思ったからこそ試験を中止しようとしたようだ。
「でも、ここで止めちゃったらあの男の人は不合格になっちゃって次の試験に進めなくなっちゃうよ。イザーちゃんもああやって相手の攻撃を受けてあげてるんだからさ、あの男の人ももっと本気で向かっていけばいいのにね」
少しずつ攻撃の間隔が開いていくのは自分でもわかっているのだろう。やっさんは一撃一撃に限界まで魔力を込めて打ち込んではいるのだが、攻撃が当たっているのにもかかわらずその攻撃に手ごたえが一切感じられないのだ。どんな魔物を攻撃した時に感じたことがない、確かに相手をしっかりと殴っているのにもかかわらず当たった瞬間には何も起きていなかったとしか思えない状態。そんな不思議な感覚に戸惑っているやっさんは自分の攻撃が効いているのか、これ以上攻撃を続けても意味があるのだろうか、こんな攻撃を繰り返しているのに合格できるのだろうか、何が正しいのだろうか。そう考え始めていた。
「ヨクナイナ。戦っている相手に対して意識を集中しなくちゃダメだよ。そんな風に意識を逸らしてしまっちゃ、ボクには絶対に勝てないからね。集中したところで君の力じゃ結果は同じだとは思うんだけどさ、そんなことは気にしないで精いっぱい努力してもらわないと困るんだよね。だって、ボクは君の試験官なんだから君が真面目に戦っているか判断しないといけないんだからね。ほら、もっとイッパイ打ち込んできていいんだからさ。君の本気の攻撃ってのを見せてごらんよ」
イザー二等兵はやっさんに殴られ続けているのにもかかわらず言葉に一切のよどみも感じられなかった。あれだけ殴られているというのにスラスラと言葉が出てくるという事は、本当にやっさんの攻撃が効いていないという事の証明になってしまうだろう。テレビで見守っている人たちも少しずつその事に気付き始めており、イザー二等兵の事を心配するものが少しずつ減っていっていた。
「君の攻撃って、ボクの顔を掴んだままじゃ本気を出せないでしょ。ここに黙って立っててあげるからさ、君の最高の一撃をボクに味合わせて頂戴。ね、君の一番凄い奴をボクに一杯ぶつけてほしいな」
やっさんはイザー二等兵の顔から手を離すと、ゆっくりと距離をとって何度も何度も自分の両拳に魔法を重ね掛けしていた。実戦では隙だらけですぐに殺されてしまうだろうと思うくらいに無防備な姿で何度も魔法を重ねていた。
魔法を使うことが出来ない人でもわかるくらいに異常に圧縮された魔力と鍛え抜かれた筋肉と技術の融合は当たればどんな相手でも消し飛んでしまう。そんな印象を与えるほどに禍々しいオーラに包まれていたのだった。
「あの攻撃はさすがに良くないよ。最高の一撃を食らわせるって言ってもさ、人間相手に使用を禁じられている呪詛も組み込まれちゃってるよ。さすがにアレは止めた方が良いと思うんだけど」
マーちゃん中尉は今度こそ本気で止めようと思っていたようだ。それでも、全く動じない栗宮院うまな中将の姿を見てこの人はバカなんじゃないかという考えすら頭に浮かんでいたのだ。
もしかしたら、うまなちゃんはやっさんが使っている魔法の正体に気が付いていないのではないかという疑問が浮かんできたのだ。
「あんなに禍々しい魔法は使うべき時じゃないと思うんだけど、うまなちゃんはあんなに禍々しい魔法をイザーちゃんがくらっても平気なのかな?」
「禍々しいって言うけど、あんなのなんて日常生活でもよく見るレベルだと思うんだけどな。マーちゃんはあんまり見ない系かな?」
「見ない系って言うか、あそこまで露骨なのは戦場でも見たことがないよ。俺は戦場に行ったことはないけど、今まで見てきたたくさんの資料にもあんなに禍々しいって思うような魔法は見たことなかったよ」
「実践じゃあれだけ重ね掛けするのは無理だもんね。せいぜいやったとしても五枚くらいが妥当だと思うんだよね。それ以上になると攻撃する前にされちゃいそうだよね。でも、あの人が『うまな式魔法術』に頼ってるようじゃ最終的に合格者になることは難しいんじゃないかな。あくまで私の意見だけどね」
「結構いい魔法を使えるんだね。その系統って本気で相手を殴り殺すつもりだってのがビンビンと伝わってくるよ。殴った相手を呪って弱体化させるっていい発想だとは思うよ。とてもいい発想だとは思うけどさ、君って本当に得意な魔法がわかってないのかな?」
イザー二等兵の言葉を聞いたやっさんは全ての魔力を両手に込めて、ゆっくりとイザー二等兵に近付いていった。攻撃がギリギリ届く位置で立ち止まったやっさんは右手を大きく引いて左手をイザー二等兵に向けて距離を測り、人類史上最悪の魔法攻撃と思われてしまいそうな一撃を顔面に叩きこんだ。
「だから言ったでしょ。君はもう少し努力した方が良いよ。今みたいに間違った方向じゃなくて、得意な方向にシフトした方が良いと思うな」
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