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入隊試験映像
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今では一般人の間にも『うまな式魔法術』が広く浸透しているという事もあり、今回のマーちゃん中尉部隊入隊希望試験を観覧する目的で阿寒湖温泉を訪れた観光客は多かった。キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶりであったのだが、当然のようにキャンセルが出ることもなかったのだ。
日程が決まってから早い段階でホテルや旅館が満室になることも多く、最近では先着順ではなく抽選によって宿泊予約を受けるところも増えてきていた。
これから行われる入隊試験を視聴するために客室にこもって集中してみようと思う者も多くいるのだが、みんなで一体感を味わいたいと考える者もそれなりにいるので宴会場もそれなりに人が集まっていたのだった。入隊試験の映像にはフリーアナウンサーの実況と元隊員の解説もつくのでスポーツを観戦している感覚に近くなっているので娯楽としても楽しめるものになってはいたのだ。
だが、第一回目の入隊試験映像は想像していたものとは違って凄惨なものになってしまった。
誰もがみな試験開始の前から嫌な予感があったのだが、その予感は悪い意味で的中してしまう。体格にかなり差のある二人であったが試験開始の合図とともに距離を詰めていくのは大柄な男性のやっさんであり、距離を一気に詰めたやっさんはイザー二等兵をガッチリと掴んで動けないように体を固定するとそのままボディに向かって何度も何度も魔力を込めた右手を叩き込んでいたのだ。
宴会場に集まっている観客の中から悲鳴やあまりの恐怖に号泣する者もいれば、やっさんのあまりにも残虐な行為に対して怒号が飛び交ってしまっていたのだ。小さい女の子を大男が一方的に痛めつけている映像をこのまま流してもいいのだろうかという批判もあったのだが、一番強く批判されていたのはこの展開でも試験を止めようとしないマーちゃん中尉に対してだった。
「この状況はどうなんでしょうか。イザー二等兵がピクリとも動きませんが、このまま続けてしまっても大丈夫なんでしょうか」
映像を見ていた者たちの気持ちを代弁するかのように水城アナウンサーはそう伝えるのだが、解説者の宇藤氏はなぜ誰もこの状況でも試験を中止しないのかという事について説明をしていた。
「そうですね。一見するとやっさんがずっと攻撃をしていることでイザー二等兵が危険なようにも見えるかもしれませんが、実際はそうではないんですね」
「私にはイザー二等兵が一方的に攻撃を受けていて危険なように見えるのですが、そうではないという事でしょうか」
「はい、やっさんの攻撃はイザー二等兵に当たってはいるのですが、当たっているだけであってダメージはほとんどないと思われます。この映像を見ている皆さんも水城アナウンサーと同じように感じていると思うのですが、あれだけ攻撃を受けているにもかかわらずイザー二等兵の体は一切動いていないんですよね。それに、手で顔が隠されているのでわかりにくいかもしれませんが、イザー二等兵は笑っているように見えるんですよ。口元しか見えていないのでハッキリとは言えませんが、攻撃が効いているときによく見せる平気なふりをする笑顔とは違うと思うんです」
「確かに、そう言われるとイザー二等兵の体は一切動いていないですね。あれだけ攻撃されて全く動いていないというのは不自然だと思います。となると、いったいどういった理由が考えられるのでしょうか」
「私も映像を通してみているので正確なことは言えないのですが、おそらくイザー二等兵もやっさんのように攻撃されている場所を魔法で守っているのだと思われます。攻撃される場所をピンポイントで守ることが出来ればそこまで多くの魔力は消費しないと思うのですが、そんなことは普通の人間には不可能ですのでより広い面で守っているものだと思われます。そうなりますと、攻撃しているやっさんよりも守っているイザー二等兵の方が総合的な魔力量も魔法効率も優れているという事になるんではないでしょうか」
「なるほど。そういった点を踏まえると宇藤さんが落ち着いてごらんになっているという事なんですね。ですが、そこまで解説していただいてもさすがにアレだけ一方的に攻撃されているのを見てしまうとイザー二等兵の事が心配になってしまうのですが」
映像を見ている人たちも水城アナウンサーと同じように感じていたのだが、解説の宇藤さんの説明を受けて納得している人たちもいたようである。確かに宇藤さんの言っていることは説得力もあって納得しそうにはなるのだが、画面いっぱいに映し出されているイザー二等兵が一方的に殴られている姿を見てしまうとどうにも納得することが出来なかった。
画面から目を背ける女性や画面に映し出されている光景があまりにも怖くて泣きだしてしまう子供も多くいたのだ。もちろん、中には画面を直視することが出来ない男性もいたのだが、ごく少数ではあるがイザー二等兵が殴られている姿を見て興奮しているものもいたようだった。
そんな状況がしばらく続いてしまっていたのだが、解説の宇藤さんがイザー二等兵の変化を見つけ出してソレを解説すると、今まで起こっていたことが何だったのだろうと思えるような光景に変わってしまった。
「これは良くないですね。やっさんは負けを認めるか逃げ出した方が良いと思いますよ」
解説の宇藤さんの言葉の意味を水城アナウンサー含め映像を見ていた一般人が理解することが出来たのはすべてが終わった後であった。
日程が決まってから早い段階でホテルや旅館が満室になることも多く、最近では先着順ではなく抽選によって宿泊予約を受けるところも増えてきていた。
これから行われる入隊試験を視聴するために客室にこもって集中してみようと思う者も多くいるのだが、みんなで一体感を味わいたいと考える者もそれなりにいるので宴会場もそれなりに人が集まっていたのだった。入隊試験の映像にはフリーアナウンサーの実況と元隊員の解説もつくのでスポーツを観戦している感覚に近くなっているので娯楽としても楽しめるものになってはいたのだ。
だが、第一回目の入隊試験映像は想像していたものとは違って凄惨なものになってしまった。
誰もがみな試験開始の前から嫌な予感があったのだが、その予感は悪い意味で的中してしまう。体格にかなり差のある二人であったが試験開始の合図とともに距離を詰めていくのは大柄な男性のやっさんであり、距離を一気に詰めたやっさんはイザー二等兵をガッチリと掴んで動けないように体を固定するとそのままボディに向かって何度も何度も魔力を込めた右手を叩き込んでいたのだ。
宴会場に集まっている観客の中から悲鳴やあまりの恐怖に号泣する者もいれば、やっさんのあまりにも残虐な行為に対して怒号が飛び交ってしまっていたのだ。小さい女の子を大男が一方的に痛めつけている映像をこのまま流してもいいのだろうかという批判もあったのだが、一番強く批判されていたのはこの展開でも試験を止めようとしないマーちゃん中尉に対してだった。
「この状況はどうなんでしょうか。イザー二等兵がピクリとも動きませんが、このまま続けてしまっても大丈夫なんでしょうか」
映像を見ていた者たちの気持ちを代弁するかのように水城アナウンサーはそう伝えるのだが、解説者の宇藤氏はなぜ誰もこの状況でも試験を中止しないのかという事について説明をしていた。
「そうですね。一見するとやっさんがずっと攻撃をしていることでイザー二等兵が危険なようにも見えるかもしれませんが、実際はそうではないんですね」
「私にはイザー二等兵が一方的に攻撃を受けていて危険なように見えるのですが、そうではないという事でしょうか」
「はい、やっさんの攻撃はイザー二等兵に当たってはいるのですが、当たっているだけであってダメージはほとんどないと思われます。この映像を見ている皆さんも水城アナウンサーと同じように感じていると思うのですが、あれだけ攻撃を受けているにもかかわらずイザー二等兵の体は一切動いていないんですよね。それに、手で顔が隠されているのでわかりにくいかもしれませんが、イザー二等兵は笑っているように見えるんですよ。口元しか見えていないのでハッキリとは言えませんが、攻撃が効いているときによく見せる平気なふりをする笑顔とは違うと思うんです」
「確かに、そう言われるとイザー二等兵の体は一切動いていないですね。あれだけ攻撃されて全く動いていないというのは不自然だと思います。となると、いったいどういった理由が考えられるのでしょうか」
「私も映像を通してみているので正確なことは言えないのですが、おそらくイザー二等兵もやっさんのように攻撃されている場所を魔法で守っているのだと思われます。攻撃される場所をピンポイントで守ることが出来ればそこまで多くの魔力は消費しないと思うのですが、そんなことは普通の人間には不可能ですのでより広い面で守っているものだと思われます。そうなりますと、攻撃しているやっさんよりも守っているイザー二等兵の方が総合的な魔力量も魔法効率も優れているという事になるんではないでしょうか」
「なるほど。そういった点を踏まえると宇藤さんが落ち着いてごらんになっているという事なんですね。ですが、そこまで解説していただいてもさすがにアレだけ一方的に攻撃されているのを見てしまうとイザー二等兵の事が心配になってしまうのですが」
映像を見ている人たちも水城アナウンサーと同じように感じていたのだが、解説の宇藤さんの説明を受けて納得している人たちもいたようである。確かに宇藤さんの言っていることは説得力もあって納得しそうにはなるのだが、画面いっぱいに映し出されているイザー二等兵が一方的に殴られている姿を見てしまうとどうにも納得することが出来なかった。
画面から目を背ける女性や画面に映し出されている光景があまりにも怖くて泣きだしてしまう子供も多くいたのだ。もちろん、中には画面を直視することが出来ない男性もいたのだが、ごく少数ではあるがイザー二等兵が殴られている姿を見て興奮しているものもいたようだった。
そんな状況がしばらく続いてしまっていたのだが、解説の宇藤さんがイザー二等兵の変化を見つけ出してソレを解説すると、今まで起こっていたことが何だったのだろうと思えるような光景に変わってしまった。
「これは良くないですね。やっさんは負けを認めるか逃げ出した方が良いと思いますよ」
解説の宇藤さんの言葉の意味を水城アナウンサー含め映像を見ていた一般人が理解することが出来たのはすべてが終わった後であった。
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