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イザー二等兵の力を知る
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一方的に攻撃を繰り返していたやっさんではあったが、その攻撃はどれもこれも有効打とはならず、全ての攻撃はイザー二等兵の鉄壁と呼んでもいいレベルの防御魔法によって防がれていたのだ。ピンポイントで攻撃されている箇所を守っているようにも見えるのだが、そんな面倒なことはせずともやっさん程度の攻撃であれば当たる直前に魔法を展開すればいいだけの話なのだ。
ただ、守るだけでは勝負にならないのはイザー二等兵もわかってはいるので、ある程度攻撃をさせたら反撃にうつるつもりだった。本当に人間の魔力量なのかと思ってしまう程巨大な魔力を込めた拳をやっさんに向けていたのだ。
「君の魔力とボクの魔力だったら、どっちの方が痛いんだろうね。もしかしたら、君の方が痛いのかもしれないよ。だって、ボクの攻撃をくらっちゃったら、君は痛みを感じる間もなく死んじゃいそうだしね」
圧倒的な魔力の差を見せつけられているやっさんはあまりの出来事に身動き一つとることが出来なかった。瞬きすらすることも出来ずに自分との大きすぎる違いをまざまざと見せつけられているのだ。ここで逃げようとしても逃げ切れるわけがない、本能的にそう感じ取っていたやっさんは逃げ出すことも出来ずに最後の瞬間を迎えようとしていた。
映像を見ていた多くの人達も今まで一方的にやられていたと思っていたイザー二等兵の真の力を見せつけられてしまい、本当にこれは現実なのかという考えが頭の中を駆け巡っていたに違いない。今ではもうイザー二等兵がかわいそうだとか、やっさんが非道な男だとか思っている人間なんて誰もいない。あまりにも大きすぎる力の差に何も考えられなくなってしまって見ているだけの人が大半を占めていたのだ。
「さっきまでの威勢はどこに行ったのかな。そんなんじゃボクに勝てないと思うんだけど、こんな中途半端なところで勝負を諦めちゃったのかな。途中であきらめるくらいだったら最初からやらなきゃいいのにって思うんだけど、君って最初はボクの事をなめてかかってたよね。そんな感じだったからもっと強いのかなって思ってたんだけど、君の実力ってボクが思ってのよりもずっと低かったから驚いちゃった。でもね、僕は君が弱いって思ってるんじゃないんだ。君は他の人達と比べても強い方だとは思ってるよ。それは君の実績とか見て分かるからね」
イザー二等兵の手に集まる魔力が増えれば増えるほどやっさんの死が近づいてくるという事になっている。それはやっさん本人だけではなく映像を見ている人も実況解説をしている二人も気付いてはいた。だが、誰もその事を口にする者はいなかった。
今まさにイザー二等兵の攻撃がやっさんに向けて開始されるというタイミングで、マーちゃん中尉が二人の間に割って入った。
「これくらいでいいんじゃないかな。特別医療班がいるとは言ってもさ、命まで奪っちゃったら面倒なことになると思うんだよ。だからさ、試験はここまでって事でいいんじゃないかな」
マーちゃん中尉の言葉は辛うじて聞き取れる程度に震えていた。イザー二等兵が敵ではないという事はわかっていたとしても、あれだけの魔力が込められた攻撃の間に割って入るのは勇気がいることだろう。ましてや、ここでイザー二等兵の攻撃を止める必要なんてないのだ。たとえやっさんが死んだとしても、特別医療班の力をもってすれば元の状態近くまで再生させることも出来るはずなのだ。
「ボクはここで止めてもいいんだけどさ、その人はそれで納得してくれるのかな。攻撃の途中でお兄ちゃんが割って入ったって事は、その人が負けたって事になるんだよ。大事な試験だと思うんだけど、そんな結果で満足出来るって言えるのかな?」
「このまま続けてもここで終わらせてもイザーちゃんの勝ちは変わらないんじゃないかな。その凄い魔力が込められた一撃を見てみたいって気持ちはあるんだけど、そんな攻撃をくらったら魔神皇だって無事ではないんじゃないかな」
「魔神皇を出してくるとは思わなかったな。ボクの事をそこまで評価してくれてるなんて嬉しいな。でも、こんな中途半端なところで終わらせるなんてボクには出来そうもないよ。だからさ、この人の代わりにお兄ちゃんがボクの相手をしてね。それくらいイイヨネ?」
思いっきり腰が引けていたマーちゃん中尉ではあったが、イザー二等兵のその提案を受けることにした。自分が犠牲になってもいいと彼は思っていたのだが、その思いの中には入隊希望者を殺すことなんて出来ないという思いも含まれていたのだ。
「なんちゃって。ボクはここで止めても問題ないよ。だけど、ちょっとだけ気持ちが昂っちゃってるから、あとでボクの事をお兄ちゃんが慰めてね」
あまりのも強大な力が一瞬とはいえ自分に向いていたのを感じたマーちゃん中尉は軽く意識を失っていたのだが、少しだけ見えていたイザー二等兵の優しさで何とか商機を保つことが出来ていた。
栗宮院うまな中将以外は誰もが予想していなかった結果に終わってしまった入隊試験だった。圧倒的な力の差を見せつけられたやっさんはもちろん、それを視聴していた全ての人がイザー二等兵の力を知ることとなったのだ。どれだけの威力があるのかはわからないが、マーちゃん中尉が言ったように魔神皇に大きな打撃を与えることが出来るようには感じていた。
なぜ彼女があれだけの力を持っているのにもかかわらず、二等兵という立場にいるのか疑問に思う者も多いだろう。その答えは単純で、実力だけ見れば将官候補になってもおかしくはないと考えるのだが、その人間性に難色を示されて昇任することが出来ずにいたのだった。
イザー二等兵は栗宮院うまな中将の命令以外は一切聞くことはなく、今回の入隊試験に関してもあまり乗り気ではなかったのだ。だが、ここで『うまな式魔法術』の真価を見せることが出来るという事もあってしぶしぶ参加していた。と見せかけておいて、誰にも言えない本音では普段抑えている破壊衝動を思いっきりぶつけることが出来るというモノだった。
ただ、守るだけでは勝負にならないのはイザー二等兵もわかってはいるので、ある程度攻撃をさせたら反撃にうつるつもりだった。本当に人間の魔力量なのかと思ってしまう程巨大な魔力を込めた拳をやっさんに向けていたのだ。
「君の魔力とボクの魔力だったら、どっちの方が痛いんだろうね。もしかしたら、君の方が痛いのかもしれないよ。だって、ボクの攻撃をくらっちゃったら、君は痛みを感じる間もなく死んじゃいそうだしね」
圧倒的な魔力の差を見せつけられているやっさんはあまりの出来事に身動き一つとることが出来なかった。瞬きすらすることも出来ずに自分との大きすぎる違いをまざまざと見せつけられているのだ。ここで逃げようとしても逃げ切れるわけがない、本能的にそう感じ取っていたやっさんは逃げ出すことも出来ずに最後の瞬間を迎えようとしていた。
映像を見ていた多くの人達も今まで一方的にやられていたと思っていたイザー二等兵の真の力を見せつけられてしまい、本当にこれは現実なのかという考えが頭の中を駆け巡っていたに違いない。今ではもうイザー二等兵がかわいそうだとか、やっさんが非道な男だとか思っている人間なんて誰もいない。あまりにも大きすぎる力の差に何も考えられなくなってしまって見ているだけの人が大半を占めていたのだ。
「さっきまでの威勢はどこに行ったのかな。そんなんじゃボクに勝てないと思うんだけど、こんな中途半端なところで勝負を諦めちゃったのかな。途中であきらめるくらいだったら最初からやらなきゃいいのにって思うんだけど、君って最初はボクの事をなめてかかってたよね。そんな感じだったからもっと強いのかなって思ってたんだけど、君の実力ってボクが思ってのよりもずっと低かったから驚いちゃった。でもね、僕は君が弱いって思ってるんじゃないんだ。君は他の人達と比べても強い方だとは思ってるよ。それは君の実績とか見て分かるからね」
イザー二等兵の手に集まる魔力が増えれば増えるほどやっさんの死が近づいてくるという事になっている。それはやっさん本人だけではなく映像を見ている人も実況解説をしている二人も気付いてはいた。だが、誰もその事を口にする者はいなかった。
今まさにイザー二等兵の攻撃がやっさんに向けて開始されるというタイミングで、マーちゃん中尉が二人の間に割って入った。
「これくらいでいいんじゃないかな。特別医療班がいるとは言ってもさ、命まで奪っちゃったら面倒なことになると思うんだよ。だからさ、試験はここまでって事でいいんじゃないかな」
マーちゃん中尉の言葉は辛うじて聞き取れる程度に震えていた。イザー二等兵が敵ではないという事はわかっていたとしても、あれだけの魔力が込められた攻撃の間に割って入るのは勇気がいることだろう。ましてや、ここでイザー二等兵の攻撃を止める必要なんてないのだ。たとえやっさんが死んだとしても、特別医療班の力をもってすれば元の状態近くまで再生させることも出来るはずなのだ。
「ボクはここで止めてもいいんだけどさ、その人はそれで納得してくれるのかな。攻撃の途中でお兄ちゃんが割って入ったって事は、その人が負けたって事になるんだよ。大事な試験だと思うんだけど、そんな結果で満足出来るって言えるのかな?」
「このまま続けてもここで終わらせてもイザーちゃんの勝ちは変わらないんじゃないかな。その凄い魔力が込められた一撃を見てみたいって気持ちはあるんだけど、そんな攻撃をくらったら魔神皇だって無事ではないんじゃないかな」
「魔神皇を出してくるとは思わなかったな。ボクの事をそこまで評価してくれてるなんて嬉しいな。でも、こんな中途半端なところで終わらせるなんてボクには出来そうもないよ。だからさ、この人の代わりにお兄ちゃんがボクの相手をしてね。それくらいイイヨネ?」
思いっきり腰が引けていたマーちゃん中尉ではあったが、イザー二等兵のその提案を受けることにした。自分が犠牲になってもいいと彼は思っていたのだが、その思いの中には入隊希望者を殺すことなんて出来ないという思いも含まれていたのだ。
「なんちゃって。ボクはここで止めても問題ないよ。だけど、ちょっとだけ気持ちが昂っちゃってるから、あとでボクの事をお兄ちゃんが慰めてね」
あまりのも強大な力が一瞬とはいえ自分に向いていたのを感じたマーちゃん中尉は軽く意識を失っていたのだが、少しだけ見えていたイザー二等兵の優しさで何とか商機を保つことが出来ていた。
栗宮院うまな中将以外は誰もが予想していなかった結果に終わってしまった入隊試験だった。圧倒的な力の差を見せつけられたやっさんはもちろん、それを視聴していた全ての人がイザー二等兵の力を知ることとなったのだ。どれだけの威力があるのかはわからないが、マーちゃん中尉が言ったように魔神皇に大きな打撃を与えることが出来るようには感じていた。
なぜ彼女があれだけの力を持っているのにもかかわらず、二等兵という立場にいるのか疑問に思う者も多いだろう。その答えは単純で、実力だけ見れば将官候補になってもおかしくはないと考えるのだが、その人間性に難色を示されて昇任することが出来ずにいたのだった。
イザー二等兵は栗宮院うまな中将の命令以外は一切聞くことはなく、今回の入隊試験に関してもあまり乗り気ではなかったのだ。だが、ここで『うまな式魔法術』の真価を見せることが出来るという事もあってしぶしぶ参加していた。と見せかけておいて、誰にも言えない本音では普段抑えている破壊衝動を思いっきりぶつけることが出来るというモノだった。
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