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栗宮院うまな中将の観察眼
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「それはね、ルーちゃんの影じゃないんだよ。普通に影に見えているかもしれないけれど、アレは影なんてもんじゃないな。そんな優しいもんじゃないんだよ」
全てをお見通しといった感じで栗宮院うまな中将は解説をし始めた。実況の水城アナウンサーも解説の宇藤さんも気付いていない、この映像を見ている人は誰も気付いていない、直接向かい合っているイザー二等兵も気付いていない。ルーちゃんから伸びている影が何なのかわかっているのはこの世界に二人しかいないと言い切ることが出来る。
「マーちゃんはルーちゃんの攻撃って影を使った何かだと思ってるんだよね?」
「うん、そうだとは思ってる。でも、その影を使って何をするかという事は全然わかってないんだよね。今まで俺が見てきた影を使って何かするタイプの人だともっと好戦的だったと思うんだ。でも、ルーちゃんって全然そんな感じでもないし、イザーちゃんの事が好きなんじゃないかって思えるところもあるんだよな」
「それは私も思ってたかも。イザーちゃんを見つめるルーちゃんの顔って恋する乙女みたいに見えてるよね。あんな風に見つめられてたら、誰だって自分が好かれてるってのは理解できちゃうと思うんだよ。だからこそ、イザーちゃんはルーちゃんに対していつも以上に気を抜いて挑んじゃったんじゃないかな。気を張り詰めっぱなしでもいい結果は出ないとは思うけど、あそこまで気を緩めるのは良くないと思っちゃうよね。でも、イザーちゃんのどこをそんなに好きになったんだろうね」
栗宮院うまな中将は完全にイザー二等兵が負けるものだと思っているからなのかマーちゃん中尉の目を他の方向へと向けようとしているようだった。だが、栗宮院うまな中将の誘導に少しだけ乗ってみたマーちゃん中尉ではあったがすぐにイザー二等兵が負けるという理由を知りたいと思っていた。
「イザーちゃんの事をルーちゃんが好きかもしれないってのはわかったんだけどさ、どうしてイザーちゃんがルーちゃんに負けてしまうって思ったのかな?」
「やっぱりそっちの方が気になるよね。マーちゃんが理解できるように説明をするけど、ルーちゃんから伸びている影って何だと思うかな?」
「何だと思うって、アレは影なんじゃないの?」
「聞き方がちょっと悪かったかな。マーちゃんとしてはあの影はルーちゃんの影だと思うってことかな?」
そんな聞き方をされたマーちゃんは何か別のモノが作り出した影なのかと思ったのだが、それが何なのかわかっていないので答えることは出来なかった。いくら考えてもルーちゃんから伸びている影はルーちゃんの体が作り出した影だとしか思えないのだ。しかし、普通の影にしては光源に対して不自然な方向に伸びているって事になるだろう。
「あの影がどういう理屈であんな風にルーちゃんからイザーちゃんに向かって伸びているのかがわからないんだ。それがわかれば影の正体もつかめるとは思うけど、俺にはそれが何なのかわからないよ」
「結論から言うとね、あの影はルーちゃんの影ではないんだよ。ルーちゃんの影はイザーちゃんと同じように自分の足元に小さく見えてるのがルーちゃんの本物の影ってことだよ。で、ルーちゃんの体から伸びているように見える影の正体なんだけど、ルーちゃんが使役している使い魔の影ってことになるんだよ。使い魔の影だったらイザーちゃんが何の反応も示さないってのはおかしいって言いたいんだろうけど、ここはもう少し私の話を聞いてもらいたいな。イザーちゃんは自分に向かってくる殺意や敵意に対して誰よりも敏感に反応することが出来るんだけど、それって自分に向けられているそういった感情があったりしないと反応出来ないんだよ。全く殺意も敵意も持っていない機械生命体に対しては鈍かったりもするんだよね。その辺がイザーちゃんの弱点って思われている時もあったんだけど、イザーちゃんは機械生命体と戦う時は特に手加減しないで一方的に蹂躙しちゃうから相手に攻撃をさせるってシチュエーションが無かったりするんだよ。話は逸れてしまったけど、どうしてそんな話をしたかというと、イザーちゃんは殺意や敵意を感じたり目に見える敵に対して圧倒的な力を見せつけて勝つことが出来るんだってことを思い出してほしいんだ。どんな相手でも負けることはないと思うよ。マーちゃんみたいに『うまな式魔法術』の真髄を極めた相手は別として、普通の相手だったら負けないんじゃないかな。魔神皇も全盛期じゃなければ引き分けには持っていけるくらいの力をイザーちゃんは有していると思うんだ。でもね、そんなイザーちゃんでも見逃してしまうような場合ってあるんだよ。それが起こっているのが今って事なんだ」
それがいったい何なのか。栗宮院うまな中将が気付いている事とは一体何なのか。マーちゃん中尉はその答えを一刻も早く知りたいと思っていた。その答えを知ったところでイザー二等兵の助けになるわけではないという事も理解はしていた。
「イザーちゃんでも気付かないって、どういうことなのかな?」
「自身の感情がなく命令された通りにしか動かない機械みたいな生物って、殺気とか敵意ってないと思うんだ。そんな生物に影のように行動するプログラムを組んでいたとしたら。ちょっとずつ伸びていた影が実は全てその小さな生物だったとしたら。その生物がとても小さいのに肉食であったとしたら。そんな小さな生物があんなに大きな影を作り出すくらい集まっていたとして、それが全部自分の体に襲い掛かってくるとしたら、マーちゃんだったらどう思うかな?」
「それって、想像しただけでも気持ち悪いかも」
「ちなみに、私が見たところ、ルーちゃんが使役しているのはとても小さな蜘蛛とか蟻とかに似た虫みたいな生物だと思うよ。イザーちゃんはああ見えて虫が大嫌いだからさ、それに気づいた瞬間にショックで死んじゃったりしてね。
マーちゃん中尉はあの影が全て虫だったという事を知って物凄い衝撃が全身を駆け巡っていた。虫が嫌いだというわけでもないマーちゃん中尉がそうなってしまうのであれば、虫が嫌いなイザー二等兵がどうなってしまうのだろうか。容易に想像することが出来ると思うのだが、その事態は避けてもらいたいと思うマーちゃん中尉であった。
全てをお見通しといった感じで栗宮院うまな中将は解説をし始めた。実況の水城アナウンサーも解説の宇藤さんも気付いていない、この映像を見ている人は誰も気付いていない、直接向かい合っているイザー二等兵も気付いていない。ルーちゃんから伸びている影が何なのかわかっているのはこの世界に二人しかいないと言い切ることが出来る。
「マーちゃんはルーちゃんの攻撃って影を使った何かだと思ってるんだよね?」
「うん、そうだとは思ってる。でも、その影を使って何をするかという事は全然わかってないんだよね。今まで俺が見てきた影を使って何かするタイプの人だともっと好戦的だったと思うんだ。でも、ルーちゃんって全然そんな感じでもないし、イザーちゃんの事が好きなんじゃないかって思えるところもあるんだよな」
「それは私も思ってたかも。イザーちゃんを見つめるルーちゃんの顔って恋する乙女みたいに見えてるよね。あんな風に見つめられてたら、誰だって自分が好かれてるってのは理解できちゃうと思うんだよ。だからこそ、イザーちゃんはルーちゃんに対していつも以上に気を抜いて挑んじゃったんじゃないかな。気を張り詰めっぱなしでもいい結果は出ないとは思うけど、あそこまで気を緩めるのは良くないと思っちゃうよね。でも、イザーちゃんのどこをそんなに好きになったんだろうね」
栗宮院うまな中将は完全にイザー二等兵が負けるものだと思っているからなのかマーちゃん中尉の目を他の方向へと向けようとしているようだった。だが、栗宮院うまな中将の誘導に少しだけ乗ってみたマーちゃん中尉ではあったがすぐにイザー二等兵が負けるという理由を知りたいと思っていた。
「イザーちゃんの事をルーちゃんが好きかもしれないってのはわかったんだけどさ、どうしてイザーちゃんがルーちゃんに負けてしまうって思ったのかな?」
「やっぱりそっちの方が気になるよね。マーちゃんが理解できるように説明をするけど、ルーちゃんから伸びている影って何だと思うかな?」
「何だと思うって、アレは影なんじゃないの?」
「聞き方がちょっと悪かったかな。マーちゃんとしてはあの影はルーちゃんの影だと思うってことかな?」
そんな聞き方をされたマーちゃんは何か別のモノが作り出した影なのかと思ったのだが、それが何なのかわかっていないので答えることは出来なかった。いくら考えてもルーちゃんから伸びている影はルーちゃんの体が作り出した影だとしか思えないのだ。しかし、普通の影にしては光源に対して不自然な方向に伸びているって事になるだろう。
「あの影がどういう理屈であんな風にルーちゃんからイザーちゃんに向かって伸びているのかがわからないんだ。それがわかれば影の正体もつかめるとは思うけど、俺にはそれが何なのかわからないよ」
「結論から言うとね、あの影はルーちゃんの影ではないんだよ。ルーちゃんの影はイザーちゃんと同じように自分の足元に小さく見えてるのがルーちゃんの本物の影ってことだよ。で、ルーちゃんの体から伸びているように見える影の正体なんだけど、ルーちゃんが使役している使い魔の影ってことになるんだよ。使い魔の影だったらイザーちゃんが何の反応も示さないってのはおかしいって言いたいんだろうけど、ここはもう少し私の話を聞いてもらいたいな。イザーちゃんは自分に向かってくる殺意や敵意に対して誰よりも敏感に反応することが出来るんだけど、それって自分に向けられているそういった感情があったりしないと反応出来ないんだよ。全く殺意も敵意も持っていない機械生命体に対しては鈍かったりもするんだよね。その辺がイザーちゃんの弱点って思われている時もあったんだけど、イザーちゃんは機械生命体と戦う時は特に手加減しないで一方的に蹂躙しちゃうから相手に攻撃をさせるってシチュエーションが無かったりするんだよ。話は逸れてしまったけど、どうしてそんな話をしたかというと、イザーちゃんは殺意や敵意を感じたり目に見える敵に対して圧倒的な力を見せつけて勝つことが出来るんだってことを思い出してほしいんだ。どんな相手でも負けることはないと思うよ。マーちゃんみたいに『うまな式魔法術』の真髄を極めた相手は別として、普通の相手だったら負けないんじゃないかな。魔神皇も全盛期じゃなければ引き分けには持っていけるくらいの力をイザーちゃんは有していると思うんだ。でもね、そんなイザーちゃんでも見逃してしまうような場合ってあるんだよ。それが起こっているのが今って事なんだ」
それがいったい何なのか。栗宮院うまな中将が気付いている事とは一体何なのか。マーちゃん中尉はその答えを一刻も早く知りたいと思っていた。その答えを知ったところでイザー二等兵の助けになるわけではないという事も理解はしていた。
「イザーちゃんでも気付かないって、どういうことなのかな?」
「自身の感情がなく命令された通りにしか動かない機械みたいな生物って、殺気とか敵意ってないと思うんだ。そんな生物に影のように行動するプログラムを組んでいたとしたら。ちょっとずつ伸びていた影が実は全てその小さな生物だったとしたら。その生物がとても小さいのに肉食であったとしたら。そんな小さな生物があんなに大きな影を作り出すくらい集まっていたとして、それが全部自分の体に襲い掛かってくるとしたら、マーちゃんだったらどう思うかな?」
「それって、想像しただけでも気持ち悪いかも」
「ちなみに、私が見たところ、ルーちゃんが使役しているのはとても小さな蜘蛛とか蟻とかに似た虫みたいな生物だと思うよ。イザーちゃんはああ見えて虫が大嫌いだからさ、それに気づいた瞬間にショックで死んじゃったりしてね。
マーちゃん中尉はあの影が全て虫だったという事を知って物凄い衝撃が全身を駆け巡っていた。虫が嫌いだというわけでもないマーちゃん中尉がそうなってしまうのであれば、虫が嫌いなイザー二等兵がどうなってしまうのだろうか。容易に想像することが出来ると思うのだが、その事態は避けてもらいたいと思うマーちゃん中尉であった。
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