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ココア准尉とマーちゃん中尉
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マッス曹長との試合を振り返ってみた時に出てきた反省点は、相手の事を調べてもいないのにもかかわらず一方的な判断で決めつけてしまったという事だ。
一般的にマッス曹長は遠距離からの正確な攻撃が持ち味だと思っていたのだけれど、実際のところは距離に関係なく相手の弱いところを打ち抜く技術に優れていたのだ。どんなに離れていても当てることが出来るという事は近くにいても当てることが出来るという事に誰も気付かなかったのはどうしてなのかという話し合いも行われていたのだった。
「次の相手はココア准尉ですけどあの人の特徴ってイケメンだってことだよね。私はそんなにイケメンだって思わないんだけど、それ以外に何か特徴ってあるのかな?」
妖精マリモ子はココア准尉の写真とマーちゃん中尉を交互に眺めながら確かめるように言っていた。イザー二等兵はその事には触れずに自分の考えをまとめていた。
「私もみんなが言う程ココア准尉がイケメンだとは思わないんだよね。でも、行け目立って理由だけで准尉まで昇任することなんて出来ないと思うんだ。だから、外から見てるだけじゃわからない秘密があると思うから用心した方が良いと思うよ。さすがに顔だけで准尉になれるほど一番隊は甘くないと思うんだ」
「そうは言うけどさ、俺にはそんなのがあるとは思えないんだよね。マッス曹長の事を見抜けなかった俺が言っても説得力なんてないとは思うけど」
「そうだよ。マーちゃんが言っても説得力なんてないよ。私たちが言ってたみたいに開始と同時に攻撃してればあんなに無様にやられることもなかったと思うんだ。それなのにさ、マーちゃんはマッス曹長に見とれて攻撃が遅れたんだもんね」
「だよね。マーちゃんがあんなおばさんに見とれるなんて信じられないけどね。私とかイザーちゃんみたいに若くてかわいい子を見慣れちゃってるからあんなおばさんが気になったってことかもしれないけど、もう少し緊張感をもって試合に挑んだ方が良いと思うんだ。マーちゃんはこの七番勝負で一回も勝てないって思ってるかもしれないけど、ちゃんと対策を練って最適な行動をしていれば勝てるって思うよ。たとえ百万回負けちゃったとしても、一回くらいは勝てるんじゃないかって思うからね」
百万回に一回しか勝てないというのであれば、そんな勝負はやめた方が良いのではないかと思うマーちゃん中尉であった。
マーちゃん中尉試練の七番勝負の四戦目。この試合に負けた時点でマーちゃん中尉の負け越しが決まってしまうのだが、会場に応援に来ている女性たちは誰もマーちゃん中尉の勝ちを期待などしていなかった。
今までの試合とは違って今回に限って観客を入れて行われるのだが、その条件としてお互いに魔法は使わないという事になった。観客を入れたところで普段と何も変わることなんて無いだろうと思っていたマーちゃん中尉はすでに後悔していた。リングに上がる前からマーちゃん中尉にはブーイングを送られ続けてているのだ。一方のココア准尉には悲鳴にも似た歓声が途切れることなく送り続けられていた。
「やあ、今日はボクの提案を快く受け入れてくれてありがとう。君のその勇気に拍手を送らせてもらうよ。ただ、勝利までは君に送るつもりはないけどね」
ココア准尉が何かを言ったり動いたりするたびに歓声が上がり、マーちゃん中尉が何かしようとするたびにブーイングが巻き起こっていた。数少ないながらもマーちゃん中尉の事を応援しようと駆けつけてくれた人もいるはずなのだが、マーちゃん中尉を応援するような声はどこからも聞こえてこなかった。
「それにしても凄い人気だな。これだけ人気だったら国防軍をやめてアイドルになっても成功しそうだな」
「褒めてくれるのは嬉しいけど、僕は君みたいに国防軍を抜けて年金生活を送りたいなんて思ってないのさ。僕のこの体は親愛なる国民諸君のために犠牲になってもいいと思っているんだからね」
ココア准尉の言動の一つ一つが少しずつマーちゃん中尉をイラつかせていた。普段はいない観客の歓声やブーイングもマーちゃん中尉の心を乱していたのだ。
「それでは、僕と君との熱い戦いをここにいる全ての。いや、この世界中にいる全ての人に見せてあげようじゃないか。ただ、君に一つだけ残念なお知らせがあるので聞いてもらってもいいかな」
マーちゃん中尉が答えるよりも早く観客がココア准尉の質問に答えていた。観客全員の声がぴったりと重なっていたことから奇妙な一体感を感じていたのだが、普通の人間が練習したところでこんなに息を合わせることが出来るのだろうか。普通に考えて何らかの魔法で操られていると考えるのが自然なのだが、今回に限って試合会場から温泉街までの区間を魔法使用禁止区域に指定されているので魔法を使って操ることは不可能なのだ。栗宮院うまな中将とイザー二等兵ならば可能かもしれないけれど、彼女たちがマーちゃん中尉の事を妨害する理由もないし栗宮院うまな中将に至っては阿寒湖温泉から遠く離れた地にいるはずなのだ。
「それじゃ、僕の華麗なテクニックで君をノックアウトしてあげるよ。ちなみに、この世界に入る前の僕はキックボクシングで世界チャンピオンになったこともあるんだからね。君も肉弾戦は自信があるみたいだけど、僕には君と同じくらいの自信と君以上のテクニックを持ち合わせているんだからね」
ココア准尉の攻撃は本人の申告通りキックボクシングをやっていたと思えるようなものだった。強力な攻撃であったり反撃の隙を与えない連続攻撃が続いているのだが、マーちゃんちゃん中尉はそれらを全ていなしていたのでクリーンヒットはまだないのである。
少しずつココア准尉の攻撃に間が出来ているのだが、その隙に攻撃を入れようと動くマーちゃんに対して全方位から物凄いブーイングが浴びせられてしまっていた。ココア准尉の隙を見つけたはずのマーちゃん中尉はブーイングによって怯んでしまい逆に隙が出来てしまっていた。そこを世界チャンピオンにまで上り詰めたココア准尉が見逃すはずもなく、的確に急所を狙い打ってきたのだ。
一度狂ったリズムを取り戻すことはなかなか難しく、ギリギリのところで避けて反撃に出ようと思っていたマーちゃん中尉は目測を見誤って攻撃を受けに行くような形で避けられなくなってしまっていた。
避けているつもりのマーちゃん中尉は何故か避けきれずにココア准尉の攻撃を受け続けてしまい、最終的には反撃をするような余力も残っていない状態であった。
一方的に攻撃を与え続けていたココア准尉ではあったが、マーちゃん中尉に反撃しようとする意志が見られないことに気付いて動きを止めてから、マーちゃん中尉を称えるように優しく抱きしめていた。
「マーちゃん中尉の異変を感じたココア准尉が試合を止めたという事でしょうか。これ以上続けるのは危険と判断したようなのですが、マーちゃん中尉は無事でしょうか」
水城アナウンサーの心配する声と観客席から沸きあがる歓声が異様な光景を示しているように思ってしまった妖精マリモ子はゆっくりと目を閉じていったのだった。
一般的にマッス曹長は遠距離からの正確な攻撃が持ち味だと思っていたのだけれど、実際のところは距離に関係なく相手の弱いところを打ち抜く技術に優れていたのだ。どんなに離れていても当てることが出来るという事は近くにいても当てることが出来るという事に誰も気付かなかったのはどうしてなのかという話し合いも行われていたのだった。
「次の相手はココア准尉ですけどあの人の特徴ってイケメンだってことだよね。私はそんなにイケメンだって思わないんだけど、それ以外に何か特徴ってあるのかな?」
妖精マリモ子はココア准尉の写真とマーちゃん中尉を交互に眺めながら確かめるように言っていた。イザー二等兵はその事には触れずに自分の考えをまとめていた。
「私もみんなが言う程ココア准尉がイケメンだとは思わないんだよね。でも、行け目立って理由だけで准尉まで昇任することなんて出来ないと思うんだ。だから、外から見てるだけじゃわからない秘密があると思うから用心した方が良いと思うよ。さすがに顔だけで准尉になれるほど一番隊は甘くないと思うんだ」
「そうは言うけどさ、俺にはそんなのがあるとは思えないんだよね。マッス曹長の事を見抜けなかった俺が言っても説得力なんてないとは思うけど」
「そうだよ。マーちゃんが言っても説得力なんてないよ。私たちが言ってたみたいに開始と同時に攻撃してればあんなに無様にやられることもなかったと思うんだ。それなのにさ、マーちゃんはマッス曹長に見とれて攻撃が遅れたんだもんね」
「だよね。マーちゃんがあんなおばさんに見とれるなんて信じられないけどね。私とかイザーちゃんみたいに若くてかわいい子を見慣れちゃってるからあんなおばさんが気になったってことかもしれないけど、もう少し緊張感をもって試合に挑んだ方が良いと思うんだ。マーちゃんはこの七番勝負で一回も勝てないって思ってるかもしれないけど、ちゃんと対策を練って最適な行動をしていれば勝てるって思うよ。たとえ百万回負けちゃったとしても、一回くらいは勝てるんじゃないかって思うからね」
百万回に一回しか勝てないというのであれば、そんな勝負はやめた方が良いのではないかと思うマーちゃん中尉であった。
マーちゃん中尉試練の七番勝負の四戦目。この試合に負けた時点でマーちゃん中尉の負け越しが決まってしまうのだが、会場に応援に来ている女性たちは誰もマーちゃん中尉の勝ちを期待などしていなかった。
今までの試合とは違って今回に限って観客を入れて行われるのだが、その条件としてお互いに魔法は使わないという事になった。観客を入れたところで普段と何も変わることなんて無いだろうと思っていたマーちゃん中尉はすでに後悔していた。リングに上がる前からマーちゃん中尉にはブーイングを送られ続けてているのだ。一方のココア准尉には悲鳴にも似た歓声が途切れることなく送り続けられていた。
「やあ、今日はボクの提案を快く受け入れてくれてありがとう。君のその勇気に拍手を送らせてもらうよ。ただ、勝利までは君に送るつもりはないけどね」
ココア准尉が何かを言ったり動いたりするたびに歓声が上がり、マーちゃん中尉が何かしようとするたびにブーイングが巻き起こっていた。数少ないながらもマーちゃん中尉の事を応援しようと駆けつけてくれた人もいるはずなのだが、マーちゃん中尉を応援するような声はどこからも聞こえてこなかった。
「それにしても凄い人気だな。これだけ人気だったら国防軍をやめてアイドルになっても成功しそうだな」
「褒めてくれるのは嬉しいけど、僕は君みたいに国防軍を抜けて年金生活を送りたいなんて思ってないのさ。僕のこの体は親愛なる国民諸君のために犠牲になってもいいと思っているんだからね」
ココア准尉の言動の一つ一つが少しずつマーちゃん中尉をイラつかせていた。普段はいない観客の歓声やブーイングもマーちゃん中尉の心を乱していたのだ。
「それでは、僕と君との熱い戦いをここにいる全ての。いや、この世界中にいる全ての人に見せてあげようじゃないか。ただ、君に一つだけ残念なお知らせがあるので聞いてもらってもいいかな」
マーちゃん中尉が答えるよりも早く観客がココア准尉の質問に答えていた。観客全員の声がぴったりと重なっていたことから奇妙な一体感を感じていたのだが、普通の人間が練習したところでこんなに息を合わせることが出来るのだろうか。普通に考えて何らかの魔法で操られていると考えるのが自然なのだが、今回に限って試合会場から温泉街までの区間を魔法使用禁止区域に指定されているので魔法を使って操ることは不可能なのだ。栗宮院うまな中将とイザー二等兵ならば可能かもしれないけれど、彼女たちがマーちゃん中尉の事を妨害する理由もないし栗宮院うまな中将に至っては阿寒湖温泉から遠く離れた地にいるはずなのだ。
「それじゃ、僕の華麗なテクニックで君をノックアウトしてあげるよ。ちなみに、この世界に入る前の僕はキックボクシングで世界チャンピオンになったこともあるんだからね。君も肉弾戦は自信があるみたいだけど、僕には君と同じくらいの自信と君以上のテクニックを持ち合わせているんだからね」
ココア准尉の攻撃は本人の申告通りキックボクシングをやっていたと思えるようなものだった。強力な攻撃であったり反撃の隙を与えない連続攻撃が続いているのだが、マーちゃんちゃん中尉はそれらを全ていなしていたのでクリーンヒットはまだないのである。
少しずつココア准尉の攻撃に間が出来ているのだが、その隙に攻撃を入れようと動くマーちゃんに対して全方位から物凄いブーイングが浴びせられてしまっていた。ココア准尉の隙を見つけたはずのマーちゃん中尉はブーイングによって怯んでしまい逆に隙が出来てしまっていた。そこを世界チャンピオンにまで上り詰めたココア准尉が見逃すはずもなく、的確に急所を狙い打ってきたのだ。
一度狂ったリズムを取り戻すことはなかなか難しく、ギリギリのところで避けて反撃に出ようと思っていたマーちゃん中尉は目測を見誤って攻撃を受けに行くような形で避けられなくなってしまっていた。
避けているつもりのマーちゃん中尉は何故か避けきれずにココア准尉の攻撃を受け続けてしまい、最終的には反撃をするような余力も残っていない状態であった。
一方的に攻撃を与え続けていたココア准尉ではあったが、マーちゃん中尉に反撃しようとする意志が見られないことに気付いて動きを止めてから、マーちゃん中尉を称えるように優しく抱きしめていた。
「マーちゃん中尉の異変を感じたココア准尉が試合を止めたという事でしょうか。これ以上続けるのは危険と判断したようなのですが、マーちゃん中尉は無事でしょうか」
水城アナウンサーの心配する声と観客席から沸きあがる歓声が異様な光景を示しているように思ってしまった妖精マリモ子はゆっくりと目を閉じていったのだった。
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