スーサイドアップガール

釧路太郎

文字の大きさ
24 / 53
鈴木美波編

悩める鈴木さんと金髪少女と先生 第14話(全14話)

しおりを挟む
子供の頃の鈴木さんが描いたと思われる父親らしき男性の絵は、何か違和感を感じるのだが、その正体まではつかめないでいた。



「先生って私のお父さんに会った事何回かありますよね?」



「確か、ソフィアさんのご両親達とキャンプに行ったときに鈴木さんのご両親もいらっしゃってたよね」



「はい、お父さんがいて、ママもいたと思います。私ははっきり覚えていないんですけど。この前ソフィーの家で昔のアルバムを見ていてなんとなく思い出してたんです。それで、この落書き帳の事も思い出したんですよ」



落書き帳に描かれた男性は動物園に来ていたお父さんとは雰囲気が違うような気がしていたのだけれど、よくよく見てみるとこの絵の男性は眼鏡をかけていたのだった。



キャンプに行ったメンバーの中で眼鏡をかけていたのは僕だけだった気がしたのだけれど、鈴木さんのお父さんが眼鏡をかけていたのかは覚えていなかった。



ただ、帰りの車を運転していた鈴木さんのお父さんはスポーツ用の遮光グラスをかけていたので、もしかしたら普段は眼鏡を着用し休みの日はコンタクトレンズを装着していたのかもしれない。



落書き帳の他のページをめくろうと指を動かすと同時に鈴木さんは落書き帳を僕から奪っていった。



この絵だけを見せたかったのだろう。



他のページにどんなことが書いてあってどんな絵が描かれているのか興味は尽きないのだけれども、鈴木さんはきっと落書き帳の他のページは見せてくれないと思う。



エアコンの設定温度を少し高く設定した鈴木さんは僕に近づいてきて耳元で囁いた。



「相談は岡本先輩の事じゃなくて、パパの事なんです」



それを言うと鈴木さんは僕の側を離れて、先ほどからずっと校庭に向かって手を振っているソフィアさんの横に移動していた。



僕も窓辺に移動して校庭を見回すと、用具はすべて片付けが終わったようだった。

時計を見ると間もなく終業時間という時間になっていた。



三人が使った食器類を洗って帰る準備を始めようとしていると、普段はそのままにして帰っている鈴木さんが隣に立って手伝ってくれていた。



「先生、やっぱり相談はソフィーには聞かれたくないので今度またお願いします」



僕は頷くと鈴木さんは満足したようで、洗い物を途中でやめて帰り支度をし始めていた。



洗い物も一通り終わってゴミをまとめていると、視聴覚準備室の扉が勢いよく開かれた。



そこに立っていたのは、先ほどまで部活をしていた齋藤さんだった。



齋藤さんはソフィアさんと鈴木さんの姿を見つけると一緒に帰るために大急ぎで帰宅準備を済ませてここまで走ってきたらしい。



放課後で生徒が少ないとはいえ廊下を走ることは褒められたことではないので怒っておいたが、齋藤さんはそんなことなんて気にしていない様子だった。



視聴覚準備室にいた二人も帰り支度を済ませていたのだが、鈴木さんは僕がまとめたゴミを奪い取っていった。



ソフィアさんは齋藤さんに何かを熱く語っていて、熱く語られている齋藤さんは時々ソフィアさんの髪を触っていた。



「私の相談ってあの二人には出来ないと思うんですよ。本当は先生にも出来ないって思っていたんですけど、身近で頼れて人に言わなそうな大人の男性って先生しかいないんですよ。だから、ちょっと妥協して先生に相談することに決めました」



「妥協でも何となくでも気が向いたらでもいいんで、僕は協力したいって思うよ。クラスの他の生徒たちと違って君たちは昔から知っている仲だしね」



「ちょっと頼りないけど………頼りにしていますね。今日はありがとうございました」



そう言って頭を下げるとソフィアさん達のもとに駆け寄っていった。



三人は僕に向かって挨拶をするとそのまま階段の方に向かっていった。



鈴木さんは階段を降りる前に軽く振り向いて、少しだけ頭を下げていた。



それに気付いたソフィアさんと齋藤さんは笑顔で手を振っていた。



先ほどの話だと、三人は帰宅途中にあるコンビニに新製品のデザートがあったのでそれをみんなで食べよう、みたいな感じの会話をしていたので、きっとコンビニに向かうのだろう。



僕はちっとも整理できなかった資料を右手に持ち、空いた左手には先ほどまとめたゴミを持って1階のゴミ捨て場に向かった。



鈴木さんの悩みは思っていたよりも深刻そうだけど、きっと年頃の女の子が父親に抱く悩みなんだろうな。





さあ、次の休みは久しぶりに電車に乗ってどこか遠くに行くことにしよう

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

秘められたサイズへの渇望

到冠
大衆娯楽
大きな胸であることを隠してる少女たちが、自分の真のサイズを開放して比べあうお話です。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

処理中です...