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鈴木美波編
悩める鈴木さんと金髪少女と先生 第14話(全14話)
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子供の頃の鈴木さんが描いたと思われる父親らしき男性の絵は、何か違和感を感じるのだが、その正体まではつかめないでいた。
「先生って私のお父さんに会った事何回かありますよね?」
「確か、ソフィアさんのご両親達とキャンプに行ったときに鈴木さんのご両親もいらっしゃってたよね」
「はい、お父さんがいて、ママもいたと思います。私ははっきり覚えていないんですけど。この前ソフィーの家で昔のアルバムを見ていてなんとなく思い出してたんです。それで、この落書き帳の事も思い出したんですよ」
落書き帳に描かれた男性は動物園に来ていたお父さんとは雰囲気が違うような気がしていたのだけれど、よくよく見てみるとこの絵の男性は眼鏡をかけていたのだった。
キャンプに行ったメンバーの中で眼鏡をかけていたのは僕だけだった気がしたのだけれど、鈴木さんのお父さんが眼鏡をかけていたのかは覚えていなかった。
ただ、帰りの車を運転していた鈴木さんのお父さんはスポーツ用の遮光グラスをかけていたので、もしかしたら普段は眼鏡を着用し休みの日はコンタクトレンズを装着していたのかもしれない。
落書き帳の他のページをめくろうと指を動かすと同時に鈴木さんは落書き帳を僕から奪っていった。
この絵だけを見せたかったのだろう。
他のページにどんなことが書いてあってどんな絵が描かれているのか興味は尽きないのだけれども、鈴木さんはきっと落書き帳の他のページは見せてくれないと思う。
エアコンの設定温度を少し高く設定した鈴木さんは僕に近づいてきて耳元で囁いた。
「相談は岡本先輩の事じゃなくて、パパの事なんです」
それを言うと鈴木さんは僕の側を離れて、先ほどからずっと校庭に向かって手を振っているソフィアさんの横に移動していた。
僕も窓辺に移動して校庭を見回すと、用具はすべて片付けが終わったようだった。
時計を見ると間もなく終業時間という時間になっていた。
三人が使った食器類を洗って帰る準備を始めようとしていると、普段はそのままにして帰っている鈴木さんが隣に立って手伝ってくれていた。
「先生、やっぱり相談はソフィーには聞かれたくないので今度またお願いします」
僕は頷くと鈴木さんは満足したようで、洗い物を途中でやめて帰り支度をし始めていた。
洗い物も一通り終わってゴミをまとめていると、視聴覚準備室の扉が勢いよく開かれた。
そこに立っていたのは、先ほどまで部活をしていた齋藤さんだった。
齋藤さんはソフィアさんと鈴木さんの姿を見つけると一緒に帰るために大急ぎで帰宅準備を済ませてここまで走ってきたらしい。
放課後で生徒が少ないとはいえ廊下を走ることは褒められたことではないので怒っておいたが、齋藤さんはそんなことなんて気にしていない様子だった。
視聴覚準備室にいた二人も帰り支度を済ませていたのだが、鈴木さんは僕がまとめたゴミを奪い取っていった。
ソフィアさんは齋藤さんに何かを熱く語っていて、熱く語られている齋藤さんは時々ソフィアさんの髪を触っていた。
「私の相談ってあの二人には出来ないと思うんですよ。本当は先生にも出来ないって思っていたんですけど、身近で頼れて人に言わなそうな大人の男性って先生しかいないんですよ。だから、ちょっと妥協して先生に相談することに決めました」
「妥協でも何となくでも気が向いたらでもいいんで、僕は協力したいって思うよ。クラスの他の生徒たちと違って君たちは昔から知っている仲だしね」
「ちょっと頼りないけど………頼りにしていますね。今日はありがとうございました」
そう言って頭を下げるとソフィアさん達のもとに駆け寄っていった。
三人は僕に向かって挨拶をするとそのまま階段の方に向かっていった。
鈴木さんは階段を降りる前に軽く振り向いて、少しだけ頭を下げていた。
それに気付いたソフィアさんと齋藤さんは笑顔で手を振っていた。
先ほどの話だと、三人は帰宅途中にあるコンビニに新製品のデザートがあったのでそれをみんなで食べよう、みたいな感じの会話をしていたので、きっとコンビニに向かうのだろう。
僕はちっとも整理できなかった資料を右手に持ち、空いた左手には先ほどまとめたゴミを持って1階のゴミ捨て場に向かった。
鈴木さんの悩みは思っていたよりも深刻そうだけど、きっと年頃の女の子が父親に抱く悩みなんだろうな。
さあ、次の休みは久しぶりに電車に乗ってどこか遠くに行くことにしよう
「先生って私のお父さんに会った事何回かありますよね?」
「確か、ソフィアさんのご両親達とキャンプに行ったときに鈴木さんのご両親もいらっしゃってたよね」
「はい、お父さんがいて、ママもいたと思います。私ははっきり覚えていないんですけど。この前ソフィーの家で昔のアルバムを見ていてなんとなく思い出してたんです。それで、この落書き帳の事も思い出したんですよ」
落書き帳に描かれた男性は動物園に来ていたお父さんとは雰囲気が違うような気がしていたのだけれど、よくよく見てみるとこの絵の男性は眼鏡をかけていたのだった。
キャンプに行ったメンバーの中で眼鏡をかけていたのは僕だけだった気がしたのだけれど、鈴木さんのお父さんが眼鏡をかけていたのかは覚えていなかった。
ただ、帰りの車を運転していた鈴木さんのお父さんはスポーツ用の遮光グラスをかけていたので、もしかしたら普段は眼鏡を着用し休みの日はコンタクトレンズを装着していたのかもしれない。
落書き帳の他のページをめくろうと指を動かすと同時に鈴木さんは落書き帳を僕から奪っていった。
この絵だけを見せたかったのだろう。
他のページにどんなことが書いてあってどんな絵が描かれているのか興味は尽きないのだけれども、鈴木さんはきっと落書き帳の他のページは見せてくれないと思う。
エアコンの設定温度を少し高く設定した鈴木さんは僕に近づいてきて耳元で囁いた。
「相談は岡本先輩の事じゃなくて、パパの事なんです」
それを言うと鈴木さんは僕の側を離れて、先ほどからずっと校庭に向かって手を振っているソフィアさんの横に移動していた。
僕も窓辺に移動して校庭を見回すと、用具はすべて片付けが終わったようだった。
時計を見ると間もなく終業時間という時間になっていた。
三人が使った食器類を洗って帰る準備を始めようとしていると、普段はそのままにして帰っている鈴木さんが隣に立って手伝ってくれていた。
「先生、やっぱり相談はソフィーには聞かれたくないので今度またお願いします」
僕は頷くと鈴木さんは満足したようで、洗い物を途中でやめて帰り支度をし始めていた。
洗い物も一通り終わってゴミをまとめていると、視聴覚準備室の扉が勢いよく開かれた。
そこに立っていたのは、先ほどまで部活をしていた齋藤さんだった。
齋藤さんはソフィアさんと鈴木さんの姿を見つけると一緒に帰るために大急ぎで帰宅準備を済ませてここまで走ってきたらしい。
放課後で生徒が少ないとはいえ廊下を走ることは褒められたことではないので怒っておいたが、齋藤さんはそんなことなんて気にしていない様子だった。
視聴覚準備室にいた二人も帰り支度を済ませていたのだが、鈴木さんは僕がまとめたゴミを奪い取っていった。
ソフィアさんは齋藤さんに何かを熱く語っていて、熱く語られている齋藤さんは時々ソフィアさんの髪を触っていた。
「私の相談ってあの二人には出来ないと思うんですよ。本当は先生にも出来ないって思っていたんですけど、身近で頼れて人に言わなそうな大人の男性って先生しかいないんですよ。だから、ちょっと妥協して先生に相談することに決めました」
「妥協でも何となくでも気が向いたらでもいいんで、僕は協力したいって思うよ。クラスの他の生徒たちと違って君たちは昔から知っている仲だしね」
「ちょっと頼りないけど………頼りにしていますね。今日はありがとうございました」
そう言って頭を下げるとソフィアさん達のもとに駆け寄っていった。
三人は僕に向かって挨拶をするとそのまま階段の方に向かっていった。
鈴木さんは階段を降りる前に軽く振り向いて、少しだけ頭を下げていた。
それに気付いたソフィアさんと齋藤さんは笑顔で手を振っていた。
先ほどの話だと、三人は帰宅途中にあるコンビニに新製品のデザートがあったのでそれをみんなで食べよう、みたいな感じの会話をしていたので、きっとコンビニに向かうのだろう。
僕はちっとも整理できなかった資料を右手に持ち、空いた左手には先ほどまとめたゴミを持って1階のゴミ捨て場に向かった。
鈴木さんの悩みは思っていたよりも深刻そうだけど、きっと年頃の女の子が父親に抱く悩みなんだろうな。
さあ、次の休みは久しぶりに電車に乗ってどこか遠くに行くことにしよう
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