英雄のいない世界で

赤坂皐月

文字の大きさ
24 / 149
THE GROUND ZERO Chapter2

第5章 抵抗者達【2】

しおりを挟む
「ううむ……そろそろあれが見えてくると思うのだが……」

 バギーは今、何も無い荒野を走っている。

 遠くに岩場が見えたりするが、基本はだだっ広い、ただの荒野だ。

「マジスターさん、ここはどれくらいマグナブラから離れた場所なんですか?」

 僕はあまりマグナブラの外に出たことが無かったので、この荒野が一体どの場所なのか、それが分からなかった。

 遠征があっても、頑なにサボっていたからね。

「う~む……正確な距離は分からんが、マグナブラから約四百キロ程離れた場所かな。マグナブラのすぐ外はこんな荒野がずっと広がっているからな」

「ふうん、そうなんだ……ということはレジスタンスの連中は、こんな長い距離を毎回往復してマグナブラに来ていたのか?」

「カッカッ! そんな七面倒臭いことはさすがにしとらん。本拠地がこれだけ離れているだけで、マグナブラの市街地には別に支部がある。まあだから、本拠地からその支部に派遣されるという形になっているな。わしの場合は兵士だという点を利用して、兵団に潜り込んでいたのだけどな」

「なるほどな」

 まあ、普通に考えたらそうだよな。

 しかし兵団は、その支部すらもまだ見つけられていないところを考えると、こんなに離れた本拠地など早々見つけられるはずも無く、しばらくは雲隠れができそうだ。

 まあ……国王を殺した大罪のほとぼりが冷めるのが、一体何年かかるかだなんて、途方もなさ過ぎて考えるだけ無駄なような気がするが。

「でも、昨日の晩から走り出してまだ四百キロか……僕はてっきりもっと遠いところ、隣国との国境をとっくに越えているのかと思っていたよ」

「カッカッ! まあ普通に走っていれば、アジトにはもう着いていただろう。だが途中で追手がやって来てな……奴らを撒くのに大幅な迂回をしたり、隠れながら走っておったから、かなり時間をロスしてしまったわ」

「追手が……僕が寝てる間にそんなことが……」

「まったく……あれだけ車が揺れとったのに、そんなものに動じることなく寝とったからなお前は……逃げ切れたから良かったものの、もし迎撃されとったら真っ先にお前は死んどったぞ?」

「うーん……つまり僕は二度も、マジスターさんに命を救われたってことなのか……」

「そうだ! 少しは感謝せい!」

「そうですね……今度コーヒー奢りますよ。二杯分」

「命を救った見返りがコーヒーってあまりにも軽すぎるだろっ! しかもコーヒー二杯も飲んだら、わしがその晩眠れんくなるだろうが!」

「夜も眠らず、僕の警護をよろしくお願いします。僕はその間熟睡するんで」

「わしはお前のボディガードじゃあなああああいっ!!」

 そんなこんな戯れながら、僕達は広い荒野をバギーで突っ走る。

 ずっと同じような景色が続いているので、僕には一体自分が今どこにいるのか、また先に進んでいるのか、それすらも分からない。
 
 しかしマジスターはそんな僕とは違うようで、おそらく着実にレジスタンスの本拠地に向けてバギーを走らせている。その証拠に、マジスターはどうやら、本拠地のある場所の手掛かりを見つけたようだった。

「ん……おっ! 見えてきた四本の柱岩だ!」

「柱岩?」

「前にひょろ長い四本の岩が並んどるだろ? あの岩がアジトまでの目印になっているんだ。あれを越えた先に、レジスタンスのアジトがある!」

「あの岩の先にか……」

 マジスターの言う通り、今まで何処まで行っても同じような風景だった荒野に、見たことの無い四本の柱状になった細い岩が連なっていた。

 バギーはその岩のある方角へと真っ直ぐに進んでいき、岩の真下を過ぎ、その先へと出た瞬間、僕はその光景に目を疑った。

「な……なんだこれは……岩山……なのか!?」

 そこにあったのは、巨大な岩山だった。

 いやしかし……岩山にしてはごつごつした段差なんかが全く無い。そう、その岩山はまるで、そこら辺に落ちている一つの石っころを、丸々山程の規模に大きくしたもののように、僕には見えた。

「カッカッカッ! 山のように見えるだろ? しかしあれは、巨大な一枚岩なんだ。エトワール・ロックといってな。その昔、落ちてきた隕石がそのまま欠けることなく、この地に留まったものだと言われておる」

「なるほど、隕石なんだこれ」

「だけどこの隕石が降り注いだ影響で、ここら一帯は荒野になってしまったという一説があるがな」

「ふうん……自然の力ってすごいな」

「カッカッ! こんなもん見たら、人間なんぞよほどチンケなもんだと思えてくるもんだろ?」

「まあ……そうだな」

 自然はこんな大きな力が働かないと微動だにしないというのに、俺達の世界は、たった一人の人間が数人に寄ってたかられて、いとも容易く首を刎ねられて、大混乱を起こすような世界だからな。

 本当にちんけだな……僕達の世界は。

「エトワール・ロックのふもとにアジトはある。あともう少しで到着だ」

「麓に……でもこんな目立つような場所にアジトを作って、よくこれまでばれなかったもんだな」

「カッカッ……いやぁ、わしも最初アジトに来た時はそう思ったが、この先に向かうと何故これまで見つからなかったのか、その理由が多分お前でも分かると思うぞ?」

 ニヤリといったような感じでマジスターは笑い、僕の驚く姿が早く見たいのだろうか、アクセルを踏み込みバギーのスピードを上げる。

 ふむ……そんなに期待されてしまうと、むしろその期待を大きく裏切りたくなるもので、こうなったら絶対に驚かないぞと、天邪鬼のような決心をしたのだが。

「おっ……おおおおおおおっ!!」

 僕はマジスターの狙い通り、それを見て驚愕した。

 エトワール・ロック、その巨大な一枚岩に、ほんの一部だけ亀裂が入っている場所がある。

 しかしその巨大な岩からみると、亀裂はほんの一部といった感じなのだが、しかし僕達人間からすると、その亀裂は巨大な渓谷のようになっており、その渓谷の最深部付近に、巨大な砦のようなものが築かれていた。

「カッカッカッ! 見ろコヨミ、あれが我らレジスタンスの本拠地ユスティーツフォートだ! まさかこんな所に砦を築くなど誰も考えまい!」

「ああ……ここなら見つかることも無いだろうし、この峡谷が天然の要害になってて攻めるにも攻められない。完璧な要塞じゃないか」

「カッカッカッカッ!」

「……言っておくけど、僕が褒めてるのはこの砦で、マジスターさんのことを褒めてるわけじゃないからね」

「カッカッ……はぁ……何で急にそんな意地悪なことを言うんだ? 人がせっかく上機嫌だったというのに」

「いや、なんか勘違いされてたら嫌だなって思って。勘違いして天狗になってるおっさんの姿を見ると、ハラワタが煮えたぎるくらいイライラしてくるんで」

「勘違いだけでそんなに憎悪を抱かんでもいいだろっ! どれだけおっさんが浮かれるのが嫌いなんだよお前は!」

「だって何の需要も無いし……」

「需要とか言うんじゃあなああああいっ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん
ファンタジー
「攻撃力ゼロのポーターなんて、配信の邪魔なんだよ!」  3年尽くしたパーティから、手切れ金の1万円と共に追放された探索者・天野蓮(アマノ・レン)。  絶望する彼が目にしたのは、ダンジョン深層で孤立し、「お腹すいた……」と涙を流すS級美少女『氷姫』カグヤの緊急生放送だった。  その瞬間、レンの死にスキルが真の姿を見せる。  目的地と受取人さえあれば、壁も魔物も最短距離でブチ抜く神速の移動スキル――【絶対配送(デリバリー・ロード)】。 「お待たせしました! ご注文の揚げたてコロッケ(22,500円)お届けです!」  地獄の戦場にママチャリで乱入し、絶品グルメを届けるレンの姿は、50万人の視聴者に衝撃を与え、瞬く間に世界ランク1位へバズり散らかしていく!  一方、彼を捨てた元パーティは補給不足でボロボロ。 「戻ってきてくれ!」と泣きつかれても、もう知らん。俺は、高ランク冒険者の依頼で忙しいんだ!

異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。 次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。 これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。 しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。 これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。

レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。 戦闘能力ゼロ、初期レベル1。 冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、 新人向けの雑用クエストしか回ってこない。 しかしそのスキルは、 ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する” という、とんでもない能力だった。 生き残るために始めた地味な探索が、 やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。 これは、 戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。 同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

勘違いで召喚して来たこの駄女神が強引すぎる 〜ふざけたチートスキルで女神をボコしながら冒険します〜

エレン
ファンタジー
 私は水無月依蓮《みなづきえれん》、どこにでもいる普通の女子高生だ。  平穏な生活を送っていた私は、ある日アルテナと名乗る女神に召喚されてしまう。  厨二臭いその女神が言うには、有給休暇で異世界冒険したいから、従者としてついて来なさいとの事。  うん、なんだその理由は。  異世界なんて興味ない、とっとと私を元の場所に返せ。  女神を殴ったり踏みつけたりしてやっと返してもらえるかと思いきや。  え? 勝手に人間を異世界に呼ぶのは天界の掟で禁止? バレたら私も消される?  ふざけるなー!!!!  そんなこんなで始まる私とポンコツ女神アルテナのドタバタ異世界冒険。  女神が貴族をハゲさせたり、「器用貧乏・改」と言うふざけたスキルを習得したり、ゴブリンの棲家に突撃する羽目になったり、手に入れた家が即崩壊したり、色々起きるけど全てを乗り切って見せる。 全ては元の世界に帰るために!!

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

処理中です...