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THE GROUND ZERO Chapter3
第9章 火種【1】
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どこかで僕を呼ぶ声がする。
僕は……身に覚えのない罪を負い、国から追われ……そして、国に対をなす者達から匿われることも無く、それどころかスパイ容疑を掛けられ……そこからも逃げることになってしまった。
この国に……いや、もしかしたらこの世界に、僕の居場所は無いのかもしれない。
全てからその存在を、拒まれているのかもしれない。
そんな僕を呼ぶこの声は……一体誰なんだ?
「起きなさい……っ!」
起きろ……僕は今、眠っているのか?
ということは……そうか、僕はひとまず危機を脱したんだ。
人に二度襲われ、魔物に襲われ……これで三度死にかけ、三度とも生き延びた。
次は……どうなるのか。
「そろそろ起きろって言ってるでしょうが、この寝坊助っ!!」
「どわああああああああっ! イッテ!」
「イッタ!!」
突如眠りから覚醒した僕は、勢い余って飛び起きたせいで、ルーナと頭をぶつけてしまった。
「いたたた……ちょっと! なにすんのよイキナリっ!!」
「いっつつ……不可抗力だよ。あんな目の前で怒鳴られてたら、誰だってビックリするだろ?」
「それはアンタが朝から何度起こしても起きないからでしょっ!」
「朝から……何度も? ということは、今は朝じゃないのか?」
「フンッ! そこの時計を見なさいっ! その間抜け面がもっと間抜けになるに違いないわっ!」
「酷い言いようだな……」
僕はルーナの指さす時計を、目の端にこべりついている目やにを除去しながら、見開く。
「えっ!? これって朝の八時じゃなくて……」
「夜の八時よ。もうすっかり日も暮れて、月も出てるわ」
「えええええええええっ!! じゃあ僕……ほぼ一日寝てたってことなの?」
「そうよ! だから寝坊助って言ってるんでしょ!」
「寝坊助ってレベルじゃないよこれ……」
兵士時代、僕がまだ本気で勇者の道を目指していた時。訓練に明け暮れて疲労し、ぶっ倒れて眠るなんてこともあったが、しかしそれでも、せいぜい半日も経たない内に眠りから目覚めていた。
それだけ僕も、ギリギリだったってわけだ。
やはり訓練と実戦、安全な場所で行われる模擬戦闘と死が常に背中に張り付いている本物の死線では、疲労のレベルが異なるということだな。
「もしかして、僕以外はみんな朝から?」
「わたしは昼に起きたけど、マジスターさんは朝からだそうよ」
「そうか……一番疲れてるのは、マジスターのはずなんだけどな」
「歳のせいらしいわよ」
「そうか……なら仕方ないか」
多分歳のせいだけではない、マジスターには戦士としての自覚がある。だからこそ、この急を要する事態にうかうか眠ってなどいられなかったというわけだ。
同じマグナブラの兵士だったとは思えないな……階級や在籍年数の違いを差し引いても、志が異なる。
僕は本当に、戦う者としていろんな部分が欠如している。少しは見習わないとな……先輩を。
「さてと……んん~!」
僕はベッドから立ち上がり、伸びをする。ほぼ一日寝ていただけあって、身体のいろんな部分からバキボキと歪な音がするが、痛みは無い。むしろ、心地良いくらいだ。
「僕の分の朝ご飯……いや、夕ご飯はあるの?」
「下でゾフィが作って置いてくれてるわ。感謝して食べなさい」
「何でゾフィさんが作ったのに、君が偉そうにしてるんだよ……」
「いいじゃない! わたしの知人なんだから!!」
「はいはい……」
そういうのは関係無いと思うんだけど……とか言ったら、またこの子怒りだすんだろうな。
触らぬ神に祟りなし、そっとしておこう。それが一番だ。
部屋を出て食道へ向かうと、エプロンをつけた女性が一人、シンクで重ねられた食器を洗っていた。
「ゾフィ、やっと寝坊助が目を覚ましたわ」
「ああ、お嬢様! それとコヨミさんおはようございます」
「おはようございます、ゾフィさん」
彼女がゾフィさん。ルーナが言うには、彼女はノースハーウェンにいた頃からの侍女であり、ルーナ達がレイブン王から国を追放された後も着いて来てくれた人らしい。
今はルーナ達の元を離れ、マグナブラとエトワール・ロックの丁度中間地点であるこの荒野で、旅人達の宿屋をやっているとか。
だから僕達が早朝に尋ねて来ても、受け入れてくれたというわけだ。
「夕食は取っておきましたので、どうぞお食べください」
「すいませんわざわざ」
僕は座席に着き、目の前に広がる食事を見て、思わずよだれが出そうになる。
作りたてではないため多少冷えてしまってるようだが、ハンバーグに添え物の野菜、そしてポタージュスープにパン。食欲が湧き立てられるのを感じる。
考えてみれば、今日一日眠っていたから食べていないのは当然だが、その前も、そしてマグナブラを追われたあの日も、ジョンと食べた昼食が最後の食事だった。
三日も何も食べずに、こんなにアクティブに動いていて、よくまあくたばらなかったものだ。
僕もそれなりに頑丈だということか。
「おおコヨミ、やっと起きたか」
僕が食事を食べ始めると、食堂の扉からやって来たのはマジスターだった。
「ああ、マジスター。ごめん、僕だけこんなに寝ちゃって……こんな時なのに」
「なに、こんな時だからこそしっかり休んでおくべきだ。それに、またしばらく眠れない時期が続くかもしれんしな」
「どういうことだ?」
「ここは旅人の宿だけあって、いろんな者がいる。だから今、マグナブラがどういう状況になっているのか情報を集めていたんだ」
「ふうん……まあ王が死んだんだから、混乱は多少起きてるだろうけれど……」
「わしもそう思っていた。しかし実際はそうではないらしい」
マジスターは僕の前の席に座り、そして大きな溜息を一つ吐いた。
「マグナブラでは、前練磨大臣だったグリードが代理首相としてトップに立つことになったらしい。まあ、奴は暁の火の中でも多くの利権を持っているし、ギルワード王は奴の言うことを鵜呑みにしていたようなものだからな。マリオネットは捨てられ、その操り主が表に顔を出したということだ」
「なるほど……だから国自体に大きな乱れはなかったってことか」
「そういうことだ……そしてもう一つ、大きな人事が行われたようだ」
「もう一つ? グリードの代わりの、新しい練磨大臣とか?」
「いや、グリードは代理首相を務めながら、練磨大臣も兼任するらしい」
「そりゃあ働き者だな。国を治めながら、暁の火の橋渡しもするなんて。過労死するのも近いんじゃないのか?」
僕は……身に覚えのない罪を負い、国から追われ……そして、国に対をなす者達から匿われることも無く、それどころかスパイ容疑を掛けられ……そこからも逃げることになってしまった。
この国に……いや、もしかしたらこの世界に、僕の居場所は無いのかもしれない。
全てからその存在を、拒まれているのかもしれない。
そんな僕を呼ぶこの声は……一体誰なんだ?
「起きなさい……っ!」
起きろ……僕は今、眠っているのか?
ということは……そうか、僕はひとまず危機を脱したんだ。
人に二度襲われ、魔物に襲われ……これで三度死にかけ、三度とも生き延びた。
次は……どうなるのか。
「そろそろ起きろって言ってるでしょうが、この寝坊助っ!!」
「どわああああああああっ! イッテ!」
「イッタ!!」
突如眠りから覚醒した僕は、勢い余って飛び起きたせいで、ルーナと頭をぶつけてしまった。
「いたたた……ちょっと! なにすんのよイキナリっ!!」
「いっつつ……不可抗力だよ。あんな目の前で怒鳴られてたら、誰だってビックリするだろ?」
「それはアンタが朝から何度起こしても起きないからでしょっ!」
「朝から……何度も? ということは、今は朝じゃないのか?」
「フンッ! そこの時計を見なさいっ! その間抜け面がもっと間抜けになるに違いないわっ!」
「酷い言いようだな……」
僕はルーナの指さす時計を、目の端にこべりついている目やにを除去しながら、見開く。
「えっ!? これって朝の八時じゃなくて……」
「夜の八時よ。もうすっかり日も暮れて、月も出てるわ」
「えええええええええっ!! じゃあ僕……ほぼ一日寝てたってことなの?」
「そうよ! だから寝坊助って言ってるんでしょ!」
「寝坊助ってレベルじゃないよこれ……」
兵士時代、僕がまだ本気で勇者の道を目指していた時。訓練に明け暮れて疲労し、ぶっ倒れて眠るなんてこともあったが、しかしそれでも、せいぜい半日も経たない内に眠りから目覚めていた。
それだけ僕も、ギリギリだったってわけだ。
やはり訓練と実戦、安全な場所で行われる模擬戦闘と死が常に背中に張り付いている本物の死線では、疲労のレベルが異なるということだな。
「もしかして、僕以外はみんな朝から?」
「わたしは昼に起きたけど、マジスターさんは朝からだそうよ」
「そうか……一番疲れてるのは、マジスターのはずなんだけどな」
「歳のせいらしいわよ」
「そうか……なら仕方ないか」
多分歳のせいだけではない、マジスターには戦士としての自覚がある。だからこそ、この急を要する事態にうかうか眠ってなどいられなかったというわけだ。
同じマグナブラの兵士だったとは思えないな……階級や在籍年数の違いを差し引いても、志が異なる。
僕は本当に、戦う者としていろんな部分が欠如している。少しは見習わないとな……先輩を。
「さてと……んん~!」
僕はベッドから立ち上がり、伸びをする。ほぼ一日寝ていただけあって、身体のいろんな部分からバキボキと歪な音がするが、痛みは無い。むしろ、心地良いくらいだ。
「僕の分の朝ご飯……いや、夕ご飯はあるの?」
「下でゾフィが作って置いてくれてるわ。感謝して食べなさい」
「何でゾフィさんが作ったのに、君が偉そうにしてるんだよ……」
「いいじゃない! わたしの知人なんだから!!」
「はいはい……」
そういうのは関係無いと思うんだけど……とか言ったら、またこの子怒りだすんだろうな。
触らぬ神に祟りなし、そっとしておこう。それが一番だ。
部屋を出て食道へ向かうと、エプロンをつけた女性が一人、シンクで重ねられた食器を洗っていた。
「ゾフィ、やっと寝坊助が目を覚ましたわ」
「ああ、お嬢様! それとコヨミさんおはようございます」
「おはようございます、ゾフィさん」
彼女がゾフィさん。ルーナが言うには、彼女はノースハーウェンにいた頃からの侍女であり、ルーナ達がレイブン王から国を追放された後も着いて来てくれた人らしい。
今はルーナ達の元を離れ、マグナブラとエトワール・ロックの丁度中間地点であるこの荒野で、旅人達の宿屋をやっているとか。
だから僕達が早朝に尋ねて来ても、受け入れてくれたというわけだ。
「夕食は取っておきましたので、どうぞお食べください」
「すいませんわざわざ」
僕は座席に着き、目の前に広がる食事を見て、思わずよだれが出そうになる。
作りたてではないため多少冷えてしまってるようだが、ハンバーグに添え物の野菜、そしてポタージュスープにパン。食欲が湧き立てられるのを感じる。
考えてみれば、今日一日眠っていたから食べていないのは当然だが、その前も、そしてマグナブラを追われたあの日も、ジョンと食べた昼食が最後の食事だった。
三日も何も食べずに、こんなにアクティブに動いていて、よくまあくたばらなかったものだ。
僕もそれなりに頑丈だということか。
「おおコヨミ、やっと起きたか」
僕が食事を食べ始めると、食堂の扉からやって来たのはマジスターだった。
「ああ、マジスター。ごめん、僕だけこんなに寝ちゃって……こんな時なのに」
「なに、こんな時だからこそしっかり休んでおくべきだ。それに、またしばらく眠れない時期が続くかもしれんしな」
「どういうことだ?」
「ここは旅人の宿だけあって、いろんな者がいる。だから今、マグナブラがどういう状況になっているのか情報を集めていたんだ」
「ふうん……まあ王が死んだんだから、混乱は多少起きてるだろうけれど……」
「わしもそう思っていた。しかし実際はそうではないらしい」
マジスターは僕の前の席に座り、そして大きな溜息を一つ吐いた。
「マグナブラでは、前練磨大臣だったグリードが代理首相としてトップに立つことになったらしい。まあ、奴は暁の火の中でも多くの利権を持っているし、ギルワード王は奴の言うことを鵜呑みにしていたようなものだからな。マリオネットは捨てられ、その操り主が表に顔を出したということだ」
「なるほど……だから国自体に大きな乱れはなかったってことか」
「そういうことだ……そしてもう一つ、大きな人事が行われたようだ」
「もう一つ? グリードの代わりの、新しい練磨大臣とか?」
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