英雄のいない世界で

赤坂皐月

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THE GROUND ZERO Chapter4

第12章 破皇の再臨【10】

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「キッキッキッ、そもそも我はこの世界に破壊をもたらすためだけに発現した存在だからな。だから生殖によって繁栄する機能など、そもそも持ち合わせてはおらん。それに老いることも、あるいは若返ることだって魔力の調節次第で可能だ」

「へえ……つまり老若男女全てがお前に当てはまるってことなのか」

「逆を言えば、老若男女の枠から外れた存在とも言えるがな?」

「なんだよそれ……」

「キッキッキッ」

 ライフ・ゼロはそんなあっけらかんとした僕の表情を見て、クスクスと笑う。

 老若男女どれにも当てはまる存在……だとしても、しかしその気持ちまで果たして分かるものなのか?

 女心も男心も、あるいは若い人の考え方も、老いた人の考え方も、千差万別だからね。

「でもこの子の言う通りねぇ……確かにコヨミはなんていうか、気が利かないというか、余計な部分が多いのよねぇ……それにちょっと空気読めないし」

「…………」

 ルーナに言われて、僕は唖然としてしまう。
 
 僕ってそんな感じで彼女に思われていたのか……。

 ちょっとショック。

 そんな軽い傷心状態の僕の肩を、マジスターは軽くポンと叩いてくれた。

 気にするなということなのだろうか……いや、気にするよ!

「でもすごいわねぇこの子。人間の枠に当てはまらないところが、さすがは大魔王って感じね」

「キッキッ! どうやらうぬ、強い者への憧れがあるようだな」

「まあね。わたしはもっと強くなって……そしてわたしの国を、いつか再興させなくちゃいけないから……」

「ほう……それがうぬの戦う理由か」

「そうよ……」

「フン、再興というのは我の存在意義に反することだが、しかしそれがうぬの自らに課した使命なのならば、しっかりとそれを果たすがいい。我は再興には手は貸さんが、その際に何かを破壊するのであれば、手を貸してやらんこともないぞ?」

「ありがとう、えっと……」

「ライフ・ゼロといちいち呼ぶのは面倒だろう。ゼロと呼べ」

「うん……ありがとうゼロ」

「キッキッキッ! 礼には及ばん」

 どうやらルーナともすっかり仲が良くなったようで、ライフ・ゼロはヘイトウルフのメンバーの心を、僅か数分で掴んでしまった。

 さすがはかつて人の上……いや、魔物達の上に立っていた者は違うな……これが所謂、カリスマというやつなのだろうか?

 コイツは僕のことを同類なんて言っていたけど、そもそも持っているものが違う。
 
 僕には人の上に立つような、そんな術は決してないから。

『キッキッ……まだ気づいてないだけだ』

 すると唐突に、ライフ・ゼロの声が頭の中から聞こえてきた。

(えっ?)

 ルーナと笑いあっているライフ・ゼロを見ながら、僕は意識の内で答える。

『マジスター、ルーナ、そして我……我らをここに集めたのは、うぬの力だ。うぬの中には、他の人間には決して無い民衆を惹き付ける力がある。所謂、カリスマというやつがな』

(フッ……人を惹き付けるなんて。そんなことを思えるほど、お前のように僕は自惚れることはできないよ。僕にはそんな人望は無い。みんなが集まったのは、目的が同じだから。それだけさ)

『キッキッ……まあうぬがどう思おうが勝手だ。これだけの者を、たまたま集めれるだけでも相当な幸運だと我は思うがな?』

(見透かしたようなことを……)

『キッキッキッ!』

 その時、笑っているライフ・ゼロがちらっと僕の顔を一瞥したような気がした。

 今のメンバーがこうして一堂に集まったのは、僕にカリスマがあるから……か。

 ライフ・ゼロはそんなことを言ってきたけど、やっぱり僕はそこまで自惚れることはできないな。

 しかし、兵士の落ちこぼれに、国に見限りをつけた歴戦の戦士に、戦闘民族のお姫様。そしてかつて世界を支配しかけた大魔王と、風変わりで、ワケアリで、まったく統一性の無い四人が、たった一つの目的でこうして集まるのは、確かに奇跡だ。 

 だけど僕達は、これからこれ以上の奇跡を成し遂げなければならない。世界を解放するという、一世一代の奇跡を。

 僕に……仮にも本当にカリスマがあるとするならば、僕はその奇跡を成し遂げられるはずだ。奇跡で集まった、この仲間達と共に。

 もしその時が来たら、僕はその時になって初めて信じてやるよ。僕の中に秘められた、その力というやつを。

「コヨミ、ルーナ、そしてライフ・ゼロ。顔合わせも済んだところで、そろそろここを後にする……ん?」

 マジスターがそう言いかけると、遠くの方で何か大きな物音が聞こえた。

 まるでそう、崖崩れが起きた時のような、大きな地鳴り。しかもその音がした先は……。

「爆心地の方からだな……」

 前代未聞の爆弾が投下され、全てが抹消した場所。

 そこには何も残っていないはずなのだが、しかしその何も無いはずの場所で起こった轟音。

 一体何が起こったのか……。

「魔物だ」

「えっ?」

 そう言い切ったのは、ライフ・ゼロだった。

「魔物が発する魔力を感じる。しかも……キッキッキッ、これはなかなか面白い」

「何が面白いんだよ?」

「我を復活させた、天から降ってきた強大な魔力。どうやらそれを浴びた魔物が、我以外にいたようだな」

「元素爆弾の魔力を!? あれ程強力な魔力を浴びても、魔物は大丈夫なのか?」

「魔物は人間と異なり、外から受けた魔力を吸収し、自分の力に変換させる能力を持っておるからな。だがあれ程の魔力を自分の力に変換したとなると、普通の魔物であるならば、まともな状態ではないだろうな」

「まともじゃないって……その魔物をこのまま放っておいたら、どうなるんだよ……」

「キッキッキッ……強大な力を手に入れ、正気を失った魔物がやることといえばたった一つ、暴走だ。更なる力を求めて、破壊の限りを尽くし、もっと多くの魔力が貯蔵されている場所を目指すだろう」

「魔力が貯蔵されている場所……ここと同じ規模の魔力が溜められている場所といったら……マグナブラか!」

 マグナブラには魔石発電施設を含め、膨大な魔石エネルギーが貯蔵されている。もしその魔物が魔力を求めて移動するとなれば、狙われるのはあそこ以外にない。

 現代兵器を使って魔物に対抗できる術を人間が持ったとはいえ、しかしマグナブラの構造上、最初に魔物の襲撃を受けるのは一般の人々が生活をしている市街地エリアだ。

 今節の魔物は自分のテリトリーに入り込んだもの以外には、基本的には危害を加えようとしない。マグナブラの住人も、まさか今どき魔物が街を襲撃してくるなんて思ってもいないだろうし、もし暴走した魔物がマグナブラに向かったら、大混乱は必至だ。

「どうするコヨミ……討伐するか?」

 マジスターが僕に判断を仰ぐが、マジスターは背中に背負っていたライフルを、既に手に持って装備していた。

 そうだな……答えはもう決まってる。
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