英雄のいない世界で

赤坂皐月

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THE GROUND ZERO Chapter4

第12章 破皇の再臨【11】

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「ああ、討伐しよう。ちょうど僕も、やっと扱いなれてる武器を手に入れたんだ。しかも伝説の剣……試し切りには丁度良い相手だ」

 僕は太陽の剣を左腰に下げ、右手でグリップを握り、鞘から引き抜く。

 鞘から出てきた白銀の刃には一点の曇りも無く、太陽からの光を受けて、それを照らし返すほど磨きがかかっている。

 これほどに美しい刃を持った剣を、僕は他に見たことが無い。これなら暴走した魔物だろうが何だろうが、一刀両断できる気がする。

「よし……魔物の元へ向かうぞ!」

 まずは先頭を切って、マジスターが向かう。

 僕もその後を追おうとしたのだが、しかし一人だけ走ろうとせず、その場に立ち止まっている者がいた。

「ルーナ、どうしたんだ?」

 そう、ルーナはその場に立ち止まり、なんだか困惑したような表情を浮かべていたのだ。

 いつもならこういうことが起こった時、正面切って真っ先に飛び込むはずなのに、一体どうしたのだろうか?

「いや……ちょっと考えごとをしてて。でもアンタがそれでいいのなら、わたしがどう考えていようとも意味が無いわよね」

「う~ん……そんな感じで言われると余計気になるな……」

「……だってアンタ、そのマグナブラって国でやってない罪を被せられて、指名手配にされちゃってるんでしょ? そんな国なら見捨てたって、別に構わないんじゃないのかなって思っちゃって……」

「……なるほど」

 確かに僕はあの国に、散々苦渋を飲まされ続けてきた。

 勇者になる夢を諦めさせられ、やってもない王の殺害の罪を被せられ、指名手配をされ国を追われ、そして唯一心を開いていた後輩も、あの国のメンツを保つために死んでいった。

 なにもかも、あの国が発端で起こったことだ。こんな理不尽な目にあわされて、僕はそろそろあの国を本気で恨むべきなのかもしれない。

 だけど、それでもあの国が魔物の襲撃を受けないためにも、僕はこれから魔物を討伐する。そのわけは……。

「ルーナ、僕はあの国のために魔物を狩るんじゃない。僕はあの国にいる、何の罪も無い人達に危害が及ばないようにするために、魔物を狩るんだ。多分、マジスターも同じ考えだと思うよ」

 僕にはもう、あの国を守る意思など毛頭無い。滅ぶも廃れるも勝手にしてくれと、それほどまでにあの国に対しての僕の気持ちというのは、薄情になりつつある。

 だけどそこにいる人達には、何の罪も無い。そんな人達が次々に死んでゆく様を悠々と、蚊帳の外から眺めるほど、僕は悪趣味でも無いからな。

 半分はそういった人達のために戦うという意味もあるが、半分は僕の中の、僕のメンツを保つためっていうのもあるのかな……まあ兎にも角にも、これは僕の意思で戦うということに変わりないから、理由なんてどうだっていいんだけれど。

「何の罪も無い人達のために……そう……ふふっ」

 すると今まで苦悶の表情をしていたルーナが、ほのかに笑みを浮かべた。

「なんだよ突然笑って……」

「いや……ただ少しだけ、アンタのことを見直しただけよ」

「なんだよ、少しかよ……」

「ふんっ! もっと見直して欲しいのなら、魔物を倒す時しっかり活躍しなさいっ!」

「それはなんだ、足手まといになるなよってことか」

「そういうこと!」

 そう言ってルーナはウインクをすると、マジスターの後を追うようにして走り出し、僕より先に行ってしまった。

 なんなんだよアイツ……急に元気になって、僕を挑発するようなこと言って……。

 だけどまあ……こっちの方がやっぱり彼女らしいな。

「キッキッ……ルーナが元気になってよかったな?」

 僕の隣で楽しそうに子供っぽく笑うライフ・ゼロ。

「フン……まあな」

「自分に素直にならねば、相手に気持ちは届かんよ?」

「ん? どういうことだ?」

「さあな、自分で考えよ。では行くぞ」

「……? ああ、行こうか」

 ライフ・ゼロが何のことを言いたかったのかは分からないけれど、とりあえず、今は暴走する魔物をここで食い止めねばならない。

 マグナブラ……あの国で僕は、恩も不条理も、その全てを教えられ、経験した。

 だからそんな、酸いも甘いも味わったこの国に感謝を込めて……そしてこれを手切れ金に、最後の最後に僕は暴走する魔物から、マグナブラを守ってみせる。

 誰から感謝されることも無い、これは自己満足のための戦いだ。 
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