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BACK TO THE OCEAN Chapter2
第18章 民衆の街【11】
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「ほらロクヨウ、そこにある鏡で見てみなさい」
「えっ!? あっ……」
そんな、ほのかに胸をときめかせていると、自然と頭がぼーっとしてしまい、ルーナに声を掛けられ、はっと我に返った時には、先程僕が故意的にスルーした、トイレにある手洗い場の鏡の前へと到着していた。
「大丈夫、変な格好になんてなってないから。自信を持って、ね?」
ルーナは優しい笑みを浮かべながらそう言い、僕の背中を軽く押す。
「う……うん……」
おどおどとした足つきで、僕は下を向きながら鏡の前へと向かい、そして気持ちを落ち着けるために一度深呼吸をしてから、意を決して……顔を上げた。
「お……おおっ……!」
その姿を見た瞬間、僕は驚嘆してしまった。
目の前の鏡に写っていたのは、当然僕であるはずなのだが、しかしそこに男性の姿は写し出されておらず、それはどこからどう見ても、服装をきめ込んで、これから街に繰り出そうとしている、そんな女の子の姿が写し出されていたのだ。
化粧もしていないし、髪も短いままなのに、服装を変えただけでこれだけ変わるのかと、その変貌への驚きのあまり、後の言葉を失ってしまう。
そんな、自分が思っていた以上に、そして周りの評価が正しいと思えるくらいに、男だったはずの僕は、女になりきっていた。
「ふふん! どう? 新しい自分の姿は?」
僕の驚いている様子を見て、得意げに笑ってみせるルーナ。
「いや……ぶったまげた」
「なによそれ? まあ選んだ服が良かったっていうのもあるけど、ロクヨウ自身の素材が良かったっていうのもあるわね」
「素材?」
「ええ。アンタって、そんなに身長も高くないし、体型もそれほどガッチリとはしてないから、アンタに合う女性用の服があったっていうのがまず良かったのよ。まあそれでも背中が多少広いから、大きめの物を選んできたんだけどね」
「ふうん……」
確かに今着ているこの服は、僕の体にしっかりとフィットしており、袖の長さも丁度良く、とても女性物を着ているようには思えないほど、しっくりときていた。
これで僕の身長が高すぎたりすると、丈が合わなくなったり、肩幅が広過ぎたり、無駄に筋肉質であったりすると、似合う似合わない以前に、その体型に合った服が無かったかもしれないので、まさに女装をする上では、好条件な体型を僕がしていたから、このような完璧な女装が施せたのだと、ルーナは僕に言ってみせた。
確かに彼女の言う通り、僕は筋肉質というよりかは、どちらかといえば細身な体型だし、身長もそこまで高くはなかった。
ちなみに最後に身長を測った時が、確か百六十七センチだった気がする……少し背の高い女の子が、ヒールの高い靴を履くだけで抜かされてしまうような、それくらいの身長だった。
「それとあと、やっぱりアンタの顔よねぇ。童顔で、男前っていうよりかは、中性的な感じの顏だから、それっぽい帽子を被せたりしたら女の子っぽくなるかなとは思ってたけど、まさかここまで女性に寄るとは思わなかったわ」
僕の顔を見ながら、ルーナは満足そうな表情をして、何度も頷いてみせた。
「そうなんだ」
「まさに天性のものね。女装をするために生まれてきたって感じよ」
「それ……素直に喜んでいいのか?」
「一つの才能よ? そりゃあ喜ぶべきよ!」
「そっか」
まあ、そういうことにしておこう。僕の特技が、剣技以外にもできたのだと。
……本当にいいのかな? それで納得しちゃって?
「とりあえずこれで分かったでしょ? みんながアンタの女装に感心してる意味が?」
「まあ、それなりには」
「でもこれだけは忘れちゃダメよ? アンタは男で、わたしの彼氏なんだから」
「分かってるよ。そんな念を押さなくてもいいだろ?」
「一応よ。長く自分を偽ると、元の自分の姿を見失うっていうからね。それにわたしは、男であるアンタのことを好きになったんだから、女になることなんて認めないわよ?」
「そっか……うん、しっかり心得ておくよ」
姿が変わったとしても、僕は一人の男で、ルーナの彼氏だ。
それだけはどんなことがあったとしても、絶対に忘れない……絶対に。
「よろしい! それじゃあみんなのところに戻りましょ。実は買い物に行った時、アンタに絡んできた男達と同じシャツを着た人達が、妙なことを言ってたのを耳にしたのよ」
「妙なこと?」
「ええ、その人達が言うには、セントラルタウンっていうところでマグナブラ兵団の長官が、直々に演説をするらしいんだけど、でもその演説の中で、もしかしたらデモ隊に対して宣戦布告をするんじゃないかとかなんとか、そんなことを言ってたわよ?」
「マグナブラ兵団の長官……まさか、セブルスもここに来ているのか……?」
「分からない。でも確認する価値はあるでしょ?」
「ああ、十分にある」
このアクトポートの統合は、考えてみれば、グリードがマグナブラのトップになってからの、最初の政策を実行に移した案件であり、今後の安定な政権維持のためにも、彼らにとっては是が非でも成功させねばならない事案であることは、言うまでも無い。
それならば、あの男が遥々、こんな遠くの地まで出張ってきたとしても頷ける。今やアイツは、マグナブラのナンバー2の座に居座っているのだからな。
殺して奪い取った、血に濡れた汚らわしい座席に。
「よし! そうと決まったらみんなに知らせて、セントラルタウンに出発しましょ。早くしないと演説が始まるかもしれないわ!」
「そうだね……急ごう!」
僕とルーナはトイレから飛び出し、みんなの元へと走って向かって行く。
その際、僕の穿いているスカートは捲りに捲れまくっていたと思うが、しかしそんなことは全く気にならなかった。
何故なら僕は男だし、それにセブルスの危険性に比べたら、スカートの下から僕のパンツが見えてしまう危険性なんて、微生物レベルにも満たないような、そんなチンケな問題でしかない。
それくらい僕にとって、アイツは憎い敵でもあり、そして、放ってはおけない要注意人物でもあった。
あの男の残虐性は、これまでに嫌というほど見て、味わってきた。王族の暗殺、マグナブラ小隊の全滅、レジスタンスへの元素爆弾の投下……。
それらのことを加味すれば、アイツがデモ隊を蹂躙しようと企んでいることは十分に考えられ、そうなった暁には、このアクトポートの地で、マグナブラで行われた大量虐殺が再び繰り返されることとなる。
そしてアイツは、人殺しをしたのにも関わらず、堂々と市民の前でこうのたまうのだろう。この街の、治安維持のために行ったことだ……と。
いかにも善人ぶって、正義の味方を気取って。
この世界に、正義の味方など存在しないのに。
だからこそ僕は、セブルスの化けの皮を剥ぎ、そしてその時が来れば、僕はアイツを……地獄へと落とす。
それこそがアイツに対する、僕にとっての正義。
正義の反対は正義だというように、セブルスの正義を否定することこそが、僕がアイツに対して行う、正義だ。
「えっ!? あっ……」
そんな、ほのかに胸をときめかせていると、自然と頭がぼーっとしてしまい、ルーナに声を掛けられ、はっと我に返った時には、先程僕が故意的にスルーした、トイレにある手洗い場の鏡の前へと到着していた。
「大丈夫、変な格好になんてなってないから。自信を持って、ね?」
ルーナは優しい笑みを浮かべながらそう言い、僕の背中を軽く押す。
「う……うん……」
おどおどとした足つきで、僕は下を向きながら鏡の前へと向かい、そして気持ちを落ち着けるために一度深呼吸をしてから、意を決して……顔を上げた。
「お……おおっ……!」
その姿を見た瞬間、僕は驚嘆してしまった。
目の前の鏡に写っていたのは、当然僕であるはずなのだが、しかしそこに男性の姿は写し出されておらず、それはどこからどう見ても、服装をきめ込んで、これから街に繰り出そうとしている、そんな女の子の姿が写し出されていたのだ。
化粧もしていないし、髪も短いままなのに、服装を変えただけでこれだけ変わるのかと、その変貌への驚きのあまり、後の言葉を失ってしまう。
そんな、自分が思っていた以上に、そして周りの評価が正しいと思えるくらいに、男だったはずの僕は、女になりきっていた。
「ふふん! どう? 新しい自分の姿は?」
僕の驚いている様子を見て、得意げに笑ってみせるルーナ。
「いや……ぶったまげた」
「なによそれ? まあ選んだ服が良かったっていうのもあるけど、ロクヨウ自身の素材が良かったっていうのもあるわね」
「素材?」
「ええ。アンタって、そんなに身長も高くないし、体型もそれほどガッチリとはしてないから、アンタに合う女性用の服があったっていうのがまず良かったのよ。まあそれでも背中が多少広いから、大きめの物を選んできたんだけどね」
「ふうん……」
確かに今着ているこの服は、僕の体にしっかりとフィットしており、袖の長さも丁度良く、とても女性物を着ているようには思えないほど、しっくりときていた。
これで僕の身長が高すぎたりすると、丈が合わなくなったり、肩幅が広過ぎたり、無駄に筋肉質であったりすると、似合う似合わない以前に、その体型に合った服が無かったかもしれないので、まさに女装をする上では、好条件な体型を僕がしていたから、このような完璧な女装が施せたのだと、ルーナは僕に言ってみせた。
確かに彼女の言う通り、僕は筋肉質というよりかは、どちらかといえば細身な体型だし、身長もそこまで高くはなかった。
ちなみに最後に身長を測った時が、確か百六十七センチだった気がする……少し背の高い女の子が、ヒールの高い靴を履くだけで抜かされてしまうような、それくらいの身長だった。
「それとあと、やっぱりアンタの顔よねぇ。童顔で、男前っていうよりかは、中性的な感じの顏だから、それっぽい帽子を被せたりしたら女の子っぽくなるかなとは思ってたけど、まさかここまで女性に寄るとは思わなかったわ」
僕の顔を見ながら、ルーナは満足そうな表情をして、何度も頷いてみせた。
「そうなんだ」
「まさに天性のものね。女装をするために生まれてきたって感じよ」
「それ……素直に喜んでいいのか?」
「一つの才能よ? そりゃあ喜ぶべきよ!」
「そっか」
まあ、そういうことにしておこう。僕の特技が、剣技以外にもできたのだと。
……本当にいいのかな? それで納得しちゃって?
「とりあえずこれで分かったでしょ? みんながアンタの女装に感心してる意味が?」
「まあ、それなりには」
「でもこれだけは忘れちゃダメよ? アンタは男で、わたしの彼氏なんだから」
「分かってるよ。そんな念を押さなくてもいいだろ?」
「一応よ。長く自分を偽ると、元の自分の姿を見失うっていうからね。それにわたしは、男であるアンタのことを好きになったんだから、女になることなんて認めないわよ?」
「そっか……うん、しっかり心得ておくよ」
姿が変わったとしても、僕は一人の男で、ルーナの彼氏だ。
それだけはどんなことがあったとしても、絶対に忘れない……絶対に。
「よろしい! それじゃあみんなのところに戻りましょ。実は買い物に行った時、アンタに絡んできた男達と同じシャツを着た人達が、妙なことを言ってたのを耳にしたのよ」
「妙なこと?」
「ええ、その人達が言うには、セントラルタウンっていうところでマグナブラ兵団の長官が、直々に演説をするらしいんだけど、でもその演説の中で、もしかしたらデモ隊に対して宣戦布告をするんじゃないかとかなんとか、そんなことを言ってたわよ?」
「マグナブラ兵団の長官……まさか、セブルスもここに来ているのか……?」
「分からない。でも確認する価値はあるでしょ?」
「ああ、十分にある」
このアクトポートの統合は、考えてみれば、グリードがマグナブラのトップになってからの、最初の政策を実行に移した案件であり、今後の安定な政権維持のためにも、彼らにとっては是が非でも成功させねばならない事案であることは、言うまでも無い。
それならば、あの男が遥々、こんな遠くの地まで出張ってきたとしても頷ける。今やアイツは、マグナブラのナンバー2の座に居座っているのだからな。
殺して奪い取った、血に濡れた汚らわしい座席に。
「よし! そうと決まったらみんなに知らせて、セントラルタウンに出発しましょ。早くしないと演説が始まるかもしれないわ!」
「そうだね……急ごう!」
僕とルーナはトイレから飛び出し、みんなの元へと走って向かって行く。
その際、僕の穿いているスカートは捲りに捲れまくっていたと思うが、しかしそんなことは全く気にならなかった。
何故なら僕は男だし、それにセブルスの危険性に比べたら、スカートの下から僕のパンツが見えてしまう危険性なんて、微生物レベルにも満たないような、そんなチンケな問題でしかない。
それくらい僕にとって、アイツは憎い敵でもあり、そして、放ってはおけない要注意人物でもあった。
あの男の残虐性は、これまでに嫌というほど見て、味わってきた。王族の暗殺、マグナブラ小隊の全滅、レジスタンスへの元素爆弾の投下……。
それらのことを加味すれば、アイツがデモ隊を蹂躙しようと企んでいることは十分に考えられ、そうなった暁には、このアクトポートの地で、マグナブラで行われた大量虐殺が再び繰り返されることとなる。
そしてアイツは、人殺しをしたのにも関わらず、堂々と市民の前でこうのたまうのだろう。この街の、治安維持のために行ったことだ……と。
いかにも善人ぶって、正義の味方を気取って。
この世界に、正義の味方など存在しないのに。
だからこそ僕は、セブルスの化けの皮を剥ぎ、そしてその時が来れば、僕はアイツを……地獄へと落とす。
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