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BACK TO THE OCEAN Chapter2
第19章 鞭と飴の演説【7】
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『静粛に……と言ってまあ、収まるような事態では無いですよね。すう……』
そう言ってセブルスは息を吸い込むと、マイクに近づけるだけ接近し、そして今までに無いほどの大声を上げてみせた。
『皆さんっっ!!御安心くださいっっっっ!!!!』
「うわっ!!」
僕はその時、瞬時にルーナの手を握っている手とは反対の方で耳を押さえた。
何故なら、セブルスのその声の大きさにハウリングが起こってしまい、そのせいでスピーカーからはヤツの声と共に、キーンという耳をつんざくような、高く鋭い音が発されたからだ。
僕と同様に、混乱していた人々も皆、耳を塞いでいたのだが、しかしそれをキッカケに冷静さを取り戻したのか、音が鳴り止んだ後、落ち着いた民衆の目は、セブルスの姿が映っているディスプレイの方へと真っ直ぐに向かっていた。
『フフ……すいません皆さん、つい柄にもない大声を出してしまいました。しかしご安心を。現レイカー・トレードの代表取締役であるエルモンド・サッチ氏はこのことを受け、チャールズ・レイカー氏を取締役並びに会長職からの解任、更にはレイカー・トレードを解雇するところまで視野に入れているそうです。また、会社の安定を図るため、今後州政府の立案する、アクトポート復興措置法への申請を明言致しました。そうです! このアクトポート復興措置法こそが、わたしがこのアクトポートを蘇らせるために立案した秘策なのです!』
そう言って、セブルスはカメラの先に居る民衆を意識して、前のめりになるようにして声を張り上げる。
『港口の拡大等のインフラ整備、貿易先の増加など、アクトポートの主要産業である貿易の強化は勿論、更にレイカー・トレードを始めとする、貿易企業でも、そうでない企業でも、このアクトポートを拠点とする様々な企業が申請することによって、審査の結果、マグナブラ中央政権及び州政府から補助金を得ることが可能な制度……それこそがこの、アクトポート復興措置法なのです! これにより、今までよりも遥かに幅の広い産業活動を行えるようになり、アクトポートはこの大陸……いや、この世界で最も繁栄を遂げる、一大都市となるのですっ!!』
セブルスの目には希望という光が宿っており、力強く、周囲を活気づけるようにしてそう言い切る。
「お……おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」
「カ・レンダー!! カ・レンダー!!」
すると先程まで、混乱と絶望の渦に呑み込まれていた人々が、一斉に声をあげて歓喜し始めたのだ。
更に中には、セブルスの名前を呼んで、既に支持者となりつつある者もいた。
つい先程までは侮辱し、罵倒していた相手を、ものの数分後には英雄扱いし始めるとは……これほどまでにスッパリと掌返しをされると、見ているこっちとしてはバカバカしいを通り越して、最早清々しさを感じるものだな。
やはり彼らに、本当に戦う意志など存在しなかった。そして意志が無い者は必ず、最後には利に流れる。利とはそれだけ、甘美なものなのだ。
あれだけの苦言を呈した後に、こんな甘言を用意しているなんて……まさに、飴と鞭。
いや……この場合は、鞭と飴か?
どちらにしても、これにはさすがの僕も、感服せざるを得なかった。
最早あの男は、ただの兵士の成り上がりでは無い……一流の政治家だよ。
『フフ……皆さんありがとうございます。では報告及びわたしの演説は以上となります。これからも我々は、アクトポートの発展のため、未来のため、皆様に尽力致しますので、どうぞよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました』
そしてセブルスは今までよりもなお、深々と頭を下げ、そして演台を後にした。
その後映像は切り替わり、演台の映像から、元々流れていた炭酸飲料の映像へと戻ったのだが、しかし周囲のカレンダーコールはしばらく鳴り止むこと無く続き、永遠と繰り返される。
演説が始まる前までは侵略者だと罵られ、支持率など皆無だったセブルスだが、たった一回の演説で民衆の心を鷲掴みにし、その支持率は一気に百パーセント近くまで跳ね上がった。
そう、アイツはこの街を手玉に取っただけでなく、そこに住む人々の心をも完全に侵略しきったのだ。
そして僕は、その光景を間近で見たことにより、敵の大きさを、あの男の凄味を、改めて思い知らされた。
あの男に……今の僕では敵わない。しかしこの先も、果たして匹敵する日がやって来るのか……その自信も、今は無い。
ただただ自分の無力さを実感しながら、僕はその時、セブルスを支援する民衆の中に呑み込まれていくことしかできなかった。
民主主義《デモクラシー》という、自分達の意思を示すことを放棄し、アイツの用意した利益に喜んで食いついている、哀れな飼い犬達の中に……。
そう言ってセブルスは息を吸い込むと、マイクに近づけるだけ接近し、そして今までに無いほどの大声を上げてみせた。
『皆さんっっ!!御安心くださいっっっっ!!!!』
「うわっ!!」
僕はその時、瞬時にルーナの手を握っている手とは反対の方で耳を押さえた。
何故なら、セブルスのその声の大きさにハウリングが起こってしまい、そのせいでスピーカーからはヤツの声と共に、キーンという耳をつんざくような、高く鋭い音が発されたからだ。
僕と同様に、混乱していた人々も皆、耳を塞いでいたのだが、しかしそれをキッカケに冷静さを取り戻したのか、音が鳴り止んだ後、落ち着いた民衆の目は、セブルスの姿が映っているディスプレイの方へと真っ直ぐに向かっていた。
『フフ……すいません皆さん、つい柄にもない大声を出してしまいました。しかしご安心を。現レイカー・トレードの代表取締役であるエルモンド・サッチ氏はこのことを受け、チャールズ・レイカー氏を取締役並びに会長職からの解任、更にはレイカー・トレードを解雇するところまで視野に入れているそうです。また、会社の安定を図るため、今後州政府の立案する、アクトポート復興措置法への申請を明言致しました。そうです! このアクトポート復興措置法こそが、わたしがこのアクトポートを蘇らせるために立案した秘策なのです!』
そう言って、セブルスはカメラの先に居る民衆を意識して、前のめりになるようにして声を張り上げる。
『港口の拡大等のインフラ整備、貿易先の増加など、アクトポートの主要産業である貿易の強化は勿論、更にレイカー・トレードを始めとする、貿易企業でも、そうでない企業でも、このアクトポートを拠点とする様々な企業が申請することによって、審査の結果、マグナブラ中央政権及び州政府から補助金を得ることが可能な制度……それこそがこの、アクトポート復興措置法なのです! これにより、今までよりも遥かに幅の広い産業活動を行えるようになり、アクトポートはこの大陸……いや、この世界で最も繁栄を遂げる、一大都市となるのですっ!!』
セブルスの目には希望という光が宿っており、力強く、周囲を活気づけるようにしてそう言い切る。
「お……おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」
「カ・レンダー!! カ・レンダー!!」
すると先程まで、混乱と絶望の渦に呑み込まれていた人々が、一斉に声をあげて歓喜し始めたのだ。
更に中には、セブルスの名前を呼んで、既に支持者となりつつある者もいた。
つい先程までは侮辱し、罵倒していた相手を、ものの数分後には英雄扱いし始めるとは……これほどまでにスッパリと掌返しをされると、見ているこっちとしてはバカバカしいを通り越して、最早清々しさを感じるものだな。
やはり彼らに、本当に戦う意志など存在しなかった。そして意志が無い者は必ず、最後には利に流れる。利とはそれだけ、甘美なものなのだ。
あれだけの苦言を呈した後に、こんな甘言を用意しているなんて……まさに、飴と鞭。
いや……この場合は、鞭と飴か?
どちらにしても、これにはさすがの僕も、感服せざるを得なかった。
最早あの男は、ただの兵士の成り上がりでは無い……一流の政治家だよ。
『フフ……皆さんありがとうございます。では報告及びわたしの演説は以上となります。これからも我々は、アクトポートの発展のため、未来のため、皆様に尽力致しますので、どうぞよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました』
そしてセブルスは今までよりもなお、深々と頭を下げ、そして演台を後にした。
その後映像は切り替わり、演台の映像から、元々流れていた炭酸飲料の映像へと戻ったのだが、しかし周囲のカレンダーコールはしばらく鳴り止むこと無く続き、永遠と繰り返される。
演説が始まる前までは侵略者だと罵られ、支持率など皆無だったセブルスだが、たった一回の演説で民衆の心を鷲掴みにし、その支持率は一気に百パーセント近くまで跳ね上がった。
そう、アイツはこの街を手玉に取っただけでなく、そこに住む人々の心をも完全に侵略しきったのだ。
そして僕は、その光景を間近で見たことにより、敵の大きさを、あの男の凄味を、改めて思い知らされた。
あの男に……今の僕では敵わない。しかしこの先も、果たして匹敵する日がやって来るのか……その自信も、今は無い。
ただただ自分の無力さを実感しながら、僕はその時、セブルスを支援する民衆の中に呑み込まれていくことしかできなかった。
民主主義《デモクラシー》という、自分達の意思を示すことを放棄し、アイツの用意した利益に喜んで食いついている、哀れな飼い犬達の中に……。
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