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第二章〜記憶の石板〜
34話✡︎闇のレジェンド✡︎
しおりを挟むトールは暗黒を軽々と持ちフォルミドに立ち向かって行く、フォルミドは強靭な爪でトールを薙ぎ払うが、それをトールは暗黒で受け止める。
はなから見ればゴブリンとは思えない、怪力だが暗黒がトールに力を与えている。
トールがフォルミドの爪を押し返し、その爪に飛び乗り素早く駆け上がりフォルミドの首を暗黒で斬り裂く。
巨大なフェルムナイトでも斬り裂けない硬い恐怖の鱗を簡単に斬り裂いた瞬間、幾つもの光の玉がとてつもない速さで逃げる様に飛び出して行く、魂達だ……
フォルミドに食われた魂たちが、苦しみと恐怖から解放されて、天界に帰って行く。
フォルミドは凄まじい轟音と言える叫びをあげる、その傷は再生していき逃げ遅れた魂たちがまた閉じ込められる。
「待ってろよ、皆んな助けてやるから‼︎
待ってろよ‼︎‼︎」
トールはフォルミドの巨体に暗黒を突き刺し、そのまま走り抜けフォルミドの背中まで切り裂いて行く。
その傷口から凄まじい数の魂たちが飛び出していく、いったいフォルミドは今までどれだけの魂を食らって来たのだろうか、天を埋め尽くす星の数ほどある。
だがフォルミドの再生能力も凄まじく、傷口は塞がっていく。
トールが暗黒を抜きフォルミドの首を狙った時、巨大な槍がトールを薙ぎ払う。
二体のデスナイトがフォルミドを援護しに来たのか、戦いに割って入って来た。
トールは何本かあばらが折れ、紫の血を吐くが、闘士の篭った瞳の輝きは変わらない。
「これが闇の英雄……」
ユリナが唾を飲み驚いている。
「レジェンド……」
エレナが呟く。闇でありながらゴブリンでありながら、まして祝福の力も持たない者がここまで戦うこと、そしてトールから神聖さを強く感じ絶望感を忘れていた。
トールは直ぐに立ち上がり二体のデスナイトの足を斬りその巨体を倒し。
「今アツくなってんだ!
邪魔すんな‼︎」
トールはそう吐き捨ててはフォルミドにまた立ち向かう。
「所詮は竜か!
硬くて火を吐くぐらいで剣術も無い!
ただデカイだけじゃねぇか!
闇の子らよ我らの強さを!
全てに見せつけてやれぇぇ‼︎‼︎」
その激は無理があるが、トールの強さがあって成立し、ゴブリン達は勢いづき歪んだ空間に突き進む。
オーク達も持ち前の力強さを最大限に発揮して共に突き進む、トールは戦いの流れを見事に引き寄せた。
トールはフォルミドの左前足を斬り、フォルミドの首を斬り落とす勢いで、全力で高く飛び頭上を捉える。
暗黒に力を込めている、トールの魔力が全て暗黒に持っていかれる感覚を覚えるが、気力が瞳を野獣の様に輝かせた時……
鋭い骨の槍が歪んだ空間から凄まじい速さで伸び、トールを襲った‼︎
トールは体を捻り、それを躱した。
「これはっ!タナトス‼︎」
トールは叫び、フォルミドの背中に着地した。
歪んだ空間から、渇いた竜の凄まじい声が聞こえてくる……そして無数の骨の槍が地上のユニオン軍を攻撃している。
前方に出たユニオン軍は士気を失い壊滅して行く。
冥界と地上の一方的な力の差を見せつけられて行く……
「あぁら、いい子ね友達を助けてくれたのかしら?タァナトスゥ~」
メトゥスがタナトスを褒めている様だ……
トールの中でタナトスを逃してしまった記憶が鮮明に蘇る。
「ウアァァァァァァァァ‼︎」
トールが雄叫びをあげ、フォルミドの背中を斬り裂きながら歪んだ空間に向かって行く‼︎
そしてそれに応えるかの様にタナトスが現れ、トールを焼き払おうとするが、トールは紫の炎に包まれながらも、タナトスの頭に一太刀浴びせる‼︎
「神の竜を二体も相手に‼︎
ムチャよ‼︎」
思わずエレナがその場にいて、止めようとするかの様に叫んだ!
だが戦場は違った、ゴブリンの生き残った兵達が凄まじい勢いでタナトスに向かって行く!
まるで因縁の敵を前にしたかの様に、死を恐れずに死兵となり立ち向かって行った‼︎
「オプス様を‼︎
救い出せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」
トールの凄まじい雄叫びが響く‼︎
それに合わせ地上の者達は最後の反撃を死力を振り絞り戦っている。
エレナとユリナ、カナは一瞬だけタナトスの胸にある闇から白く美しい女性が姿を現し、涙を流し叫んでいるのが見えた。
それが囚われた女神オプスだとすぐに解った……
ユリナ達は必死になりオプスを助けようとするトールからオプスへの深すぎる……空よりも広い愛を感じた……。
「タナトスゥ?
あなたに何かあったら私がおこられちゃうからもう帰りなさい……
あ、り、が、と、タナトス」
恐怖の女神メトゥスは地上の者達、特にトールのタナトスへの執着に気付き、そう言うと、タナトスは歪んだ空間に帰って行く。
トールは凄まじい勢いで逃げるタナトスを追いかけ、飛び上がりタナトスを斬り裂く様に暗黒を振りかざした時……
歪んだ空間から白く細い美しい女性の巨大な左手がトールを掴み、骨を砕く様に強く握る。
恐怖の女神メトゥスだ……
「その位にしてくれませんか?
タナトスが怪我したらムエルテに私が怒られてしまいますので……」
メトゥスがさっきと同じ様に話しかけ、トールが歪んだ空間を見た。
「エルフみてぇな綺麗な腕してんだな、これで美人なら良いんだけどな!
わりぃがタナトスを出してくれねぇか⁈」
トールは不敵な笑いと共に言い放つ。
「あら、嬉しいこちらの世界に来てみますか?貴方みたいに魅力的な方なら冥界の王の一人にしてあげましょうか?
そうすればタナトスにもいつでも会えますよ……
あなたが愛する人にも……」
メトゥスが楽しげに意味深にトールを誘う。
「悪りぃがこんな悪趣味なもんを飼ってる奴の所に行くのはごめんだな‼︎‼︎」
トールは解っていた、オプスが望む事を地上を託されていた事も全て解っていた。トールは空を見上げ、雲の隙間から何かが光るのを見た、巨人族の石船だ。
「いい事を教えてやる
もうすぐ此処に来た奴らは全て死ぬ!
お前が焦らなくてもな
我らゴブリンもオークもドワーフも……
ダークエルフもエルフもヒューマンも皆んなあの世行きだ……」
トールの瞳から闘志の炎が消える事はなく、暗黒を離そうともしない。
そして指揮官としての役目を忘れては居なかった。
(オプス様……来世では必ず……)
トールは心で再び誓い死を覚悟していた。
「まだ何か言いたそうですね、最後まで聞いてあげますから、言いなさい」
クリタス平原に冷たい声が響く。
「俺たちはただの時間稼ぎだ
気付かなかったのか?
何故巨人族がここに居ないか
メトゥスお前が現れても何故神々が手を出して来ないか……
お前ら冥界は地上をナメすぎたことを知れ‼︎‼︎」
メトゥスは少し疑問に思ったが、気には留めなかった、この状態でトールを捕らえてユニオン勢が壊滅するのは時間の問題だからだ。
だがトールは死力を込めて叫んだ!
「この地に集まりしユニオンの者達よ‼︎
神は我らを見放した訳では無い‼︎‼︎
我等地上の力が!
冥界の者達を
全て消し去る事を知ってるからだ‼︎
我らは一人も残らず死ぬ!
だが冥界の者共全てを!
道連れにしてやろうじゃないかぁぁぁ‼︎」
トールの声は響いた身体中の骨が折れ、血を吐きながら叫んだにも関わらず……
何処までも響いた。
そして全ての部隊が声がを上げ死力をつくし突撃していく。
恐怖の女神メトゥスは気に入らなかった、自分の手の中でいつでも握り潰せる、いつでも冥界に引きずり込める。
だがこのトールと言うゴブリンは屈しない
恐怖、絶望もしなければ、この後に及んでも勇気を与え続けていた……
上空では巨人族の王ザラハドールは苦しんで居た、だが時は残酷で止まることはない神々が救って下さる気配はない、その間も兵は命を落としていく。
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だが……」
ザラハドールは涙を流し、まるで理性と闘っている様であった。
「我らは正しいのか?
何故あれを作った
友を殺す為か?違う……
この地上を守る為だ‼︎‼︎
だが……」
周りにいる巨人兵も涙を流している……
「神々よ何故このような
残酷な役目を我らに……」
ザラハドールが苦悩し苦しんでる時に、トールの言葉が頭に響く……
(世界を冥界から守る、それに何の躊躇がいりますか?)
「ふっ、さらりと言いおって……
トールよそなたの死は無駄にはせん!
必ずや神に訴えてやるぞ‼︎‼︎
クリアスよ冥府の者共を全て消し去れ‼︎‼︎‼︎」
ザラハドールは石版に魔力を込める、空高く飛ぶ石船から一発の砲弾が放たれる。
「クリアス……ってまさかそれも科学なの?そんなの許されるはずが無い!」
エレナが叫んだ……
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