✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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第三章〜戦士の国アグド〜

47話✡︎卑劣な罠✡︎

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 グリフはベルダ砦にエレナ達を案内する。

 エレナはそこから首都バータリスを目指すものと思っていた。
「よく国王がここにいる時に、使者を送って来たな……セレスは我が国の動きを知っているのか?」
グリフが言いエレナは驚いた、本当にたまたまだった。

「いえ、それは知りませんでした。
ただアグド国に話があり、使者を送っただけでウィースガルム様がここに居るとは思いませんでした。」
エレナは素直に言った。
 だが、何も無い時でさえ一瞬で最前線になるベルダ砦に国王が訪れる。それに一行は一番驚いていた。

 エレナ達の兵はエレナの指示で、城外に野営を張る。
 国交が良くない為に、城内に兵を入れて揉めても良くないと配慮である。
 エレナとユリナ、カナ、ピリア、アヤとカイナが入城し六人の部屋が相部屋で用意されていた。
 これはグリフの配慮で、敵国と同様な城内で女性六人別々の部屋にした時、余計な心配を掛けさせないのと同時に、監視し易い為である。

「あの人、見た目より優しいですね。
武器までそのまま持ち込ませてくれましたね」
アヤがそう言う。
「まだ解りませんよ、ただ武器を持たせてくれるのは安心しますよね」
カナが答え、そう話していると

コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
「二時間後に、国王様が謁見される。
それまでに支度を整えるように、だが正装の必要は無い、ここがアグドだと言う事を忘れるなよ」
グリフがそれを伝えに来た。

 エレナ達は外交使節……王との会見に正装の必要は無いと言う言葉に、違和感を覚えたが、グリフの言葉を深く考えなければ直ぐに納得した。
 そう、今でこそ争ってはいないが敵国同然のアグドにいるのである、何があってもおかしくない。

 そこで疑問が生まれる。グリフは何故教えてくれるのか……

 とりあえず、エレナはいつものスタイルで水の魔法衣にエヴァスのマントを身につけ、
ユリナとカナは白のライトアーマーに着替えセンティネルのマントを身につける。

「ユリナ~この斬馬刀絶対持って行った方がいいよ」
ウィンダムが言う。
「ウィンダム、私使えないから……」
ユリナは困るが、エレナは不思議に思いながら言う。
「ユリナ、これあげるから弓をこれにしまって、それ持って行きなさい。」
 そう言いながら荷物から魔法輪をユリナに渡す。

「弓で魔法輪を使うなら右手の中指がいいよ。」
 カナが教えてくれその通りにする。

 魔法輪はしまいたい物を、魔法輪に触れさせながら心で、秘めよ、と唱えるとしまう。
取り出す時は、出したい物を心で思い、放て、と唱えるとそれが出てくる。
右手の中指にはめると、矢を放てと唱えると。
右手に矢を一瞬で持つことが出来る、カナおすすめの魔法輪と弓の組み合わせだ。

 そうこうしながら、時間が経つ……その中でピリアは、何かを感じうかない顔をしていた。
(おかしい……何故魂が……)
カイナはピリアの浮かない訳を一歩踏み込んで気づいていた。

 そして、その時がやってきて……グリフが迎えに来て部屋をノックする。
 エレナ達はグリフに案内され、ベルダ砦の玉座の間に通されるが、何故か地下に降りて行く。

 そして玉座の間に足を踏み入れ……なぜ地下にあるのかエレナ達は納得した。
 広い……その広さは二個中隊、約二千の兵を配備しても余裕がある広さを有し、砦と言う規模ではない。

 入り口から正面の奥に玉座があり、天上までの高さは明らかに、ドワーフが絡んだ作りをしており、かなり高さがあ。
 それを支える柱は両手を広げ抱き着いても反対側からもう一人同じ様に抱き着かないと、手が届かない程の太さがある。

 数多くの松明と炎の魔法で、証明が照らされ決して暗くはない。
 そして程よく調整されているのだろう、玉座の間全体に火の温もりが感じられる。

 その玉座の間には数多くの兵が配備されており、その中央を玉座に向かい、エレナ達は進み玉座の百歩前あたりで止まり。
 グリフがひざまづき、エレナ達もそれにあわせる。


 玉座にはまだウィースガルムは来ていない、少しして脇の通路から足音が聞こえウィースガルムがやってくる。

 ピリアは理解した、感じていた何かを……

 ウィースガルムはグリフよりふた回り程大きく、オークの戦士らしい鍛え抜かれた肉体をしており、その力は想像し難い物がある、

 ウィースガルムはエレナ達を見て、ピリアに気づき僅かに眉を動かした。
「良く来たな……水の巫女よそなたが来るとは余も思っていなかった。
回りくどい話は良い、話したいことを言ってみろ」

「お初にお目にかかり光栄であります。
我らはアグド国とセレス国の友好関係を築きたく参りました。
今、長きに渡る平穏な時代にあり、多くの者がこの平穏を末永く望んでいると思います。

無論、過去の争いの日々を忘れるには長い時を有するでしょう……

ですから我々としても出来ることは、お話頂ければ真剣に考え、今迄の関係を良い方向に変えて行きたいと望んでいます。

アグド国としても決して悪い話では無いと思いますが、考慮して頂けないでしょうか?」
エレナが丁寧にそう伝える。

 ピリアは重要な事に気づいているが、ウィースガルムの出方を見ている。

「成る程、それ故に王族であるそなたが、自ら来たと言う事か、だが……」
ウィースガルムはそこまで言い、何かを考えてから言う。

「二千年前にあれだけの苦汁を飲まされたことを私が知らないとでも?
だがそなたは今、客として来ている……
グリフ、下がって良い!
ベルガル!」

 ウィースガルムがベルガルと言う、オークの戦士を呼んだ。
 両腕に既にナックルをつけ、斬馬刀を背負っている。


「我らにも悩みはある。
だが我らの悩みを聞きたくば、我が一族の掟に従い、剣で力を示してからにしてもらおうか?」
 そうウィースガルムが言うと、オークの魔術師達が結界を張り始める。
 その結界は魔法だけを封じて来た……明らかな罠であるが罠では無い。
 オーク族の掟と言って来た為に、それが罠では無くしてしまっている、卑劣な罠だ。

「水の巫女よ引いても構わんぞ、だが断れば我々は今後一切そなた達の話は聞かぬが……さてどうする?」
ウィースガルムは余裕の笑みを浮かべて言う。

(ピリアさん……ドッペル……魂……
そう言うこと?)
カイナはピリアが怒りのこもった目でウィースガルムを見ているのに気付いて理解した。


エレナは考えずに微笑みながら言う。
「その方が手っ取り早いですね。
魔力は使える様ですし、やはり剣で話す方が解って頂ける見たいですね。」
 こうなる事は予想していた、余裕は見せるが魔法が使えないとなると、エレナの力は半減してしまう。

いやそれ以下かも知れない……

 だがここで引き下がる訳にはいかない。
ここで引いては国交が完全に閉ざされてしまう。

(これは……死ぬかな)
エレナは心で呟く。
(そうなれば、俺がこの国を潰してやる)
リヴァイアサンが怒りを表す。
それを聞いてエレナは死ねないと心に誓う。

(ユリナ、ごめん前よりも強く体を借りるかも知れない……)
ウィンダムがユリナに囁いた。

エレナは静かに前にでる、ユリナもカナも、この場で止めるには躊躇した、ただ……母を信じるしか無かった
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