54 / 234
第三章〜戦士の国アグド〜
47話✡︎卑劣な罠✡︎
しおりを挟むグリフはベルダ砦にエレナ達を案内する。
エレナはそこから首都バータリスを目指すものと思っていた。
「よく国王がここにいる時に、使者を送って来たな……セレスは我が国の動きを知っているのか?」
グリフが言いエレナは驚いた、本当にたまたまだった。
「いえ、それは知りませんでした。
ただアグド国に話があり、使者を送っただけでウィースガルム様がここに居るとは思いませんでした。」
エレナは素直に言った。
だが、何も無い時でさえ一瞬で最前線になるベルダ砦に国王が訪れる。それに一行は一番驚いていた。
エレナ達の兵はエレナの指示で、城外に野営を張る。
国交が良くない為に、城内に兵を入れて揉めても良くないと配慮である。
エレナとユリナ、カナ、ピリア、アヤとカイナが入城し六人の部屋が相部屋で用意されていた。
これはグリフの配慮で、敵国と同様な城内で女性六人別々の部屋にした時、余計な心配を掛けさせないのと同時に、監視し易い為である。
「あの人、見た目より優しいですね。
武器までそのまま持ち込ませてくれましたね」
アヤがそう言う。
「まだ解りませんよ、ただ武器を持たせてくれるのは安心しますよね」
カナが答え、そう話していると
コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
「二時間後に、国王様が謁見される。
それまでに支度を整えるように、だが正装の必要は無い、ここがアグドだと言う事を忘れるなよ」
グリフがそれを伝えに来た。
エレナ達は外交使節……王との会見に正装の必要は無いと言う言葉に、違和感を覚えたが、グリフの言葉を深く考えなければ直ぐに納得した。
そう、今でこそ争ってはいないが敵国同然のアグドにいるのである、何があってもおかしくない。
そこで疑問が生まれる。グリフは何故教えてくれるのか……
とりあえず、エレナはいつものスタイルで水の魔法衣にエヴァスのマントを身につけ、
ユリナとカナは白のライトアーマーに着替えセンティネルのマントを身につける。
「ユリナ~この斬馬刀絶対持って行った方がいいよ」
ウィンダムが言う。
「ウィンダム、私使えないから……」
ユリナは困るが、エレナは不思議に思いながら言う。
「ユリナ、これあげるから弓をこれにしまって、それ持って行きなさい。」
そう言いながら荷物から魔法輪をユリナに渡す。
「弓で魔法輪を使うなら右手の中指がいいよ。」
カナが教えてくれその通りにする。
魔法輪はしまいたい物を、魔法輪に触れさせながら心で、秘めよ、と唱えるとしまう。
取り出す時は、出したい物を心で思い、放て、と唱えるとそれが出てくる。
右手の中指にはめると、矢を放てと唱えると。
右手に矢を一瞬で持つことが出来る、カナおすすめの魔法輪と弓の組み合わせだ。
そうこうしながら、時間が経つ……その中でピリアは、何かを感じうかない顔をしていた。
(おかしい……何故魂が……)
カイナはピリアの浮かない訳を一歩踏み込んで気づいていた。
そして、その時がやってきて……グリフが迎えに来て部屋をノックする。
エレナ達はグリフに案内され、ベルダ砦の玉座の間に通されるが、何故か地下に降りて行く。
そして玉座の間に足を踏み入れ……なぜ地下にあるのかエレナ達は納得した。
広い……その広さは二個中隊、約二千の兵を配備しても余裕がある広さを有し、砦と言う規模ではない。
入り口から正面の奥に玉座があり、天上までの高さは明らかに、ドワーフが絡んだ作りをしており、かなり高さがあ。
それを支える柱は両手を広げ抱き着いても反対側からもう一人同じ様に抱き着かないと、手が届かない程の太さがある。
数多くの松明と炎の魔法で、証明が照らされ決して暗くはない。
そして程よく調整されているのだろう、玉座の間全体に火の温もりが感じられる。
その玉座の間には数多くの兵が配備されており、その中央を玉座に向かい、エレナ達は進み玉座の百歩前あたりで止まり。
グリフがひざまづき、エレナ達もそれにあわせる。
玉座にはまだウィースガルムは来ていない、少しして脇の通路から足音が聞こえウィースガルムがやってくる。
ピリアは理解した、感じていた何かを……
ウィースガルムはグリフよりふた回り程大きく、オークの戦士らしい鍛え抜かれた肉体をしており、その力は想像し難い物がある、
ウィースガルムはエレナ達を見て、ピリアに気づき僅かに眉を動かした。
「良く来たな……水の巫女よそなたが来るとは余も思っていなかった。
回りくどい話は良い、話したいことを言ってみろ」
「お初にお目にかかり光栄であります。
我らはアグド国とセレス国の友好関係を築きたく参りました。
今、長きに渡る平穏な時代にあり、多くの者がこの平穏を末永く望んでいると思います。
無論、過去の争いの日々を忘れるには長い時を有するでしょう……
ですから我々としても出来ることは、お話頂ければ真剣に考え、今迄の関係を良い方向に変えて行きたいと望んでいます。
アグド国としても決して悪い話では無いと思いますが、考慮して頂けないでしょうか?」
エレナが丁寧にそう伝える。
ピリアは重要な事に気づいているが、ウィースガルムの出方を見ている。
「成る程、それ故に王族であるそなたが、自ら来たと言う事か、だが……」
ウィースガルムはそこまで言い、何かを考えてから言う。
「二千年前にあれだけの苦汁を飲まされたことを私が知らないとでも?
だがそなたは今、客として来ている……
グリフ、下がって良い!
ベルガル!」
ウィースガルムがベルガルと言う、オークの戦士を呼んだ。
両腕に既にナックルをつけ、斬馬刀を背負っている。
「我らにも悩みはある。
だが我らの悩みを聞きたくば、我が一族の掟に従い、剣で力を示してからにしてもらおうか?」
そうウィースガルムが言うと、オークの魔術師達が結界を張り始める。
その結界は魔法だけを封じて来た……明らかな罠であるが罠では無い。
オーク族の掟と言って来た為に、それが罠では無くしてしまっている、卑劣な罠だ。
「水の巫女よ引いても構わんぞ、だが断れば我々は今後一切そなた達の話は聞かぬが……さてどうする?」
ウィースガルムは余裕の笑みを浮かべて言う。
(ピリアさん……ドッペル……魂……
そう言うこと?)
カイナはピリアが怒りのこもった目でウィースガルムを見ているのに気付いて理解した。
エレナは考えずに微笑みながら言う。
「その方が手っ取り早いですね。
魔力は使える様ですし、やはり剣で話す方が解って頂ける見たいですね。」
こうなる事は予想していた、余裕は見せるが魔法が使えないとなると、エレナの力は半減してしまう。
いやそれ以下かも知れない……
だがここで引き下がる訳にはいかない。
ここで引いては国交が完全に閉ざされてしまう。
(これは……死ぬかな)
エレナは心で呟く。
(そうなれば、俺がこの国を潰してやる)
リヴァイアサンが怒りを表す。
それを聞いてエレナは死ねないと心に誓う。
(ユリナ、ごめん前よりも強く体を借りるかも知れない……)
ウィンダムがユリナに囁いた。
エレナは静かに前にでる、ユリナもカナも、この場で止めるには躊躇した、ただ……母を信じるしか無かった
0
あなたにおすすめの小説
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
追放令嬢と【神の農地】スキル持ちの俺、辺境の痩せ地を世界一の穀倉地帯に変えたら、いつの間にか建国してました。
黒崎隼人
ファンタジー
日本の農学研究者だった俺は、過労死の末、剣と魔法の異世界へ転生した。貧しい農家の三男アキトとして目覚めた俺には、前世の知識と、触れた土地を瞬時に世界一肥沃にするチートスキル【神の農地】が与えられていた!
「この力があれば、家族を、この村を救える!」
俺が奇跡の作物を育て始めた矢先、村に一人の少女がやってくる。彼女は王太子に婚約破棄され、「悪役令嬢」の汚名を着せられて追放された公爵令嬢セレスティーナ。全てを失い、絶望の淵に立つ彼女だったが、その瞳にはまだ気高い光が宿っていた。
「俺が、この土地を生まれ変わらせてみせます。あなたと共に」
孤独な元・悪役令嬢と、最強スキルを持つ転生農民。
二人の出会いが、辺境の痩せた土地を黄金の穀倉地帯へと変え、やがて一つの国を産み落とす奇跡の物語。
優しくて壮大な、逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる