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第三章〜戦士の国アグド〜
56話✡︎守護竜の使い方Ⅰ✡︎
しおりを挟むそして十日目の夜、シェラドとベルガルはいつもの様にエルフの野営に足を運び、必要な物は無いかなどエルフの兵達に気を配ってエレナ達が囲む焚き火を探していた。
この十日間も、これからのセレスとの関係を考えて彼は動いていた。
そしてエレナ達が囲む焚き火を見つけたが、ピリアがいない。
「ピリアはどうした?疲れでも出たか?」
ベルガルが聞く。
「ピリアちゃんは今水浴びをしてるけど、何か急ぎの用でもあるの?」
エレナが答える。
「水浴び?どこにそんな水が……」
ベルガルが驚く。
「私の事忘れてません?」
そうエレナが言う。
確かに三日前にベルリス平原の主要な川は全て超えたが、エレナ達は汗臭さなど一切感じず、サッパリしている。
女性陣は一日に一回は体をあらいたがるが、行軍中には水場が無ければ、普通はそんな事は出来ない……
その時ピリアがちょうどリヴァイアサンを連れてやって来た。
そうリヴァイアサンに水浴び様に水を、吹き出して貰っていたのである。
無論リヴァイアサンは目隠し着用である。
「ウィンダムさん、お願いします。」
ピリアがウィンダムにお願いすると、ウィンダムは少し熱めの風を吹いて、ピリアは髪を乾かす。
守護竜の凄まじい平和利用に、ベルガルは呆気に取られる。
それを見てシェラドが言う。
「ヴァラドも手伝えば風呂が出来るな。」
その言葉を聞いた、ベルガルとヴァラド……いや、その場に居たただ一人以外の全員が驚く、シェラドがそんな事を言うとは思っても居なかった。
「シェラドさん!久しぶりのお風呂入りたいです!」
カナがシェラドに甘える様に言う。
カナだけはシェラドが手伝ってくれればお風呂が出来ると想像していた。
だが致命的な事にユリナが気づく……
「どうやって沸かすの?」
全員が沈黙した。
確かに木のおけは有るが……燃えてしまうことが目に見えている。
そもそも、風呂として使えるサイズが無い!
そこに可愛い声が沈黙を破る。
「みんな~久しぶり!」
顔だけ出したアンサラが居た。
「ガーラにシンシル様の言葉を伝えて来いって言われたから来たんだけど」
アンサラは地面から這い出ようと踠いている……
「よいしょ、よいしょ……」
大地の守護竜が幼竜の姿のまま可愛く苦労している。
ユリナが見兼ねて微笑みながら、抱き抱えるように引っ張り出して、そのまま抱き抱えると、その穴は静かに埋まっていく。
「ユリナありがとう。
この移動方法は直ぐにそこに行けるけど、幼竜の姿だと苦労するんだ、助かったよ」
アンサラがユリナにお礼を言う。
「はい、どういたしまして」
ユリナはそう返事をしながら、アンサラを地面に降ろした時、ふと手のひら位の石が目に映った。
「シンシル様がね、シェラドが動いているなら問題ないって、彼は良い心を持っている。
火の様に優しいぬくもりがあり、炎の様に強い意志も持っている。
念のために守りは堅くしておくから、何も心配は要らないって、
ちゃんとそのまま伝えたからね。」
アンサラがそう言いう。
「はーい、ありがとう。
ガーラとシンシル様にも、こっちは心配無いって伝えてね~」
エレナが笑顔で言うがユリナは何かを悩んでいた。
「じゃ、多分明日も来るから、また明日ね」
そうアンサラが言う。
「よいしょ、よいしょ……」
犬の様に地面を掘り始め潜ろうとしている。
誰もが思った、来た穴を塞がなければ良かったのにと……そう思いながら、頑張る幼竜の姿を見つめる……
ユリナは悩んでいる、石、石、石、いし……いし……
ユリナが、気付いて帰ろうとしているアンサラの尻尾を掴もうと飛びつくが間に合わなかった。
アンサラはユリナの手をすり抜けて帰ってしまった。
ユリナは残念そうに言う……
「お風呂が逃げた……」
「ユリナどうしたの?お風呂って……」
エレナが、キョトンとした顔で聞く。
「守護竜がお風呂ってハハッ、どう言うことだ」
ベルガルが笑いながら言う。
カナもピリアもアヤも、キョトンとしているが、カイナ理解していた。
唯一シェラドは笑いを堪えてるのか、解らないが表情を変えずに見ている。
「いや、ガーラってドルイドで岩も操るでしょ、大地の守護竜のアンサラなら大きな石風呂作れないかな~って……
やっぱり無理かな?」
ユリナが少し恥ずかしながら、頭をかき言うと……
「それだ‼︎」
全員が大きな声で一斉に言い、ユリナの方が驚いた。
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