✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

文字の大きさ
63 / 234
第三章〜戦士の国アグド〜

56話✡︎守護竜の使い方Ⅰ✡︎

しおりを挟む



 そして十日目の夜、シェラドとベルガルはいつもの様にエルフの野営に足を運び、必要な物は無いかなどエルフの兵達に気を配ってエレナ達が囲む焚き火を探していた。
 この十日間も、これからのセレスとの関係を考えて彼は動いていた。


 そしてエレナ達が囲む焚き火を見つけたが、ピリアがいない。
「ピリアはどうした?疲れでも出たか?」
ベルガルが聞く。

「ピリアちゃんは今水浴びをしてるけど、何か急ぎの用でもあるの?」
エレナが答える。

「水浴び?どこにそんな水が……」
ベルガルが驚く。
「私の事忘れてません?」
そうエレナが言う。


確かに三日前にベルリス平原の主要な川は全て超えたが、エレナ達は汗臭さなど一切感じず、サッパリしている。

 女性陣は一日に一回は体をあらいたがるが、行軍中には水場が無ければ、普通はそんな事は出来ない……

 その時ピリアがちょうどリヴァイアサンを連れてやって来た。
 そうリヴァイアサンに水浴び様に水を、吹き出して貰っていたのである。
無論リヴァイアサンは目隠し着用である。


「ウィンダムさん、お願いします。」
ピリアがウィンダムにお願いすると、ウィンダムは少し熱めの風を吹いて、ピリアは髪を乾かす。


 守護竜の凄まじい平和利用に、ベルガルは呆気に取られる。

それを見てシェラドが言う。

「ヴァラドも手伝えば風呂が出来るな。」

 その言葉を聞いた、ベルガルとヴァラド……いや、その場に居たただ一人以外の全員が驚く、シェラドがそんな事を言うとは思っても居なかった。

「シェラドさん!久しぶりのお風呂入りたいです!」
 カナがシェラドに甘える様に言う。
 カナだけはシェラドが手伝ってくれればお風呂が出来ると想像していた。

だが致命的な事にユリナが気づく……
「どうやって沸かすの?」
全員が沈黙した。

 確かに木のおけは有るが……燃えてしまうことが目に見えている。
そもそも、風呂として使えるサイズが無い!


そこに可愛い声が沈黙を破る。
「みんな~久しぶり!」
顔だけ出したアンサラが居た。
「ガーラにシンシル様の言葉を伝えて来いって言われたから来たんだけど」


アンサラは地面から這い出ようと踠いている……
「よいしょ、よいしょ……」
大地の守護竜が幼竜の姿のまま可愛く苦労している。

 ユリナが見兼ねて微笑みながら、抱き抱えるように引っ張り出して、そのまま抱き抱えると、その穴は静かに埋まっていく。
「ユリナありがとう。
この移動方法は直ぐにそこに行けるけど、幼竜の姿だと苦労するんだ、助かったよ」
アンサラがユリナにお礼を言う。


「はい、どういたしまして」
 ユリナはそう返事をしながら、アンサラを地面に降ろした時、ふと手のひら位の石が目に映った。

「シンシル様がね、シェラドが動いているなら問題ないって、彼は良い心を持っている。
火の様に優しいぬくもりがあり、炎の様に強い意志も持っている。
念のために守りは堅くしておくから、何も心配は要らないって、

ちゃんとそのまま伝えたからね。」
アンサラがそう言いう。


「はーい、ありがとう。
ガーラとシンシル様にも、こっちは心配無いって伝えてね~」
 エレナが笑顔で言うがユリナは何かを悩んでいた。

「じゃ、多分明日も来るから、また明日ね」
そうアンサラが言う。
「よいしょ、よいしょ……」
犬の様に地面を掘り始め潜ろうとしている。

 誰もが思った、来た穴を塞がなければ良かったのにと……そう思いながら、頑張る幼竜の姿を見つめる……
 ユリナは悩んでいる、石、石、石、いし……いし……

 ユリナが、気付いて帰ろうとしているアンサラの尻尾を掴もうと飛びつくが間に合わなかった。
 アンサラはユリナの手をすり抜けて帰ってしまった。

 ユリナは残念そうに言う……


「お風呂が逃げた……」


「ユリナどうしたの?お風呂って……」
エレナが、キョトンとした顔で聞く。
「守護竜がお風呂ってハハッ、どう言うことだ」
ベルガルが笑いながら言う。
 カナもピリアもアヤも、キョトンとしているが、カイナ理解していた。
 唯一シェラドは笑いを堪えてるのか、解らないが表情を変えずに見ている。

「いや、ガーラってドルイドで岩も操るでしょ、大地の守護竜のアンサラなら大きな石風呂作れないかな~って……
やっぱり無理かな?」
ユリナが少し恥ずかしながら、頭をかき言うと……

「それだ‼︎」

全員が大きな声で一斉に言い、ユリナの方が驚いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...